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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十六章  生まれ変わり
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生まれ変わり

   第十六章  生まれ変わり


 どうやら僕は卵の中にいたらしい。そこから光り輝く外の世界へ出て最初に目にしたのは人間の女性。どことなく見たことがある女性が僕を見詰めていた。

 とても懐かしくそして大切な存在だったと何故かその瞳を見ているとそう思えて来る。

 するとその女性は優しく僕を抱えあげて抱きしめて来た。

 何故だろう、何故かとても落ち着く感じがする。それにとても柔らかくて懐かしい匂いがした。僕はこの女性の事を知っている。今生まれたばかりだろうけれど、僕は彼女とどこかで出会っている。

 そう考えると、はっきりとしない記憶の中から女性の名前が浮かんで来た。レイシア。そうだ、確か僕はこの世界でスライムとして生を受け、レイシアに召喚されて知性を手に入れたんだった。

 それを想い出すと、今まであった事がぼんやりと理解できて来た。最後には魔王軍に所属して勇者に殺されたんだったな。と言うことは生まれ変わったという事で、まず間違いないんだろう。


 レイシアは僕を抱いたまま、でかいドラゴンの側に歩いて行く。このドラゴンは僕の母親のドラゴンか。そしてその側に一人の男が立っている。いやこの気配は人間ではないな。魔族、いや魔王か。

 あー、想い出して来た。確かホーラックスって言う僕の配下だったように思う。

 「主よ、再び相見えたこと嬉しく思うぞ」

 「がああ(お前も元気そうだな)」

 む、なんだろうこのなんとも言えない感覚は・・・・・・以前にもこんな事があったような気がしてならない、不思議な感覚がする。それとホーラックスが喋っている内容はわかるのに、言葉が通じなくてこちらの言いたい内容が伝わらないというのはとてもじれったい。

 僕が出した声を聞き、レイシアとホーラックスは言葉が通じない事に、ちょっと不安そう? 戸惑った感じなのかな? そんな感じで少し固まった気がした。

 「ホーラックス、それでこのドラゴンは殺してしまったの?」

 「いや、現世の主の母ならば、そのような無体はせん」

 「そう、人里に出て暴れられても困るから、何とか出来るかしら?」

 「ならば、記憶を操作しておくとするか」

 「お願いするわ」

 「終わったぞ」

 「じゃあ、とりあえず先に帰っていてね。送還、魔王」

 レイシアがそう言うと、ホーラックスはその場から消えて行った。

 「それじゃあバグ、私達も拠点に帰ろうか」

 それを聞き、ああ僕の名前はバグだったと自分の名前も忘れていた事に気が付いた。


 レイシアに連れられ、拠点へと転移して来ると僕の周りに複数の配下が集まって来て、その場にひざまずいて来た。僕にはこんなに大勢の配下がいたんだなって、ぼんやりと思う。

 それにしてもこのぼんやりとした記憶は生まれ変わりのせいなのか、それとも生まれたばかりだからなのだろうか? スライムだった時の事もぼんやりしている気がするのは、おそらく知性を持っていなかったからだと予測出来るんだけれどな~

 それにしても、確かこの配下達とは何かしら繋がりのようなものがあった気がするんだけれど、そういうものが感じられない。生まれ変わりの弊害とかのせいなのかな?

 こちらが困惑しているように、配下もまた困惑しているようだった。

 「主はまだ覚醒していない様子だな。しばし休むがいい」

 「そうね、まだ生まれたての赤ちゃんだし、直ぐにどうこうなる事じゃないだろうしね。バグのご飯を用意してくれるかな? とりあえずご飯にしてゆっくり休んでもらおう」

 「そうだな」

 しばらくして、透明な瓶のような容器に白い液体を入れたものを持って配下がやって来る。確かこの配下は料理が得意だったラグマイズだったか? 何だそれは? ご飯を用意するとか言っていたから、肉とかだと思っていたのだが?

