表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十四章 動き出す世界
68/240

魔王様

 勇者や人類軍との戦いに切りが付いたので、僕はこの一年で起こった事を把握する為に情報を確認していた。それによると僕とレイシアが拠点としていたマグレイア王国に対して、隣国の軍事国家ファクトプス国と技術国家フラムイスト国の連合国が戦争状態になっていた。

 皇女殿下がいる国ドラグマイア国と他の二国は中立の立場を貫いていて、現在交流はないらしい。戦争の理由は僕らがフラムイスト国に潜入して、視察をおこなっていたベイグランド第一王子を暗殺したという話になっているようだ。

 実際に連合軍がマグレイア王国へと迫って来て、それに対抗しようとマグレイア王国側でも兵士を集めて防衛をおこなおうと考えていたようだが、濡れ衣を着せて来た連合軍に怒ったレイシアと手助けにやって来たウクルフェスの二人によって連合軍は壊滅、以降は冷戦状態へと突入しているそうだ。

 リンデグルー連合王国は正式に魔王軍の襲撃を受けて王家が滅んだ事を公表して、今後はリンデグルー自治国と名を改め市民代表として各ギルドが話し合いによって運営する、ギルド合同運営の自治国となる事になったようだ。

 そして今回の勇者の出現により、リンデグルー自治国より東側は対魔王軍を掲げた徴兵や、支援行動で国民に負担がかかり異形化する人間が増えて著しい治安の悪化が目に付いているみたいだな。

 その為サフィーリア教会には以前にも増して難民が数多く押し寄せ、その救済として僕に支援を要求されていた。これに関しては影武者パペットが出向いて打ち合わせをして、難民を第二・三の町へと誘導したそうだ。マグレイア王国の人口はこれによって爆発的に増加したといってもいいね。

 家畜の世話をしていたイオルドは現在レイバーモルズの畜産を市民に全部任せて、第二・三の町で活動しているそうだ。野菜の方は土地が豊かではない為に、ビニールハウスをそれぞれの町にも設置して市民に育てさせているという話だった。

 こっちはたまに虫に入り込まれて野菜が食べられるなどの被害も報告されている。まあ、人が出入りしたら多少は仕方ないかな?

 治安については司書パペットが監視して維持している為に、他所の町よりは良いらしいがそれでもゼロにはならないそうだ。まあそれでも自警団ががんばっているようで、何とかなっているようだね。


 さてこんな状況であるがそもそも僕が一年も封印される原因になったファクトプス国が、難癖付けて攻めて来ているのを何とかしたいと思う。フラムイスト国も約束を破って暗殺に協力していた時点で同じく報いを受けてもらいたいところだな。

 そう考えていたら、黒騎士が僕を呼びに来た。

 「魔王城へ来てくれるかな? 魔王様がお呼びだ」

 そういえば、魔王様には一度も会っていなかったな。そして魔王様が動いたって事はいよいよ魔王軍として活動するって事かな? それとも新たな運命の勇者とやらが現れたのか?

 まあとりあえず話を聞きに向かう事にする。それにしても、黒騎士・・・・・・やはり僕の拠点へも自由に出入り出来るのか・・・・・・

 もやもやした気持ちはあるもののレイシアを連れて魔王城へと向う事にした。

 無駄に豪華に改装された玉座の間に僕達がやって来ると、玉座の後ろの扉からおそらくは魔王だと思われる人間がやって来た。それを受けてオーリキュース王子が頭を垂れて出迎えたのがちょっと意外だった。魔王として敬っているのか?

 「お初にお目にかかります、初代勇者ゲオノース様。私の祖先は貴方様のパーティーメンバーだった仲間の家系で私の名はオーリキュース・ライトン・マグレイアといいます。以後お見知りおきを」

 「マグレイア殿か、懐かしいな」

 あー、そういえば王子は遠い関係者だったな・・・・・・なるほどそれでかしずいている訳だったか・・・・・・


 その後も二人で会話していたので話をまとめてみると、ゲオノースは魔王を倒したまではよかったのだけれど倒した時に魔王から呪いを受けて不老不死になってしまったらしい。その後帰還して英雄として称えられたものの、リンデグルー連合王国の裏切りで家族や仲間を殺された時、ゲオノースの中に狂気にも似た怒りが沸きあがると、強い破壊衝動が渦巻いたそうだ。その時は何とか感情を押し殺すことができたのだそうだ。

