スキル習得
翌日からの僕は、細かい作業が出来るようになったので今まで出来なかった生産系統のスキルを獲得する為に、いろいろな物作りを始めることにした。
前は生産を始める為の生産道具から作り始めたのだったか? 確か最初は金属をこねてハンマーとかを作っていたような気がするな。
今の工房には道具が揃っているので、手始めに自分用の武器でも作ってみるかな。以前と違い格闘のスキルを持っているので腕に装備する鉤爪なんていいかもしれない。種族が変わったのにもかかわらず双爪撃ってスキルも消えなかったしね。
早速鉱石を取り出して魔力を込めながらインゴットを作ると、爪の部分を作製していく。
この辺りはそんなに難しくはなく、形やバランスを考えながらいくつかのパーツを作っていけばいいだけで、問題は手に着ける部分の構造だ。今は人化しているからそれ用で考えれば問題ないのかな? それとも骨に戻って作った方がいいのだろうか・・・・・・
しばらく考えてみたけれど、もう魔王軍所属とかにならないのなら人間の姿でいる事の方が多いだろうと、今の姿で装備する方向で考えて行くことにした。
後は簡単に取れたり外れたりしないように、手を痛めたりしないような構造を考えながら作製して行くことにする。
なにぶん初めてな部分だったので、どうすればいいのかわからない箇所をパペットから手解きしてもらい、一応これでいいかなって物が完成する。使う機会があるかどうかわからないが、後は実際に使ってみて駄目なところなどを改良して行こうと思う。
ステータスを確認したところ、まだスキルは増えていないみたいだな。
次は自分用の日本刀でも作ってみるかな。まずは金属を捏ねないといけないけれど、前は素手で捏ねたり出来たよな・・・・・・今はどうなのだろう? ステータスを見る限り、そこまでの筋力があるようには思えないかな? 人間よりは圧倒的に高いと思うのだけれど・・・・・・。それに今はアンデットだから火には弱そうなので止めておこう。
かなり手間がかかるけれど、これもスキルを手に入れる為だと考え直して地道に金属を溶かし、折り畳んでは熱してまた伸ばして折り畳んでと繰り返していく。まあ、人間以上の筋力があるので思った程作業は大変ではなく、ちょっと手間がかかって面倒だなって程度で済んだのはよかったと思える。
最終的に刀の形を整えて刃の部分を削っていくのも、道具が揃っているのでサクサクと進み、後はちゃんと斬れるように磨くだけってところでやっと慎重な作業が始まった。そこだけはそれなりに時間がかかったものの、無事に日本刀が完成する。柄の部分とかはパペットに任せたので、こっちは鞘の部分を作っていた。鞘は木を使うのでちょっと木工の分野だろうな。
相変わらず武芸には秀でていないので、我流の力任せで扱っているのだけれど、射撃場で的を試し斬りした感じまあいい出来ではないかなって思える。
パペット達のような装飾みたいなものは施してなくて、シンプルな武器だけれどね。
スキルはやっぱりないままだな。他の生産も試してみよう。
次は木工をやる事にした。とはいっても、木工は何を作ろうか・・・・・・。前はテーブルとかだったな。でも今は立派なやつが置いてあるので、これ以上作っても邪魔になるだけだと思うとやる気にならない。
拠点を見てみると必要な物は全て揃っているので、いっそ壊れてもいい射撃の的を作ってみるかなって考える。でもそれも不毛な気がするよな・・・・・・
あまり生産ばかりやるのもレイシアが暇だろうから、一緒に楽しめるように草原部分にカフェテラスみたいなものでも造ってみることにした。
まずはどんな感じのものがいいかレイシアと話し合い、造り方がわからないところをパペットに教えてもらいながら、出来るだけ実用的で長く使っていけるようなものを造ることにする。
こうやって一緒に造って行くのも楽しいものだな。日曜大工みたいな感じだしね。
草原にぽつんとあるカフェテラスっていうのも、何かがおかしいけれどね。
まあそんな感じでせっかく造ったのだから、レイシアや眷族などを呼んでのんびりとお茶を飲んだりお喋りして過ごしてみた。
やっぱりこういう生産もいいものだな。というか生産ってこれだからいいよな!