 レイシアもそれがなんなのかわからなかったようで、確か神官だったかな? ベルスマイアという配下がレイシアから僕を受け取ると、その瓶の先を僕の口に突っ込んで来た。

 「これはこうやってミルクを飲ませる哺乳瓶と言う道具です」

 「ヘー」

 僕は自然とそれを吸ってミルクを飲んでいた。体がどうすればいいのかを知っていたって感じかな? そして瓶の中にあるミルクを飲み干すと眠くなって来て、そのまま寝てしまった。


 目が覚めると、何やら籠の中に布が詰められていて、その中に入れられているのがわかった。

 「バグ、目が覚めた? 直ぐミルクを用意するからね」

 そう言うとレイシアがでかい箱のような物からミルクを取り出し、魔法も使わずに火を付けて暖め出した。何だろう、どちらも見たことがあるような気がするというか、確か自分で造った物のような気がするのに、よく思い出せない。確かあの道具は魔道具と呼ばれるものだった気がするんだけれど・・・・・・でかい箱は、開けた時に氷の精霊でもいるかのように冷たい気配が漂っていた。

 僕が記憶を探っていると、レイシアがミルクを飲ませて来たので直ぐにどうでもよくなってしまった。そしてお腹が満腹になると、また睡魔が襲って来るのに合わせてレイシアが背中を撫でて来て、その優しい温もりに安心感を覚えて眠りに落ちる。

 何度かそんな感じで、起きてはミルクを飲みまた眠るといったことを繰り返した。そのうち起きていられるようになって来ると、少しは頭の中がすっきりした気がする。

 確か得意技とかを学べば、会話とかも出来るようになるかもしれないんだよな? でもって得意技を手に入れるには、モンスターを倒して行けばよかったんだと思う。そうやって強くなって行けば、進化するんだったか?

 ちなみに今の僕にはどんな得意技があるのだろうか・・・・・・

 何か調べる方法があった気がするのだが、よくわからない・・・・・・

 会話できる得意技を覚えるまで、レイシアに聞く事も出来ないってことだろうな~

 まあ、当面やる事が決まっただけでもよしとしておこう。さて、問題はどうやってモンスター狩りに向かうかということだな。確かこの拠点と呼ばれている場所は、外と繋がっていなくて僕一人では外に出られない構造だった気がする。

 どうしたもんかと悩んでいると、そういえば昔にもこんな風に困った事があった気がするな。えっと確かその時は絵を描いたんだったっけ。

 周囲を見渡してみるけれど、いらない木切れとかは見当たらない。いや、素材倉庫が確かあったはずだ。確かメインになっているここの近くに生産作業場が繋がっていて、その奥に倉庫があったはず。僕がそっちに移動して行くと、後ろからレイシアが付いて来ていたので、木片があれば対話できるかもしれないな。

 記憶を辿り、倉庫を見付けて手頃な木片を手に入れた僕は、早速爪でそれを削って絵を描いてみる。何故かモンスターは印象に残っていたミノタウロスで、次に自分を描こうとしてふと自分は何だと考えた。

 手を見てみると、何か作業をするには不自由がありそうな前足になっている。ちょっと引っ掛けたりとかには使えそうだけれど、物作りとか出来る程器用では無さそうな、人間の手とは比べ物にならないくらい不器用そうな前足だった。

 確かどこかの部屋に、姿が見られるような所があったな? 何の為の部屋だったか・・・・・・

 とにかくそこに向かってみるか。

 確かメインの部屋に僕とレイシアの部屋があって、レイシアの部屋の隣が姿を見る事ができる所だった気がする。

 ヨチヨチと歩いていると、レイシアが抱き上げてくれたので、行きたい方向へ前足を上げて伝える事にした。そういえば、以前の僕は空が飛べたような気がする。あれはどうやっていたんだったかな? 普通に羽が生えていたような気もするな。

 そう思い背中辺りを気にしてみると、そこには確かに翼らしきものが生えている事に気が付くけれど、どう見てもこれは空を飛べる程発達していない気がする。つまりまだ空を飛べないって事だろう。


 レイシアに連れられ入った部屋は、部屋の壁全てがキラキラしていて僕達の姿を映し出している不思議空間だった。しばしその空間に驚いていたのだけれど、映っている金色の物体に気が付き、目を凝らして見る。レイシアに比べれば随分と小さいそれは、ドラゴンか?

