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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十七章  新婚生活
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モンスター王国

 襲撃があった後その他に危険はなさそうだったので、状況を説明する為にロップソンのパーティーメンバーを転移して集めて来ると、ロップソンの家でレイシアと一緒に彼らと向き合っていた。

 「まずは状況を説明しておこう。今回君達が襲われる原因になったのは、ロップソンが魔道具を安易にばら撒いたことが原因だ」

 僕は多目的シートを広げて、賊の自白によってわかった情報を見ながら彼らに説明していく。レイシアが横から覗き込んで、情報を見ているけれど、まあとりあえずそのまま説明していく。

 「お前の作った治療用魔道具だが、それには若返りの効果が認められたそうで、ウルグフォルン国という国の貴族連中がこの魔道具を不老不死の魔道具として、お前の身柄を狙っていたみたいだな。ジャドだったか、お前らはそれに巻き込まれ、人質として誘拐されるところだったという訳だ」

 メンバーを見ながら説明していると、最後は何か女性ばかりのメンバー達にそう言って聞かせる。ハーレムパーティーでも作るつもりだったのか?

 「危ないところを助けていただいて、ありがとうございます。それと先程は失礼した」

 確かジャドがこのパーティーのリーダーをしているのだったか。そうするとロップソン辺りが副リーダーかな? 僕にそう礼を言って来る。

 「安心しているところ、申し訳ないがこれは一時的な話だ。今後もロップソンを狙って来る者はドンドン増えると思うぞ。今回は幸が巻き込まれた為、ついでに助けたが次は助ける気はない。そこをよく理解して欲しい」

 「えっと、何故今回は助けてくれたのですか?」

 「そうだな・・・・・・君達に理解できるかわからないが、僕は幸に対して仲間意識がある。当然直接的な知り合いなどではないが、こっちとしては普通に仲間だから助けようと思っただけだ。ただずっと守り続けようみたいな考えはないので、まあ今回だけは助けることにした。後は自分達で何とかするべきだと思う」

 こっちはこんなものでいいかとレイシアを窺うと、レイシアは懐かしそうに一人の女性を見ていた。レイシアに視線を向けられていた女性も、レイシアに向ってどこか安心したような表情を向けていた。個人的に知っている人がいたかな?

 大概一緒にいるので、僕が知らない知り合いっていうのはいないと思っていたのだが? まあ知人がいるのは、そこまで悪いことでもないか~

 「じゃあレイシア、帰るか? それともゆっくりしていくか?」

 さっき見ていた女性と話しでもしていくかなと思い、そう声をかけてみる。

 「ううん。いろいろとやる事もあるし、帰ろう」

 「じゃあな」

 それでいいならいいかと考え、改めて幸達にそう言って別れる。


 戻って来ると、再び町の配置をみんなで考えることにした。実際にみんなにチェンジの魔法を使って、ジャイアント種になってみたりウルフになってみたりと、それぞれの種族になってみて住みやすい場所を作ろうと、いろいろと意見を出していった。

 意見を出して考えていくと、結構全種族を町の中にごちゃ混ぜにして集めようっていう考えは、無茶だということがわかって来る。わかりやすくいえば、水中を住処にするマーメイドという種族と砂漠を住処にするサンドワームは、余程の無茶をしない限りは同じ場所で生活できない。

 まあここは考えるまでもなく住処を別々に造るのがいいといえる。こちらが一緒に暮らせるようにする努力といえば、砂漠の隣に川を造るなど、住む環境を近くに持って来るくらいのものだろうな~

 まあ、そんな感じでなるべくさまざまな種族が、お隣さんとして過ごせるように町の配置を考えることと、感情ではなく相性が悪い種族を隣に持ってこないように配置を工夫することだろうな。

 いくら仲良くしたくても、火と氷の精霊を隣に配置するのは馬鹿のすることだろうしね。どちらかが死ぬ事になっても一緒にいたいと願うのなら、それは個人でやってもらいたい。個人的な想いなら逆になるべく手を貸して応援しよう。

 まあ、そんな奴はいないと思うが死んでもいいとまで言うのなら、サフィーリア神とかからも祝福されるだろうしな。


 さてとりあえずはわかりやすい人間タイプと一緒に暮らせる種族の環境を整えるところから始めよう。百万人規模の街とはいったものの人間タイプだけでと言うのではなく、いろいろな種族が混じって百万人と考えているので、まずは人間と同じ暮らしができるモンスターがどれくらいいるのかでこの区画の大きさを決めていこうかと思う。