さて、次は裁縫辺りでもやってみるかな。こっちは普通に服を作ったりしたらいいだろうけれど、それにはセンスが必要になる。残念ながら僕はそういうセンスは持ち合わせていないので、リビングなどで使えるようなクッションなどを作ってみることにした。
これならば一杯作っても邪魔にはならないだろう。リビングが狭かったら邪魔だろうけれど、ここは結構広く造ってあるからな~
そんな訳で、女性型パペットにいろいろな柄の布を作ってもらい、それを使ったクッションを量産してみた。そして同じ物ばかりでは腕が上がらないからと、クッションにひらひらのレースみたいなやつとかを付けてみたり、物のついでに縫いぐるみなんかも作ってみたりする。
それを見ていたレイシアも、面白がって僕をモデルにした縫いぐるみを作り出したので、それならばと対抗してレイシアの縫いぐるみを作ってみる。こうして一緒に裁縫を教えてもらったりするのも、楽しいものだな。
出来に関してはやっぱりレイシアの方が可愛い物を作っていた。やっぱりデザインセンスが納得出来なくて不満だったから、パペットにレイシアをデフォルメした絵を用意してもらい、それを参考にして何とか満足出来る縫いぐるみを完成させる。
レイシアはこっちが苦労している間に、スライムやイフリート、シャドウにヴァルキリーにドラゴンと次々縫いぐるみを作っていて、しかも中々出来が良くてビックリした。正直負けたって思ったよ・・・・・・
後は細工とせっかくなので錬金術もやってみたいな。細工に関しては特に教えてもらうことは無いので、デザインを考えそこに素材倉庫にある宝石の類を持って来て取り付けていく。
せっかくなのでいくつか生産した中で、一番出来の良い物をレイシアにプレゼントする事にした。これは特に実用品の装備にする気が無かったので、魔法などを込めないでほんとにただのアクセサリーとして、プレゼントする。
ほんとは結婚を前提にとか言えれば男らしくていいのかもしれないけれど、はっきり言って今の僕はアンデットだからな~
それはまた別の機会にでもしておこうと考えた。決して自信がないとか意気地がない訳ではない。
さて、錬金術はレイシアから直接教えてもらうことにする。レイシア自身も勉強不足な部分は、錬金パペットに教えてもらって習得していく。こっちは魔法陣やら魔力を使わなければ化学の実験みたいで、ある意味楽しい勉強会になった。
学校に行っていた頃は勉強なんか苦痛でしかなかったのだけれど、今学ぶと結構楽しいものなのだなって思えたよ。そもそもが自分から学びたいっていう、向上心があるからかもしれないな。
そんな感じで一通りの生産の技術を習っていったものの、ステータスに変化はなかった。スキルの習得に失敗したのかな?
それとも追加されるのはLVが上がってからなのか・・・・・・
詳しくは不明だったので、検証の為とりあえず経験稼ぎをして来るとレイシアに言って、ダンジョンに突入した。
さっくりとダンジョンに潜ってから帰って来ると、早速どうかなってステータスをチェックしてみる。
《名前 バグ 種族 ノーライフキング 職業 魔導王-支配者
LV 84-85 HP 3461-3524 SP 3946-4007
力 232-235 耐久力 211-216 敏捷 186-191
器用度 169-180 知力 245-258 精神 258-263
属性 火 水 土 風 闇 生命 無 空間
スキル 無詠唱 魔力向上 四重詠唱-五重詠唱 状態耐性 罠察知 潜伏 待機魔法 自動回復(大) 双爪撃 念話 危険感知 鉄壁 召喚モンスター 調合 強打 守護 魔生物作製 消費魔力減少 格闘向上 影渡り 追跡 強襲 人化 瞬殺 空間移動 合成魔法 鍛冶 木工 裁縫 細工 錬金》
よし! LVアップによってスキル習得に成功したみたいだ!