 ドラゴンってこんなに小さいんだな~。これじゃあただの蜥蜴って感じに思えるけれど、未熟な羽が付いているのが違いといえば違いかもしれない。

 まあいい、とりあえず自分はドラゴンだと認識して、木片に絵を描き込んで確か線を引っ張るんだったかな? この線はどういう意味だったか・・・・・・何か意味があった気がするのだが思い当たらない・・・・・・

 とりあえずレイシアに見せて反応を見てみるとしよう。

 「ひょっとして、経験稼ぎ?」

 あー、確か強くなる為の作業をそう言っていたんだったか? たぶんその経験稼ぎっていうので合っていると思うので頷いておいた。

 「ホーラックス、いるかしら?」

 「ああ、ここにいる。何用だ」

 「バグの経験稼ぎ用のダンジョンが欲しいんだけれど、用意してもらえる?」

 「主の為ならば、明日までには造ってみせよう」

 「お願いね」

 おー、絵での意思疎通に成功した。これを考えた者は頭がいいな~。まあとりあえず、経験稼ぎとやらを始めるのは明日からといった感じだから、今日のところはのんびりとしておこう。

 そう思っているとメインとなる部屋でレイシアがデザートを頼んでいた。あー、確か好きなデザートを選択する為の見本になる絵とか描き込んだ本? そういう物も確かに用意とかしていたな。そう思いつつも美味しそうなデザートを僕も選ぶと、配下のウッドゴーレムがどこか嬉しそうに移動して行く。確かあの配下は仕事を与えられるのが、好きだった気がするな。

 しばらくして出て来たデザートにかぶりつくと、うん中々いいんじゃないかって感じた。味わって食べているとレイシアも幸せそうにしているのが見て取れる。何だかこっちまで心の中が暖かくなる幸せそうな表情だな。そうだ、これらのデザートはレイシアが喜ぶだろうと僕が考えたものだったはずだ。この配下もそれで創った気がする。

 デザートの後レイシアの一人お喋りのようなものを聞いているうちに、いつの間にか眠ってしまったようだった。


 翌日、目が覚めるとホーラックスが声をかけて来た。

 「我が主よ、ダンジョン製作が完了した。いつでも行くがいい」

 「がああ(わかった)」

 レイシアが僕を抱え上げ、その後ろからホーラックスが付いて来た。早速ダンジョンへと連れて行ってもらえるようだから、経験稼ぎとやらを始めることにする。

 まだ飛べない僕の為に造られたダンジョンなのか、ヨチヨチと数歩歩くとモンスターの方から湧いて来てくれるようだった。初めに出て来たのはゴブリンの集団で、数は二十体くらいかな? いきなり一杯出て来たな~。しかもゴブリン達は自分達より小さな獲物を発見したとばかりに、こちらを馬鹿にしながらいたぶるようにゆっくりと襲い掛かって来る。

 確かドラゴンってブレスを吐くものだった気がするけれど、ゴブリンにブレスを吐くとか一発で終わりそうで、経験稼ぎとかいうものにならない気がする。それに自分の体が、どれ程の性能を持っているのかを知る為に、直接戦ってみるのが一番いい気がした。

 と言う訳で、やって来たゴブリンとの乱戦に突入したのだけれど、こいつら武器を持っているのでその分間合いが離れていて上手くこちらの攻撃を当てることができない! 身長差もあるし未発達な体のせいで、素早い動きが出来ない事もあって苦戦する事になってしまった。

