動き出す世界
第十四章 動き出す世界
夕食後お茶を飲みながら今日あった出来事などをレイシアに雑談ついでに聞かせていた。思えば、結構いろいろあったな~
魔王軍のメンバーも増えたし、町での犯罪も起こったし・・・・・・学校でも久しぶりに生徒ができたしな。しばらく授業もしないとだからそれもレイシアに言っておく。
「しばらくは午前中学校に行って、授業をして来るよ。午後からはダンスを教えに行くか、魔王軍の強化になるかな」
「じゃあ私は午前中にダンジョンに行くかブレンダのところへ行って来るね。午後からは一緒に行くよ」
「わかった。ブレンダの方はどうなった? 何か進展があったか?」
「バグが言っていたみたいに、ギルドがある程度代表で管理するようになったみたいだよ。貴族はそれぞれのギルドの後継人みたいな事しているんだって。ブレンダは商業ギルドみたい」
「国民への説明は?」
「ある程度体制が整ってから発表って言っていたわ」
「まあそうなるか。魔族の襲撃に、体制ががらりと変わるっていうのだから、ある程度整備しておかないと対処し辛いよな。ブレンダの方は、まだまだ忙しいままって感じだな~」
「そうだね。バグも段々やる事が増えて来たね」
「だな。眷族もそれなりに創っていっているから、ある程度仕事量は分散していてどうとでもなっているけれどね。いい加減あっちもこっちも手を出していると、次に何をしたらいいかわからなくなったり忘れたりしそうだよ」
「程々にね」
「ああ」
翌日の朝、アルタクスを連れて学校へとやって来た。盗賊系のスキルは、僕ではわからない事が多いからアルタクスに教えてもらおうと思ったのだ。使えるのと教えるのとでは必要な知識が違うから、実際に学べるのかどうかはちょっとわからないけれど、まあ僕も一緒に聞いて細かく教えるようにしたら技術を習得できるかもしれない。
まあそれ以前に盗賊系のスキルを習得できないって可能性もあるけれどね。モロモロやってみて、駄目なら駄目で他の方法でも探せばいいかと思う。
教室に行くとパルフォルは既に来ていて、鍵の模型を見ながら鍵開けをしていた。真面目にがんばっているようだな。
「おはよう、てこずっているようだな」
「先生おはようございます」
「今日は盗賊系の技術持ちを連れて来た、早速ダンジョンに行って罠の発見と解除を習うぞ」
「わかりました!」
早速ダンジョンへと潜って、罠を探していると・・・・・・
「罠発見、解除する」
アルタクスが一瞬で発見してしまう・・・・・・さすが本職は凄いなって思うけれど、それじゃあ勉強にならないよ・・・・・・。まあ、罠を発見するのは別の機会にでもじっくりやってもらって、今日のところは罠の解除を覚えればいいよね・・・・・・そう思いとっとと考えを切り替えていく。
「これは落とし穴だな」
「そうです。なので楔を打ち込み無効化します」
まあ、さすがのお手並みって感じだろうね。喋っている間に楔を打ち込んで罠を解除してしまった。ただこれでは勉強にならないかもしれないな。
「アルタクス、少し待っていろ」
「わかった」
とりあえず、今の作業についての説明をしていかなければいけない。じゃないと身に付かないからな~
「パルフォル、まずは罠の位置は確認できたか?」
「はっきりとではなく、なんとなくなら・・・・・・」
「じゃあ、まずこの落とし穴の解除にはしっかりと位置を確認する必要がある。そこで慣れていないお前の場合は大体の罠の位置に砂を撒く。そうすると隙間に砂が落ちて凹む場所が確認できる場合がある。またはブラシで砂を取り除くと隙間に挟まった砂で、罠の位置が見えるようになる時もある。その段階でわかればそれでいいのだが難しいのなら水をたらして隙間を浮き彫りにさせる方法もある。隙間があれば、水が下に落ちるからな。」
