経験稼ぎ
失った記憶を取り戻す為、僕はレイシアと外の世界を見て回る事になった。初めは出会いの場である学校のダンジョン。入り口は封鎖されていたけれど、レイシアが転移させてくれたのでダンジョンに入り込めた。
「がああ(ライト)」
今は使われていない為か真っ暗闇だったので魔法の光で照らし出し、そのまま中を進んで行く。そこで僕は一つ想い出せたことがあった・・・・・・
そういえば、レイシアって方向音痴だったな・・・・・・出会うきっかけになった部屋へと行きたかったのだろうが、辿り着けないどころか、同じところをグルグルと移動しているのを見て想い出したよ。
これで最高峰の冒険者っていうのが笑えるな。そう考えつつ、確かあの時もこうやってレイシアを誘導していたんだと想い出す。確か他の部屋より大きな部屋だったと思うから、こっちだったかな? 前足を伸ばしてレイシアをそちらに誘導し、大きな部屋までやって来る。
『大丈夫、ここら辺りの記憶は想い出した。確かにここで僕はミノタウロスを倒したんだったな。その後僕が誘導して奥の石版を回収して出口に向った』
「うん。あの時バグに出会えなかったら私はどうなっていたか・・・・・・今頃生きていなかったかもしれない」
その後丘の上に転移して学校を見下ろしながらどんな風に生活していたのかなど、想い出話をしていった。
その話の中で進化についてレイシアが語ると、何故か体が震える程の恐怖が湧き上がって来た。何でだ? 確か僕は前の人生で何度か進化をして強くなって行ったはずだった。最弱のスライムとして生を受けた僕が、神に届く程の力を手に入れたのは、レイシアの持つ得意技の進化のおかげだったはず。
なのにそこには恐怖を呼び起こす記憶があるような気がした。
やがてその僕が二度目の進化の果て、レイシアの召喚の鎖を振り切って辿り着いた洞窟へとやって来た。中に入ると直ぐ行き止まりとなるこの場所を、洞窟と言っていいのかどうかわからないけれど・・・・・・ああそうだ、僕はここに隠れてただスライムとしての本能で生きていたんだ。
もしあそこでレイシアが迎えに来なかったら、僕はせっかく手に入れた知性をまた失って、野性スライムに戻っていたかもしれないんだな。
そう考えると、追いかけて来てくれたレイシアには結果的に感謝しなければいけない気がした。
「そういえば、もう主でもなんでもなくなって、バグが水晶を手に入れる為にどこかに行った時は、もう帰って来てくれなくなるんじゃないかって心配したな」
『あれは確か、蛇が出るって言う洞窟にある水晶を集めに行ったんだったかな?』
「うん、確かここだよね?」
そう言ってレイシアが跳んで来た所は、確かツインヘッドスネークがいた洞窟であっていると思う。この入り口で多分あっているよなって考えていると、洞窟の奥からウッドゴーレムが出て来た。こいつは確か素材集めをさせていた配下の一人だったはずだ。せっかく出て来てくれたので、実際に水晶を見に行ってみることにした。
「がああ(ライト)」
みんなを代表して僕が魔法を使っておく。生まれ変わったおかげで、僕が一番雑用に向いているだろうからな~
以前は自分の体を光らせていた気がする。そんなどうでもいいような事も想い出せた。
そして水晶がある所に着くと、配下がさっそく水晶を掘り出すのを見学させてもらう。それを受けた配下も僕に仕事を見てもらえると張り切っているのか、とても丁寧ながら素早く掘り出していた。おお、さすが収集の専門家だな! 水晶には傷一つ付けること無く素早く掘り出していっている。
ある意味感動して見ていると、背後に人の気配を感じて思わず身構えてしまう。レイシアは人間の姿をしているが、実際には確か魔人だったし、自分にいたってはドラゴンだ。そしてそこにウッドゴーレムまでいる。下手をしたらいきなり襲いかかって来るかもしれない。
警戒していたけれど、やって来た冒険者達のうちの一人が、こちらに話しかけて来た。
「こんにちは~」
「こんにちは」
レイシアがその男に挨拶し返すけれど、レイシアもどこか警戒しているのかやや冷たい態度に思えた。人間達との接触はその挨拶を交わしただけで、特に何事もなく済んだ。彼らがある程度離れたので、せっかく来たけれど引き上げた方がいいかもと考え提案する。