 そうだ、油断したらやられるのが当たり前だった! そう思い直し、お試しとか相手が格下だとか考えるのは止めて、ファイアーブレスを吐き出した。そのブレスで半分のゴブリンが黒焦げになっていなくなる。

 それを見た残りの半数は自分達がいたぶろうとしていた対象が、へらへらしていられるような相手ではなかったと今更ながらに感じ取ったのか、慌てて距離を取ろうとするけれどそうはさせなかった。もう僕は相手を舐めてかかる事はしない。息を吸い込みブレス攻撃で残りのゴブリン共を一掃してこの戦いを終わらせた。

 さて、戦闘が無事に終わりいろいろとわかった事をまとめるか。今の僕の武器はまずファイアーブレスだけだと考えた方がいい。鱗がある為、ゴブリン程度の攻撃ならある程度弾く事は出来そうだけれど、懐に入り込まれる事はこちらの負けを意味すると考えておいた方がいいかもしれない。

 今の僕の足では相手の攻撃をかわす事はおろか、逃げたり相手に接近したりという自由な行動が取れない事がわかった。そう考えると、ブレスが効かない敵が出て来たら終わりってことだな・・・・・・それと、毎回ブレスのみではたいした経験が稼げない気もする。

 しばしその場で自分の体の使い勝手を試してみることにしたけれど、牙を突き立てるにもやはり相手との距離感が大事だという事がわかっただけだった。尻尾攻撃も、はっきり言ってしまえば目の前にいてくれなければ通用しそうに無いな。

 ある程度理解すると、ブレス一択で進むしかないと思い知る。そうなると、今回はブレスのみでどれだけ経験稼ぎっていうのができるかを見る方がいいかもしれないな。

 考えを切り替えて進む事にした。

 そんな僕を離れたところからレイシアは、心配そうに見詰めて来るのがわかるけれど、レイシアと会話する為にもがんばらないといけないなと考えて、経験値集めを続ける。


 次々と出て来る雑魚モンスターを、ブレスで薙ぎ払って進んで行くと、とうとう炎が効かない敵が現れた。厄介な、っと考えていてもこればかりは仕方がない。接近しようにも相手は接近を嫌う魔法タイプのモンスターだったので、打つ手がなくなったんだけれど、魔法という武器があることに思い至った。

 問題は、僕に魔法が使えるのかどうかだ。

 「がああ(アイスランス)」

 発動しない・・・・・・これは僕には魔法が使えないのか、相性が悪いのか・・・・・・

 「ぐがああ(ウインドカッター)」

 これも発動しない。

 「ぐあああ(ライトブリット)」

 僕に魔法適性が無いのかと思っていたけれど、三回目で魔法が発動した事が確認できた。発動したライトブリットが相手を打ち抜き無事に進む事が出来るようになる。それはいいのだけれど、自分には何が使えて何が駄目なのかを把握しておかなければ、この先は危険そうだと思った。

 再び歩みを止めると、考え付く限りの魔法を使っていく。どうやら火の属性だと思われるものは問題なく発動して、続いて光属性も使えることがわかった。しかしそれ以外がまったく反応してくれない。つまり使える系統が二種類に限定されているという事らしい。

 確か魔法には属性と言うものがあって、何かの方法で自分の使える属性を確認する事が出来た気がするな・・・・・・

 少々厄介ではあるものの、何が出来て何が出来ないかがわかれば、まだやりようはあると思う。火も光も効かないモンスターが出て来ないことを願うばかりだな~


 それからしばらく進み続けて、体力やら精神やらの疲労を感じて、今日はここまでにすることにした。後ろを向くとレイシアがやって来て寝床まで連れて行ってくれる。言葉は通じなくても、僕の考えを理解してもらえるのは嬉しいなって感じる。

 そして寝床に着くと、僕に水晶を差し出して来るのだけれど・・・・・・はて、この水晶には見覚えがあるものの、何の為の魔道具だったのかがわからない。使い方もわからないそれが、僕の作った物だということだけは理解が出来た。

