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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十四章 動き出す世界
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雑魚の進化

 レイバーモルズ町は人口が一気に増えた事もあって、少し治安が悪くなったみたいだった。そこで自警団を作って町の治安維持と、犯罪発生率の低下を目指した活動をしてもらう事にする。

 治安を乱した者には見せしめもかねて、重い罰則も用意して真面目に働いた方がいいよって感じの流れを作って行ってもらった。まあそれでも問題を起す者は起こすのだろうけれどね。

 ちなみに王宮からやって来ている兵士も、たまに問題を起していたので僕が直接現場に出向いて殴り飛ばした。さすがに王宮からの兵士に強い事は言えないので、町の人では対処できないからね。やっていた事は無銭飲食で、誰がこの町を守ってやっていると思うのだと言ってタダで飲み食いしようとしていたので殴り付けてやった。

 後日王宮の方から文句を言って来たのだけれど、逆に王子を呼び出して兵士の質の低さを責めると、今回の件は兵士に問題があると認め兵士の総入れ替えを行い、今後このような事を起こさないよう配慮するという方向で話がまとまる。

 その他としては以前気になった生ものを扱っている店の衛生管理も、冷凍庫を導入する事で問題ないものになっている。さすがに卵はその日のうちに食べてもらった方がいいだろうから、売れ残りは処分かなって思っていたのだけれど、人口も増えた為か売れ残る事は無いようだった。まあ聞いた話では、こちらの世界で卵は高級品らしいので、それがそこそこお手軽な値段で売り出されているという事が影響して、店に出されると飛ぶように売れるのだそうだ。

 まあ、それは肉や野菜についてもそんな感じだね。パンも、他所の村とか町に比べて柔らかくて美味しいと評判になっているそうだ。他所のパンといえば、スープなどに浸さなければ硬くて噛み切れないという感じの、保存食みたいなものだそうだ。大昔にあった黒パンといわれるやつだろう。


 魔王軍の方では、ゴブリン達もヤーズエルトも順調に経験値を稼いで強くなって行っているようである。レイシアに頼んでいた進化も徐々に進み出していて、何体かのゴブリン達が進化していた。

 初めての進化は僕の時と同じでみんなが不安に思い騒いでいたのだけれど、二・三回進化すると徐々に死ぬ訳ではない事に気が付いて、それどころか強くなれるのだって感じで受け入れられていた。

 一番初めに進化したのはコボルトで、スライムとウルフで合成された結果、コボルトキャプテンという種族へと変化していた。それを見たコボルトは上位者の出現に思わずかしずいていたけれど、ゴブリンとオークはただ驚いていただけかな。

 二回目はゴブリンが素体に選ばれ、同じくスライムとウルフで合成されると、ホブゴブリンへと進化していた。この段階で彼らはこれが強くなる為の儀式みたいなものだと思ったのか、望んで進化したいと思うようになったみたいで、次のオークが選ばれると他のオークが羨望の視線を向けるようになっていた。ちなみに進化したオークは、オークリーダーという種族だった。

 彼らが進化に対して積極的になった事もあり、いくつかの合成パターンを試してわかった事は、まずはLVについて合成先の種族の基本LVというものがあって、そのLVに達していなければ合成が成功しないという事だった。

 つまり例えばミノタウロスのLVは大体四十前後、そうするとゴブリンをミノタウロスに進化させたいと思ったら、素体のゴブリンをLV四十くらいにまで育ててあげないと、合成しようとしても何も変化が無くSPだけが消費されるという結果になるようだ。

 失敗して変な生物になったり合成素材が消費されたりしないで、SPだけが消費されるのはまだ楽なほうだね。ゲームとかだと失敗してスライムになったり、素材を失ったりするからな~

 次に判明したのが、進化素材を多く用意して進化させるのと、最低限で進化させた時に何が違うのかというところで、普通にひねりも無く、進化後のステータスが高い事がわかった。LVは同じくらいでステータスが高くなる事から、できるだけ十体の素材を合成する進化の方が優秀なモンスターにできるという結果になったよ。

 後は素材の質を変えるとどうなるかという点では、誤差の範囲だった。総合した結果、出来るだけ確保しやすい素材を十体集めて、さまざまなモンスターに進化させる合成表を作るのが今後の課題だとわかった。

