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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十七章  新婚生活
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ドラゴンからの依頼

 何回か異世界転移を繰り返すことで、時間の経過に関する仮説を考え付いた。当初は日本とこちらの世界で流れている時間の流れが違うと考えていたのだけれど、どうやら時間の流れる速さは同じだと思われる。

 もっともそれが正しいとは言い切れないけれど、とりあえず日本から買って来た時計を見てみると、多分どっちも同じ一秒は一秒だと思える。

 では何故時間に差が出ているのかという話になるのだが、おそらく転移する時に時間の概念が入るからだと考えられた。つまり転移する時にどの時間軸へ飛びたいのかを指定して飛べば、大体その辺りの時間に転移することが出来ると考えられる。下手をすればタイムパラドックスが発生しそうなので、ちょっと自分が二人いるところを確認してみようかと思い、転移しようとしてみると、転移魔法が不発に終わった。

 別に接触しようとか考えていた訳ではなかったのだけれどね。

 とにかく時間の逆行が出来ないのか、あるいは既に飛んだ時間軸にはいけないのか、過去に行くことは出来ないみたいだった。逆に考えれば、タイムパラドックスが発生しないのなら、好きに転移していいって感じで受け止めておけばいいかもしれないな。


 まあそんな考察をしながらのんびりしていると、司書パペットが情報を持って来た。何か厄介事でも起こったのかな?

 多目的シートを確認しつつ、情報を集めるパペットが喋れないっていうのも、今さらだけれど不便だなって考え念話の指輪を作って司書パペットに渡す事にした。

 まあ情報は見て確認した方が、正確だろうからこれはこれでいいのだが、短い情報なら直接言ってもらった方が便利な事もあるだろうからね~。時に情報は速さを求める。

 それより情報の内容だったな。えっとまずはゴールドドラゴンから接触があって話がしたいみたいだな。ドラゴンは知能が高いので、まあ話し合いとかは出来るかもしれないけれどよくこちらの事がわかったなって考えると同時に、何の用事があるのだ? っと不思議に思った。まあレイシアが意思疎通出来るので一緒に話を聞きに行けばいいかな?

 後ロップソンの情報も乗っているな。いろいろと魔道具を開発しているらしくて、段々と名前が売れ出しているようだった。今は医療系の発明が元であちこち騒がれているみたいだ。

 こいつ、あまり派手に動き過ぎるとそのうちに誘拐とかされるぞ・・・・・・まあそうなったとしたら自業自得と言えるのだけれど、巻き込まれる幸は可哀想かもしれないな。そして最悪ロップソンが死んだら、何の為にこちらまでやって来たのかって話になりそうだ。

 パペットに何かしら騒動に巻き込まれないように監視を強化してもらっておくかな。自力で解決出来ればそれでいいが、こっちで助けなければいけない場合は幸だけでも保護する準備をしないといけないな。


 さてあっちは置いておくとして、まずはゴールドドラゴンと接触してみるか。

 「レイシア、ちょっとドラゴン達と話し合いをしたいので通訳頼めるか?」

 「うん。任せて!」

 横で一緒に情報を見ていたレイシアに確認してみると、わかっているって感じで返事してくれる。それでも、ドラゴンの方は人間を連れて行って平気なのかな? というか、こっちをどう認識しているのかな?

 詳しいことは聞いてみないとなんとも言えないな。

 僕達は対話をしたがっているというドラゴン達の所へと早速転移した。

 どうやら情報を集めていた、鳥型のパペットがドラゴン達に接触していたみたいだな。

 転移でやって来た僕達を見て、ドラゴン達はかなり警戒している様子。上手く話し合いとかって出来るものなんだろうか?

 「レイシア、とりあえず話し合いに来たって言ってもらえるかな?」

 「うん。ちょっと待ってね」

 そう言うとレイシアがドラゴン達の方を向くのだけれど、特に話しかけたりはしていないな。念話の類かな?