『戻って来ないうちに撤収しよう』
「うん」
配下もその意見に賛同して引き上げて行った。僕らは再び学校が見える丘へと転移する。しばらく無言で学校を見詰めた後、レイシアがまた想い出を語り出す。
僕らはお互いに人間と接触したくなかったので、想い出巡りで街の近くには近寄らずにあちこち見て回った。そうして巡るうちに自分に理解出来ない想い出と、想い出せるものとが明確にあることに気が付く。
『どうも魔道具に関しての記憶が、欠けているように思える。後一部の魔法かな?』
「じゃあ、私との想い出は覚えているのね?」
『ああ、ぼんやりしている部分はあるかもしれないが、想い出せないものは無いと思う。多分ぼんやりしていても記憶自体は残っているって感じなんだろうね』
「そう。一度拠点に戻る?」
『そうだね。これ以上想い出巡りは必要ないと思う』
「わかったわ。じゃあ一度拠点に帰りましょう」
そうして僕らは途中で帰って来た。
『そういえば、僕はどうやって配下を創ったのかもわからないな・・・・・・』
「バグはこの子達の事をパペットと呼んでいたわ。そして、彼らを眷族と言っていた。多分物作り系のスキルが無いせいでそこら辺りの記憶が無いんじゃないの?」
『パペット、眷族、スキル。確かにそんな言葉を使っていた気がするな』
技術が無いというのなら、習得したらいいだけだろう。そう考えると、確か最初に作った物が水晶を使った魔道具だったなと記憶を探り、資材倉庫から水晶を持ち出して来てそこに魔法を込める事から始めた。
とは言うものの、今の僕に使える魔法には限りがある。その少ない魔法の中で一体どんな物なら作る事が出来るのだろうか? まずは凄くシンプルに、水晶を使えば魔法が発動するって物からやってみるかな?
そう考えると何とかファイアアローを水晶に込めようとしてみるものの、その手段がわからなかった・・・・・・自棄になってそのままファイアアローを撃ち込んでみたものの、水晶が当たり前のように破壊される結果に終わる・・・・・・
嘘だろう・・・・・・以前の僕は一体どうやっていきなり魔道具を作り出すなんてことをやってのけたんだ?
しばらく呆然とした後、まずはわかる事出来る事からだと考え、鍛冶や木工などの技術を習得してみようと考えた。しかし、この前足ではろくな作業が出来ずに終わる・・・・・・
まあ、人間のようには出来ないよね・・・・・・
そうなると、今の僕で出来る事といえば経験稼ぎくらいしかないのかもしれないな。そう考えとりあえず経験稼ぎに出かけた。
一ヶ月程経験稼ぎなどをして、レイシアにそろそろ進化してみる? とか言われたけれど、何故か進化する事に恐怖があって嫌だと断ると、レイシアはあっさりと引いてくれる。
ここ最近の僕は殆ど経験集めばかりしていて、LVだけは随分高くなったと思う。それと生産の中で唯一できた調合を、のんびりとしていた。
出来たといっても僕が出来るようにとパペットが作ってくれた特製加工道具のおかげなんだけれど、それでも無事にというか何とかというか、ステータスに調合という生産スキルを付けることが出来たのは嬉しい出来事だった。
薬に必要な薬草を道具の上に開いた穴から入れて、石臼のような道具をゴリゴリと回す事で加工する事が出来る。そして道具の下の部分のスイッチを切り替えると不純物を取り除いて液化したものが下に取り付けられた瓶の中に溜まるような仕掛けになっているので、細かい作業をする事無く調合する事が可能だった。
僕はこれを使って薬草の比率を変えたり数種類の薬草を混ぜたりと、その配合を変えるだけですむ。
そしてこの道具は他の薬草と混じらないように簡単に取り外して洗う事が出来るので、手入れの部分でも一人で扱う事が可能になっていた。本当にこれは素晴らしい道具である!
ただこれは人間には重過ぎて取り扱うのが難しいとレイシアは言っていた。まあレイシア自体、LVが高いみたいで問題なく扱えるんだけれど、一般市民にはってことだろう。
ドラゴンの僕にはそんな欠点はあって無しが如しだね!