 その後逃げたり無事な仲間を助けようと奔走して、灯台下暗しとばかりにリンデグルー連合王国の森に隠れ村を造りそこで生活をしていたのだけれど、結局パーティーメンバーは誰も助ける事ができなかったそうだ。

 村に隠れ住んでいたのは、ゲオノースと関係を深めた人々や、仲間の家族とかだったらしい。そしてその頃には聖剣といわれる自分の剣を持つ事は、できなくなっていたそうで神殿を造りそこに安置したのだそうだ。

 そしてゲオノースが隠れ村を出る事になった理由は、不老不死になった事が原因だったらしい。

 隠れて過ごす事数十年の時が経ち、一向に姿が変わらないゲオノースに周りの反応が変わって来たようで、ゲオノースはこれ以上怪しまれる前にと行くあてもなく村を飛び出したのだそうだ。

 放浪生活を続る途中で黒騎士に出会ったゲオノースは、魔王の呪いで不老だけではなく死なない体になっている事を教えられたらしい。初めは不老の事も知らなかったのだそうだ。

 そして教えられたのが死ぬ為の方法で、運命の勇者が現れた時に聖剣によってやっと死ぬ事ができるという話だった。それから元英雄ゲオノースは、新たな魔王として世界を裏から見守る事にする。

 初めはただの冒険者として故郷から遠く離れた町で過ごしていたそうなのだが、人々の醜い部分を見ると狂気に取り付かれそうになる事がしばしばあって直ぐに町を離れる事にした。そのまま怒りに身を任せると自分が魔王のような存在へと変貌しそうだったから、人々と一緒に暮らす事を諦めた魔王ゲオノースは、かつて激戦を繰り広げた魔王城へと引き篭もった。

 そこで、やがて運命の勇者が現れるまで黒騎士に頼んで眠りに就く事になったそうだ。人々が異形へと変わる現象については魔王の倫理観が基準となって、無意識に狂気の波動にさらされた悪党達が魔物化しているのだそうだ。どうやら狙ってやっていた訳ではなくて、怒りが爆発して魔物にしてしまっていたって事らしい。


 今後の話として、ゲオノースには人類滅亡などは望んでいなくて、できる事なら平和に暮らして欲しいという気持ちはあるらしい。ただ、眠りながらも世の中を見ていたゲオノースは、人々が争いを止めるような事がないことも承知していたので、今後ちゃんとした勇者の元、人類でまとまって欲しいと考えているようだった。

 そこで問題の運命の勇者はというと、困ったちゃんのハウラスらしい・・・・・・。異形を倒すだけの力は身に付けたらしいものの、今だ人類を率いて戦うには精神が未熟だと考えられるそうな・・・・・・

 まあそんな訳で、魔王軍の当面の方針としては、ハウラスの成長を見守りつつ、なるべく人類同士の争いを無くして行くという話だった。

 ふむ、となるとやっぱりファクトプス国のような国は、潰しておいた方が人類の為でもあるか・・・・・・多分に私怨を含んでいるが、まずはそこから始めて行こう。

 ここからは魔王軍として行動して行く事になりそうなので、チェンジの魔法を解除して魔神の姿となる。影武者パペットには町やサフィーリア教会に行って、今後協力する事が出来なくなると伝えさせた。それぞれ関係者に伝達をおこなった後、随時眷族などを拠点へと撤退させつつ、こちらはこちらでファクトプス国へ乗り込む準備をする。

 「これからファクトプス国へ向うが、レイシアも来るか?」

 「うん。魔王軍としての行動なのね?」

 「ああ。罠にはめられた私怨もあるけれど、このままマグレイア王国と睨み合いをさせておけないからな」

 「服を持って来るから待ってて!」

 拠点へと転移したらしいレイシアが、しばらくして戻って来た。以前作った黒尽くめの衣装に仮面姿で正体を隠している。まあブレンダ辺りになら、お互いにこの姿で出て行ってもばれそうだけれどね。さて準備もいいようなので、早速行くとしますか~