 それにしても、やって来たのが人間だとわかって、あてが外れたって感じなのか随分警戒されていそうだ。同じモンスターって考えていたのかもしれないな。

 何かしらのやり取りをしているのは、そこにいたドラゴン達の動きを見ていればわかる。多少戸惑った感じはするけれど、おそらくリーダー的なドラゴンが後ろからやって来た。

 なんとなく見覚えのある若いドラゴンもいて、それで気が付く・・・・・・ここは前に素材としてエンシェントドラゴンを捕まえに来たドラゴンの集落だな・・・・・・

 あの時の若いドラゴンは、僕達を威嚇して唸っているのが見えた。微妙に震えているので、威嚇してはいるが怖がっているのも理解出来た。まあそれでも、対話を求めたのはそちらなのだから、せめて巣の中にでも隠しておいて欲しいものだな。

 「レイシア、僕らに話しかけて来た用件は聞けるか?」

 「それなんだけど・・・・・・どうもドラゴン達も困惑しているからちょっと要領を得なくって。何か最近人間が強くなり過ぎているっていうのと、安心して生活出来る場所が欲しいみたいなことはわかったんだけれど・・・・・・」

 「つまりは、僕らに保護を求めているって事か?」

 「近いけど違うみたい」

 「近い? 人間を倒して欲しいとか?」

 「今度は遠くなったかな」

 「そうなると、こっちの下に付く気はないが、安全な場所を用意しろ事かな?」

 「あ、そんな感じだって」

 安全な場所ね~。魔王軍の生き残りみたいな感じで、こっちの拠点にでも来たいって事か? あいつらも段々農業とか覚えて、いずれは自分達で生活できるようにしていくつもりなのだがな・・・・・・

 まあようするに人間の来ないような場所で暮らしたいとか、そんな感じなのだろうが何故それを僕にやれっていうのかがわからんな。考えてもわからないので、聞いてみるか。

 「僕にそれを要求する意図を知りたいのだが・・・・・・」

 「えっと、以前ここに来た羽の生えた人間の女性と似た魔力をこの鳥のパペットから感じたから、族長を捧げた自分達の今後を助ける義務があるって言ってる」

 あー、こいつらもあの時の事を覚えていて、責任を取れって言っているのだな。そういう事なら仕方ないかもしれないな。これは僕に生贄として族長を差し出した対価と考えればいいかもしれない。

 「じゃあこちらに受け入れ準備が出来るまでは待ってくれって言ってくれるか?」

 「わかったって言ってる」

 一度拠点に戻って、考えをまとめることにしよう。

 「一度拠点に戻るよ」

 「うん」

 そう声をかけて、拠点へと転移した。


 リビングでお茶を飲みながらとりあえずレイシアと今後の事を話し合うことにする。話しているうちに、いい方針が思い浮かぶかもしれないしね。

 「今ここの地下には魔王軍の生き残りのモンスターもいるのだが、こっちだと窮屈そうだったよな?」

 「そうね。魔王軍の地下よりも狭かったし」

 「別に拡張すればいいだけだろうが、せっかくなら広いところでのびのびと暮らして行ける様にしたいし、そろそろ自分達で生活して行けるようにしたいのと、ドラゴン達は僕に養われたいって訳じゃないのだろうと思う」

 「うん、保護とかはいらないって感じだったね。自然な形っていうのかな? 自分達の事は自分達で出来るってプライドみたいなものがあった感じかな?」

 「あー、それが近いか。そうすると、地下を拡張してドラゴンを受け入れる以外の方法を考えないといけないよな~」

 何かいいアイデアはないものかと多目的シートで情報を見てみると、また馬鹿な連中の事が書かれていた。ファクトプス国から来た旅行者が、マグレイア国で暴れたって情報だった。被害などはそんなになかったみたいで直ぐに鎮圧されたようだが、こまごまとした問題は多いらしい。

 王族や悪徳貴族は排除したのに、意味がないのか?

 そうすると国民全体が選民意識に支配されているとか、元々が暴力的な人種って感じなのかな? 魔王軍を名乗っていた時に、全般的に潰しておくべきだったかな。ドラゴン達の対応もあるのに、面倒事ばかり増えて行くよ。

 それによく見ると、フラムイスト国も絡んでいるな。あの王子、やっぱり生かしておくべきじゃなかったのだろうか?

