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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十六章  生まれ変わり
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モンスターの意識改革

 いくつか素材集めの為にギルドの依頼を受けて戻って来ると、生き残りのモンスターが勝手に畑を広げているのがわかった。指定されていないところを耕かされて、何でって思っていると・・・・・・

 「なんか暇を持て余していたみたいで、仕事をしたら喜ばれたから、もっともっとってやっていたみたい」

 スキルで意思疎通が使えるレイシアが、モンスターの気持ちを教えてくれた。

 「さすがにやる事がなくて、暇だったのか・・・・・・じゃあ、いろいろやれそうな仕事を探して教えてみるかな・・・・・・」

 どこまでやってもらえるかはわからないけれど、やって欲しい事のリストを作って暇になったらどれかを手伝ってもらうようにしよう。

 今回好き勝手に耕された部分は、お試しにモンスターの待機しているところで、自分達が食べる分の食料を作る為の場所だったので、予定していた畑を拡張する形で生かして行くことにする。後はそこまで複雑ではない作業として、水遣りとか雑草とかを燃やして肥料にするとか、思い付く仕事をリストアップしていくけれど、ドラゴンとかに出来る仕事って考えると中々難しいな~

 そういえばホムンクルスも生き残っているみたいだから、畑仕事を教えてモンスター達の作業を見てもらえばいいかもしれないな。彼らに難しい繊細な作業は、ホムンクルスに任せるのもいいかもしれない。

 農業をやらせるのはきついかなって思っていたのだけれど、意外と何とかなりそうだな。

 せっかくモンスター達もやる気になっているようなので、駄目元で職業訓練所みたいな学校を造ってみることにした。それと生産自体が向かないやつもいるだろうし、スポーツを教える方向で部活のようなものを作ってそっちも教えて行くことにする。

 どいつがどの授業を受けて、どんな評価を受けたかを記録していって、その経過次第でいろいろとやらせてみるのも楽しそうだなって考えた。

 レイシアも学校には興味があるみたいなので、一緒に通っても構わないよって言ってみると、せっかくだから通ってみる事にしたみたいだね。そして部活はダンスを習う部活を作っていた・・・・・・もちろん僕はその部活の講師に呼ばれる・・・・・・まあいいけれどね。

 ちなみにレイシアが習いに行った職業は裁縫で、どうやら縫いぐるみ作りが気に入ったみたい。せっかくなので僕も何か習おうかと考え、錬金術の授業を受ける事にした。鍛冶とか大工はなんとなく理解出来るけれど、錬金術は日本には無かった技術だから何が出来て、何が出来ないかなどいろいろと教えてもらっておこうかと思ったからだ。

 前も思っていたけれど理科の実験みたいなことをしたりして、結構面白いしね。まあ魔力を使わなければ調合、魔力を使えば錬金って感じの生産手段だと考えておけばよさそうだ。

 思わず学校が楽しくてのめり込んでいたけれど、そういえば進化の素材も集めなければいけなかったのを想い出し、レイシアにも手伝ってもらって十体分サクサクと集めて来た。

 アンデットの影響がレイシアにも出てしまうので、早速お願いして進化させてもらうと・・・・・・


 《名前 バグ  種族 ノーライフキング-魔人  職業 支配者

 LV 85-86  HP 3524-4438  SP 4007-4937

 力 235-384  耐久力 216-407  敏捷 191-364

  器用度 180-359  知力 258-655  精神 263-668

 属性 火 水 土 風 光 闇 生命 無 空間

 スキル 無詠唱 魔力向上 五重詠唱 状態耐性-完全耐性 罠察知 潜伏 待機魔法 自動回復(大)-完全回復 双爪撃 念話 危険感知 鉄壁 召喚モンスター 調合+鍛冶+木工+裁縫+細工+錬金+魔生物作製-万能製作 強打 守護 消費魔力減少 格闘向上 影渡り 追跡 強襲 人化 瞬殺 空間移動 合成魔法 吸収》


 無事に魔人になったな。ただ、神の方ではないし翼が無いので飛行能力は無いようだし、以前と比べるとステータスもやや低そうだった。生産の技術が統合されたのはいいけれど、どうも以前のようなその場で創り出す力は無いみたいだな~

 神では無くなった事で創造系のスキルでは無くなったって事かな?