そんな訳で、経験集めに飽きた時には調合をして気晴らしをしていたよ。
喜ぶ僕に眷族やパペット達が、調合で使う素材をこぞって集めて来ようとしていたのだけれど、それも楽しみの一つだからせめて僕が取って来られない物か、取って来た物を量産する時に手伝ってくれと言うと、みんな大人しく従ってくれる。
ありがたくもあり申し訳なくもあるけれど、これだけは趣味みたいなものだからな~。なのでせめて出来るだけみんなにはしたい事やりたい事を相談するようにしていった。
そんな今日はベイビルノース草と呼ばれる薬草が生えている場所を調べてもらい、レイシアと一緒に探しに出かける事になった。その草が何の役に立つのかといえば伝染病の治療薬として、そして予防薬としても効果的だと思われる。
特定伝染病になるので、僕や配下達には殆ど関係がないかもしれないけれど、何でも作ってみたいとうずうずしちゃうんだよね。まあ実際に使うかどうかではなく、単純に作る事が楽しいといった感じか。
まあどんなものがいつ役に立つかわからないから、何でもあればいいだろうという無茶な考えでもある。
そんな感じで久しぶりに森の散策しながら薬草を探していると、どこか森の中から凄まじい気配を感じた。これは放置しておくと危険じゃないかな? それにこの気配には何だか覚えがあるような気がする。そう感じそちらへと飛んで行くと、後ろからレイシアがユニコーンに乗って付いて来てくれる。
今の僕で、こいつは倒せるのかな? 確かかなりの強さを持つ怪物だった気がする。
倒せるのなら経験稼ぎにしたいなと考えていると、どうやら冒険者がその気配の主と戦闘になっていた。これは呑気に経験稼ぎしている場合ではないみたい・・・・・・
レイシアに視線を送ると理解したみたいで、ユニコーンから降りると、一瞬で敵の懐に潜り込んで斬り伏せたのが、かろうじて見えた。レイシアって確か魔法使い系だった気がするが、戦士としても十分戦えそうだな。そんなことを考えていたら、助けた相手が話しかけて来た。
「あの助けてくれて、ありがとうございました」
確かあいつらって洞窟で会った冒険者か? あの時も感じたけれど、あの男は魔道具を一杯持っているみたいだな。魔力を圧縮したような物を、幾つも持っているので何となく気になった。機会があれば、同じ魔道具を作る者同士話をしてみてもいいかもしれないな。今の僕には作れないけれど・・・・・・
危険生物の排除もしたので、再び薬草を探して森の中を飛んで行く。
それから一時間、結構探し回ってようやく群生しているところを見付けたので、せっかくだからそこそこの数を確保させてもらう。根を傷付けない様に採取するのは難しい為、そこはレイシアにやってもらったんだけれどね・・・・・・調合に使う分だけは自分で摘み取った。
拠点に帰ると一つは早速調合で使い、根ごと掘り起こして持って来た薬草はパペットに栽培してもらう事にする。どうせ使わない薬草になるだろうけれど、観賞用とかにはなるかもね~
その後も経験集めと調合をしていったものの、いまいち進展がない気がする。やはり恐怖があるものの、進化をしないとこれ以上の成長はないのだろうか? せめてもう少しまともな手があれば、人間のように他の鍛冶や木工などの生産とかをする事も出来るんだけれど、どうしても怖くて進化を試す気になれない。
そんな事を考えながら早二ヶ月程が過ぎ、パペットから何やら情報が上がって来た。僕宛ではなくてレイシアに用事があるみたいだね。その情報はあちこちの冒険者ギルドに張り出された、指名の依頼書みたい。
依頼主はブレンダとなっているものの、どうも仲介しているだけで依頼人自体は別の人間らしい。
ブレンダっていうと、確かレイシアの冒険者養成学校時代の同級生だった人間じゃないのかな?