ついでに合成魔法や、空間の属性も手に入れたから、後はやっぱり光属性だな~。次の進化をするのに、もう少しLVを上げた方がいいのかな? まあやらないよりやっておいた方がいいし、それに前の人生ではLV九十九の壁を結局越えられなかったから、今度こそチャレンジしてみるのもいいだろうな。
そういえば、レイシアは結構LV上がっていそうだけれど・・・・・・ありゃ、僕よりは高いけどそれでもまだLV九十一なのか・・・・・・
ステータスを見るのにレイシアの方を窺ったので、なあにって感じで首を傾げられちゃった。なんでもないって言っておいて今後の予定を考えることにする。
まずは次の進化かな? その後は・・・・・・特に何もないな・・・・・・
こんなに強くなってどうしようというのか自分でもわからないって感じだ。なんとなく趣味というかゲーム感覚で、いろいろと集めちゃったり、上を目指したくなるものの何かをしたいって欲望みたいなものは、特にないな~
欲のある人間ならここで世界征服とかやり出すのだろうが、そんなのは面倒で嫌だしな。そういえば、職業が支配者になっているな・・・・・・これは何かを支配しろって意味じゃなくて、単純な称号的なものだよね?
そういえば、こういう職業とかって誰が決めたり進化させたりしているのだろうか? やっぱり神様とかが管理しているのだろうか?
まあいいか、当面の目標は進化素材を集めることと、LVアップをすることにしておこう。
素材集めの前に、ふと思ったことを質問しておくことにする。
「そういえば、進化素材になるモンスターは、レイシアが進化させたやつと、捕まえて来たやつを使った場合とで変化はあったか?」
「そうね。凄く微妙な差ならあると思うわ。野生のモンスターの方が、ステータスが良くなるかもしれないかな」
「そうするとやっぱり捕獲して来た方がいいな~」
「だね」
「後は殆ど使わなかったけれど、お金がかなり無くなっているな」
「ごめんなさい。魔道具を集めるのに使っちゃったから・・・・・・」
「ああ、別に無くても飢える訳じゃないから別にいいのだが、何かあった時の為に稼いでおきたいなってだけの話だよ」
「それはそうね。じゃあ冒険者ギルドに行く?」
そこが問題だよな・・・・・・ギルドに関わるとまた面倒事に巻き込まれることになる可能性もあるしな・・・・・・
そう考え拠点内を見回して、パペットが働いているのを見付けると何も冒険だけが稼ぐ手段じゃないと気が付く。結局生産の方が安定して稼げるのだからそっちで稼いで行けばいいかなって思えた。
「冒険は趣味でやって行こうか。厄介事は嫌だから新しくギルドに登録したらいいだろう」
そう言って、一杯作った細工の指輪から一つを取り出して幻術の魔法を込めた物をレイシアに渡す。これで変身してもらったら新人冒険者としてまた、町とかで遊んだり出来るだろう。僕は人化のスキルで変身すれば問題ないかな?
「後は何を作って稼ごうか・・・・・・魔道具はせっかく回収したからばら撒きたくないからな~」
「それなら食材は? ここの食材はどこのよりも美味しいと思うけど」
「ふむ、そうすると売れるだけの生産量を確保しないといけないな。それと生物は輸送しにくいからどこに出荷するかを考えていかないといけないな~」
「マグレイア王国かリンデグルー自治国じゃあ駄目なの?」
「そっちだと僕達がいるって気付かれる可能性があるからな。前の関係性は一度死んだ事で無くなったと考えて、別のところがいいかと思う」
「そういうことね。じゃあブレンダ達とも接触はしないって考えね」
「レイシアが仲直りするなら、別にブレンダの店でもいいぞ?」
そう言うと、微妙な顔をしていた。それにそもそものブレンダ自身が、徐々に店などから遠ざかろうとしていると情報が上がって来ている。前魔王軍は敗れ去っていなくなったけれど、次の魔王とその幹部はもう決まっている。その幹部がブレンダなのだからそのうち表舞台からブレンダは消えて行くのだろう。
そう考えると、やっぱりブレンダ以外の取引相手を見付けるのがいいと思う。
後魔王関係がばれなくて、協力出来そうなところはサフィーリア教会とドラグマイア国くらいかな? まあどっちも微妙ではあるな・・・・・・そうすると、まったくのゼロから新しい関係を探す事になる。生まれ変わったし、新規開拓って感じか。
あ、自分達の生徒が創った国なんかどうだろうか?