「はあ、なるほど」
「後は落とし穴が両開きなら、両方に楔を打ち込み片方なら一つ、安心できないのなら二か所に楔を打ち込めば罠が作動しなくなる。この手の罠は、なるべく発見しにくくする為に隙間が少なくなるように作られているので、楔を打ち込む事によって動く隙間そのものを塞いでしまえば、よほどの重量が乗らない限り動く事はなくなる」
「なるほど、わかりました!」
「よし、じゃあ先に進むか」
そしてさらに進むと次に見付かったのが毒矢だった。まあ、これも例によってアルタクスが瞬間的に見付けて解除してしまう。
「まあ、これもワイヤーを緩めたり引っ張ったりしないように固定さえしてしまえば、無力化できる。他には穴の中から矢が飛んで来るタイプなら、木片などを詰める事で、矢が発射されてもこっちに飛ばないようにするという方法もある」
「ふむふむ」
そんな感じで、やっぱり会話がまだ苦手っぽいアルタクスには、教師役は少し難しいようだった。それでも何とかフォローして午前中一杯、罠の解除について教える事ができたと思うよ・・・・・・
午後からはダンスを教える為にドラグマイア国へとやって来ていた。皇女殿下は期限が迫って来ている為に、王子と共に料理の開発の方へ行っているそうだ。まあわずか一ヶ月という短い期間で、まったくのゼロから開発するというのは、相当きついものだろうね。
まあだからといって、条件は変えないけれどね。
ダンスは集まった貴族達を相手に教えていった。レイシアも結構一緒に踊っていたのでなんとなく踊れるようになって来ていたので、お互いの動きを貴族達に見せながら教えて行く。流れとして踊ってしまうと中々頭に入ってくれないので、こういうのは体に覚えこませていく方がいいのだろう。音楽を聞いたら自然と体が動くってところまで行けば、もっと全体的な動きを教えていけるのだけれど、今の段階では足の動きを教えて、なんとなく組んで踊れたらいいといったところではないだろうか。
上手い人だと流れるように踊れるのだけれど、僕はそこまでの技術を持っていないのだよね・・・・・・
そんな感じで、やれる事をできるだけ教えて夕方頃にダンスを終える。今日は皇女殿下が来ていないのでこのまま帰るのだけれど、魔王城へ寄って行って見るかな。
「レイシア、寄り道するけれど一緒に来るか?」
「あそこかな? 一緒に行ってみたい」
あ、言わなくてもわかったようだね。さすがにここで魔王軍がどうのとか口にできないからな~。さてそれではと転移する事にした。
転移した場所は魔王城の地下にある僕達の拠点で、かなりの大人数がくつろぐ事ができるリビングのような所に出て来た。眷属が早速気合の入った拠点に作り変えているようで、中々立派になっているな。
そんなリビングにテーブルがあり、ヤーズエルトとウクルフェスが雑談しながら食事をしていた。
「やあご両人。ウクルフェスは初めてだと思うので紹介しておくよ。僕の副官をしているレイシアだ、よろしくしてやってくれ」
「よろしくです」
「これはこれは、魔導四天将をやらせてもらっているウクルフェスじゃ、よろしく頼むのう」
「バグ殿、四天将が揃いモンスターも集まり出したという事は、そろそろ魔王軍として活動するという事か?」
ヤーズエルトが不安そうに聞いて来た。
「いや、今戦っても烏合の衆だぞ。ゴブリン達もそうだが、お前達ももっと鍛えないと最低条件すら達成していないって感じだろうな~。まあ、まだまだ準備期間だと思っておいたらいいと思う。人心の乱れは人から変化する異形の数でわかると思うから、いよいよっていう時期は見ていればわかるんじゃないのかな?」