 なるべく罪のない人々には被害を出したくないので、破壊して行くのは建物がいいかもしれないな。そう思い王都の外壁から破壊して町の中へと入って行く。壊れた瓦礫で被害が出ないように、調査スキルで人の有無を確認しながらビームで壁や見張り台などの軍事拠点を破壊しつつ、王城へと向った。レイシアは僕の破壊した建物に火を放って燃やしている。

 そんな感じで破壊を撒き散らしつつ移動していると、こちらを包囲するように兵士達がやって来たけれど、そちらもレイシアが魔法で蹴散らして行ってくれた。僕がやると下手したら殺しちゃうから、そのままお任せすることにする。

 レイシアと頷きあい、城へ向う途中緊急時の脱出口を見付けたので、逃げ道をアースボムで爆破して先へ進む。町中とは違い、王城にはさすがに騎士達が待ち構えていて、こちらに向かって盾を構えていた。

 ふむ。騎士ならば兵士と違って倒してしまっても問題はないかな? どうせ貴族だろうし、今回の騒動でも一緒になって馬鹿をした連中だろうからな~

 (ウインドカッター)

 腕の一振りで発動させたカマイタチで、盾を構えて前方を塞いでいた騎士達を薙ぎ払う。撃ちもらしの騎士はレイシアが氷の礫を放って撃退していた。頼りになる副官だと思いつつさらに先へと進む。

 さてさて、人がいなくなった辺りには魔法をぶち込んで城を破壊しつつ移動して行くと、国王以外の王族が隠し通路へと逃げて行くのがスキルによって確認できた。通路の先は塞いであるので入り口をアースボムで爆破してしまうと、簡単に閉じ込める事ができる。

 そっちはとりあえず後回しにして国王とご対面と行こうかな。


 王座の間にて、多くの近衛騎士と共に待ち構えていた国王は、こちらに問いかけて来た。

 「魔族よ、何用でファクトプス国に攻めて来た」

 ふむ。どうせ殺すのだからいいか・・・・・・サスペンスドラマとかでもこういう場面のネタばらしっていうのはお約束だし、たまにはそういうお約束をやってみるのも面白いかもしれないな。早々こういう機会もないだろうしね。

 「ベイグランドの暗殺行為に、濡れ衣を着せてのマグレイア王国への侵略行為、この国を潰す理由ならいくらでもあるだろう」

 「何! では貴様はマグレイア王国と繋がりがある魔族ということか!」

 「繋がってはいないな。勝手にお邪魔させてもらっていたら、お前らがちょっかいをかけて来たので潰しに来ただけだ」

 「くぅ。この魔族を討ち取れ!」

 国王の命令を受けた近衛騎士がこちらへと向って来ようとしたところに、魔法を撃ち込んで行く。

 (サンダー)

 一人に付き一つの魔法の雷で、近衛騎士達と潜伏していた者全てが感電して動かなくなる。それを見た国王はただただ震えていた。誰に喧嘩を売ってしまったのかを理解している事だろう。

 「寂しくないよう、お前の家族を直ぐに送ってやるよ」

 「ま、待ってくれ。家族には手を出さないでくれ!」

 「その台詞は、戦争を起す前に思い止まった者が口にできる台詞だな。何もかも壊す命令を出した者が言っていい台詞ではない。じゃあこっちもいろいろとやる事が出来たからそろそろ終わりにしよう」

 (サンダー)

 なおも許してもらおうと言い訳を続ける国王に魔法を使い、閉じ込めておいた王家の者達を同じく倒した後、この国の悪徳貴族のデータをチェックしてレイシアと分担して潰していった。


 次はフラムイスト国の方だな~

 こっちはどうやら軍事国家のファクトプス国に逆らえない立場だという話らしいのだが、どう処理するのがいいだろうか? 皇女殿下の最初の態度からは王子に思いを寄せているという感じもあったので、何かしらの罰は受けてもらうとしても、国を潰すのはやり過ぎなのかな?

