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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十四章 動き出す世界
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検証

 戦闘は、ミノタウロスが前に踏み出す事で唐突に始まった。尻尾を丸めて震えていたコボルトは、それに反応してできるだけ距離を取るように走り出す。LV差があるものの、どうやら素早さならコボルトの方が上のようで、ミノタウロスはコボルトの動きに対応出来ていないようだね。

 それを理解したコボルトが、やっと少し冷静になれたようで背後に回り込めた時に初めて攻撃へと行動を切り替えた。まあ、爪で背中を引っ掻いて様子を窺うといった感じなのだけれど、当然のように攻撃は通じていないかな。それを見たコボルトが再び警戒したのか、距離を取って隙を窺う。

 大技が出ないのでどうしても誘惑を抑えきれなくなって、コボルトのステータスを確認してしまったのだけれど・・・・・・この子・・・・・・ほんとにドノーマルのコボルトじゃん・・・・・・これは望み薄だな・・・・・・

 その後もコボルトが何度かちょっかいをかけるもののダメージには繋がらず、ミノタウロスもちょこまかと動くコボルトが目障りなのか、攻撃が大振りになって来た。

 そしてコボルトの攻撃が次第に手首や足首に集中していく。その攻撃は今までのような引っ掻き攻撃とは違い、五本の爪を一箇所に集めた全力攻撃みたいなもので、浅いとはいえやっと皮膚を削るようなダメージを与える事に成功し出した。まあ、あの程度では一ダメージあるかどうかって感じではあるけれどね。

 目的は手足の腱を斬る事なのか、出血による持続ダメージを狙っているのだろうか? コボルトは同じ場所を何度も攻撃して行く。もどかしい時間が経過して、ミノタウロスの手足から目に見えて血が噴出す頃、とうとう痛みによってかそれとも握力を維持できなくなったからなのか、武器を取り落としたミノタウロスの背後に回ったコボルトは、その背中に飛びつきミノタウロスの首に齧り付いたり喉を引っ掻き出した。

 ふむ。ようは窒息という一発逆転の方法が無くなったものの、血を流させる事ができれば生物を倒す事はできるという事だな。問題はLV差とか身体能力の差がどれだけあるかで、これが可能な事かどうか変わって来るという。

 ミノタウロスはその後、背中に取り付いたコボルトを引き剥がすだけの腕力が無い様で、徐々に弱っていって倒れる事になった。この無謀ともいえる戦いで、コボルトのLVは一気に八つも上がっていた。


 さて舞台の後始末が終わり、新たなミノタウロスが準備されてゴブリン眷族のモッポが、対戦相手になるゴブリンに前に出るように指示を出す。指示を受けたゴブリンは、舞台の外周に大量の砂を準備してからミノタウロスの前に出て行った。

 砂か・・・・・・足を滑らせるか、目潰し辺りでもするのだろうな。まあ砂くらいならどこにでもあるだろうから有りかもしれないな。あの時の試験会場でも、石とか普通に落ちていたし、砂くらい探せばあっただろう。残念ながら歴史のないこの拠点では、砂など落ちていないけれどね。

 それともパペットが掃除しているのかな?

 そんな事を考えていると戦闘が始まっていた。思っていた通り、手に持っていた左手の砂をミノタウロスの顔に投げ付けて目潰しを仕掛けている。そして隙を見ては持っている棍棒で足首や膝裏に強打を叩き込んでいた。

 ゴブリンは普通にスキルを使っているのだな。足を重点的に狙うという事は、コボルト程の敏捷性がない為にそれを補うように相手の機動力を奪おうって作戦だろう。それでもたまにミノタウロスから繰り出される攻撃が当たりそうになって、結構際どい戦いを繰り返していく。

 そのたびに一度距離を取っては外周で砂を補充して、目潰しを繰り返す。さすがのミノタウロスも学習したのか、段々と砂を投げ付けると武器を顔の前に掲げて砂を回避するようになって行った。何度かそんな事を繰り返した時、ゴブリンが砂を投げ終えるとダッシュして膝の皿に向けて強打を放った。砂による目潰し自体は失敗していても、武器で顔を隠してしまった為に、ゴブリンの行動に対処できなかったのだろうね。

