表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした
25/72

第25話 精霊女王会議1


 チェリーが脅されたことから、アルとエリーちゃんはエリカを召喚することに決めたようだ。


 精霊を召喚するのに絶対に必要なのは共感性である。通常の意味である他者の気持ちを我が事のように感じる力って意味ではなく、似たような性格、考え方や嗜好、容姿の持ち主であるということだ。

 アルとエリーちゃんは兄妹であり、元音楽家で共感性が高い。


 エリカはアルフォンスとの共感性が高いから召喚出来たけど、アルフォンスとアルは別人だから全く共感性がないと言っていい。

 それでどうするのかと言うと、別のアプローチで近づくのだと言う。


「エリカはおおかみのせいれいで、かぜのなかまなの。だからシルフィにさがしてもらうようおねがいしてみる」


 シルフィとは風の精霊女王シルフィーナのことである。



 そして俺はまた腕輪を嵌められて、ポメ化している。


「すまない、リアン。多くの精霊たちは人間が嫌いでね。君が人間のままだと姿も見せてくれないんだ。なぁに、フィオレンティーナは君のことをかわいいと言っていたから、きっとシルフィーナも気に入ってくれる」


 だったらせめて成犬ぐらいにしてほしい。とても不本意である。



 ポメの時は喋られないから基本心話だ。ちょっと違うらしいけど、テレパシーみたいなものと認識した。


 エリーちゃんがいつでも出発できるように子どもたち全員のおめかしをしている。俺もオスなのにブラシをかけてリボンをつけられた。

 あれっ? よく見るとミランダがいない。


(ミランダはどこ?)


「ミラは風魔法が使えるケット・シーだから、シルフィーナの所に面会の申し込みに行ってもらっている。エリーは神だから、突然来られると何のもてなしも出来ないからって言われていてね」


「わたしもお兄さまもお願いする立場だから、もてなしなんていらないのにね」


 アルとエリーちゃんはそういうけれど、急な来客って人によっては嫌なモノらしい。友達の祐介のおばさんはいつ来てもニコニコしているけど、ウチの母さんは父さんが会社の人を連れてくるときは絶対に先に連絡しろって言っている。

 1度父さんが連絡を忘れて数人連れ帰ってきたことがあった。その時つまみに出せるものが翌日の俺の弁当のおかずだけだったそうだ。朝起きたらコンビニでおにぎりでも買えって金渡されたんだった。

 俺が連れて来たわけでもないのに母さんがずっと不機嫌で、居づらいから早めに登校したのを覚えている。



 そうこうしているうちに、ミランダが帰ってきた。

 黒白のハチワレ子猫の彼女は後付けの白い羽を装着している。この羽はエリーちゃんの魔道具で、彼女の機動性を高めるために空が飛べるようにしたんだそうだ。


(ただいまなのー)


「おかえりミラ。おつかいごくろうさま」


 エリーちゃんがねぎらいの言葉を掛けると、彼女はすぐにエリーちゃんの腕の中に抱きしめられていた。ミランダは卵を孵したエリーちゃんが大好きなのだ。


(おかーさん、いっぱいとべてたのしかったのー)


「よかったわ、ミラ」


「それでエリカはいたのかい?」


 アルの言葉にミランダは困ったような様子で頷いた。


(それらしいせいれいはいるのー。3にんもいたの。みんなおかーさんのところにくるのはいいけど、にんげんヤダなのー)


「まぁ、そうだろうね」


(それよりシルフィーナさまは、しょーかんのまほうじんのはなしがこわいの。せいれいじょおーかいぎするの。みんな、きてなの。ばしょはウィンディーナさまのところなの)


 精霊女王会議?


「前にも言ったけどこの世界を管理する神はここに在住していない。代理を務める神族もいない。だから4人の精霊女王たちが手を取り合って管理しているんだ。

 召喚の魔法陣の使用は人間の精霊に対する裏切りであり、彼らを危機的状況に追いやるものだ。だからこそそれを求める人間の存在に恐怖を覚えても仕方がない。

 エリー、彼女たちは君の言葉を待っているよ」


「わかった。きちんとみんなにおはなしするよ」


 うわぁ、それを聞くとポメラニアンに変えられてよかったような気がする。でもこんな生まれたてみたいにちっこくなくてもいいのに。



 ウィンディーナの今の居城は深海にあるそうだ。場所を知られないため直接の転移はエリーちゃんでも許されていない。

 神であるエリーちゃんの方が力はあるんだけど、この世界には一時的な客として来ているだけなので、郷に入っては郷に従えなのだそうだ。


「水着を先に着ておいた方がいいかもしれない」


 水着なんて持っていないし、今ポメなんだけど……。そう思ったらエリーちゃんが俺に白いものを被せた。

 よく見るとアル以外の全員が同じものを着ている。いやルシィは着ていない。なぜならみんなが着ているのは彼そっくりの真っ白な赤ちゃんアザラシの着ぐるみだからだ。モリーはとても小さくて掌に乗るくらいのミニアザラシである。


(これ……何?)


「セルキーみずぎだよ。コレきるとどこでもじょうずにおよげるし、いきもくるしくないの」


 ええっ! こんな格好で、俺泳げるのか?



 そう心配になったけど、俺たちはエリーちゃんに抱っこされて、背負子の箱の中に入れられた。アルが背負っていくそうだ。


「これから待ち合わせ場所まで転移して向かう。ランダム転移するから何回かかるかわからない。リアンは転移酔いの可能性があるから眠ってくれて構わない」


 水着の意味は? そう思ったけどみんな、いいからいいからと着せられたままだった。



 気が付くとどこかの海岸に俺たちはいた。

 十数回は転移したらしい。全然気づかなかった。箱のふたを閉められたら、暗くてすぐ眠ってしまったからだ。

 この箱の中にいたのも、ウィンディーナがどこに住んでいるのかわからないようにするためらしい。それだけ相手は警戒しているのだ。


「女神ユグドラ様、ご一行でいらっしゃいますか?」


 迎えにやってきたのはにこやかな人魚だった。

 わかめみたいな髪をしているがかなりの美人で、おっぱい丸出しである。だがセクシーなかんじではない。腰から下は本当に魚でその部分は海水に浸かっている。

 それを見てみんな緊張状態になった。ルシィはガタガタ震えている。


(うわぁ、マーメイド来ちゃったよ)


(これは相当怒っているな。みんな気を引き締めて。無駄口は叩かないこと)


 俺はモカとアルが心話で語りかけてきたが、意味がわからなかった。


(? なんで?)


 するとミランダが教えてくれた。


(マーメイドはきょーぼーで、せんとーしゅぞくなの。てきをあたまからバリバリたべるの。ミラはないけど、ルーはあるの。まえのときはセイレーンだったから、だいぶこわいの)


 つまりウィンディーナたちは怒っているから、前に来た時はセイレーンを迎えに寄こしたけど、今回は戦闘種族のマーメイドを寄こしたってことか。

 セイレーンも怖いと思うけど、もっと直接的に敵意があるって感じなんだろうな。

 確かにこの人魚、美人だけど目が笑っていなくて怖い。

 ルシィ、よくバリバリから逃げられたな……。



 エリーちゃんがセルキー水着の顔の部分を外した。


「わたしがユグドラです。おむかえありがとうぞんじます。あんないよろしくたのみます」


「かしこまりました。そちらの舟にお乗りください」


 いつの間にか側に櫂のない小さなボートがあって、俺たちは黙ってそのボートに乗り込んだ。


お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