 こういうのは一人で判断しきれないので、レイシアにも意見を聞いてみる事にした。

 「フラムイスト国にも何かしらの罰を受けて欲しいところなのだが、皇女殿下とアーデリム王子の関係はどうだと思う? この一年でドラグマイア国と、フラムイスト国の関係はどうなった?」

 「うーんとね。まず皇女殿下は、正式にドラグマイアの女王様になったよ。で、国の関係はあの後完全に交流が途絶えた感じかな。アーデリム王子とは手紙で何度かやり取りをしたみたいだけれど、ラデラ女王に相談しないで勝手に計画を実行したって事で、縁が切れたって話していたよ。ドラグマイア国の国賓で友達のバグを暗殺しようなんてって怒っていたかな」

 「下手をすれば、その暗殺にラデラ女王も関わっていたって思われても仕方ないだろうしな」

 「うん、それで後で落ち着いた頃に謝って来たわ」

 「なるほどな。とするとフラムイスト国に対しては普通に制裁しても問題はないだろうけれど・・・・・・ラデラ女王の気持ち的にはどうだと思う? やっぱり王子には死んで欲しくはないって感じかな?」

 はっきり言ってしまえば、女性と付き合った事もないし、そもそも普通に話す機会もそこまで多くなかったから、そういう恋愛の絡んだ女性の心理状況はさっぱりわからなかった。僕の思考パターンでいけば、敵味方どうでもいいって感じではっきり区別しているので、この場合王子は敵と認識していいだろう。でもラデラ女王からしたら、元々は好意を持っていたのだとしたら、やっぱり生きていて欲しいとか思うものだろうか?

 「そうね。死んで欲しいって考える程嫌っている訳じゃないから、普通に生きていて欲しいんだと思うけれど・・・・・・今後関わりあう事はないと思う」

 こういう判断だと、オーリキュース王子辺りは迷う事無く潰せって言うのだろうな~。約束の最新技術自体はもらう事にして、一応アーデリム王子は生かしておく方針でいいか・・・・・・。そうすると、問題は最新技術をどうやって手に入れるかが問題だな。

 司書パペットに指示して探らせれば、技術を得る事はできるかな? まあそんな感じで行ってみるか~


 方針を決めたので、フラムイスト国の方にはできるだけ被害を出さないように、アーデリム王子以外の王族と、悪徳貴族の殲滅と王城の破壊で手を打つ事にした。リンデグルー連合王国の時と同じで、空中からの誘導弾により、仕留めて行けばいいだろう。

 個人としての活動を終え、魔王軍としてのその他の国を見てみると、リンデグルー自治国より東の方の国々が大荒れしていたので、混乱を撒き散らしていると思われる国々には潰れてもらうよう指示された。

 その活動により、魔王軍がいよいよ活発に行動を開始し出したと判断されて、新たな勇者を求める声が各地に高まり、ついでに国を潰して回った僕には呼び名が付けられて恐れられる事になった。魔神国落とし・・・・・・まんまだし、かっこよくもない呼び名だよね・・・・・・

 現在確認されている勇者として、ハウラスに各国の期待が集まっているそうで、かなり忙しく動き回っている様子だった。今現在のハウラスは、異形を相手にできるくらいの冒険者とパーティーを組んで、各地を巡っているそうだな。ソロではなくなった事で、精神的なものも育ってくれればいいと思う。


 さて所属を完全に魔王軍へと移すに辺り、今まで各地で人間として関わって来ていた事を現地の人間に引き継ぎ、眷族達を拠点へと集める事にし、ダンジョン以外は大体引き上げられたのだが・・・・・・ここに来てホーラックスの副官であるメリアスが指示を無視して逃亡していると報告が上がって来た。

 眷族である為に現在位置は丸わかりなのだが、何故逃げているのかが不明である・・・・・・。魔法生物ではなく独自の自我があるので、命令を聞かない固体も出て来るとは思っていたけれど、襲って来るならば予想内であったのだが、逃げるっていうのは予想になかったな。

 とりあえず目的を知る為にメリアスのところへと転移する事にした。

 「バグ様! ・・・・・・どうか、どうかお見逃しを!」

 転移して来た僕を見て、メリアスが必死に後ろの男を背に庇っていたのがわかった。うーん? 愛ゆえに?