 ミノタウロスは痛そうにしてはいるが、それで膝を痛めるといった事はなかったようで、それどころか度重なる攻撃に怒って武器を無茶苦茶に振り回している。そしてまた砂を持ってやって来たゴブリンをうっとうしそうに睨み付けて襲い掛かって行く。

 ゴブリンは馬鹿の一つ覚えのように砂を投げ付けるが、ミノタウロスはわかっていたとしてもそれを防ぐ為に手で顔を庇うしかなく、その一瞬を付いてまた強打を膝に叩き込んでいった。

 どれくらいそんな攻防を続けたか、やがてミノタウロスが思い付いたといわんばかりに、砂を取りに行くゴブリンを背中から襲い掛かり出した。今までは、砂に対して警戒して距離を取っていたけれど、砂を手に入れる前に倒そうって考えたのだろうな~

 その攻撃を転がって避けたゴブリンは、そのまま砂をかき集めて顔に投げ付けて、ミノタウロスがのけぞっている間に強打を叩き込む。

 幾度も叩き込まれた攻撃に、とうとう耐え切れなくなったのか、ミノタウロスは膝を付いたその隙に、ゴブリンの強打が位置の低くなった喉へと炸裂した。

 さすがにこの攻撃はきつかったのかミノタウロスは武器を放り出し、床の上を転げまわった。そしてある程度落ち着いたのか動きを止めたミノタウロスの後頭部に再び攻撃を加える。

 何度もそれを繰り返して結構な時間をかけてミノタウロスを倒す事ができたようだった。

 まあ、時間はかかったものの、結果としてちゃんとミノタウロスを倒す事に成功はしたかな。不利は不利として、周りにある物を有効活用していけば、やってできない事もないといった感じかな?

 ゴブリンの方といえば、極度に疲労しているのと、転げまわったり攻撃がかすったりでボロボロな感じだった。


 さて次はオークかと思って見てみると、眷族のマークスは首を横に振っていた。ふむ、オークはゴブリンよりさらに敏捷性が劣るから、ミノタウロス相手だとまともに戦えないのだろうな。とすると、ゴブリンでギリギリ勝てるって事か。オークになって来ると、特殊な何かが必要になって来るという感じだろう。

 「がんばってくれてありがとう、今後も何かできる事がないかしばらく試してくれ」

 そう言うと眷族達は頭を下げてそれぞれに意見交換をし始めた。付き合わせたメリアスにも礼を言って一度休憩する為に休憩所へと向う。そこにはフィリオがいて、食事をしながらくつろいでいた。

 「よう、ここには慣れたか?」

 せっかくなので、話しかけてみる事にする。

 「ああ、バグか。大分慣れたよ。ここでこうしていると、ここが魔王軍だって忘れそうなくらいだけれどな」

 「他のやつにも言った事があるのだが、ここは魔王軍という名前の人間の国だとでも思っていればほぼ間違いはないぞ。多少特殊な技術があって、モンスターが一緒にいるくらいで、まあ他の国でもモンスターの一部を調教して操っているだろうから、そこまで差があるとは思えないしな」

 「はあ、なるほどな。そう思えばそこまで違和感も湧かないか・・・・・・」

 「まあ、本当の魔王軍なんて、大昔に表れた最初の魔王だけらしいしな。こっちとしてはそんなやつ知らんって感じだ。実際僕としては一・二年くらい冒険者として町で暮らしていたし、その前はモンスターの姿でだが、普通に町で生活していたからな」