『どうする?』
そう聞いてみるものの、レイシアは何か思うところがあるのか黙り込んだままだった。これはレイシアの問題でもあるし、下手に突っ込まない方がいいかな? そう考え、受けるか受けないかはレイシアに任せる事にして、僕は普段通りの生活をすることにした。
そういえば念話のスキルを手に入れてから、ステータスを更新していなかったな。随分とがんばって経験を集めたから、さぞかしLVも上がっている事だろうと、レイシアに更新をお願いしてみる。
名前 バグ 種族 ゴールドドラゴン・チャイルド 職業 魔法使い-魔導師
LV 56-79 HP 967-1562 SP 914-1417
力 131-164 耐久力 173-196 敏捷 89-134
器用度 71-94 知力 112-138 精神 135-167
属性 火 土 風 光 生命
スキル ブレス(火・光) 簡略詠唱-無詠唱 魔力向上 二重詠唱-四重詠唱 耐性(毒・支配)-状態耐性 飛行 罠察知 潜伏 待機魔法 自動回復(微弱)- 自動回復(大) 双爪撃 念話 危険感知 鉄壁 召喚モンスター 調合 強打 守護
おー、スキルが一杯増えている。もう少しこまめにチェックしないといけなかったかもしれないな。レイシアの様子を見つつ、増えたスキルの確認をしていく。
とりあえずダンジョンに行くと敵を発見したけれど、危険感知っていうものは何の反応もしなかった。これは相手が雑魚だと反応しないってことかな? それとも何かしら使う感じのスキルとかってパターンかな? よくわからないのでとりあえず保留として、次に鉄壁というものを試してみる。
殴りかかって来るジャイアントの攻撃が、まるっきり痛くなくなった。殴られた時の音を聞いてみると、ガンガンという音で金属を殴っているような音から、とても硬くなっているんだと思える。
じゃあ次は強打とかいうものかな? まだ子供だとはいえ、結構動けるようになっているので相手の懐に入り込んで殴り付けてみる。
グワアッ
ジャイアントが軽く吹っ飛んだ後目を回していた。確かこの攻撃は、相手がクラクラする時があるとかだったような? これがその状態ってことかな?
とりあえず止めを刺して次は召喚を試してみることにした。これはレイシアと同じ召喚でモンスターを呼び出すんだろう。
「ぐがああ(召喚、ゴブリン)」
僕の呼びかけに応えてゴブリンが一体出て来る。でもってドラゴンの僕を見て腰を抜かしていた。あー、何か可哀想な事をしちゃったな。とりあえず実験だし帰すか。
「がああ(送還、ゴブリン)」
攻撃されるとでも思ったのか、逃げようとした姿で消えていった。元の場所で死んでいなければいいけれどな~
まあとりあえずこんなところかな。レイシアもまだ悩んでいるみたいだし、とりあえず僕も知りたい事は知れたので、拠点に戻る事にした。
その後は経験集めにも行かずレイシアの側にいたものの、一週間悩み続けていたので助言というか取っ掛かりになればと話しかけてみることにした。
『まだ悩んでいるのか?』
「うん。もう会わない方がいい気もするし、罠ってことはないと思うけれど今更行ってどうなるのかなって・・・・・・」
『多分今回の依頼にブレンダは出て来ないと思うぞ』
「そうなのかな?」
『僕も大分強くなったから、一緒に護衛として付いて行ってもいいよ?』
まあそうでなくても、元々行くのなら一緒に付いて行くつもりではいたけれどね。
『まあ結局ブレンダとどういう関係になりたいかだと思う。このまま赤の他人になるのもいいし、機会があるなら友達を続けてもいいだろうし。レイシア次第だ』
「そうね」
しばらく考え込んでいるようだったので、黙ってレイシアの出す答えを待つ事にした。
結局その日はそのまま悩んでいたので、このまま縁が切れるのかなって考えていたけれど、翌日にレイシアは結論を出したようだった。
「バグ、一緒に付いて来てくれる?」
『もちろん』
どうやらかろうじて縁は切れないみたいだね。僕としては、ブレンダと敵対した記憶はあるものの、特に恨みや憎しみといった負の感情はない。実際あれは僕が仕向けた感じもあったしな~
僕はモンスターだから特に思うところは無いけれど、レイシアには普通に人間の知り合いってものも必要なんじゃないかと考える事もあるので、この機会にわだかまりが無くなればいいなと考えたりした。
レイシアに抱きかかえられ、依頼者のいる町へと転移して自宅まで訪ねる。その家の前で躊躇するレイシアに、話しかける。
『ブレンダはこんなところにいない。もし顔を合わせるとしたら依頼が完了した後とか、そのお礼とかになるから向こうから会おうって言って来るはずだ。今は普通に依頼内容の確認だけだと思うよ』
「そうだね。じゃあ行くよ?」
『ああ』
ホッとしたように、依頼者の家に向き直る。
「すみませ~ん。誰かいますか?」
レイシアが声をかけてしばらく後、男の人が出て来た。そして僕を見るとちょっとギョッとした感じで固まる。
何だかこの感じ懐かしい気がして、からかいたくなるけれどさすがに依頼人をからかうのは無しだろうな~
「どちら様で?」
男はようやくそれだけを言葉にする。ちょっと緊張しているみたいだな。
「貴方がブレンダに仲介を頼んだ人でいいのかしら?」
「じゃあ君がレイシアさんでいいんだな。立ち話もなんだし、中に入ってくれ」
そう言って家の中に招かれる。
勧められるまま席に着き、依頼者の母親と思える人にお茶を出された後、依頼人が語った内容は結構突拍子もない内容だった。
魔道具の実験に失敗して、黒い渦に吸い込まれた友人の安否確認と、生きているならその救助が依頼の内容であるけれど・・・・・・それって普通に考えればもう死んでいるんじゃないかな? 死体も消滅しているんだとしたら、どうやってそれを証明するかってところが難しい気がする。
遺品探しの方向か?