 「とりあえず落ち着け。何故逃げる必要があったのか、説明してくれるか?」

 僕としては、眷族とはいえ人格は認めているつもりであった。ホーラックスとかだと、魔王として振舞っている部分があるので口調もそれなりに横柄だったが、そういうのも別に直せって言うつもりなどないし、眷族に恋愛禁止と言うつもりも特にはない。

 それに僕以外の魔王軍は全員人間って有様だしね。後ろの男が人間であったとして、それで逃げるという発想がよくわからなかった。

 「その・・・・・・彼は人間ですので。一緒にいられないかと思い・・・・・・」

 後ろにいる男は、どうやら冒険者らしく剣を抜いて前に出ようとしているところを、必死にメリアスが押し止めているみたいだ。こっちの人間にも話をする必要はあるかな? メリアスに問題が無くても、こっちは人間であるから何か問題を抱えているのかもしれないしね。

 「そっちの人間。メリアスをどうするつもりだった?」

 「俺達は愛し合っているんだ! 魔族のお前に理解できないと思うが俺は本気だ。邪魔をするのなら叩き斬る!」

 「フィリオ止めて、貴方ではバグ様に勝てない」

 「別に好き合っているのならそっちは好きにすればいいが、逃げる必要性がわからんな? やはり人間であるから魔王軍に来る事に抵抗があるとか、そういう事か?」

 「え? バグ様・・・・・・それでは一緒にいてもいいのですか?」

 「特に問題は無いからな。仕事さえしてもらえるのなら、好きな相手と付き合ってくれて構わんぞ。今のダンジョンは閉鎖するので、今後は魔王軍の為にダンジョン維持する事になるが、そっちの男は協力を拒んでいるのか?」

 「え、いえ、そもそも魔王軍にも誘っていませんので・・・・・・」

 「なら、フィリオとやら。お前は魔王軍に来るつもりは有るのか、それとも無いのかどちらだ?」

 「俺に、人類の敵になれというのか」

 「別に、お前に前線へ出て戦えというつもりは無いな。メリアスの仕事はダンジョンの運営になる。お前もそれを手伝えばいいと思うが、それが魔王軍に貢献している事になるのか・・・・・・。まあそれが不服だというのならば仕方がないのかもしれんがな」

 「人類にあだなす事は、俺にはできそうも無い・・・・・・」

 何か最近恋愛事があちこちで起きていて面倒だな~。意見を聞こうにもレイシアは魔王軍の拠点だし・・・・・・どうせこの男はメリアスに深く関わり過ぎていて情報を漏らされると困るしな。一度魔王軍の拠点へと連れて行って、みんなと話しでもしてみるか・・・・・・

 「詳しい話は魔王軍の拠点で聞こう。とりあえずメリアスよ、一緒に来い」

 そう言って男も連れて拠点へと転移した。


 魔王城の拠点にやって来たフィリオは、僕以外の幹部が人間だらけなのを見て驚いていた。女性であるレイシアの意見も聞きながら、フィリオの意見も聞いて話をまとめると、あくまでもダンジョン運営だけ協力して、それ以外は手を貸さない方針で話が落ち着くことになった。

 「一応念の為だがメリアスよ、情報漏えいされては困るのでお前がしっかりと見張っているように。後は仕事さえしてくれるのならば、自由にしていいから今後は何かあればまず相談してくれ」

 「バグ様、申し訳ありませんでした」

 そんな感じで偵察に出しているパペット以外のパペットと眷族を回収し終える事ができた。

 今回の一件で、やはり成長する眷族はこちらの意図した思惑を外れた行動をする事も確認する事ができた。この先も変わらぬ忠誠を誓ってくれるとは考えない方がいいな。いざって時には後ろから襲われる事も、考えて行動していかないといけない。

 それはそれとして、マグレイア王国のダンジョンを閉鎖して、こっちの地下に魔王軍強化の為のダンジョンを複数用意してもらう事にする。

 ヤーズエルトや、ウクルフェスにも、専用ダンジョンがいるだろうしね。ゴブリンや狼達にも、トレーニング用のダンジョンが必要だ。

 後、僕とレイシアのダンジョンもこっちに造り直してもらわないといけないな。ホーラックス達の仕事は一杯だ。

 今までビニールハウスで野菜を栽培していてくれたパペットや、畜産を担当してくれたイオルドは、魔王軍の拠点に場所を造り、魔王軍に所属しているメンバーの食料確保をお願いする。