 「なんだか人類の為にとか、偉そうに言ってて恥ずかしくなるな。結局ただの人間同士の戦争ってだけなんだな」

 「まとめてしまえばそうだな。お前にしてみれば気が楽になってよかったんじゃないのか?」

 「確かにな。生意気言ったようで悪かったな。それとメリアスはお前の部下なんだろう? いろいろ迷惑をかけてすまない」

 「別に気にする事もない。あいつらにだって自由意志があるのは理解していたからな。今回はそれが実際に証明されていろいろ確認できてよかったよ」

 「俺はここで働かなくていいのか? ここが魔王軍という国だというのなら、俺は無理に意地を張る必要はない。これからは協力だってしていけると思うんだが」

 「はっきり言えば、人間の戦力は必要ない。外から見ればここは魔物の国でなければいけないからな。ここでできる事でもしていればいいさ」

 「わかった、自分にできそうな事でも探してみるよ」

 「まあ、のんびりやって行けばいいさ」

 「ああ、これからよろしく」

 そう言ってフィリオがメリアスの方へと歩いて行った。どうやら僕らが話しているのを見付けて心配して覗いていた様だな。


 しばらくお茶でも飲んで、流れて来る音楽を聴きながらのんびりしていると、レイシアがやって来た。レイシアは今、出来る範囲での合成表作成を担当しているのだが、素体のLVが上がらなければ進化させる事はできない為、わりと時間に余裕があるようだ。

 「バグも休憩? それとも暇なんだったらどこかに遊びにでも行く?」

 「人間の町に行くよりここの方がのんびりできている気もするが、急ぎの用事とかも無くなったしどこか行きたい所があるのなら行ってもいいよ」

 「じゃあ、どこか町でもぶらつかない?」

 「構わないが、ギルドとか行くのか?」

 「そうね。ギルドもちょっと覗いて見たいかも」

 「一年も経っているしな。久しぶりに町がどういう風に変わっているのか見に行くのもいいかもしれないな。どこの町に行くのかは、決めているのか?」

 「バグが気になるのなら、初めはレイバーモルズ町でいいかも? 後でリンデグルー自治国の方にも行ってみたいけれど」

 「ああ、そっちもどうなったか気になるな。じゃあそんな感じで回ってみるか~」

 「うん!」

 一応人間達とのかかわりを止めたので、チェンジの魔法で前と違う姿へと変わる事にする。ギルドに寄るといっても、おそらく僕らのLVだと経験になるような依頼はないだろうし、お金も必要ないだろうからな~。そんな僕を見たレイシアも魔法の幻覚辺りで姿を変えていた。

 準備が整ったので転移して町へ向うと、早速町の中を見て回る。適当な露店で買った肉と野菜を串に刺して焼いたねぎまのようなものを食べてみると、まあそこそこ美味しいと思うものだったので、町の食生活は充実していると判断できる。レイシアを見てみると、満足そうに食べていたかな。

 僕としてはこれなら焼肉のたれを付けて焼くか、特性の味噌だれがいいかなって思ったのだけれど、レイシアの口には合っていたようだね。まあレイシアが満足できたのならいいや。

 こっちの世界は日本と違って食べ物の充実具合が微妙だから、この町で作られた肉や野菜、パンなどはとても美味しいものだろう。

 他所の町で作っている野菜などは青臭くて苦味が強く、子供なら食べたくないって言われそうなものばかりである。日本のようにより美味しいものに品種改良するみたいな発想は、おそらくこちらには無い。それは肉や卵もそうだろう。卵にいたっては、売り出される事自体がそこまで多くはないらしいしね。

 海や川がある場所なら、魚の方が豊富に売られているのだそうだ。

 治安については僕らがいた時より少し悪くなっているものの、異形に変わる程の事件は今のところ起きていないみたいだな。おそらくは時間の問題ではあると思うけれど、まあもうしばらくは平気だろう。この国に難民という余所者を引き入れてしまった分は、面倒を見ておこうとできるだけ詳細な情報を集めさせる事にする。