 僕がその情報を見付けて不機嫌になっていると、レイシアも同じ情報を見て言って来た。

 「魔王軍のドサクサに、何とかしておけばよかったね。いっそのことバグが支配しちゃう?」

 「僕は王様ってガラじゃないからな~」

 「王様ならホーラックスに任せたらいいよ。案外いい王様になりそうだしね」

 「主が望むなら、任せるがいい」

 おう。いきなり現れたと思ったら、ホーラックスがやる気満々って感じでそんな事を言って来た。こいつのやる気って、支配する気満々ってことか? でも、ホーラックスを中心にしたモンスターの王国か・・・・・・なるほど案外そういうのもわるくない気がするな~

 ファクトプス国とフラムイスト国を繋げた感じの周辺地形を確認してみる。領土的にはかなり広大で、ドラゴン達が余裕で走り回れる程広く、山や森、川なども豊富にありそうなことが確認出来る。まあ人間の町や村なんかもあちこちに点在しているけれどね。

 モンスターの国を造るっていうのも、案外いいのかもしれないな。


 問題があるとするのなら、そんな国を造ったら魔王軍再来って周辺の国から攻めて来られることだろうか?

 「うーん。モンスターの国を造っても、また勇者とかが攻めて来たら厄介だな」

 「でも、今度は全力で潰したらいいんじゃないの?」

 「そうしたいところだが、あいつらはいずれ必要な駒らしいから排除は出来ない。・・・・・・魔王様みたいに眠らせたらいいのか」

 「それよ! 今度も邪魔するなら封印しちゃえばいいよ」

 「封印か・・・・・・なるほど、いいかもしれないな」

 じゃあ現実的にこの二つの国を使って、モンスターの国を造るという方向で考えてみるか。問題は元々住んでいる人間をどうするかって感じかな? 共存してくれるのなら、そのままでもいいだろうがまず無理だと考える。

 襲って来るのなら返り討ちって感じでいいと思うけれど、まずはお互いに争うなって言い聞かせる感じかな?

 「ホーラックス、人間との共存は出来そうか?」

 「我らに問題はない。既にやつらは人間に慣れたようだからな。だが襲って来るなら再び襲うようになるだろう」

 「まあ、やられっぱなしになるほど、お人よしではないだろうな」

 「その通りだ」

 それじゃあ、この二つの国にはモンスターと共存出来るかの実験に付き合ってもらうとするかな~。それと国にするのなら、人間を襲わないモンスターに教育して行く必要があるか。今はごく一部って感じだしな。

 「レイシア、生き残りのモンスター達に生活するならどんなところで暮らしたいのか聞いて来てくれるか? 森が良いとか、山が良いとか好みがあるだろうからな」

 「うん。聞いて来るね」

 早速聞きに行ってくれる。人間なら町を造ればいいけれど、あいつらだと町を造るとかえって窮屈に感じそうだしな。

 人間を襲わないように躾けるモンスターの学校とかも必要になるかな? 自衛の為の戦闘はいいが、こっちから襲い掛からないように教育はして行きたい。

 それとある程度、モンスターの国という名目なら人も入り混じった町のようなものは造って行きたいところだな。まあ、あいつらの希望に合っていればの話だけれどね・・・・・・


 レイシアがモンスター達の話しを聞いて来てくれたので、その要望を取り入れたモンスターの国を造って行くことにした。まずは二つの国から人間が出て行かないように結界を張らせてもらい、人知れずいくつかモンスターの町を造ることにする。

 ここでの結界は、以前のような他国の人間が入らないようにと張ったやつとは逆に、二つの国の国民でモンスターに対して反感を持っている者が、他所の国に行くことが出来ない結界である。誠に勝手ながら、ファクトプス国とフラムイスト国はモンスター王国の領土と定めさせてもらい、その両国の国境に沿って結界を張らせてもらった。

 ちなみに、モンスターに偏見などないような人間は通過可能にしてある。後は他国からの人間も、同様に通過可能にしてある。まあ、こっちに入って来てモンスターの町に対して問題行動を起す者は残念ながらモンスター王国から出さないように考えてあるけれどね。

 わざわざやって来て、問題を起す自称勇者か正義の味方みたいな者には、容赦する気はないな~

 さて後はモンスターの町だが、こちらはそれぞれのモンスターがある程度集まって暮らして行く町になるので、昔に人間の町を造った時のように手を貸して直ぐ生活出来るように馴染む町を造って行くことにする。