 それともヴァルキリーを経由していないから駄目なのかもしれないな・・・・・・

 そこまで強さは求めていないとはいえ、以前のように闘えると思っているといろいろミスをしそうなので、そこだけは注意しておいた方がよさそうだ。

 あ、アンデットじゃなくなったから、レイシアも種族は魔人になったのかな? ついでにレイシアのステータスも確認してみることにした。


 《名前 レイシア  種族 死人-魔人  職業 魂術師

 LV 91-92  HP 685-697  SP 1328-1394

 力 53  耐久力 49-50  敏捷 80

  器用度 87-88  知力 177-179  精神 153-154

 属性 火 水 土 風 光 闇 生命

 スキル 錬金術 無詠唱 指揮官 万能召喚 調理 上位変換(無生物) 進化 拠点魔法陣 意思疎通 亜空間 待機魔法 強化 アルファントの加護 察知 嘘発見 植物操作 バグの魂 罠察知 祝福 念話 魔力向上 身体向上 自動回復 乙女の祈り 二重詠唱 バグの加護》


 無事に種族が元に戻ったようで、ちょっと安心した。これで回復してダメージを受ける事はなくなったという事で、ちょっとホッとする。

 さて、後は魔神に進化するだけだと思うけれど、一応死に別れる前に近い状態へと戻る事が出来たので、ここら辺りでけじめというべきかレイシアとの関係をしっかりと考えようと思う。

 まずはこの世界での結婚というものがどういったものなのか、情報を集めてもらう。

 日本だったら知り合いを呼んで結婚式を開いて指輪の交換と、役所に書類の提出になるのだけれど、この世界にそういう報告義務など無い気がする。それどころか、勝手に一緒に暮らして夫婦って感じがするのだよな~

 そうなると僕らはもう既にずっと一緒に暮らしている訳だから、レイシアが既に結婚したつもりでいるってパターンもあるので、結婚しようとか言ったら呆れられたり、今まで夫婦じゃないと考えていたのかって怒られたりするかもって思うと、やっぱり調べておく必要性を感じるよな~。まあそれもレイシアが夫婦になりたいかどうか次第だろうけれど。


 そんな事を考えながら情報が集まるのを待っていると、司書パペットがやって来た。

 お、情報が集まったみたいだ!

 早速ねぎらってから内容を見てみると、一応結婚を祝ったりするシステムはこの世界にもあるみたいだった。サフィーリア教が慈愛を司る神を信仰していて、そこで祝福を受けることで夫婦だと認められるのだそうだ。

 日本とかと違い、そこで指輪の交換とか友人を呼んで盛大な式をしたり、神父が何か誓いの儀式をしたりといった事はないみたいだね。その代わり、神の祝福を受ける時に祝福されないカップルも存在していて、その場合は結婚を認められないという話だった。

 まあ神に認められないからお付き合いをやめるといったことは、特に強制されないそうだけれど、貴族とかだと破談になることはよくあるのだそうだ。っていうかよく破談になるのか!

 権力で付き合わずに恋愛結婚しろよって意味じゃないのか?

 さて、僕らはどうすべきだろうか・・・・・・レイシアは僕の影響で魔人になっているだけだろうけれど、僕は正真正銘のモンスターに分類されるから、神様から祝福されるとは考えにくいのだけれど・・・・・・


 しばらくの間悩んでみたけれど、まずはお互いの想いを確認する事に決めた。祝福を受けるかどうかは、こういう時は女性の希望を聞くのが良いと思う。こういうイベントみたいなものを女性は大事にするって聞いたことがあるしね。

 「レイシア、話があるのだがいいかな?」

 「うん? 構わないよ」

 あ、そういえば女性はムードも大事とか言っていたか! じゃあいきなり告白とかはやめて、どこか出かけてみることにするか・・・・・・

 「どこか出かけたいところとかあるか?」

 「うーん・・・・・・特に無いかも・・・・・・バグの故郷とか?」

 「日本か」

 「前は慌しかったしね」

 「行くとなると、ロップソンが持っていた魔石が必要かな?」

 いや、今の魔力なら無くても行けるか? 実験しないとだな~。問題は向こうとこちらでは時間の流れ方が違うってことだな。

 レイシアが幸から聞いた情報だと、ロップソンは日本で四年以上暮らしていたそうだが、こちらでは一ヶ月程しか時間が経過していなかったようだ。とすると、日本の方が時間の流れが速いのか、転移する時にそれだけ時間に誤差が出るのか、どちらだろう?