 将来的に事件を起しそうな人物を後で始末しておこう。あくまで可能性でしかないのだけれど、今後この国に来る事はないだろうからせめてそれくらいはしておかないとだろう。

 一通り見て回って満足した僕は、レイシアにもういいよと言って、リンデグルー自治国の方へと向う事にした。


 「まずはどこに行く?」

 「うーん。特に目的地は無いけれど、とりあえずギルドでも覗いてみる?」

 「わかった。じゃあのんびりギルドに向えばいいかな」

 「そうね。のんびり行こう~」

 「そういえば、あっちに行く事について、ブレンダと何か話しをしたのか? 向こうに行っても普通に会えるだろうから、特に別れの話とかはしていないとか?」

 「うーん。忙しくなるって話くらいかな。だから私もバグも、今後連絡が取れないかもしれないって言っておいた」

 「なるほどね。寂しくないか? 親友だろう?」

 「そこまで寂しいって程でもないかな。今は結構充実しているよ」

 「そうか」

 町の様子を窺いながらそんな話をしていた。王政から政治体制が変わっているものの、町の雰囲気に変化は見られないな。ギルドに着くまでの間に、ブレンダの店があったのでちょっと寄って見たけれど、品揃えはかなりいい感じだ。今のところはまだ在庫があるのか、僕の作っていた魔道具も置かれているし、マグレイア王国のレイバーモルズ町で育てられた野菜や肉なども売られているようだった。

 ひょっとしたら魔道具は徐々に減っていって、徐々に野菜や肉などに変わっていくのかもしれないな。他に店も除いて見たが、ブレンダの店ほど充実している様子は無かった。


 ギルドに着くと早速中へと入って行く。以前と違いお互いに違う人間の姿をしているので、周りから向けられる視線は、見かけないやつが来たなって感じのものだった。それらの視線を無視して依頼が張り出されている掲示板に真っ直ぐ向い、どのような依頼があるのかをチェックする。

 緊急依頼で異形退治が二つ、街道沿いに現れたモンスター退治が一つ出ているな。その他にもいろいろとモンスター退治の依頼が張り出されていて、昔に見た時と比べて倍くらいの依頼が張ってある気がする。

 ひょっとしたら魔王様が目覚めた影響で、モンスターが活発化しているとかそういう事かな? 冒険者にとっては稼ぎ時ともいえるだろうが、さて僕らはどうするか・・・・・・

 「依頼、受けるのか?」

 「うんん、やめておく。そういう目的で来ていないし。受けるメリットが無いからね」

 「そうか。他に見るものは何かある?」

 「ちょっと食堂でご飯食べながら、ギルドの雰囲気を見ててもいいかな?」

 「生徒が来ているかもしれないから、それもいいかもしれないな。じゃあちょっと寄って行くか」

 「うん」

 ギルドの食堂で、ちょっといい値段のご飯を頼んで二人席のテーブルで食べる事にした。味に関しては・・・・・・微妙だな。まあ日本の料理とかに慣れた舌では、早々美味しいと感じる事ができる料理には出会えないだろうけれど、もう少し調味料を効かせて欲しいところだった。

 もぞもぞと食事しながらギルド内を見ていると、たまに生徒を見かける事ができた。素人っぽさが完全に抜けていて、ベテランとまでは行かないまでも中堅どころの冒険者には見えるな。

 まあ実際の戦闘を見てみないと実力の程はわからないけれど、立ち振る舞いはもう立派な冒険者って感じだった。

 レイシアは何をしにギルドに来たのかなと思い見てみると、周りの噂などを聞いているようだった。噂が知りたいのなら司書パペットに調べさせれば大抵の情報は集まると思うのだけれどな。

 「調べたい情報があるのなら、パペットに調べてもらえば直ぐにわかると思うぞ」

 「そうじゃなくて、このざわざわした雰囲気が結構好きなの」

 「なるほどあっちはあまり人の話し声は聞こえないからな。寂しいから眷族に音楽を演奏してもらっているけれどな」

 「あれはあれでお洒落でいい雰囲気だけれどね」

 「だな。もう少し踏み込んで歌い手でも創ろうかって思ったよ。楽器もドラムって言うのを増やしてジャズっていう音楽なんか、いいなってね」

 「聴いてみたいな~」

 「もう少し活躍の場があれば、あいつらも思いっきり演奏できるのだけれどな。今だとあまり音楽を理解していないやつばかりで、なんだか申し訳ないのだよね・・・・・・一時的にパペットにでも演奏させてみるかな・・・・・・」