 とはいったものの人型でもエルフなどの緑があった方がいい種族や土が欲しい種族などもいる為、町の中に森のような部分とか洞窟のようなものとかも作る予定なので、人間の町のようなスッキリした形にはならないと思う。ところどころに自然が混じった町並みになるのではないかな。ここら辺りは日本の公園をもっと大規模にした感じだろうか? 土地が広くて助かるな。

 百万人規模の町を造る計画が大体決まって来たものの、まだいろいろ修正していかなければいけないだろうけれど、まずは食料を確保しておきたいので先に畜産場を作ってもらうことにした。町の地下には洞窟などに住みたい者の住居などを造る予定になってしまったので、町の外に監獄を造った場所があるからそこの地下に畜産場を造ることにする。大まかにでも、町の大きさが決まってきたことで、畜産場も造れるようになった。

 続いて農場と、ビニールハウスも造り始めるようにして町の方も造り始める準備が整う。モンスターは肉食も多いけれど、草食のモンスターも普通にいるからやっぱり用意しておかないとだよね。


 そんな感じで何日か町造りをしつつ幸の方がどうなったかたまにチェックして過ごしていると、旅人や商人なんかがこの場所を見付けて覗きに来ることがあった。

 ホーラックスの造った城はかなり本格的に気合の入った、魔王城だ! って感じの物になっていて、町造りをしているこちらもモンスターと人間が一緒になっていろいろやっているので、それを見て慌てて逃げて行ったのがわかる。

 おそらく今頃はどこかで魔王が復活したとか言いふらしているのかもしれないな。

 さらに何日か経ち城は外見だけでなく内側も綺麗に仕上がり、いよいよ町を本格的に造り始めていると、ファクトプス国の軍隊と思われる兵隊達が一杯やって来るのがわかった。その頃にはもう国の国境に結界が張られて外に出られないことが判明していて、やって来た軍隊もここが原因なのではと思っているところだろうと予測できる。

 せっかくやって来た人間なので、ホーラックスに挨拶して来てもらおうかな。町はまだどれくらいの大きさになるのかわからないから外壁を造っていない為、町に踏み込まれたくないのだよね。

 「ホーラックス、この国の兵士を連れて、現国王に今後この場所はモンスター王国になったと宣言して来てくれ」

 僕はそう指示を出すと、フィジカルコントロールの魔法を使ってやって来た兵隊の肉体を支配して、意のままに操る権限をホーラックスに渡した。これで向って来た兵隊はホーラックスの手駒としてそのまま人間の国に進軍することとなる。

 「主よ、フラムイストの方はどうする」

 「あー そっちもあったな。じゃあついでに挨拶して来てくれるか?」

 「それでは行かせてもらおう」

 やって来た兵隊を連れて、ホーラックスがこの場から転移して行った。帰って来たらあの兵隊達は、モンスターが人間に慣れる為の教材にさせてもらおう。強制的に共存させて、お互いに大丈夫になったら一般市民も受け入れていっても平気だろうな。

 まあ、一般市民がモンスターのいる町に来たがるとは思えないがね・・・・・・


 しばらくして下準備が終わると、いよいよモンスターを集めて教育していく作業を始める。まずはモンスターに人間の言葉を教えていったり、人間をむやみやたらに襲わないように躾をしていくことにした。今回学校で教師をするにあたり、メインで教えていくのはレイシアにお願いしてある。

 レイシアには意思疎通のスキルがあるので、言葉を教えるのには最適だった。そしてサポート役の教師として、魔王軍で教育係をしていたリースと、畜産管理をしているイオルドがレイシアを手伝う。ただイオルドには畜産の仕事があるので、雑務をこなしてくれているビルトフォックにも教師をしてもらうことにした。

 さて僕も学校には参加する予定ではいるのだが、まずはゴールドドラゴン達をこちらに呼んでおこうかな。まだ人間の意識改革は終わってはいないものの、彼らの領土に入らないように警戒だけして置けば問題ないだろうと判断する。完全に人間との共存関係が築けるまで待っていたら、ドラゴンとの約束を忘れていそうだし早めにこちらへ迎えておこうと考えた。