 「別にどうしてもって話じゃないから、そんなに気にしないで」

 いろいろ考えていると、レイシアが心配になったのか、そう言って来た。

 「いや、いろいろ可能性を考えていただけだ。向こうに行くと時間がずれるみたいだからな」

 「そういえば、何か言っていたね」

 創造系のスキルがあれば腕時計とかストップウォッチなどを作れるのだがな~。まあ無いものは仕方ないので、砂時計でも作るかな。

 「ちょっと検証用に砂時計を作って来る」

 「いってらっしゃい」


 まったく同じ物を二つ用意しないといけないと考え、とりあえずパペットに作製をお願いする事にする。問題はどれくらいの時間の物を作るかだよな~。五分くらいとかは必要ないか? そう考えると一日とか、一週間とかがいいかもしれないな。

 まあ何かに使えるかもしれないので、五分くらいのものも注文して、三種類を二つずつ作ってもらう。

 完成するまで時間があるので、学校の様子でも見て来るかな? あ、ついでに指輪を作る為に細工の授業でも受けてこよう。

 レイシアを誘って早速学校へと向った。見た感じ、生き残りのモンスターの大半は学校へと通っているようで、その中で生産系を学んでいる者はごくわずかって感じかな? ほとんどはスポーツの方へと行ってしまって、その中でも夢中になっているのはサッカーのようだった。

 野球に興味がある者もいるようなのだが、ちまちまとするのが性に合わないって感じでサッカーの方が、人気がある感じだね。人数を数えてみると三チームくらいは作れそうだったので、顧問を勤める眷族にチーム分けをさせて試合をさせてみる事にした。

 生き残りのモンスター達は殆どがジャイアントやドラゴンなどの大型種だったので、サッカーのボールや試合のコートはそれに合わせた広さ大きさになっていて、見学する場所もそれに合わせた広さになっていた。

 僕はそこに作業に必要な道具を持って来て、試合を観戦しながら作業を開始する。お隣ではレイシアも必要な道具などを持ち寄って一緒に作業しながら試合を見学するみたいだった。

 僕達の他にも、試合を見る為に授業の道具をわざわざ持って来て観客席で授業を受けながら、試合が始まるのを待っているモンスターなどがいる。日本では考えられないけれど、結構自由度が広くてこういうのもいいな。

 そんな感じで苦手なデザインを指導してもらっていると、後ろから眷族のラグマイズが現れ、弁当売りが首から提げている立ち売り箱に、串焼きとジュースなどを入れて配りにやって来た。

 おー、何かこういうのもいいな。一度デザインの指導を脇に置き、せっかくなので一つずつもらって飲み食いする。いずれモンスター達にもお金の概念が出来れば、こういう飲み食いにお金を使うシステムを作って行きたいものだな。


 で、肝心のサッカーに関してはといえば、本来ゴールを守るべきキーパーまで揃ってボールに群がっていた。まあ、上から運動場を見ていると子犬がボールにじゃれているように見えて、これはこれで楽しんでいるのならルールなんてどうでもいいかと考える。実際観客自体、この何がそんなに楽しいのかわからないサッカーを見て、喜んでいたしね。

 その後レイシアはサッカーで遊んでいるモンスター達を微笑ましそうに見ていたけれど、僕はデザインの授業の方を教わりたまにしかサッカーを観戦してなかった。もうちょっとサッカーらしくパスとかして欲しかったし、それで無ければモンスターらしい曲芸的なビックリサッカーが見たかったとちょっと残念な気がする。

 それでも思い出したかのようにシュートが放たれた時は、ゴールが決まるかどうかが気になって見たりしていた。

 そんな感じで授業を受けていると、司書パペットがやって来る。この子が来たって事は何か緊急の用事でも出来たのかな? そう考えつつ多目的シートを広げて情報を見てみると、どうやら野菜などの販売を打診していた八つの国で、本契約を結びたいのでよろしくと言う話だった。

 緊急ではないものの、お金を稼ぐ為の大事な用件だったので、司書パペットに野菜や家具と工芸品の生産具合を確認してみる。野菜の方は直ぐに量産を始めたものの育つにはまだまだ時間がかかるみたいだけれど、家具と工芸品はどちらも直ぐ出荷可能だという報告だった。

 うーん。前なら時間を進めて収穫を早める事も出来たのだが、今はその魔法が使えない。空間に干渉する為のスキルを失ってしまったからな~。やっぱりのんびりと待ってもらうしかないかな・・・・・・それか成長してスキルを覚えるのに期待して経験値を集めるか?