「異形って言うのは、ああ、例の怪物になった人間か。なるほど・・・・・・つまりあいつらが増えないように気を付ければ、今のままいられるという事だな?」
「まあはっきりとそうだとは言えないだろうが、そうだろうな。ただ一国だけ平和でも周りがそうじゃなければ意味はないと思う。世界中で異形を抑えられれば大丈夫なのだと思うがな」
「まあ、確かにそうだな。気を付けておこう」
「でもバグ、前から不思議に思っていたんだけれど、それならその異形も早めに倒しておいた方がいいんじゃないの? いつまでも暴れられたら、どんどん国とかが荒れて行くと思うんだけれど・・・・・・」
「ああ、確かにそうだな」
レイシアに続き、ヤーズエルトも不思議だって感じでそう言う。
「確かに放って置くのは問題かもしれないが、基本異形はあまりその場から行動範囲を広げない。ようは異形がいる場所に近付かなければ無害なのだよ。下手にちょっかいかけるから移動して来たり被害が出るのだ。倒せないのであれば、異形の周辺を立ち入り禁止にして距離さえ取れば、どってこともないって事だな~。何でもかんでも武力で解決とか考えているから、余計な被害が出るのだ」
「へ~」
「わしに言わせれば、頭を使わん者なぞ放って置けって感じじゃがな」
ウクルフェスは、知っていたのかそう言って来た。
まあそれに僕は勇者でもヒーローになりたい訳でもないからね。経験集めで退治とかなら行ってもいいかもしれないけれど、もう異形ではあまり経験にならないと思う。ヤーズエルトがもう少し強くなったら経験集めに倒してもらって、ついでに資金も稼いでもらうのがいいかもしれないな。
そんな感じで意見交換しつつ、ゴブリン達の様子を窺った後で拠点へと帰った。
翌日午前中パルフォルに剣の稽古を付けていると、皇女殿下から連絡が来た。
『待たせたが、料理が出来上がったぞ。食べに来てもらえるかな?』
その声には自信が溢れていたので、ちょっと興味が湧いたな。適当にパルフォルの剣を受け流しながら会話を続ける。
「ほー、ちなみにどんな感じの料理だ?」
『そうだのう・・・・・・パンではないが、パンに似た生地を焼いて作ったデザート風の料理だぞ』
「おー、デザート風というからには、甘い系かな?」
『そうだ。今は忙しいのか?』
「今は学校で剣を教えているからな。もう直ぐ昼だし、昼食がてら食べさせてもらいに行くよ。こっちから持って行くものとどっちが美味しいか比べてみよう」
『え? く、比べるのかや? それは止めぬか?』
さっきまでの自信はどこへ行ったのか、なんか焦っている感じだな。
「僕達も判断はさせてもらうが、そっちの料理人達にも判定してもらえばいい。何なら多少自分達の料理をひいきしたらいいんじゃないか?」
『む。そんな不公平な事はせん。ちゃんと公平な審査をするぞ』
「じゃあ昼は楽しみにさせてもらう。また後でな~」
『ああ、待っておる』
会話中、ずっと攻撃を続けていたパルフォルは、悔しそうに言って来た。
「先生、ずいぶんと余裕ですね」
「ああ、さすがにこれくらいならな。悔しかったらがんばる事だ」
「わかりました!」
軽い挑発に乗ったパルフォルをコテンパンにしてから注意をうながし、どこが悪かったのかなどを指摘しているとお昼の時間が来ていた。
「そろそろ時間だな。悪いが予定があるので今日はここまでだ。後はがんばれ!」
「ありがとうございました!」
まずは拠点でレイシアと合流して、料理パペットにこちらの料理を作らせる。まあ、十人前くらい作って行けばいいかな?