 美味しいご飯が食べられれば、モンスター達も喜ぶだろう。モンスターの身に着ける装備品は、パペット達がオーダーメイドで作製してくれるので、モンスター強化にもなるし、パペットにも仕事が与えられてお互いに充実するだろう。

 魔王軍の環境管理は、眷族とパペット達に任せれば大丈夫そうだな。こっちは全体のLVアップをがんばる事にしよう。


 ゴブリンに比べて、狼のダンジョン攻略はとてもスムーズに進んだ。ゴブリンはこちらで世話してあげないと仲間とも衝突したり、突っ込んでいって死にそうになっていて目が離せなかったのだけれど、狼達は勝てる相手かどうか考えて行動してくれるので無駄死にはしないし、群れで狩をするのでメンバーをこちらで選んでやればチームを組んで戦ってくれる。

 これでスキルなどがあってそれを自在に使ってくれると、優秀な兵隊になってくれるだろうな。そっちはまだ基本のLV上げをしている段階なのでまだまだ先かもしれない。一回目の進化が楽しみだな。まあ、ゴブリンみたいに、引っ掻きと噛み付きばかりするかもしれないけれどね。

 それよりモンスター達を見ていて気になった事はスキルの取得に関してで、合成で進化させていると進化とは逆に退化させる事ができない。ゲームだと、弱いモンスターと合成すると、LVが下がったり種族が下のものになったりとかもあったのだけれど、どうやらこの世界では弱体化は起こらない感じだった。

 それはつまりスキルを取り逃すと、そいつはスキルを得るチャンスが来ないという事になる。そしてスキルの中には種族固有のものがあり、他の種族に進化すると消えるスキルなどもあったから進化させるタイミングと順序、育てる方向性などいろいろと悩む要素が一杯あった。

 ちょっとゲームっぽくて楽しくはあるのだけれど、後戻りができないっていうのは中々にきついものだな。セーブとロードを繰り返して最強モンスターを作りたい衝動が湧いて来るよ。

 最近のMMORPGは攻略サイトを見ながらやる方法もあるのだが、こっちだとLVに達したから絶対にスキルを覚えるとかそういう事もないし、運なのか本人の素質なのか中々思うように行かない感じだった。

 ゴブリン達の方は、好きなように進化させている。あいつらの場合はせっかくスキルを習得しても、使えるやつは少なかったりする。疑似体験させてスキルを使えるようにしても、戦場に出ると殴るしかしないやつが多いので、もう好きにさせとけばいいかなって思ったよ。剣でも斬るじゃなくて殴るになっている辺り、一生懸命教えているこっちが疲れ果てる・・・・・・

 そんな訳で、賢い狼達に期待していた。


 狼達が進化できるまではまだ少しかかりそうなので、その間にゴブリン眷族達の様子を見てみる事にしよう。いきなり大物と出会った時に発動できる大技みたいなものを、開発できているといいのだけれどな~

 以前創造していたコボルと、ゴブリン、オークの眷族に成果を見せてくれと指示を出してみると、闘技場のような所へと案内される。そこに、眷族達がそれぞれLVの低いモンスターを連れてやって来た。

 メリアスがミノタウロスを闘技場の中央に出していつでも戦える準備をしてくれたので、後は戦わせるだけって感じに状況は整う。まあ当たり前といえば当たり前の事なのだけれど、低LVのコボルト達は泣きそうな顔で戦わされるのを嫌がっているのが、少し気の毒に思えてしまう。

 僕も実際にミノタウロスの前に召喚された時は、絶望したものだ・・・・・・

 まあでも何かしらの作戦なり、技などをレクチャーされているのだろうし戦ってもらおう!

 僕が目で合図を送ると、まずはコボルト眷族のチルナが連れていたコボルトをミノタウロスの前へと連れ出した。LV差は三十以上ある絶望的な状況、どんな戦いを繰り広げるのかじっくりと見させてもらおう・・・・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