 LVが上がったからって確実に時空干渉のスキルが手に入るとは限らないのが判断の難しいところだな。それより進化の方を優先すべきか? 魔神になれば使えなくなった能力が全部使えるようになるかもしれないしね。

 考えておこう。今は本契約だな・・・・・・


 前は水晶による通信システムを使っていたけれど、今回からは魔道具をなるべく使わないようにしたので、風魔法の伝達によりそれぞれの国と連絡を付けることにした。タイムラグがあってかなりじれったいけれど、今なら観戦しながらのんびりと話すにはもってこいかもしれないな。

 「バグだ、本契約について連絡する。野菜は量産体制が整ったが収穫までまだ時間がかかる為、それまで待ってもらいたい。家具や工芸品の類は直ぐにでも取引可能な状態だ。こちらの状況は以上だ」

 さて、のんびりと待つとするかな。サッカーは今のところどちらのチームも一点ずつ得点を入れているのだけれど、中々シュートする奴がいない。そんな試合を見ていると一分くらいして各国から反応が返って来た。

 まあ殆どは予想通りで、野菜が欲しかったって感じの内容だね。ちなみに今回は肉の取引は持ちかけていない。そっちは野菜以上に取引には時間が必要だからな~

 まあそれでも二つの国が取引したいと言って来たので、その二つの国には直接伺って本契約をすると返事をした。

 「レイシア、本契約をしに行くから、正装に着替えてくれるか?」

 「うん。わかった」

 僕は前に作ってもらったやつでいいかな? ちょっと派手な気がして恥ずかしく思うけれど、まああれもこちらの技術力がわかる服だしな。

 着替えてやって来たレイシアを連れて早速生徒がいる城の応接室に転移する。

 「応接室に到着したぞ」

 『あれ、もう来たんですか先生。直ぐ向いますので待っていてください』

 同じ城にいるのでわりと直ぐに返事が返って来た。そしてしばらく待っていると久しぶりに顔を見る生徒は、少し疲れた感じの表情をしてでやって来た。

 「ようこそワレスホルト国へ、歓迎しますよバグ先生、レイシア先生」

 「久しぶり、少し疲れているな」

 「ポルヌクツ君、久しぶりだね」

 「失礼します、国王陛下。そちらが国王陛下の仰られていた先生方ですか。失礼かと存じますが立ち合せてもらいます」

 「構わんよ」

 「よろしくお願いします」

 文官というより近衛騎士って感じかな? ポルヌクツの護衛として立ち会うって事だろう。と言うことは取引自体というか、交渉は国王にお任せって感じなのだろう。まあ邪魔さえしなければ問題は無いかな。

 「じゃあ早速だが、納品する品物はこちらが適当に持って来たものでいいのか、そちらである程度作って欲しいものがあるならそれを作らせるが、どちらがいい?」

 「選べるのでしたら、指定させてもらっても構いませんかね? 工芸品についてはお任せしますが、家具については箪笥と机をなるべくいろいろな種類で作ってもらいたいです」

 「わかった、それで数はどれくらいがいいかな?」

 「そうですね、手始めなので工芸品が二十品。箪笥を百台、机を五十台お願いします」

 「それは見本みたいなものと考えていいのかな?」

 「そうですね、そう考えてもらえればいいかと」

 「それならば材質なども、木や石などで作ることにしよう。納品は明後日で構わないかな?」

 「そんなに直ぐ用意出来る物なんですか?」

 「こっちは野菜と違って育てる訳じゃないからな。デザインとか加工の手間はかかるが、まあ大丈夫だろう。それよりそれだけの物を運び込む場所を教えてくれるか?」

 「あ、そうですね、では契約書を書いた後で案内させますね」

 契約内容は、収める事になる品々についてとその代金は後日双方の納得出来る金額を提示することというもので簡単に書き込んでお互いの名前を書き込み、それぞれ同じ内容の物を受け取る。