 あ、十体集めるって実験で同じ合成素材は合成が成功しない事がわかった。同じゴブリンでもゴブリン、ゴブリンアーチャー、ゴブリンマジシャンみたいな、同系統なら合成対象になるようだけれど、まったくの同種は合成しようとしても何も反応しなかったよ。SPは消費されたけれどね。スライムは、色の違いはありだったね。


 学校の方はパルフォル以外に教える必要を感じる生徒は特にいなくて、そのパルフォルも基本的なところは教え終わり、後は自分でダンジョンに潜るなり自主練習してもらう感じになった。以前と違い、僕に教えてもらえば強くなれるとか、そういう話もないようなので、このまま学校の方はたまに顔を出すくらいで十分かもしれない。

 ブレンダ達はやっと落ち着いて来たのか、また中級ダンジョンに潜っているそうだ。

 忙しさから開放されて一週間の期限の日、皇女殿下から通信をもらった。

 『待たせたな。これならばと思えるデザートができたので、来てもらえるかな?』

 「わかった、今から向うよ」

 一度魔王軍に寄ってレイシアと合流してからドラグマイア国へと向った。今回は皇女殿下も自信が感じられるので、比べる為のデザートは無しで行く事にする。

 「お邪魔するぞ~」

 「お邪魔します」

 「来たか。では早速だがデザートを用意させてもらう。こっちに座っていてくれるかの」

 用意された席に二人で座って、デザートが運ばれて来るのを待つ事にする。

 「そういえば皇女殿下、イベントの方はどんな感じだ?」

 「ああ、一般の募集を開始したのだが、今審査員がそれぞれに気に入ったものを選んで全部を本にするのか、もっと絞り込むのかで会議しているな」

 「それなら、逆にこれは本にするまでも無いって作品を排除してその他のは本にしてみてはいかがかな? それとも賞金とかの話で、一杯採用すると赤字になったりするのか?」

 「うむ。あまり通過を許すと少々問題が出るな」

 「それなら今回のイベントの受賞枠とは別に、審査員賞みたいな枠を作って作者が許可するなら本にしてみたらいいのではないかな? 賞金も少しだけ渡せば問題ないと思うが?」

 「なるほどのう。ではそれでやってみるとしよう。決まったら連絡するぞ」

 「わかった」


 打ち合わせをしているうちに、デザートが運ばれて来たので試食する事にする。運んで来たのは王子の後ろに付いて来た料理人で、かなり緊張しているようだな。

 「バグ殿、レイシア殿、ようこそおいでくださいました。早速試食してみてください。今度こそ自信作です」

 「わかった」

 「いただきます」

 レイシアは早速フォークで一口大に切って食べ始めていたが、僕はまずどんなデザートなのかを観察した。ぱっと見はミルフィーユだな。フォークで触ってみた感触は以前のパイ生地っぽいので、前回の改良版であると思われる。

 間にカスタードクリームっぽいものを挟んだ為に少しパイ生地がしっとりしているので、フォークで切る時もパラパラと崩れないのはいい感じかもしれないな。カスタードっぽいクリームの中にはドライフルーツも入っているな。見た目的には美味しそうなので、とりあえず一口食べてみる事にした。

 「ふむ、少し酸味があるな。でも嫌な酸っぱさではない。紅茶とかには合いそうな感じだな」

 「あ、確かに紅茶に合いそうだね! 結構甘過ぎないですっきりした味だよ」

 レイシア的にも、合格点って感じらしい。初めカスタードクリームかと思っていたのだけれど、どちらかといえばヨーグルトっぽい味だな。日本のデザートと比べれば微妙な気がするけれど、まあこれくらいの味であればレシピをもらってもいいかもしれないと思える出来かな。実際に僕達が食べる時にはこれをそのまま使う気はしないので、アレンジさせてもらうのが前提になるけれどね。

 「レイシアは、合格って感じか?」

 「うん。美味しいと思うよ? バグは微妙だった?」

 「これをそのまま使うのはちょっとって感じではあるかな。まあこのくらいの味ならいいかなって思うけれどね」

 「じゃ、じゃあ、認めてもらえるのだろうか!」

 王子が会話に割り込んで聞いて来た。気になるのはわかるのだけれど、王族ならもう少し落ち着いたらどうかって思うぞ・・・・・・皇女殿下も止めようかどうしようかって感じでオロオロしているな。