そっちならブレンダとの繋がりもないし丁度いいかもしれないな。
「生徒が革命して創った国なら、こういう取引に丁度いいと思わないか?」
「そうだね! 確かにいい伝手になりそうだわ」
「結局あいつらが創った国って、いくつあった?」
「えっとね、確か八つかな?」
「今回の食料は別に飢えた住民を救う訳じゃないから、そこまで大規模な量でなくて大丈夫だとして、八つか・・・・・・。やっぱりもう少し量産は必要だな。後はパペット達の作った家具や工芸品って感じか・・・・・・何気に地下にいる魔王軍の生き残り達が大食らいなのが痛いな」
「まあ、ドラゴンとかジャイアントとかいるからね」
「さすがにそろそろ何かしら、働いてくれないと養って行くのはきついな」
「外に放す?」
「いや、それはあまりにも無責任だし、せっかく育てたのだから何かはさせたい。あいつらって農業とかしないかな?」
「今まで戦いばかりだったからどうだろう? それにずっと食べる専門だったからね」
「だよな~」
あいつらは戦力として育てて来た。平和になったからって捨てるのも問題だし、だからといっていきなり働けって言うのもきついだろうから、どこかでボディーガードでもさせられればいいのだけれどな~
何かないかな?
モンスターの町でも作ってそこの兵隊とか・・・・・・
似合ってはいるけれど、どう考えても人類には受け入れられないだろうな。地下にモンスターの世界を作ってしまうとかしたら、地上のモンスターが消えて、地下にモンスター王国が誕生する・・・・・・地球みたいに人類が増え過ぎてやばいかな?
作戦としては面白いけれど、ちょっと現実的ではないな~
地上のモンスターはそのままに、地下にモンスターの暮らす場所自体を造るのはありだろうな。その場合、やって来た人類をどうするかとか、全面戦争にならないかって考えると、やっぱり接触させない方がいいって思えるけれど、そうすると兵士みたいなものはやっぱりいらなくなってあいつらの職がなくなる・・・・・・
やっぱあいつらはあのままが一番って結論になるのかな?
「今からでも農業を教えたりした方がいいかな?」
「今まで好きにご飯が食べられていたから、不満が出るかもしれないね」
「そうだよな~」
今までのあいつらの食生活を司書パペットに調べさせて、好きな好みと何の為なら働いてもいいって思えるのか調べさせよう。上手くすれば仕事をすることを覚えさせられるかもしれない。まああまり期待はしないでのんびりやっていけばいいかな。こっちは直ぐにどうこう出来るものではないので、別の事を始めるか。
いろいろやることは決まったので、まずは捕獲素材が討伐対象になっていないかをまず調べてみる。
するといくつかの依頼が素材に丁度よさそうだとわかったので、まずはギルドに行って冒険者の登録をすることにした。
「準備はいいか?」
「うん、ばっちり!」
お互いに姿を変えて、適当なギルドへやって来た。僕らは二人とも魔法使いとしてギルドに登録する予定でいる。
受付で新規登録をお願いすると、早速魔力を調べる試験を受ける事になった。まずはレイシアが魔法を打ち込み、凄い魔力だと言って大物新人が来たと騒がれる。
そして僕の番が来て、以前は能力が高過ぎてわざと手を抜いていたなって想い出していた。しかし今の能力だと足元にも及ばない程下がっているので、普通にやっても問題はないかと考える。
(ファイアアロー)
打ち込んだ魔法が魔力を計る宝玉に当たり真っ黒に変わったのは以前と同じで、そこから宝玉にひびが入った。
おや、やっぱり威力が強過ぎたか・・・・・・二人とも期待の新人としてギルド登録を終えた。そのついでに討伐依頼を受けて再び素材集めを開始する。
最初の素材として選んだモンスターは、遺跡に封印されていたらしい魔人が相手だった。どこかの冒険者が知らずに封印を壊してしまったのだそうだ。