 納品する場所は、やって来たメイドに案内してもらい確認した後、次の国へと移動することにした。


 もう一つの国は、オークスウッド国で国王である生徒の名前はフレスクリンドといった。

 契約の内容事態は似たようなものだったけれど、こっちの要望は統一された家具で、箪笥や机以外にも椅子やテーブル、棚や食器類なども頼まれる事になった。こっちは数が多いので一週間後の納品にしてもらって契約書を作ると拠点へと帰って来る。

 工房を覗いてみると、既にパペットと眷族が生産活動を開始していてとても生き生きと仕事をしているのがわかった。

 「出来上がった物を絵柄付きのリストにしてメニューを作成してくれ」

 司書パペットにパンフレットになるメニューを作成してもらって一応後は待つだけって感じになる。これで次からどれが欲しいか簡単に発注出来るようにするのだ。

 後は、個別に簡単な設計図とかも欲しいかな? 寸法やデザインの変更を受け付けたりする為の物を準備させれば、対応はばっちりになるかと思う。後数字で大きさを書いてもわかりにくいだろうから設計図の隅に紐を付けて、その長さで縦横と高さがわかるようにしておくように指示を出しておく。

 うーん、他の国にもこういうものを用意しておけばよかったかもしれないな。時間がある時にこういう資料作りを頼んでおこう。


 それらをそろえた後第一便の納品を終え、それぞれの値段もお互いに納得出来る値段になるよう話し合って決めて資料としてまとめる。出来た物を再び八つの国に受注を受け付けていますよと送り付けると、注文が殺到した。

 おかげでパペット達は一杯働けると喜び、僕は商品が売れたおかげで想定以上の金額を稼ぐ事が出来たので満足した。

 まあ家具は一度買われると早々注文は入らないので、一時的な収入だけれどね。工芸品は趣味の人がいるので、物によっては常に売れるだろう。ただし、購入頻度は低いかな。こっちは臨時収入狙いって感じだろう。

 そんな訳で野菜の販売が一番安定した収入になると思えるので、早く収穫できないかなって期待している。

 案外魔道具無しでも稼げるものだね~。ただしでかくは儲けられないので、数を売らなければいけないけれど・・・・・・

 別にお金に困っていた訳ではないけれど、無事にお金稼ぎが出来て上機嫌で生活していた。実際僕らが生活して行くうえで銅貨一枚すら使うことは無かったのだけれど、やっぱりお金を一杯稼げると嬉しいものだね~

 昔は金貨千枚とか必要になった時とかもあったので、不測の事態に備えて一定のお金は持っていたいと考えていたのだけれど、この分ならそれ程時間をかける事無く千枚は貯める事が出来そうだ。


 数日後、学校で眷族にワルツを演奏させてレイシアにダンスを指導していると、また司書パペットがやって来たのがわかった。この一曲が終わるのを待ってもらって情報を確認してみると、どうやらポルヌクツがいるワレスホルト国で伝染病が発生して、対処出来ないので助けて欲しいという内容だった。

 「ポルヌクツか、詳しい内容を教えてくれ」

 ダンスを中止して、風魔法の伝達で状況を確認する。こういう時の連絡で時間差があると、イライラするよな・・・・・・

 一分という長く感じる時間を辛抱して待っていると、連絡がやって来た。

 『えっと伝染病は空気感染らしく、ほぼ国全体に広がっているみたいです。子供や赤ん坊に老人など体力の無い者が既に何人か死亡していて、神殿などに治療をお願いした者もいたようですが病状が逆に進行したとの報告があります。王宮にいる調合師に対策をお願いしているのですが、今のところ何の対策も打てない状態です』

 また魔法が使えないパターンの病気か・・・・・・とりあえずどんな病原菌かを調べなければ対処のしようが無いな。レイシアは病気に対しての耐性スキルが無いから、とりあえず僕だけで調べに行ってワクチンの開発をするのがいいかな? 確か以前作った魔道具があったはず・・・・・・