 水晶を前にして首をかしげていると、レイシアの溜息が聞こえて来た。

 「やっぱり、生まれ変わることで、記憶を一部失ってしまったのね」

 多分そうだ。僕は自分でもわかっていたので、頷く事でそれに答えた。

 「これはね、ステータスを見る為の水晶なの。バグが一番初めに作り出した魔道具なんだよ」

 そう、この水晶にはよくわからないなりに、魔力を感じる事は出来るし懐かしい想いも感じる。レイシアがもう一つ水晶を取り出すと、僕は自然とそれに触れていた。体がまるで覚えていたというように、勝手に動いたみたいだ。

 僕が水晶に触れたのを確認したレイシアが、小さな板みたいな物をさっきの水晶の上に乗せている。ああ、そうだあの水晶はそうやって使うものだった。相変わらずそれで何が起こるのかはわからないままだけれど、そういう物だと想い出すことは出来た。

 やがで作業が終わったのか、板切れを僕の前にそっと置いた。


 名前 バグ  種族 ゴールドドラゴン・パピー  職業 魔法使い

 LV 35  HP 561  SP 348

 力 92  耐久力 126  敏捷 16

  器用度 27  知力 67  精神 86

 属性 火 光 生命

 スキル ブレス(火・光) 簡略詠唱


 何となく懐かしく感じるそれが何なのか、僕には理解できなかった。でも属性という項目は何となくわかる。これが僕の操る魔法に関係していたはずだった。そしてこれを見る限り僕はまだ会話する為の技術を会得していないという事も理解する。

 とにかく今は経験稼ぎというものを続けて行くしかないかなって考えていると、疲れていたのかそのまま眠りに就いてしまった。


 翌日からは暇を見て経験稼ぎに出かける。

 配下の者達がたまに僕のところへとやって来るので、そちらにも声などをかけていく。残念ながらお互いに意思の疎通は出来ないままだけれど、それでも僕に声をかけてもらえると、それなりに嬉しそうにしてくれたからやって来る配下にはなるべく対応するようにした。

 どれくらいそんな生活を続けていたのか、ある時一日中眠くて眠くてどうしようもなくなって、経験稼ぎが出来なくなってしまった。そんな僕を見たホーラックスがこう言う。

 「おそらく主は休眠期に入ったのだろう」

 休眠期、僕はしばらく眠り続けるのだろうか? 竜の休眠期間って確か何年も眠るんじゃなかったか? そんなのは嫌だと思いつつもこの睡魔には抗いがたく、やがて意識が落ちていった。


 一体どれくらいの月日を眠ってしまったのだろうか。寝ていた間、レイシアや配下の者達は寂しくしていなかっただろうか。そんなみんなの事を考えると、目を覚ます事が怖くて仕方なかった。

 それでも一秒でも早く目を覚まし、元気な姿を見せてあげなくてはと、勇気を出して起き上がる。

 「主よ、目覚められたか」

 「がああ(どれくらい寝ていた?)」

 側にいたのはホーラックスだけだった。ひょっとしたら一年どころか、何十年も眠ってしまったんだろうか・・・・・・言葉が通じない事はわかっていても、どうしてもそう問いかけずにはいられなかった。

 「心配はいらん。主の眠りは一ヶ月にも満たぬ」

 それを聞いて僕はホッと安心した。みんなにとってはとても長い時間だったかもしれない。それでも何年も眠り続けるより余程いいと思えた。

 やがてやって来たレイシアが、僕に水晶を渡しながら声をかけて来る。

 「おはようバグ。大きくなったね」

 大きくなった? 水晶を受け取りながら自分の体を見回してみると、周囲には脱皮した後なのか、鱗の付いた革のような物が散らばっていて、どことなく体もしっかりしている事にやっと気が付いた。