 「楽しみにしているね!」

 「ああ」

 ざわめきを楽しんでいるとか言っていたので、しばらく僕も周りの声を聞きながらのんびりしてみる。魔王軍として活動し始めたら、もっと戦闘戦闘って感じになると思っていたけれど、結構のんびりとした生活ができるものだな~

 そんな感じで久しぶりにのんびりと、特に何をするでもなく一日を過ごすことになった。


 翌日からはまた魔王軍での拠点でモンスターのLV上げをしたり、そこそこに知能が高いけれどこちらの言う事を聞いてくれそうなモンスターを探して捕まえようと、データベースを検索していた。

 まあ予想できる事だけれど、知能の高い者は何かしらの理由が無ければいう事を聞いてくれそうに無い者ばかりだね。これがヴァンパイアなら、眷族に出来て絶対服従とかなのだろうけれど・・・・・・

 そう考えると、僕の創り出す眷族を合成していったらいいって事になるのかな? でもそれだと合成するまでも無く強く創ればいいだけだろうし、自分の創造した部下だから、消耗品のように扱いたくないのだよね。よく考えれば、僕の王国を造っている訳でもないのだから、眷族を消耗させるのが馬鹿らしいのだった・・・・・・

 やっぱりモンスターを進化する方向で考えていくべきだな。そうすると長期的に考えて、知能が高くなるように教育していくモンスター牧場みたな物を造るのが理想になるのかな? それならば、比較的言う事を聞かせられて、上手く教育できれば知能の高いモンスターが多数手に入る可能性はあるな。だけれども、これはある意味で合成では無い種の自然な進化だろうな~

 そう考えると知能が高くて繁殖力の高いモンスターを、モンスター牧場で飼いならして行く方針の方が手っ取り早いかな? 丁度テイマーの眷族は二人いるので、上手く躾けられれば反乱とか暴動も起きないかもしれないし、仕事を作ってやる事もできるだろうしね。

 あー後、錬金術で創るホムンクルスという手もあったな。こっちの方法だと、レイシアに負担がかかるから上手く行くようなら新たなパペットでも創って、ホムンクルス製造工場みたいな感じにするのがいいのだろうか? とりあえずはホムンクルスが創れるかどうかから確認して、進化まで持って行けるかどうか聞いてみないとだな。


 レイシアのところへと向うと、LVが上がって来た狼を素体とした合成表の作成をしているらしい場面に出くわした。合成素材は十体で、その大半にカラフルなスライムが配置されている。

 ノーマルの青いスライムから始まり、イエロースライム、グリーンスライム、レッドスライム、パープルスライム、ブラックスライム、シルバースライム、ゴールドスライム、そしてぱっと見は違いがシルバーとわかりにくいのだけれど少し濁った感じのメタルスライム、残りの一枠にクロコダイルがいるようだった。

 邪魔をしないように見学をしていたけれど、ついでに合成結果も気になったので結果を見守る。魔法陣の調整をし終わったらしい段階で、僕が来ている事に気が付いたみたいだけれど、見学しているのがわかったのかそのまま作業を続けていった。

 魔法陣が輝き出してそれが収まった後には、素材にされた魔法陣の中は全ていなくなっていて、素体の魔法陣の中にだけモンスターが残っていた。

 ぱっと見では大きな蜥蜴って感じだったのだが、進化した種族はどうやらバジリスクのようだった。その結果をデーターバンクに書き込み終えると、レイシアは小走りにこちらへとやって来た。