 レイシアにも手伝ってもらって、魔道具を探し出すと早速病状を確認して、魔道具を使ってワクチンを作る為の情報を集める。

 調べてわかったことは、以前のように保菌者を特定する必要が無さそうだということ。この病気なら薬草を集めて、調合により薬を作れば大丈夫そうだと判断する。問題は国中に広がった病気を治療するだけの薬草が手に入るかどうかだな。とりあえず、これ以上拡大しないように結界を張りに向う。

 病原菌は把握しているので、危険地域を見分けて結界を張ることには成功したと思う。後は薬草を集めて薬を作るだけになったので、薬草集めを眷族とパペットに任せよう。

 さて一度拠点へと戻り、薬を作る準備を整えるかな~


 集まった薬草を元に早速調合を開始して完成した薬は約三万五千人分・・・・・・司書パペットに情報を集めさせた結果、今のワレスホルト国にいる人間は五万人ぐらいいるそうだ。つまり、薬がかなりの量足りていない・・・・・・

 時間を進める魔法が使えない今、薬草を増やす事が出来ないので、これ以上薬を生産することが出来ない。悔しくは思うが、現状で作製出来た薬だけでも届ける事にした。

 「作る事が出来た薬はこれで全部だ。残念だがこれ以上は薬草が足りなくて作ることが出来なかった。国民全員には行渡りそうもない」

 「いえ、これだけでも用意してもらえただけ、とても助かりました。バグ先生感謝します」

 顔色が悪くなっているポルヌクツが無理にでも微笑んで感謝してくれる。

 「何か方法がないか、考えてみるから最後まで諦めるなよ」

 「もちろんです。面倒をおかけして申し訳ありませんが、よろしくお願いします」

 僕は拠点に戻って来て、何か方法がないか考える。しかしいい方法は思い浮かばなかった。とても確率は低いが錬金術の合成で、似た効果が出るような薬が出来ないか、手当たり次第に試すよう指示を出すのが精一杯だった。


 焦ってもいいアイデアは思い付かないけれど、どうしても冷静になれない中、昔のような時間を進める魔法を使えないことがどうしても悔やまれる。あの魔法さえ使うことが出来れば、一人残らず救う事が出来るのに・・・・・・

 いっそ、悪人を全て見捨てたらどうだろうか? でも魔王の影響が無くなった今、そこまで悪人はいないからあの国に一万五千人もの見捨てても問題がない人間はいないと思われる・・・・・・

 僕の国ではないので、こんなに悩む必要は無いはずなのだがな~

 疲れ果てたのか、そのような考えまで思い浮かぶようになってしまった。

 辺りが暗くなる中、気分を変える為にレイシアと夕食を食べているけれど、今日ばかりは楽しい会話どころか普通の会話すら殆ど無かった。

 そんな僕の視界の淵に砂時計が映ったことで、ある考えが浮かび目の前が開けた様な気がする。

 「もし、日本の方が時間の流れが速いのなら、あちらで薬草を栽培すれば残りの患者を救う事が出来るのではないか?」

 「それって、バグの故郷に行けばもしかしたらワレスホルト国を救えるの!」

 「あくまでも可能性の話だよ。単純に到達時間がずれるだけなら、戻って来た時には十年進んでいたっていう事もあるかもしれない」

 「そんな・・・・・・」

 僕達はリスクの高いその可能性を考え、お互いに黙り込んだ。こればかりはやってみなければわからないことだった。でも試してみた結果、失敗して失う命は一万五千人にも及ぶ・・・・・・それならばまだ錬金術による合成の方が可能性は高いのだろうか・・・・・・

 「ねえバグ。錬金術と日本に行くのと、どちらの方が確率は高い?」

 「正直に言えば、そこまで変わらない」

 どちらも先が見えない状況なので、なんとも言えないのだ。

 「それならば、どちらに賭けた方が成功した時に命が救える?」

 成功だった時・・・・・・日本に行って時間がほとんど過ぎなければ、確実に一万五千人の命は助かる。それに対して錬金術の場合は、全員分の命を救う素材が集まるかどうかが不明であった。

 「確実性なら、日本に行った方が確実だろうな。行くか?」

 「うん。薬草を育てながら、日本観光でもしましょうよ」

 「それもいいかもしれないな」

 そう言うと、薬草の種を用意し、農民パペットを連れて日本への転移を試みた・・・・・・


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