おかげでその遺跡周辺では多数の被害が出ているとのことらしい。早速その魔人がいる遺跡へと行ってみると、魔人が向こうから出て来てくれた。多分こちらの魔力を感知したのだろうね。
「また人間がやって来たか、弱いくせに人間と言うやつはのこのこやって来る・・・・・・いやこの力、お前達は人間ではないな。死にぞこない共か」
共? 魔人に言われてレイシアを見てみると、種族は死人になっていた・・・・・・うわ、僕からの守護で種族がアンデットになっちゃったか・・・・・・
知らずに回復とかしていたらレイシアに止めを刺していたかもしれないな。危ない危ない・・・・・・
「悪いが捕獲させてもらおうか」
「捕獲だと? 逃げるのでも命乞いでも倒すのでもなく、捕まえるだと・・・・・・俺も舐められたもんだな~。多少魔力が高いだけの死にぞこないが、身の程ってもんをわきまえるんだな!」
そう言うと怒った魔人が襲いかかって来た。
(スパイダーネット、ショックウェーブ、マインドボム、グラビティ、ビームネット)
昔と違い魔法を一瞬にして五種類も同時発動出来るので、一気に魔法を叩き込んでみた。
時間差で迫る捕獲の糸と電撃の波、そこに見えない精神を吹き飛ばす爆発と重力をかけて地面へと縫い付ける重力波。最後はビームで作られた網の檻。
さすがに最初の二つはかわされたものの、マインドボムを食らったところに、地面に縫い付けられネットによって包み込まれる。
魔人が転移系などの脱出手段を持っていなければ、これで終わりのはず。そう思い様子を見ると、まずは重力を振り切っての脱出を試みた後ネットに触れて再び地面に倒れる。そしてまた同じことを繰り返して苦痛の声を上げた後、何やら怨み事を叫んでいた。
ふむ、転移系は使えないようだね。一応念の為に離れた所から石を投げ付けて逃げられないのかを確認してみる。
怒りっぽそうだったので、人間にこんな仕打ちを受ければ我慢など出来ずに奥の手を使ったりして来るかと思ったけれど、そういう心配も無さそうだね。
それでは久しぶりに使えるようになった影渡りで捕獲用首輪を魔人の首に巻き付ける。
これで捕獲は完了になるのだけれど、こいつの討伐部位とかはどうすればいいのか・・・・・・本当に殺す訳にも行かないので体を見回してみると肘の所に角が生えていたので、それを切り取ることにした。
実際に排除しているのだから、討伐出来たよって証拠でこれを渡せばいいよね。逃がさなければ実際に脅威はいなくなるので結果は同じだから・・・・・・
そう考えると、拠点の飼育小屋に魔人を送った後、ギルドに報告しに行くことにした。
さてお次は海辺にある町のギルドで依頼を受ける。討伐というか、捕獲しようと思っているモンスターはクラーケン。相手が水中の為、今回はレイシアにはここにいてもらい、僕だけで捕獲に向う予定だ。
ただ今回は以前と違い、レイシアによる部隊召喚でマーメイドが僕の支援をしてくれるらしい。さすがに水中で素早く動けないだろうとのことで、マーメイドの中の一人が首輪を持って相手に付ける役目をしてくれるそうだ。
部隊召喚をするとその中に一人、リーダー格の者が出て来るのだが、今回はマーメイドナイトというのが混じっていて、その子が首輪を持って付いて来てくれた。
さてさて、今回相手するクラーケンとやらは、果たしてどんな相手だろうか・・・・・・結構クラーケンの外見は物語によってタコだったり、イカだったりといろいろなパターンがあるのだよね。ここの世界ではどっちかな~
そういえばお好み焼きは作ったことがあるけれど、たこ焼きは作ったことが無かったので、今度作ってみよう。
マーメイド達に連れられて、海底を進むこと二十分くらい。僕は呼吸しなくても平気なアンデットなので苦にもならないけれど、やっぱり水中だと動きが鈍くなるのがなんとももどかしく、また海底は魚などの生物も少なくて気が滅入って来そうな環境だった。