 その後ろでは、進化したバジリスクと狼達が恐る恐るといった感じで、交流している。見ると狼に混じって違う種族になった者が少数混じっているようだった。

 「いらっしゃいバグ。様子を見に来たの?」

 「いや、ちょっと思い付いた事があったからそれの確認をしたくてね。レイシアは錬金術でホムンクルスって創れるか?」

 「それって人造の生命を創るってやつだよね? 多分実力的には出来るとは思うけれど、禁忌の研究だから創り方がわからないよ」

 「あー、そっちの可能性は考えていなかったな。ホムンクルス自体はこの世界にいるのだな?」

 「どうだろう? 理論的なものなら有るって聞いているけれど、実在するのかどうかは確認できていないって話だったと思うよ」

 「なるほどな。そうするとやっぱりこっちは無しで調教して行く方向が一番いいか」

 「素体の確保?」

 「ああ、それと知能が高いやつを育てようと思っていてな、捕まえて来たやつをそのまま進化させて行くと、後々反乱を起こしかねないからな」

 「ああ、そうだね。バグがいるなら逆らわないかもしれないけれど、どこかに行ったら暴れるかもしれないね」

 「今ならレイシアがいれば、暴れる奴は早々いないだろう?」

 「そうでもないよ、暴れた後に取り押さえる感じかな?」

 「進化したゴブリン達か?」

 「うん。たまにだけれどね」

 モンスター牧場計画は、知能がそれなりにあるゴブリンマジシャンとか集めるつもりだったのだけれど、素体を見直した方がいいのかな? 知能が低ければ個人で暴れるだけで済むけれど、頭がいいといろいろな計画を立てて集団で暴れるだろうからな~

 実際に始める前にテイマー達の意見を聞いておいた方がよさそうかな・・・・・・

 「邪魔をして悪かったな」

 「いいよ。私も息抜き出来るしね!」

 「続きをよろしく頼む」

 「うん!」

 テイマー達に意見を聞こうと思っていると、後ろで狼達が騒いでいたのでなんだと思って見てみると、一部の狼が石化していた・・・・・・ ひょっとしてからかうか何かして睨み付けられたのだろうか・・・・・・ バジリスク自身もどこかオロオロとしている様子だった。

 あいつらは石化する事はできても、元に戻せないからな・・・・・・レイシアが作業に戻る前に、リフレッシュの魔法を唱えて石化を解除していた。


 魔王軍内部でモンスターの知能上昇を担当させていたテイマーのリースと、イオルドを呼び出してモンスター牧場計画の意見を聞いていく。

 「申し訳ありませんが、私ではモンスターの相手まではできません。モンスターの家畜化なら問題ありませんが、戦力として育てるのは難しいかと」

 そう言ったのはイオルドで、そういえば家畜の世話をさせる為に創っただけなので、モンスターまでは無理かと思う。出来ないものは仕方ないな~

 「そうか、無理を言ったようで悪いな。それならば手伝えそうな事があったら、リースの手伝いをしてやってくれ」

 「わかりました」

 「リースはどう思う?」

 「そうですね。確かにそのままですと反乱を起される可能性は高いと思われますわ。ですがこちらで繁殖させて生まれた子供を育ててやれば、成長後も進化後も比較的従順になる可能性はあると思います」

 あー、子供の頃から教育していけば、危険思想を抑える事ができるか・・・・・・なるほど、相談してみてよかったな。これなら計画を進められそうだな、

 「それではその方向で準備をしてくれるか?」

 「わかりました」「了解ですわ」

 モンスター牧場を造るのに、まずはゴブリンのマジックユーザーをかき集めて来ないとだな! 早速各地を巡り、ゴブリンマジシャンと、ゴブリンシャーマンを捕まえて来たものの、こいつらってぱっと見の男女の差がわからないな・・・・・・繁殖してもらわないといけないので、男女がいなければ捕まえて来ても増えないのだよね・・・・・・

 そもそもが、生まれて来る子供が確実にマジックユーザーになる保障も無いな? そこも調査と実験のしどころかもしれないな~


 リースに確認してみたところ、男女比は偏っているものの、繁殖させるのには問題ないだろうという話であった。子供については、知能が高ければそれ程マジックユーザーにこだわらなくていいかもという意見だったので、確かに知能が高ければ普通のゴブリンだったとしても問題はないかと、そのまま計画を進める事にした。


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