 「まあ、ギリギリ合格ってところでいいんじゃないか。だが、約束では後レシピは四つだ。そっちも忘れないでくれよ」

 「ああ、わかっている。それでデミヒュルスの討伐はしてもらえるのだろうか?」

 「討伐はしてもいいと思う。王子が約束を守ってくれるのならだけれどね。それでこれから討伐して来るとして、残りのレシピはいつ頃もらえるのだろうか。後もし、レシピを渡すという約束を破った時にはどのような保障をしてくれるのか教えてくれ」

 「それは・・・・・・」

 王子は異形の討伐をして欲しいってのだけで、こちらの要求の事は考えてもいない感じだな。皇女殿下とは友達なので、のらりくらりとかわして約束をなかった事にするとかはないと思うけれど、王子はどうなのかな? ただそこまで考えていないのか、政治的に後々どうとでもできるように曖昧な表現をしているだけなのか・・・・・・

 「では、一ヶ月毎にレシピを一つという期限で、罰則はどうしたらいいかのう?」

 皇女殿下の方はしっかり話し合っておこうという考えだね。

 「二・三日時間をいただけるだろうか? 一度話し合いをさせてもらわないと、僕の権限では決めきれないと思う」

 「確かにのう。バグ殿、申し訳ないのだがしばし猶予をくれぬか?」

 「構わないよ。話し合って結論が出たら知らせてくれ」

 「うむ。ではまたよろしく頼む」

 という事で、一度保留にして拠点へと戻る事にした。


 連絡が来るまでは進化表でも作っているかなと思い、ゴブリン達のところへと向う。彼ら用のダンジョンで修行させたおかげで、平均LVが二十くらいになっているようだ。これなら初心者を卒業するくらいの強さのモンスターに進化可能だろう。

 飛び抜けて強くなっているやつは四十近いのがいるみたいだな。

 「それにしても既に進化させた奴が一部いるが、ゴブリン語で喋るリザードマンとか、オーク語で喋るミノタウロスとか結構珍妙な集団だよな。しかも馴染んでいるし」

 「初めはずいぶん戸惑っていたけれど、進化する過程を見ているうちに種族が違っても、仲間だって理解したみたい。言葉も通じるみたいだしね」

 「見ているこっちは普通に面白集団だよな」

 「だね。後、ウクルフェスさんはステータスが見れないから、この子達を育てるのは難しいかもしれないよ」

 「やっぱりそうか・・・・・・まああの人には魔術研究でもしてもらって、何かあった時に出てもらった方がいいかもしれないな。悪いがこいつらの相手は、レイシアがしてくれるか? 後、育てているやつらは素材に使っていないよな?」

 「わかった。素材はメリアスさんが捕まえて来てくれたモンスターだけ使っているから問題ないよ。合成表は一日の終わりに拠点のデーターベースに書き込んでる」

 「うーん、それはちょっと手間がかかっているな。ここにもアクセスできる端末を配置するからこっちで書き込みながらやってくれ」

 拠点のデーターベースにリンクできる水晶をここにも設置して、データーを共有できるようにする。

 「ありがとう。結構便利になるね」

 「何かあったら言ってくれていいからな」

 「うん、わかった」

 一応、ゴブリン達が水晶を興味深そうに見ているので、この魔道具が扱えるのはレイシアだけに限定しておく事にした。面白半分にいじくられて、データーを書き換えられたらたまらないからな~

 とりあえず今調べている合成表を見るに一回目の進化を調べている段階みたいで、四分の三は元の種族のままみたいだな。進化したやつは、チームを組んでダンジョンに潜って行っているみたいだ。

 次の進化をする時にはもっと上位のやつに進化するとして、LVは十分足りていそうなので失敗しないだろうと思われる。ついでに魔王軍の戦力としても優秀であって欲しいものだ。


 翌日もモンスターの特訓など見ていると、皇女殿下から連絡が来た。もう会議の結果がでたのかな?