 ある程度知能の高いモンスターに人間の言葉や、ここでのルールなど指導方法を考えているレイシアを見て、切りが付くのを待ってから声をかける。

 「レイシア、ゴールドドラゴンの所へ行くから、一緒に来てくれるか?」

 「わかった~」

 そう言って直ぐにこっちに来てくれたので、早速転移してドラゴンの集落へと転移する。するとやっぱり警戒されているようで、ドラゴン達がこちらを窺って来た。

 「移動する準備はできているのか聞いてくれるか?」

 「うん。聞いてみるね」

 レイシアは近くにいたゴールドドラゴンに話しかけて行くと、用件を伝えてくれた。やっぱりあまり歓迎されていないようで、できれば関わりあいたくないって感じに思えた。

 「直ぐに準備ができるって言ってるよ」

 「じゃあ、準備できた者から転移させるって伝えてくれるか?」

 「わかった」

 レイシアに伝えてもらって、しばらく時間が過ぎると警戒しながらドラゴンの一体がこちらに向かって来た。おーおー かなり嫌々って感じだな。でもいちいち付き合っていられないのでさっさと飛ばしてしまおう。

 別に接触しなければ転移させられないとかではないので、準備できたとわかれば飛ばすのに問題はないだろう。

 しかし消えた仲間を見て余計に警戒したのか、ドラゴン達の動きが止まってしまった。面倒なやつらだなって思いつつも、まあこちらを信用できないってことだろうなと考え、一度飛ばしたドラゴンを呼び戻す。

 「とりあえず今飛ばしたドラゴンに、安全だったってのを仲間に伝えるように言ってくれるか?」

 「あ、大丈夫。こっちが言う前に情報交換しているから」

 「そうか、じゃあ時間が勿体無いから、サクサク前に出ろって言ってくれるか? ドラゴンのくせに臆病なんて情けないってな」

 「そのまま伝えるね」

 そのままって、案外レイシアも過激なのだな。

 僕の言葉を聞いてむきになったのか、ドラゴン達は多少警戒しながらもドンドンこちらにやって来るようになった。さすがに臆病者呼ばりされたのには、プライドが傷付いたみたいだね。まあ既に警戒してなかなか前に出られなかった時点で、臆病者達ってイメージは定着した感じなのだがな。

 やっとサクサクと物事が進み、ドラゴン達をモンスター王国にある山脈へと転送し終えた。

 最後のドラゴンに付いてこちらも転移すると、現地でドラゴンに話しかける。

 「こっちで巣を造った方がいいか聞いてみてくれるかな。一応要望があれば造れるって」

 「ちょっと待ってね」

 しばらくやり取りをするのを待っていると、レイシアが答えた。

 「ここには人間が来ないのかっていうのだけ、気にしているみたいかな。巣の方は人間の手を借りたくないから自分で用意するみたいだよ」

 「じゃあ、一応警戒はしておくといいかもしれないが、近づく者がいればこっちで対処できるようにはしてあるって言っておいて。それでも抜けて行こうとする者は出て来るかもしれないけれど、殆どは止められると思うしな」

 「わかった、伝えておくね」

 それにしても今更なのだが、ドラゴンは知能が高いはずなのになんで人間の言葉を話せないのかな? それに念話みたいなもので会話できるものだと思ったのだけれど・・・・・・そういうドラゴンは見た事がないよね・・・・・・まあ、こっちにはドラゴン騎士みたいな者がいないみたいだから、完全に人間とは距離を置いているのかもしれないな。

 どうやらドラゴンとの約束事はこれで解決したみたいなので、町まで帰ることにする。僕達はここから忙しくなるだろうから、いつまでもドラゴンに付き合ってはいられないのだ。


 まずはモンスターを捕獲して学校に叩き込むところから始めないといけないからな~ 学校に来てくださいって現段階で言っても、どいつも来ようなんて思わないので強制的に連れて来ることになる。教育が終わっても外で暮らしたいというのなら、人間を襲わない限り自由にさせるつもりだ。

 まあ、完全な虫系モンスターは教育しても無駄なことはわかっていたので、彼らは共存できないモンスターとして退治しても構わないリストに載せることにしている。他にもアンデットがこのリストに名前が挙がっているかな。

 植物系もやはり共存できそうに無いやつが含まれている為、リストに載せてある。まだ学校での教育がどう影響するかわからないので、リスト作りは暫定でしかないな。

 知能の高いモンスターを最初に学校に迎え、言葉とルールから教えていく。抵抗する者などもいるようだけれど、そういう者には殺気をぶつけて大人しくさせるか、それでも抵抗しようとする者には実際に戦ってやりこめて席に座らせていった。