 まずは人間の町を造り変えるのではなく条件に合った場所にゼロから造って行く。

 そして基礎になるその場所にホーラックスが治める国の象徴となる城と、野良モンスターを教育する為の学校を建てて行く。まずは少しずつと考えているのだけれど、両国内に存在しているモンスターを捕まえて、人間を襲わないように調教しモンスターの町で暮らして行くように指導して行こうと考えている。

 まあ町の生活が苦手なやつもいるだろうから、そういう者には自由に国内を旅をして回っているって考えておけばいいだろうが、少なくともこのモンスター王国では人間を襲わないように指導して行こう。それからドラゴン達のように、逆にモンスター王国で過ごして行きたい者の受け入れ態勢かな。


 「じゃあまずはホーラックス。ここにお前の趣味で構わんから城を建てろ。城下町は大体こんな感じに考えている」

 「主よ、了解した。始めて構わぬか?」

 「ああ、城下町はまだこれから配置などを考えるから、先にパペットを使って建ててくれ」

 「では早速やらせてもらおう」

 早速多目的シートで示した場所に跳んで行った。ホーラックスはやっぱり魔王っぽい城を造るのかな? 案外城の形をしたダンジョンみたいにするかもしれないな。完成したら見学に行ってみよう。

 「じゃあレイシアは一緒に町の配置を考えるぞ。規模は百万人規模の都市にする」

 「百万! そんなに大きくするの? あ、ジャイアントとかドラゴンがいるから、大きくしないといけないんだね」

 「いや、巨大種区画としてあいつらに合わせた町に造るから、そっちはそっちで普通に巨人サイズにするが、百万人が住める規模にする予定だ。ただ実際に百万人が暮らすかは、わからないけれどそれくらいの規模で始めるって事だ」

 「巨大種とかがいるんじゃあ、食料とか凄く大変だね」

 まあそこはかなり大変だろうし、直ぐにどうこう出来るものじゃないと考えているのだが、二ヶ国内にいるモンスターの数から行けば、それでも足りないのではって思う規模の町なのだと予想している。

 ここは様子を見て何回かに分けて進めていかないとだな~

 失敗した時の事も考えておかないといけないな。

 「とりあえずは、教育次第で共存出来そうな者から学校に通わせて、指導して行くぞ。最終的には、モンスター王国内に限れば人とモンスターが隣を歩いていても、普通に挨拶するくらいになれば成功だ」

 「それは難しそうだけど、そんな国に出来たら素敵だね」

 「まあ、そうだな。今直ぐじゃなくて何十年先の目標と思えばいいよ」

 「そんなに未来の話なんだね。がんばってみる!」

 一応僕の目標は伝えたので、手の空いているパペットや眷族も集めて町の配置などを考えて行く。イオルドの意見は人間の町でいろいろと経験していたおかげで、かなり役に立つ。ほんと何事も経験だって思ったよ。

 「後、ドラゴンやジャイアント種はとにかく肉を食うので、畜産場はかなり大規模にしてもらいたいな。それだけじゃなくてなるべく畜産場は隠してもらった方がいいかと思う」

 「見えていると襲われるか?」

 「教育が進めば大丈夫でしょうが、初めは見たら食べに来るかも。繁殖して増えてもらわなければいけないところを襲われれば、あっという間に町として機能しなくなると思う」

 ふむ、やはりイオルドの経験と、モンスターの知識は役に立つな。畜産場は町の地下に作ってみるかな。人間の町とは違う町になりそうだ。まあ初めからわかりきっていたことだけれどね~

 ある程度の配置というのか、どんな感じで建物を建てて行くのかを決めた後、実際にみんなで現地へと跳んで下見してみることにした。パペットも、モンスター姿の眷族なども連れて来ていたが、ここはモンスターの国にする予定でいるので隠れずに堂々と視察する。

 人間サイズの者の町並みの方は、これといって問題はなさそうな感じだな。問題がありそうなところはやはり巨人種とか獣型などの人型と違うモンスター達の区画。実際に彼らじゃなければ気が付かない事もありそうだと判断して、レイシアにいろいろなモンスターを召喚してもらって住みやすい町並みなどを教えてもらいながら、配置や建物の大きさなど決めていった。