皇女殿下はパンみたいって表現していたので、こっちもそれっぽくホットケーキでも作っていってみる事にする。一皿に三段に重ねたホットケーキに、レイバーモルズ町の畜産で取れたミルクからバターを作り、スイートビーの蜂蜜をたっぷりかければ出来上がりだ。
さてさて、皇女殿下はこれと同じくらいの料理を用意できたのであろうか・・・・・・レイシアは既に食べたそうにホットケーキを見ていたので、さっさと移動して試食会と行く事にしたよ。
転移した先にいた試食参加者は、三十人はいるようだった。今回の料理を考えるのに結構な数の料理人が協力していたようで、皇女と王子以外に無関係な者はいないようだった。用意したホットケーキが足りないので、直ぐに追加を作るように料理パペットに指示を出し、とりあえず持って来ていた料理と、皇女殿下達が用意した料理を並べていく事にする。
追加ででき上がって来た料理をその都度呼び出して並べ終えると、自分達も席に着いた。
皇女殿下達の作った料理は、干したフルーツなどの飾り付けなどをされたパンみたいなものに見える。まだ食べていないのでどんな味なのかは不明で、ちょっと楽しみだった。予想ではホットケーキほど柔らかくないパンだと思う。多分表面はカリカリかな?
適量にたらされている黄色いソースみたいなものは、おそらく蜂蜜じゃないかな? ひょっとしたらどこかから取り寄せる事に成功した、スイートビーの蜂蜜かもしれないね。
三十人以上の参加者がいる為、適量しかかける事ができなくなったのだろうと思われる。
「さて、準備も整った事なので、早速どちらが美味しいか判断してもらおう。皆、嘘偽りのない審査を心がけるようにのう」
皇女殿下の口上で、早速試食が開始された。
レイシアは迷うそぶりもなくホットケーキを食べ出し、皇女殿下達も同じくホットケーキを食べ始める。僕だけが皇女殿下達が作った料理を食べる中、参加者一堂からざわめきが聞こえて来た。
周囲を眺めてみると、視界の淵でレイシアが当たり前の反応だという感じで、何度も頷きながらホットケーキを味わっているのがわかった。
ちなみに皇女殿下達の完成させた料理は、ちょっと甘めの生地をパイのように焼き上げて、蜂蜜で味を調えようって感じの料理であった。まあ何が言いたいかというと・・・・・・たぶん皇女殿下達が満足できるようなものに仕上がらなかったか、わからなかった為に、スイートビーの蜂蜜を使って味を誤魔化そうって作戦だと思われる・・・・・・。確かにこの蜂蜜さえかけておけば、大抵のデザートは高級品の味に早変わりするだろうね。
これを出すのならもういっそうの事、蜂蜜を使った水飴みたいなものを出せばよかったのではないだろうか? 蜂蜜押しにした方が、よほどいいものが作れた気がするのだけれどね~。そうすると全否定になっちゃうか・・・・・・
まあ、こっちも似たように蜂蜜押しでいったけれど、こっちはバターのいい風味と合わさって、ホットケーキにいい感じで染み込んで馴染んでいるので、とろけそうな美味しさが味わえる。
「すまんがバグ殿・・・・・・おそらくは今回の試食は結果を聞くまでもないと思われる。これで解散させてもらってもいいであろうか?」
「ああ、構わんよ。まだ期限まで一週間もあるので、次が出来たらまた教えてくれ」
そう言った瞬間、今回参加していた料理人の全てがうって顔をして俯いたようだった。
まあでも、パイ生地はよかったね。ドライフルーツもデザートを作るには結構いいものだと思う。パウンドケーキとか美味しいだろうなって思ったよ。なので、料理パペットに早速林檎のパイとドライフルーツの入ったパウンドケーキを作るように指示を出した。
ただし、今あるできあいの果物ではなくて、ちゃんと日本の果物のように美味しく育てた果物がいいなと思ったので、レイバーモルズのハウス栽培で品種改良したものを育てる事にした。