 圧倒的な力量差を見せ付けてやると、さすがに反抗しようとは思わなかったようで、見ていた者達も逆らうようなことはしなかった。僕の後ろにいたレイシアも、ニコニコしながら日本刀で武器を切り落として行ったからな~ さすがに不用意に喧嘩を売ろうとは考えないだろう。

 その後も人間との共存を目指す上で人間タイプの眷族を学校に教師役として呼んでいたけれど、誰に喧嘩を売っても勝てないという事を学ぶと、さすがに弱い兵士を見ても警戒して手を出そうとはしなかった。

 疑心暗鬼になったのだろうね。人間は誰でも強いんじゃないかって・・・・・・


 さて、問題は知能があまり高くないものの、教育次第では仲良くできるのではと思われるモンスターだった。

 まずは学校で言葉を教えようと考えてみるものの、モンスター達がこちらの話を聞いてくれなければ意味がない。レイシアと一緒に教室に入ると、そこにいるゴブリン達が早速襲い掛かって来た。

 こいつらは頭が悪いからこそ、相手に勝てるかどうかの判断を体の大きさと人数でしか判断できない。それでいくと僕とレイシアはマッチョではないので彼らにはとても弱く見えたのだろう。ムキムキで鎧でも着込んでいれば少しは怖がったのかもしれないが、そんな僕らが二人だけで現れた事で勝てると判断したのだろうな。

 知能の高かったモンスターと同様に実力差をわからせる為、僕はゴブリン全員に向けて殺気をぶつけた。それと共に駄目犬を叩いて躾けるように、ゴブリン達の懐に瞬時に入り込み全員を一瞬で殴って床に沈める。ここで気絶させてしまうと何が起こったのか綺麗に忘れてしまうので、気絶はさせないのが注意点だな。

 ゴブリン達が恐る恐る起き上がったところに、レイシアが止めとなるようにゴブリンの一匹が持っていた剣を気付かれないように奪い盗って、その武器を首元に突き付ける。そこでゴブリン達はどれだけ束になって襲ったところで、僕達には勝てないと理解できたはずだ。いや理解して欲しい。

 まあ、明日には忘れているだろうけれどね・・・・・・実を言うと、ここ一週間似たような事を繰り返していたりする。


 ゴブリン達に比べると、ウルフなどの動物系のモンスターは簡単に躾できた。上位者に従うのでそれをアピールしてやれば問題ないのと、ご飯を与えてお腹を一杯にしてやればそうそう人間に襲いかかったりはしない。人間から襲っていったり、縄張りに侵入するのでなければわざわざリスクを犯してまで、襲ったりはしないのだ。

 ということを踏まえて、以前やって来た兵隊達が動物型のモンスターに餌をせっせと運んでいたりする。彼らもこちらのいうことを聞かなければ、自分達が動物達の餌になってしまうので従順に従っているようだ。たまに脱走しようとする兵士もいるけれど、抜け出せた者は一人もいない。

 大体脱走しようとした兵士は、兵舎から百メートル程移動すると元の兵舎へと自分で戻ることになる。何故かっていえば、ここはモンスターが生活するモンスターの町だからだ。しかもまだ教育が行き届いていない為、人間を見る彼らの目には餌がやって来たようにしか見えないのである。

 兵舎の中ならば彼らの安全は保障されているものの、そこから出たらどうなるかは実際にその視線に晒された者ならば理解できるのだろう。ならば集団で、あるいは全員で逃げ出せばと兵舎から出ようとした事もあったようだが・・・・・・この町にはドラゴンですら出歩いているという事実に、とうとう逃げることを諦めるに至った。

 まあそんな訳で、彼らは人間に慣れさせる為の教材として、日々利用させてもらっている感じだ。今日もイオルドの指示の下、モンスターに餌を運んでいることだろう。


 さてこっちもがんばって、お馬鹿さんなゴブリン達に言葉を教えていかなければな~ なのでレイシアが授業を開始していく中、僕はゴブリンを一体ずつ机に座らせて行く。ゴブリン達は直ぐに忘れてしまうので、なかなか座席に着いてくれないので最近の授業開始の日課になって来た感じがする。

 僕が一体ずつ椅子に座らせて行っていると、ゴブリン達は怖いのか抵抗なく従ってくれる。こいつらも人間に慣れてくれたなら、魔王軍でゴブリン学校を卒業した子に授業を任せてもいいのだけれどな~