 召喚魔法、戦闘以外でも役に立つな~

 まあ本来の使い方とかけ離れているだろうけれどね・・・・・・


 こちらが町の大体の配置を決めてこんなものかなって考えていると、念話による報告が入って来た。

 『バグ様、今よろしいでしょうか?』

 あれ? おそらく自分の眷族だろうがこんな声のやつはいたか? それに声からすると女性だろうが、こんな子は創った覚えがないな・・・・・・

 「ああ、大丈夫だが・・・・・・」

 『では、バグ様の同郷の娘で幸とかいわれる者が過ごしている家に、賊が侵入しようとしています。いかがいたしましょうか?』

 その内容にビックリしてそれとともに理解出来た。これは司書パペットに渡した、念話出来る指輪による通信じゃないかってね。

 まあそれよりも幸の保護の方が優先か。幸の為に作った装備を通じて周囲の状況を確認してみると、ロップソンと一緒に熟睡中な様子だな。でもって、渡した装備は全て外されている様子。これじゃあ無防備過ぎる・・・・・・

 とりあえず拠点に一般客用に造った部屋があるので、幸を装備ごと転送させてもらう事にした。

 これで幸の方は問題なくなったけれど、この後ロップソンとやらが死んでしまっては幸に恨まれる可能性があるよな~ 何で助けてくれなかったのかって言われそうだけれど、こっちとしては自業自得って感じだ。

 まあそれでも借りを一つ作っておくのも、いいかもしれない。

 パペットにロップソンのパーティーメンバー全員の安否を確認するよう指示を出して、ロップソンの所へと転移する。

 「誰だ!」

 おー、さすが冒険者・・・・・・寝ていても気配に気が付いたって感じだろうか? そして素早く周囲の状況を確認したようで幸がいない事にも気が付いたみたいで、こちらを凄い顔して睨み付けて来た。

 「どうせ気が付いて起きるのなら、もう少し早く起きて欲しいものだが・・・・・・とりあえず幸の安全は確保させてもらった」

 『バグ様、指示通り確認したところ、賊が確認できました。いかがいたしましょうか?』

 「レイシアと眷族にそれぞれ対処をお願い出来るか? 隣の家にも確か仲間がいたと思うがそっちはこちらで対処しよう」

 『わかりました。指示を出しておきます』

 「頼む」

 「誰と話している!」

 こっちが指示を出していると、ロップソンが敵意の混じった視線で睨んで来る。まあ、状況が理解出来ていないから仕方ないのかもしれないけれど、幸も実際にいないしいちいち説明している暇もないかな?

 「マインドブロー」

 目の前のロップソンが、こちらの使った魔法に反応してビクリと身構えていたが、魔法の効果は当然賊に向けて放たれたもので、ロップソン自身には何も被害はないものだった。


 「ロップソン! 無事か!」

 しばらくしたら、そう慌てた声を上げて確か、ジャドといったか? ロップソンの仲間が家に突入して来たみたいだった。急いでいたのか防具の類は身に着けていなくて、手に剣と盾だけを装備しているみたいだ。

 『バグ、こっちは問題なく賊を排除したよ~』

 『バグ様、こっちは問題なく賊を捕らえた。こいつらはどうしたらいい?』

 レイシアに続いてイオルドからも連絡が来る。レイシアは生け捕りじゃなくて殺しちゃったのかな?

 「レイシア、賊は死んだか?」

 『あ、ごめん生け捕りの方がよかったよね・・・・・・』

 「まあ情報を引き出すなら生きていた方が良いが、別に死んだのならそれでも構わんぞ。他にも捕らえているしな」

 『ごめんね』

 「まあ気にするな」

 こちらが会話している間、ジャドとやらはこちらを警戒しながらロップソンの安否を確認している。

 「イオルド、賊は集めて持っている情報を全部吐かせてくれ。以前看守として創ったブリクトンなら、情報を引き出せると思う。そうだな、そいつらにはこちらの実験にも使えるかもしれないから監獄を町の隣にでも建ててそこに入れておいてくれるか?」

 『わかりました』

 『バグ様、こちらも捕獲に成功しました。イオルドと合流して、情報を集めればいいですね?』

 『こちらも問題なく対処した。おそらく襲撃は全て防げたよ』

 うーん、この声は魔王軍でモンスターの管理をしてくれていたリースと、雑用をしてくれていたビルトフォックだな。パーティー全員に襲撃ってことは、やっぱり組織的に動いているところがありそうだ。