 『あー、アーデリムの事ではなくてだな。イベントで集まった原案についてなのだがいいかのう?』

 「そっちか、ああ構わないぞ」

 『では、採用者が五名で、追加で本にしてみたい作品が五名分の合計十冊分お願いしたいがいいかのう?』

 「いいぞ、じゃあ早速作るか?」

 『お願いするぞ。それぞれ百冊お願いしても構わぬか?』

 「売れ行きが良ければ追加って事だな? それでいいぞ」

 『では原案を採りに来て欲しいぞ』

 「わかった」

 皇女殿下の方は、ダンスも本も順調だな。そう思いつつ原案を受け取り、それを工場に持ち込んで早速百部ずつ印刷して本にする。こっちの国内で売る用の本は、ブレンダ次第だけれど今忙しいかな?

 「今忙しいか?」

 『あらバグ。そうね少しなら大丈夫よ』

 「新しい小説の原案が十冊分手に入ったのだがどうする? 一般向けの本で印刷するのだが、売るのなら何冊印刷したらいいか教えてくれ」

 『商売の話ね。それならその原案を一度読ませてくれるかしら? それによって個別に作る数を指定させて欲しいわ』

 「了解した、出来たら持って行くよ」

 『お願いね。書斎に置いておいてくれればいいから』

 「わかった」

 じゃあ見本用にまずは一冊ずつ印刷して、出来たのをブレンダの方に持って行くか。工場の人達に、合計で百一冊の本を作るように指示を出しておく。

 原案を機械に覚え込ませる作業で少し時間がかかりそうなので、レイシアと合流して少しお茶でもしていようかな・・・・・・

 その後レイシアとのんびりしてから本を受け取り、ブレンダのところへと移動したのだが忙しいみたいだったので、声をかけるのはやめて書斎に本を置くと帰って来た。後で注文が来るだろう。

 ふむブレンダを見ていて思ったのだけれど、僕が忙しい時とか何かあった時に対応できるように、影武者が欲しいところだな。

 「魔生物作製」

 初めはドッペルゲンガーの眷族でも創ろうかなって思ったのだけれど、あいつらって確か本人と入れ替わろうとする習性が合ったと思うので、パペットとして創る事にした。

 「何かあった時は頼むぞ」

 「ああ、任せておけ」

 人化というか変身能力を持たせたパペットが、早速僕そっくりに変化してそう返事をして来るけれど、自分と話をするって言うのは不思議なものだな・・・・・・。こいつを見ても、あまりどっちが本物かとか気にならない・・・・・・何でいろいろな作品ではそういうので殺しあったり、入れ替わったりし出すのだろうか?

 確か、入れ替わった偽者が知人と仲良くしているのを見ると嫉妬するのだったか? 僕の場合、こいつがレイシアやブレンダと仲良くしてたら、その間に違う事をしに行きそうだな・・・・・・やっぱり、よくわからないな~


 その後レイシアには合成表の作成をお願いして、影武者には外回りをお願いして問題がないか確かめながら、僕本人は種族差の違いを進化したモンスター達に指導していった。

 そんな感じで一夜空けて王子からの連絡を待ちながら、翌日も続きをしていると昼頃に連絡が来た。

 『待たせたのう。フラムイスト国の会議が終わったそうなので、こちらへ来てもらえるかの?』

 「ああ、わかった直ぐに行くよ」

 さてつまらない交渉事だけれど、レイシアは来るのかな?

 「レイシアはここにいるか?」

 「一緒に行く~」

 という事らしいので出来上がった本を持って、レイシアを連れて皇女殿下のところへと向かった。皇女殿下に本を渡し取引を終わらせた後、早速本題に入らせてもらう。

 「じゃあ早速結果を教えてくれるか?」

 「はい、フラムイスト国は今回の討伐後一ヶ月に一品のレシピを受け渡すという事になりました。そしてこれを守れなかった時は、我が国の最先端技術を変わりに教えてもいいとの結論に達しました。いかがでしょうか?」