 言葉を覚えさせるだけでは不十分なので、人間であるレイシアが教えるしかないのが実情だった。まあ、見た目は人間そのもののホムンクルス達も、ここで教師役をしてくれているけれどね。

 彼らは結構長い間魔王軍でモンスター達と一緒だったおかげで、モンスターの扱いはそこそこ手馴れていた。だから持ち回りでゴブリン達に指導をしていく。

 ちなみにコボルトの授業は意外と順調だった。知能はゴブリンとそう大差なさそうだけれど、もう少し動物的なのか最初に殺気をぶつけられてからは大人しくなった。

 今では僕らが部屋に入ると慌てて自分の席に座るまでになっている。試しに兵士を教室に入れてみたけれど、最初の一回だけ襲い掛かろうとしたものの、その後はそういうことをしなくなった。もちろん部屋の外で様子を見ていた僕が殺気を出した事で、兵士を襲ってはいけないのだと理解してくれたからだ。その時の兵士はさすがに涙目だったな。

 そんな感じなので、コボルトはゴブリンより先に町の生活の知識を教えられているはずだ。

 やっぱり種族によって、大分対応が違って来るな~


 『バグ様、幸さんが再び襲撃を受けたようです』

 お、司書パペットが報告して来たので、情報を詳しく確認しようと多目的シートで見てみる。まず幸の安否だが、一度目の襲撃で警戒していたのか全員でロップソンの家にいたから、全員で撃退して被害は家の一部が壊れたくらいだったらしい。

 パペット達がその後犯人について調べたところ、前回とはまるで関係のない国の王族が今回の襲撃を指示したとなっていた。そうなるとこれからもこういうことが続くのだろうな~

 まあ、権力者は特に不老不死って魅力的に映るのだろう。実際今回の指示を出した王族はかなりの高齢で、野心家でもあるようだった。

 以前なら平和の為に排除してもよかったのだろうが、今回はこっちに直接の被害はないのでブラックリストに載せる程度でいいかなって考える。まだまだモンスター王国もやることが多いしね。

 彼らには自分のことは自分で処理してもらう。それも冒険者の在り方だろうね。


 しばらく授業を続けていると、人間と共存できそうで難しい種族が段々とハッキリして来た。頭が悪くて理解できない種族がゴブリンやオーク、ハーピー、ミノタウロス、トロール、サイクロップスなどかな。まだ共存不可能とする程ではなくて、根気よく授業を受けさせて徐々に人間に慣れさせていこうって感じだ。

 それに対して厄介なのが、理解で来ていて敵対する者達になる。特にヴァンパイアなど、人の血を食料とする上に自分を上位の者と思っているだけに共存しようなどとは考えもしない。まああいつらは独自の文化も持っているので、こっちには従わないのだろうね。

 それでいて共存を望むヴァンパイアもいるので、見付けたら即倒すって判断も難しい。

 そこで、モンスター王国保護指定モンスターって感じで、味方なので攻撃しちゃ駄目だよって物を作ることにした。日本の戸籍みたいな身分証みたいな物にもなるし、現在どこにいるかとか犯罪をしていないかとか、いろいろと監視できるからそういう物があるとやりやすい。

 そんな訳で身分証明とモンスター王国の住民である証明のカードを作ることにしたのだけれど・・・・・・いつまでもモンスター王国と言っていないで、国の名前を決めなければという話になった。カードにも何処の国出身とか書き込むのだとしたら、独自の名前が欲しいと思えた。

 「やっぱりバグ王国では?」

 これはレイシアの意見でなんの捻りもなかった。そして僕はそんなに前面に出たくはないぞ。結構賛成者は多かったけれど、却下させてもらう。

 「それならホーラックス王国でいいのでは?」

 そう言ったのはメリアスで、僕の右腕であるホーラックスの名前を付けようと考えたのだと思うが・・・・・・

 「いや、別に名前には拘らなくていいぞ」

 「じゃあバグにゃんで」

 「ふざけているのか? そんなの却下だ」

 「確か日本とかの文化にそういう語尾があったと思うんだけど」

 イオルドがそんな事を言いつつも意見を取り下げる。こいつらセンスないな~ こうなれば神話とかの名前とか、そういう名前でも持って来るか? ウロボロスとかいろいろあるしね。