 「全員イオルドに合流して、情報を集めておいてくれ。レイシア、悪いが死体も町の方に運んでおいてくれるか?」

 『了解です』『わかりました』

 『証拠隠滅?』

 「まあそれもあるかな、情報がそろっていないからまだ相手を刺激しないようにしたい」

 『そうだね、わかった』

 こちらのやり取りが終わるまで待っていたのか、ジャドが話しかけて来た。

 「それで、お前は何者なんだ? 敵って訳ではないのだろう?」

 「まあ、僕が敵なら今頃お前らは死体になっているだろうな。それよりリーダーなら仲間の安全くらい確認したらどうかと考えるがな」

 そう言うとジャドは慌てて仲間のところへと向ったみたいだった。とりあえずはロップソンに危険は無いと判断したのだろう。あ、こっちの精神力を吹き飛ばして倒れている賊からも、情報を集めないとだったな。イオルドの位置を確認して、そこに転移させておこう。

 ロップソンはまだこちらに対して警戒をやめていないみたい。幸がいないままだから、当然かな?


 「幸、起きたか?」

 『あ、はい。いったい何が? ここって確か、レイシアさんの家ですよね?』

 「とりあえず仲間と合流させるので着替えろ」

 『わかりました』

 「幸は無事なんだな!」

 丁度幸が起きたみたいなので、話していると幸の名前が聞こえたのか、ロップソンが大声を上げた。

 「直ぐに合流出来る、いちいち騒ぐな」

 しばらくそのまま対面していると、幸がら連絡が来る。

 『バグ君、着替え終わりましたよ』

 合図も来たことなので早速幸をこちらへと転送させると、ロップソンが幸を確認して飛び付いていた。そんなに心配ならもう少し安全には気を付けろよって言いたい。

 まあそれに関しては僕としても装備を全て外されたら意味がないことを思い知ったけれどね。

 そうだな、寝る時に邪魔にならない指輪で、危険が迫ると自動で装備を着る魔道具っていう物を作るといいかもしれないかな?

 「幸、この指輪をいつでも身に着けておけ。危険が迫ったら自動で装備を身にまとうようにしてみた」

 「ありがとう、バグ君」

 ロップソンに抱きつかれたまま手を伸ばして、僕からの指輪を受け取った幸は、早速それを身に着けた。

 「魔道具・・・・・・お前が発明王か?」

 「ロップソン、いろいろお世話になっているんだから、あまり失礼なことは言わないでね」

 幸がお前よばりは失礼だと思ったのか、ロップソンにそう言っていた。

 「ああ、これは失礼しました。今までいろいろ幸がお世話になりました。それと今回まだ何があったのかわかりませんが、助けていただいたようでありがとうございます」

 おー、僕は敬語とか苦手だからあまり言葉を変えないけれど、ロップソンは危険がないとわかったみたいで、丁寧な対応に切り替えたみたいだね。

 「まあ、構わんよ。そんなに幸が大事ならさっさと結婚してしっかり守れよって言いたいがな」

 「っ! 余計なお世話だ」

 「バグ君ったら・・・・・・」

 二人して顔を真っ赤にして照れていた。

 「幸、何ならこちらで日本式の結婚式を準備してもいいぞ。サフィーリア神は結構お茶目な性格みたいだから、日本式の結婚式を挙げても、こちらの祝福をくれるみたいだ。まとめて祝えるぞ」

 「あ、じゃあその時はお願いしてもいいかな?」

 「ああ、問題はどこで結婚式をするかだろうが、ロップソンがはっきりしなければどこで式を挙げるとか、決められんか」

 そう言ってロップソンを見てみると、幸も一緒になってロップソンを見詰めた。幸もそろそろいい年齢だし、こっちにも大分慣れて来たのでいい加減、ロップソンからのプロポーズを待っていたのかもしれないね。

 「じゃあ、幸・・・・・・」

 「ここでプロポーズとか、さすがにムードも何もないと思うがな」

 「ぐっ!」

 いきなりプロポーズとか、さすがに幸が可哀想だと思って素早くそう言うと、図星だったようで言葉に詰まる。幸は苦笑いしているようだったが、それでも嬉しそうに微笑んでいた。


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