「それはちょっと、私の手には余る依頼のように思えるわ。ごめんなさいね」
「やはり難しいですか・・・・・・お手間を取らせて申し訳ありません」
ここに来るまでに、結構迷っていたわりにはあっさりと話し合いが終わり、僕達は拠点へと帰って来た。
一応パペットにこういう調査を得意とする者達がいるので、その配下達に遺品探しをお願いしておく事にする。パペット達は仕事がもらえて生き生きと行動を開始していた。
『状況から考えたら死亡確認だったな』
「そうだね。わざわざブレンダに頼んでまでの依頼だから、どんな依頼かと思っていたけれど、ちょっと拍子抜けって感じだったわ」
『だな。一応遺品をパペットに捜させておいたよ』
「ありがとうバグ」
ようやく悩み事が無くなって、気が楽になったらしいレイシアとのんびり過ごしていると、数日して調査結果が出たみたいで、何故かその報告をホーラックスがして来た。
あれ? 調査を頼んだのはパペットだったんだけれど・・・・・・
「主よ、パペット共の調査結果だが遺品らしき場所の特定が済んだ。ただし回収は不可能と判断した」
「え? それってどういうこと?」
思わずって感じでそうレイシアが聞き返す。
「空の彼方、あるいは地の底かその裏側に飛ばされたと考えたが、どうやら何かの隙間にでも落ち込んでいると考える」
「どこかの隙間?」
「我はもう主との繋がりが無い故に、それを把握する事は出来ん」
「そう、でも場所が特定出来たのだったら取りに行けない?」
「そう考えたが故に我に話が回って来たのだがな。我の転移では足りんな」
『ホーラックス、ご苦労だった』
「では失礼する」
去って行くホーラックスを見ながら、魔王をしても届かない場所ってどこだって考えた。
「やっぱりこの依頼は達成不可能みたいだね」
『みたいだけれど、ちょっと気になるな』
「確かに気にはなるけれど、ホーラックスでも駄目だったみたいだし、バグが昔の力を持っているのならなんとでも出来たかもしれないけれど、今はどうにも出来ないんじゃないかな?」
『まあ、そうだろうな~』
どうにもならない事はわかっているんだけれど、なんとなく気になるというか昔の僕なら何とか出来そうな気もしたんだ。
その後、どうやって場所の特定をしたのか聞いてみると、まずは闇雲に世界中を探すのは手間がかかると判断して、探し人の所持品の中から魔力を帯びた品物を入手して、その反応を探す探査系の魔法を使ったんだそうだ。
多くはお店などで売られている商品が反応したんだけれど、一か所に固まっている遠くにある存在に気が付いたそうだ。初めはそこに調査しに行こうと試したらしいのだが、どうも転移が届かない感じがしてホーラックスに頼んだみたいだけれど、ホーラックスでさえ何かに阻まれる感じで転移する事ができなかったそうだった。
それでホーラックスとパペット達が協議した結果、到達不可能な場所にあると判断し、代表してホーラックスがやって来たんだそうだ。
探知系の魔法か。そういえば僕には使えるのかな?
「があああ(マジックセンサー)」
よし、今まで攻撃用の魔法ばかり使って来たけれど、探査系の魔法も普通に使えそうだった。入手した品物とやらを持って来てもらって、この特定の魔力のみを探査系魔法で調べてみると、確かに遥か遠くに一塊になっている魔力を感じることが出来た。
しかもこの塊は微かに動いている気がする。まあ本人が生きているとは限らないし、どこかの場所で転がっているだけなのかもしれないけれど、仮にまだ生存しているとするならば救出する為の手段を探すべきなんだろうな~
しかし、どうすればいいのかが、わからないと来ている・・・・・・そもそも今の僕は転移するという魔法すら使えないからな~
まあ、その場で僕らには不可能な依頼だって断っているので、気長に調べて行けばいいかな?