 「フォーレグスとかどうかな? こっちで言う希望の言葉をもじってみたんだが」

 そう意見を出して来たのは、メリアスの旦那のフィリオだった。希望か、いいんじゃないかな。初めてフィリオが役に立ったと思ったよ。

 「よし、じゃあこの国はフォーレグス王国と名乗る事にしよう」

 後は身分証だが、カードにすると動物型のモンスターが出し入れするとか大変だろうから、魔法的なものにしてみようと考えを改める。こちらが身分証を求めたり、お互いが味方かどうかを確認したい時に浮かび上がるようにしてみればいいかもしれないな。ちょっとそんな感じの魔法を考えてみよう。

 イメージとしてはカード型の半透明なウィンドウが目の前に浮かび上がればいいかなって考えている。後はこの魔法の効果は自国内だけにしておく予定だ。他所の国に行ったら、またルールが変わるからね。


 以前ステータスの魔法を考えた時の事を想い出し、それを少し改良する感じで魔法をアレンジしていると、司書パペットから報告が来た。

 『バグ様、街中で乱闘騒ぎが発生しています』

 「規模はどれくらいだ?」

 『五十体くらいのモンスターが、暴れているようです』

 多目的シートを広げると町の地図を描き出す。そこに問題の乱闘騒ぎの位置が表示された。

 「レイシア、乱闘騒ぎが起こったので一緒に来てくれ」

 授業中だったけれど、念の為にレイシアと一緒に現場に向おうと教室に入って行った。こっちがピリピリしていたからか、教室に入って来た僕に対して、ゴブリンは攻撃しようって意識はなかったみたいだね。それとも、段々と理解してきたかな?

 とにかく現地へと飛ぶと、無詠唱で魔法を展開する。

 (スパイダーネット)

 野次馬も巻き込んで、ここら一体のモンスターが糸にからめとられる。一時的に暴れるのは収まるけれど、まだもがいているモンスターだらけで興奮していることがわかる。

 一度大人しくさせる為に周囲に殺気を放つと、さすがにみんな大人しくなったようだった。

 「レイシア、悪いのだが何が原因なのか、聞いてくれないか?」

 「わかった」

 全員が大人しくなったので、とりあえず糸の魔法を解除して暴れた者を一箇所に集める。レイシアが事情を聴いて回っている間、こっちは逃げたり暴れたりしないよう監視しつつ、魔法開発をさせてもらうことにした。

 それにしてもモンスターと人間だけじゃなく、モンスター同士でも争いが絶えないものだな~ ここまで大規模な乱闘は早々起こらないものの少人数での争いは、毎日のように起こっていた。

 まあいきなり連れてこられて、一緒に生活させられれば問題が起きても仕方ないとは思うけれど、早く馴染んで欲しいものだな。町での生活になれば、食事で争うこともなくなったり外敵に怯えて過ごすような生活もしなくてよくなる。まあ、今は毎日のように争いが起きているので外敵って話は実感できないと思うが、いずれは町に住んでいる者達が争う事無く暮らして行ける環境になれば嬉しいと思う。

 まだ、お金のシステムも十分理解されていないだろうから、まだまだ難しい話だけれどね。

 「バグ、どうやら縄張り争いで、喧嘩になったみたいだよ」

 「縄張り? 街中でそんなもの作られてもな~ 町で自分だけの場所は自分の家だけだって伝えてくれないか?」

 「わかった」

 やっぱり環境の違いなど、まだまだ教えていく事が多そうだ・・・・・・


 みんなが仲良くっていうのは難しいものだ。

 元々モンスターは同族くらいしか信用しないか、殆どが単独で活動している者しかいないので、こんなにごちゃごちゃといろいろな種族がいる状況は今までにありえなかっただろう。

 そこで、レクリエーションでもして一体感を味わってもらおうと考えてみる。ただやれって言っただけでは参加してもらえないかと思い、参加者には美味しいデザートを用意して何気に餌付けを狙ってみた。

 結果的にはゲームに参加している間はちょっとだけ仲が良さそうにしていたし、デザートを嬉しそうに食べたりしていたので、こういう方法もありだと思われる。餌で釣る感じで、お互いの種族を気にしない方向に意識を持っていければ何とか軌道に乗りそうな気がするな~

 眷族達にも指示してこういうイベントをしばらくやってもらう事にしよう。こういう積み重ねで仲間意識などができれば、上手く付き合っていけると考える。それか、お互いに干渉しない距離みたいなものを学んでくれれば、争う事もなくなっていくだろう。


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