そして出ましたクラーケン! 漁師の乗る船を襲ったり、この近辺の魚介類を軒並み食い荒らしているとして、討伐依頼のあったモンスター。その姿はタコに近い姿をしているけれど、その表面に浮かんでいるのは鱗かな? ところどころにヒレのようなものや甲羅みたいな硬い物が付いている部分なんかもあって、僕の知っているクラーケンのイメージとは結構かけ離れているようだった。
まあしかし、ステータスで確認してみたところこいつがクラーケンで間違いは無さそうだったので、早速捕獲することにする。と言うかこっちも発見されていて、襲い掛かって来ているしね。
(スパイダーネット、ブリザード、マインドボム、グラビティ、プラントチェイン)
今回は水中ということで、雷による電撃とビームは使用を控えることにした。僕だけならまだ多少は平気だけれど、周りにはお手伝いのマーメイドもいるので、もう少し直接的な方法で捕獲することにする。
うーん、でもスパイダーネットも水中ではあまり意味が無さそうだね・・・・・・濡れて粘着力が弱くなっているのか、ただ邪魔そうに絡まるだけで拘束の役には立っていない。その点ブリザードは相手の動きを鈍らせる役には立っているかな? マーメイドも近寄れないけれど、それはまだ元気一杯のクラーケンが危ないので結果オーライだ。その後の精神を吹き飛ばすマインドボムは効果があるのかどうかよくわからなかったけれど、重力はよく効いたみたい。そして海底からワカメのような植物が突き出して来て、クラーケンを拘束する。
しかし触手は八本あるのと人間のように骨がある訳ではないので、まだ拘束が足りないと思われる。今近付くとマーメイドの方が捕獲されそうでちょっと危ないかな?
(アイスコフィン)
完全に動きを封じることが出来る訳ではないけれど、触手の先端部分を氷の棺で固めてしまえば、少なくともマーメイドが捕まることはないと判断して、魔法の数を拡大して八本分の触手を凍らせる。
これにより近付けると判断したマーメイド達が、クラーケンに取り付き捕獲用の首輪を取り付けることに成功した。
さて討伐部位だけれど、初めは甲羅の部分を持ち帰ろうかと思っていたけれど、こいつの食欲は厄介かなって思い、嘴を砕いて持って行くことにした。進化の時まで水槽の中に入れておくのだけれど、中の魚介類を食べられてはかなわないからね。
レイシアのところへと戻ってギルドに報告して今日のところはこれで一旦帰還することにする。
拠点に戻って来ると、国を起した生徒達からの反応が返って来ていて、全員詳しい話を聞かせて欲しいとのことだったのでサンプルの野菜や工芸品を持ってそれぞれの国に向った。
野菜に関しては、まだ量産体制を始めたばかりなので、今回はこんな味だよっていうサンプルだけに止めさせてもらう。
量産してからそれぞれと取引を始めるつもりだった。
そして今回はほんとに全ての魔道具を回収していたようで、紙の作製と印刷をこなす魔道具まで回収していたのを見付け、せっかくなのでそれを使った専用の契約書を作り、直接契約を交わしていく。
まあ中には代理の人が出て来たところもあったものの、多少胡散臭そうに見て来る代理がいたくらいで、トラブル自体は起きなかった。
本契約はまた後日で、サンプルを味わってもらった後になるだろう。
ちなみに、魔王軍で生き残ったモンスター達は上手く焚き付けすることが出来そうで、少し仕事をさせる目処は出て来たみたいなので、早速量産させる畑の仕事を覚えさせているって感じだった。
まあドラゴンは、収穫後の畑を耕したりする単純な仕事だったり、ジャイアントも収穫時期にイモを掘り返すだけの仕事だけれどね。
まあ初めはそんなところから始めて、徐々にいろいろやらせて行きたいと考えた。