こちらの世界の果物はあまりそういう努力がされていないので、その殆どが干して甘さを増やそうとしたものが多かった。保存の観点からいっても間違ってはいないのだけれど、酸っぱいなら甘くしようとかそういう発想がここにはないようだった。
まあ、甘い林檎とか作り出そうとすれば、何十年とかの研究が必要になるので早々できないのだろうけれどね~。その点で行けば時間の流れを操れる僕が研究に参加したら、開発は直ぐに終わらせる事ができるのでとても便利だった。まあ管理してくれるパペットも一緒に長い時間を生きていかないといけないのが申し訳ないけれど・・・・・・
寿命がないからこそできる手段だな。後は眷族ではなく魔法生物として創られたパペットは、基本主である僕に絶対服従だから文句一ついうどころか、役に立てる事が嬉しくて仕方がないといった感じなのが良い意味で上手くいっている。
動機としては自分が食べたいからだけれど、ここで作られたフルーツも市場に出荷していくので、町の人達も喜ぶと思う。酸っぱいし乾燥させた果物は値段もかなり高めだしで、殆どの人は果物をあまり食べて来なかったみたいだけれど、ビタミン補給に果物を食べる事は必要だしな。これで新しい特産品になって国が豊かになっていってくれればいいかもしれない。
ここ数日でパルフォルへの指導はそこそこ進んで、後は個人的に反復練習をするだけになったので、魔王軍の方の様子を見る事にした。
今日はブレンダも会議があるとかでレイシアも一緒に魔王軍へと来ている。後、レイシアにはここのゴブリン達を使って進化の調査もしてもらいたかった。
「レイシア。今錬金の合成は、何体くらい合成できるのだ?」
「進化させるやつだよね・・・・・・今だと十体混ぜられるよ」
「一杯だな~。もっと経験を積めば、増えるのか? 二十体とか・・・・・・」
「多分、十体が上限だと思うよ」
「ふむ。じゃあ最低は?」
「最低は素体を含めて三体かな。上限は、素体を含めたら十一体ね」
「三体で合成した結果と、十一体で合成した結果、同じ種族になったら違いは何か出るかな?」
「えっと、多分結果に何か変化があっても、ステータスが見られない人にはわからないかもしれないよ。昔に少しやってみた人がいるみたいだけれど、よくわからなかったみたい。ちょっとだけ強かったかもしれないけれど、個体差かもしれないって記録があったかな?」
「なるほど。合成表が少しはあるのだよね?」
「うん」
「じゃあ、十一体の合成と三体の違いを調べてもらえるかな? 後暇を見て、合成表の詳しいやつも作ってみてくれ。ステータスを確認する水晶を渡しておくよ」
今のレイシアなら、いろいろなモンスターも捕獲して来られるだろう。上手く行けば、掛け合わせで上位素体も簡単に集める事ができるようになるかもしれないしね。
合成表を作る過程で、魔王軍内部のモンスターもいろいろ強いのとかが手に入るかもしれない。試した結果がどうなるか、楽しみだな~。まあ、元の素体の知能が低くて使えないのなら、賢い素体を集めて来ないといけないだろうけれどね~
今回ゴブリン達を纏め上げるのに眷族として創ったチルナ達は、合成の素体としては使わないでそのままLVを上げていってもらう。LVを上げて行くとドラゴンでも倒す程に成長するのか、それとも雑魚は雑魚のまま弱いのかを調べたいっていうのもあるし、魔法も使えないコボルトやゴブリンなどがドラゴンも倒せるような必殺技みたいなものを編み出したりしないかを、確かめてみたかったからだ。
魔法を使う方も、そっちはそっちで弱いなりの工夫が見てみたい。後々だがその技を、LVを上げていないゴブリンなどに覚えさせられるものなのか、覚えたらミノタウロスでも倒せるものなのかを調べたい。
この結果によってスライムだから生き残れたのか、別の雑魚と呼ばれるコボルトやゴブリンでも生き残れた可能性があるのかがわかるだろう。
どんな雑魚だろうが生き残れたのであれば、どんなモンスターに進化しても安心していられるってものだ。素材集めにはホーラックスの副官にと創った眷族のメリアスが手伝ってくれるようで、ダンジョン内から必要なモンスターを連れて来てくれるようだった。
