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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした
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第10話 エリーちゃんの最下級ポーション


 ウサギの納品で財布がちょっとは膨らむことだし、せっかくだから俺もポーションを1つ買うことにした。


「エリーちゃん、疲労に効く最下級ポーション1つ」


「はい、まいどありがとうございます。お1つ小ぎんか10まい、またはぎんか1まいです」


 お金の単位はルーンだ。ちなみに銅貨は1枚1ルーンで10円。小銀貨は1枚10ルーンで100円。その上に銀貨1枚は100ルーンで1000円、小金貨1000ルーンで1万円 金貨1万ルーンで10万円、さらに白金貨10万ルーンで100万円である。


 小銀貨10枚なので100ルーン1000円でだから銀貨1枚と同じ金額だ。


 最下級ポーションは薬草を煮だしただけのハーブティーみたいなものだ。

 もちろん回復力があるんだけど、その薬師の腕によって味が大いに違う。

 エリーちゃんの最下級ポーションはさわやかな花の香りのする微炭酸ソーダのようなとてもおいしいものだった。


「わぁ。うまいよ、これ。エリーちゃん天才!」


 金額的にできないのが残念だけど、がぶ飲みしたい。


「それね、みんなでつくったんだよ」


 モカが薬草を分け、ミランダが乾燥粉砕し、ルシィがベースの水を用意して、エリーちゃんが煮だして(ここで魔力を込めるそうだ)、モリーが殺菌瓶詰したという。

 よいチームワークである。



 閉店の準備を始めて、さあ閉めようとしたとき、1組の冒険者パーティーが駆け込みで入ってきた。


 王宮編の次の冒険者編での攻略対象カンナ(花の和名もカンナ)が率いている『冒険者の翼』だ。

 全員女性ばかりのパーティーで、人気も実力も光っている。

 彼女はオレンジにかなり近い赤い髪のプロポーション抜群な美人アタッカーだが、少々ケチなのだ。

 攻略を間違えると、有り金全部巻き上げられる。

 だけど実は病気の家族のために必死で節約しているだけで、家族思いの健気な女性なのだ。

 そういう一面を見せられて落ちたって、書き込みを見たことがある。



「もうへいてんです。また明日きてください」


「そんな殺生なこと言わないで。エリーちゃんが店番しているって聞いて飛んできたんだから」


「アイビーおばあちゃんのお夕食をださないといけないから、手みじかにね」


「じゃあ、エリーちゃんのつくったポーションを全部! たくさん買うからおまけしてね」


 するとエリーちゃんがある張り紙を指さした。

『ポーションを5つ以上お買い求めの方には5つごとに劣化ポーション1つをセットでお買い求めいただきます』


 劣化ポーションとは賞味期限が近かったり、修行中の薬師の失敗作などで、微々たる効果な上に非常にまずい。その上小銀貨8枚もするのだ。


「今回はさいかきゅうポーションしかつくっていません。明日ように50ことここに5こあるので、11このれっかポーションも買ってください。それとおまけはできません」


「いらない、お金もったいないじゃない」


「アイビーおばあちゃんから、れっかポーションを買わない人には4つまでしか売るなと言われています」


「じゃあ、まけてよ~、お願―い」


「ねびきしてって言われたら、うらないようにって言われています」


「じゃあ、エリーちゃん専属になって!」


「お兄さまがいないところにはどこにもいきません」


「アル君! うちに来て‼」


「使い潰される未来しか見えない。

 絶対に嫌です」



 アルからこそっと聞いた話だと、エリーちゃんのポーションは非常に美味で効能も高いのですぐ売れるけれど、通常ある劣化ポーションや最下級ポーションが全然売れなくなってしまうそうだ。でもそうなると薬師見習いが材料の薬草代が出ず、薬師として育たなくなってしまうのだ。

 それで抱き合わせで売ることを考えたという。


 つまり小銀貨10枚×55個(5500ルーン)+小銀貨8枚×11個(880ルーン)で小銀貨638枚(6380ルーン)。たしかに小銀貨88枚と思うと高いな。


 だいたいカンナたちはBランク冒険者で、最下級ポーションなど普通はいらないんだ。

 つまり彼女らは嗜好品としてエリーちゃんのポーションを飲んでいるのだ。

 でも飲んでいるのは他のメンバーで、カンナはご褒美の1本程度だろう。


 この最下級ポーションは初心者でお金のない冒険者のためにとても安く設定されている。

 なのにCランクが買い占めれば、初心者冒険者の生存率が低くなってしまう。

 それを嗜好品にするのだから、せめて劣化ポーションの分も払えってことだろう。


 それでも彼らは買って帰った。

 きっとカンナが自分たちを口説いてくる男どもに売り飛ばすのだろう。


 最下級ポーションでもあんなにさわやかで美味しいのはエリーちゃんのだけらしいのだ。

 これを飲むと二日酔いにならず、体の調子もよくなるそうな。

 俺だってがぶ飲みしたいって思ったからな。そりゃ欲しいわ。



 エリーちゃんは高速でアイビーおばあさんにご飯を出していた。

 そのあと寝返り打たせたり、腰をさすったりしていた。


 本当は回復魔法を使えるそうなんだけど、あまり使うと目立ってしまうので止めているらしい。

 回復の仕事はかなり頻繁に入れられるそうだし、精霊の誘拐なんてできるのかわからんが面倒なことには違いない。


 片づけは明日の朝やるということで、依頼終了の印をもらって無事帰宅出来た。

 ちなみに晩御飯はこれまた高速で、ウサギをローストしてくれた。

 ラノベではよくパサついてると書いてあるけど、ジューシーでめちゃめちゃうまかった。

 エリーちゃんは名コックでもあるのだ。


「エリーのご飯に慣れると、他のところで食事しにくいんだ」


 だからときどき学食でも食べるようにしてるんだよとアルは苦笑していた。

 うん、出してくれたもの全部美味しいものな。

 すっかり胃袋を掴まれているから、もう遅い気がする。



お読みいただきありがとうございます。


味はエルダーフラワーソーダをイメージしています。

私が大好きなのです。


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