表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした
35/72

第35話 モカの忠告


 授業が終わった後、俺の部屋に戻るとモカたちが勢ぞろいしていた。エリーちゃんが自分の居ない間、ストレージに食事の支度をしていてくれているので誘いに来てくれたのだ。

 とはいえミランダとルシィは俺のベットでまったりしているだけだったが、モカはベッドの下を覗いてエロ本がないか確認していた。


「お兄ちゃん以外の年頃の男の子の部屋なんて入ったことないもんね。ホントに枕やベッドの下にあるのかなって気になっちゃって……」


 なんか見つかったら薄い本のネタにされそうだ。


 俺の友達はマットレスの隙間に隠していたのを母親に見つかったことがある。床に転げまわりたくなるぐらい恥ずかしかったそうだ。

 ちなみにこの寮にはないが、元の世界での俺の部屋にはタブレットで見られるアダルトな写真集や動画がある。

 インストールした方が安全だけど閲覧履歴が残るからディスクのまま保管だ。そのまま人に譲れるしな。さすがに割れると困るから枕の下ではなく、あんまり使っていない参考書に挟んである。

 見つかっても外付けのドライブを使わないといけないから、そこまではしないと信じている。



 夕食後モカにプラムとの話をしたら、何やら考え込んでいた。


「ふーん、彼女は推しなのにリアンの思ってたんと違うかったんだ」


「うん、何ていうか、キレイな子だけど素敵じゃないっていうか……。よく芸能人の本物に会ったらガッカリするって聞くけど、それってこんな感じかなってさ」


 するとモカがもじもじと困ったように俯いた。


「どうしたのさ」


「いや、そのぉあたしが通って来た道だなぁって思って」


「それってどういう意味さ?」


「あのね、こないだ手紙のやり取りしている王妃様になった友達の話、したじゃない? あたしたち、自分たちが一番好きな乙女ゲームの世界に似た世界に転生したんだ」


「へぇ、じゃあモカも推しに会ったんだ?」


「うん、本物の破壊力はすごい! って思ったよ。毎日その2人が見られて幸せだった。ただその片方の中身が伯父様だってわかったら、スンってなったけど」


 そういえば大好きなキャラが母さんだったらって話されたよな。忘れてた。


「あたしはね、クマだったしエリーと伯父様ぐらいしかあたしの失敗を知らないけど、友達は家族や幼馴染たちがそのゲームのキャラだったわけよ。ほとんどが攻略対象で、あと死にキャラやライバルキャラ。それでみんなに乙女ゲームで起こることを話して問題を回避するようにいろいろ注意してたの」


「? それの何がダメなのさ」


 そのキャラが不幸になる前に防いだってことだろ。


「最初はね、みんなも先見が出来る王女ってことで信頼して仲も良かったんだ。そこにヒドインが現れて自然破壊とか、他人の命を軽視するとかとにかくたくさん問題を起こしたの。彼女はそのヒドインの後ろ盾だったから、みんなの信頼を失って悩んだんだって。

 でも本当の理由は友達がその人たちをゲームのキャラとしてしか見てないことだったの。もちろんみんなが生きてるってわかってたけど、同じ過ちを繰り返さないようにしつこく注意したり、逆にゲームにいなかった素敵な人を攻略対象にいなくて残念だって言ってしまったり。

 それでその人たちは友達が自分たちをゲームの駒として見ていると思っちゃったの。最終的にお嫁に行くとき彼女がいなくなってせいせいするとまで言われたそうよ。おかげで嫁入り先に温かく迎え入れられて馴染みやすかったそうだけど」


 モカが言いたいのはこうだ。

 俺がキラキラ輝いていないすもも様ならぬ現実のプラムを、ゲームと同じじゃないからって失望するのは良くないってことだ。確かに両親を失って魔王討伐を目指す女の子と、アイドルとして大人気だったすもも様が同じなわけがない。


 そう言えば俺もカイルに、まだ出会ったばかりなのに男の娘扱いされてムカついたんだった。それにアルのことを考える時はいつも乙ゲー攻略対象か! って思ってた。

 それほど接触がないからリリーやチェリーにはそこまで伝わっていないとだろうけど、俺も周囲のみんなのことをどこかゲームのキャラのように扱っていた。



「わかった。俺も気を付けるよ」


「うん、あたしはリアンにそんなことで失敗して欲しくないの」


「プラムと話しているときもモリーが宥めてくれなかったら、俺もう話しかけんなっていいそうだった」


「そっか」


「前に仲間に入れて欲しいって頼んだら、俺がどうなろうと構わないって断られてさ。プラムもアイリスも黙って見ているだけ。なのに自分たちの都合で俺に頼ってくるなって思った」


 どう考えてもエリカを獲得するために、近づいてきたとしか思えなかった。しかも俺が北部出身のくせに魔王討伐に積極的でないことも非難されているように感じた。

 でも俺に事情があるように、プラムにも事情がある。それも親を亡くすなんていう悲しい事情だ。


「モカ、モリー、ありがとう。おかげで冷静になれた。俺は自分が帰るために全力を尽くすよ」


 するとミランダが俺の肩に乗って、しっぽでいい子いい子と撫でてくれた。

 すっかり赤ちゃん扱いだが、これも初回だから甘んじて受けよう。

 だがルシィ、お前は俺の膝で転がっているだけだぞ。


 でもみんなを見ているとささくれ立った気持ちが落ち着いてくる。


 カイルがどんな形で俺をこの世界に引きずり込んだのかはわからないが、魔王を倒して絶対に帰ると心に誓った。


お読みいただきありがとうございます。


モカとリアンはわざとら抜き言葉にしています。逆にエリーとアルはほとんどら抜き言葉にしていません。流行り言葉は時代を感じさせるのでそれも少なめにしています。


気になる方もいらっしゃると思いますが、現代日本の子どもがら抜き言葉で話していない方が変だと思うんです。

どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