 「最先端技術って行ったら、鍛冶の技術か?」

 「ええ、そうです」

 うーん。現代日本の方が技術自体は進んでいると思えるけれど、僕自身がそういう知識が無ければ意味がないからな~。交換条件としてはいいかもしれないな。

 「わかった、その条件で行こうか」

 「では、デミヒュルスの討伐をしてもらえるのですか!」

 「ああ、やろう」

 返事を聞いた王子はホッとした感じで椅子に深く座り込んだ。そんな王子に皇女殿下が話しかける。

 「しかし、最先端技術を教えてしまっても、いいのか?」

 「そうね。フラムイスト国にとって技術力は最大の強みなんじゃないのかな?」

 レイシアも不思議に思ったのか皇女殿下の後に、王子に聞いていた。

 「ええ、それはそうなのですが、ようは約束を破らなければいいんですよ」

 「なるほどのう、確かにその通りじゃな」

 まあ、それくらい気合が入っているとでもいえばいいのだろうね。さてそれじゃあ異形退治の話をしていくかな~


 「王子は現場に確認に来るのだな? 皇女殿下も立ち会うのか?」

 「僕は今回の件に責任もありますし、一緒に行かせてもらいたいです」

 「私は結果だけ聞ければ問題ないが、立ち会った方がいいかの?」

 「いや、今回仲介していたからどうするかの確認をしただけだ、どっちでも構わないぞ」

 「ふむ。なら少し待ってくれるかのう。準備して来ようぞ」

 皇女殿下が準備している間に異形のいる場所を王子に聞いて、多目的シートで場所を確認しておく。フラムイスト国でも町の住人が異形に変わっていて、その数はリンデグルー連合王国の時に比べれば少ないものの、百体はいるものと思われているそうだ。

 さて外行き様の服に着替えた皇女殿下を連れて早速転移して現地へと向った。

 「あ、あそこの丘に降りてください、町がよく見えるので」

 「わかった」

 王子の指定した丘に降りるとレイシアを連れて距離を取る。

 「皇女殿下。今回の一件、どこまで把握している?」

 「何だ? 何か問題でもあったのか?」

 「その様子だと、デミヒュルス退治が終わった後に僕を暗殺しようという計画には、加担していないようだな」

 「何だと! アーデリムよ、なんて事を考えたのだじゃ・・・・・・」

 「な、何言ってるんですか。そんな事する訳ないじゃないか」

 「この場所を指定されなかったら王子は関わっていないって考えられたのだが、残念ながら待ち伏せしている場所を指定されたのであれば、関係者だろうな」

 そう言うと王子は俯いた。それで皇女も状況を理解したようだね。そしてそれが正しいと言わんばかりにこちらを取り囲んでいた連中が地面から体を起こすのがわかった。調査のスキルでバレバレであったとはいえ、よくもまあ土の中にいられたよな。プライドが高いはずなのに、わざわざ穴を掘って隠れている騎士団が・・・・・・


 「ファクトプス国の第一王子、ベイグランドだったか。わざわざ他国で穴を掘ってまで暗殺しようとするとはご苦労な事だな」

 「お前も相変わらずでかい態度だな。まあいいお前のような存在は邪魔でしょうがないからここで死んでもらおうか」

 「デミヒュルスもろくに退治できないのに、襲い掛かって来ようとは無謀じゃないのか?」

 「いやいや、案外そうでもないさ。そうやって余裕ぶって油断してくれるんだからな!」

 そう言って王子達は一斉にレイシア目指して攻撃を仕掛けようとして来た。

 (アースボム)

 なので無詠唱魔法で足元を吹き飛ばす事で無力化させてもらう。だがさすがに王子は魔法を回避して来たのかこちらへと突っ込んで来ていた。

 (ファイアランス)

 炎の槍で王子を攻撃してみると、どうやら魔剣を持っているようでこちらの魔法を叩き斬って来た。なるほどそれで一撃目の魔法を防いだって事だろうな。そして以前黒騎士から教えられた未来の話として、魔道具にやられると言っていたのはこの剣が原因かもしれないので、十分注意をする事にする。

 斬られる事で発動する呪いみたいなものかもしれないので、下手に近付かれない方がいいと考え、魔法を連発して距離を詰めさせないようにしたのだが、別の物に気が付いたのは体が動かなくなった後であった・・・・・・

 包囲網の少し後ろで一人だけ待機している兵士が手に持つ、別の鏡の魔道具・・・・・・

 おそらくは支配の力でもあるのか、体が自分の意志を無視して動こうとしているのがわかった。それを受けて以前作っておいた指輪が、効力を発揮するのを感じた。

 自殺しても自動で復活してレイシアを襲うという話だったので、自分自身を動けないように封印する魔道具。心臓を切り離して復活できないようにする事で体が動かなくなるように計画した魔道具が発動した。

 崩れ落ちる直前に見たものは、レイシアが召喚したモンスターの姿だった。


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