進化とは別に、素体となるゴブリン達も鍛えていかないといけないので、死なない程度に注意しながらダンジョンで経験集めをさせていく。
まあ始めは大して頭もよくないので、数でぼこって経験を集めていけばいいよね。飛び抜けてLVが上がって行くやつは個別に経験集めをさせるかチームでやらせるか、様子を見ながら進めていこうと考えた。
ウクルフェスはこういう経験集めは苦手なのか性分に合わないのか、一定の知能がないとまともに指導ができないようなので、僕が育てて行く事にした。おそらく王子もこういうのは合わないだろうね。
そんな訳で頭の悪い彼らでもわかるように、大体十体くらいのグループに別けてダンジョンの中に叩き込み、集団で敵をぼこらせてノルマを達成したら次のグループと交代、拠点でご飯を食べさせて休ませるって感じで育てて行く。たまに油断してやられそうになるアホな子もいるので、気が抜けないのだよね・・・・・・。そういう時は経験値にならなくてほんとうはあまりしたくないのだけれど、こちらで倒してノルマを増やす事で対応している。
しばらくはこんな感じで進めて行こうと思う。ある程度LVが上がったやつはレイシアに進化させてもらって種族によって違う訓練でもしてもらおうと思っている。
初めは捕まえて即進化させたかったのだけれど、そのままの素体だと進化しない事がわかったのでこういう方法にした。なんだかゲームっぽいよね。
さてゴブリン達の面倒は眷族達に任せてレイバーモルズ町へとやって来た。以前の事件の様子を見に来たのではなく、今回はさらに難民がやって来る事になったので、その様子を見に来ていた。
ジェレント最高司祭から連絡が来て、新たな難民がやって来たので面倒を見て欲しいと頼まれたのだ。こちらとしてはまだまだ増えると予想して町を大きく造っていたので、直ぐに受け入れると返事をしたよ。
新たにやって来た難民は三百名で、家はもちろん食料も十分面倒がみられる人数である。まあ、増えた分生産量の増加は指示したけれどね。
前回の経験があるので、町長もお手伝いで誘導などしてくれる人達もてきぱきと行動してくれている。まずは難民を運動場へと移動させてそこで落ち着いてもらう為に食事を配り、この町で暮らす為のルール説明をおこなっている。それが終わると、今人手が欲しいところの仕事などを掲示板に張り出して仕事を斡旋する手筈なのだが、やっぱりまだ戸惑っているのか直ぐに仕事を探すって人は少数だね。
ああ、そういえば前回もこんな感じでぐずぐずしている人が多かったか~
「難民のみなさん、仕事は一週間以内に決めてくれ。一週間しても働く気がない者は、やる気がない者と判断して元のところへと戻っていただく」
確か以前も、こんな感じで期限を設けたのだったな~。あれから結構時間が経っている。既に懐かしいや。
僕が期限を通達したからか、徐々に仕事を探す人も出始めて順調に動き出した感じがする。仕事を見付けた人は家に案内されて明日からは早速働く事になるはずだった。まあ、少しの間は給料が入らないので、少し援助金を渡すように話し合って決めた。
初めの時はまだ町そのものを造っている途中だったので、最初はお金も取らずに試運転って感じで活動させていた。今はいろいろな店も立ち並び食堂なんかもあって、通常運転で生活しているので、新しく来た人には少しだけ援助する。馬鹿みたいに飲み食いしたら生活できなくなるので、それ以上の援助はしないけれどね。
おそらくはそういう金銭感覚の無いアホな人もでて来て、犯罪みたいなものも増えるかもしれないので、町の人全員に警戒するように伝える事にする。
これで人口七百人くらいの町になったかな? ちゃんと機能していってくれるといいけれど、まあ人が増えれば犯罪とかいろいろ問題も出て来るから、気を付けていかないとだな。そっちはパペットと眷族にがんばってもらって、僕としてはスラムみたいな地区ができないようにがんばって行こうと思う。