 名前 バグ  種族 ゴールドドラゴン・パピー-ゴールドドラゴン・チャイルド  職業 魔法使い

 LV 35-41  HP 561-783  SP 348-681

 力 92-117  耐久力 126-154  敏捷 16-51

  器用度 27-49  知力 67-86  精神 86-109

 属性 火 土 光 生命

 スキル ブレス(火・光) 簡略詠唱 魔力向上 二重詠唱 耐性(毒・支配) 飛行


 板切れの文字がいろいろと変化している。大きくなったのは、赤ちゃんから子供へと変化したかららしい。それと板を見てどうやら空を飛べるようになったようだったので、僕は早速翼を羽ばたかせて飛んで見ることにした。

 昔自由に空を飛んだ記憶が蘇り、意外と楽に空を飛ぶことが出来た。ただドラゴンが羽ばたくと周りに嵐が起こった様な風が発生して、部屋の中が荒れてしまったのにはもう少し考えて行動しなければいけなかったとちょっと反省する。何となく昔はこうではなかった気がしたんだけれどな・・・・・・

 申し訳ないとみんなに頭を下げる。

 配下はみんな気にしていないように片付けを始め、レイシアもそれを手伝いながら苦笑いしていた。

 「主よ、ダンジョンの変更に時間を頂くぞ」

 「がああ(面倒をかける)」

 赤ちゃんから成長した事だし、ダンジョンも変えてもらった方がいいだろう。中々良く気が付く配下である。確かホーラックスは僕にとっての右腕ともいえる配下だった気がする。だからなのか、言葉が通じなくてもおおよその事を察してくれるみたいで嬉しかった。

 早く何らかの手段でみんなと会話したいものだな。


 急ピッチで改装してくれたのか、ダンジョンの改装が終わったらしく翌日からまた、ダンジョンに潜る事にした。

 水晶の使い方がわからなくて、適度にステータスとやらを更新してもらっていると、ドンドンLVというのが上がって行くのがわかる。

 自分ががんばっている事がこうして目に見える形でわかると、成長しているんだって実感する事が出来て、結構楽しいものだなって感じるな。

 おかげで何日も飽きずにダンジョンに潜る事が出来たよ。ちょっと夢中になって潜っていると、結構LVが上がってとうとう念願の会話が使える得意技を習得した。


 名前 バグ  種族 ゴールドドラゴン・チャイルド  職業 魔法使い

 LV 41-56  HP 783-967  SP 681-914

 力 117-131  耐久力 154-173  敏捷 51-89

  器用度 49-71  知力 86-112  精神 109-135

 属性 火 土 風 光 生命

 スキル ブレス(火・光) 簡略詠唱 魔力向上 二重詠唱 耐性(毒・支配) 飛行 罠察知 潜伏 待機魔法 自動回復(微弱) 双爪撃 念話


 ダンジョンばかり潜っていたからか、段々盗賊っぽくなって来ている気もするけれど、これでやっとみんなと話をすることができそうだ。

 『レイシア、聞こえるかい?』

 「バグ、やっと話が出来るね」

 話しかけるとレイシアが泣きながら抱きしめて来た。

 『ホーラックス。いろいろと迷惑をかけたな。今までありがとう』

 「我が主よ、よくぞ戻った。歓迎する」

 僕が念話という方法で会話出来るようになったと知った配下が続々と顔を見せにやって来る。それが嬉しくて、前の人生はとても素晴らしかったのだと思うことが出来た。それから配下一人一人と話をして、今まで苦労をかけて申し訳ないと、これからもよろしくと話しかけていった。

 僕が配下とそうして会話している間、レイシアはずっと離さないって感じで僕のことを抱きしめていて、余程心配をかけたんだと感じ取れる。そしてその抱きしめる手の暖かさに、レイシアの気持ちが詰まっている様な気がして、納得出来るまで好きにさせようと考えた。

 僕としてもレイシアの温もりが感じられて落ち着くしね。


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