ナルフィクト国からの使者
レイシアは余程今回の事を心配していたのか、泊り込みでブレンダのサポートをしていた。
そんなある日、レイシアから交信があった。
『バグ。何か隣国のナルフィクト国という所から使者っていう人が来ているんだけれど、これってひょっとして・・・・・・ブレンダの事を誘拐したあの国なのかな?』
「ああ、そうだ。正式に謝罪をしたいって話だったからな、その話だろう。そっちに行くよ」
『わかった。待っているね』
一週間くらい後には同窓会もあるし、あまり長引いたりしないといいけれど、さてさてどうなるかな? そう考えつつもブレンダの屋敷に転移した。
「やあブレンダ。使者は今どこに?」
書斎に跳んで直ぐそう聞いた。とりあえず誘拐事件の犯人との接触で、二人の機嫌はあまりよくはないのだけれど理性的ではあるみたいだね。
「いらっしゃい、バグ。今は応接室で待ってもらっているわ。それより犯人から謝罪って何よ?」
「そういえば詳しくは話していなかったな。まとめると、リンデグルー連合王国に借りを作りたくないから異形退治を依頼できなくて、代わりの策としてお前を攫って軍隊でも強くしようみたいな計画だったようだ」
「何それ! 自分勝手ね!」
短い説明を聞いて、レイシアが怒りの声を上げていた。まあ普通そうなるよな~
「それで謝罪って言うのは?」
「放っておいたらまたあほな事をしかねなかったから、僕が変わりに異形を潰して来た。だからもう誘拐する必要がなくなったので、謝罪するって事だろう」
「なるほどね・・・・・・じゃあ一緒に来てくれるかしら」
「ああ、その為に来たからな」
レイシアはまだむっとしていたけれど、一緒に応接室まで付いて来た。
「お待たせしました。早速ですが話の内容を聞かせてくれますか?」
「はっ。まずはこの度の誘拐について深くお詫び申し上げます。そしてバグ様におきましては、怪物を退治していただき深く感謝申し上げます。そして国王陛下が直々に謝罪申し上げたいと仰せで、その機会を頂きたくこうして参りました。場所としましては、我が国との国境を越えて直ぐにある町にて、食事などを用意させていただきまして、そこで謝罪と感謝をしたいとの事であります」
「わかりました。こちらから護衛を何人か連れて行っても構いませんね?」
「はい。ブレンダ様には安心して参加していただけるように、護衛の人数には制限を付けないと聞いておりますので」
「そうですか、それで日時はいつですか?」
「五日後でいかかでしょうか?」
ブレンダは少し悩むように考えて、答えを返す。
「わかりました。では五日後に伺いますと伝えてください」
「了解しました」
二人のやり取りに切りが付いたので、少し僕も話させてもらおう。
「一つ訂正させてもらおう。今回あなた方は誘拐未遂と言っていたが、工作員が手違いを起していたようで、後少し遅れていたらブレンダは死んでいたかもしれない。だから今回は誘拐ではなく暗殺未遂だ。そう国王に言っておけ」
「わかりました。では、正式な招待状を数日中には持ってまいります」
使者は深く腰を折って謝罪して帰って行った。まあ個人として使者は何も悪くないのかもしれないので、僕としても使者にあまり言う気はない。文句なら実際に命令を下した国王に言えばいい。
「まあ文句は国王に直接言えばいいさ。でもって精々豪華な料理でもお腹一杯食べて来たらいい」
「そうね。終わっちゃった事だし、それくらいしかないわね」
「まあな」
「一杯食べてやる!」
最後にレイシアが怒りを食欲に変えてそう叫んでいた。
正式な招待状は二日後に送られて来て、町の場所や時間などが書き込まれていたそうだ。予定の日まではまだ時間があるので、今度こそダンジョンでボス部屋に行けるようがんばってみよう。
ダンジョン内は前回入った時とまるで変わっていて、また初めから攻略をやり直さなければいけないと思い知らされる。
入る度に変わるダンジョンか・・・・・・。ゲームならば簡単にできそうなギミックだが、こっちは実際に存在していた物が変わってしまうのだから、中々出来るものではない。たった一回、それも途中で引き返したダンジョンが造り直しとなると、かなり手間隙がかかっているダンジョンになるな。
これはしっかりと経験にして生かして行かないと、ホーラックス達に申し訳がないなって思ったよ。
そして前回は罠がメインだった気がするのだけれど、今回はがらりと変わっていきなりだだっ広い空間に、十メートルを越えると思われるゴーレムが下からせり上がって来た。
一瞬ロボットか! って思って喜んじゃったけれどね。その後ゴーレムの癖に、異様に素早く動く巨体相手に時間をかけて何とか倒す事ができた。おおよその予想はできていたのだけれど、ミスリルの体をしていて魔法抵抗もやたらと高かったので、時間がかかってしまったよ。
関節を狙いたかったのだけれど、鎧を着ているように関節部分はやたらとガードが固くてかえって普通の部分を叩いた方がダメージになっていた感じだった。
おそらく既存のモンスターでは役不足だと判断したのであろう次々と出て来るゴーレム相手に、必死になって攻撃を入れて行く。一番痛いのは、ビーム系の攻撃が一切効かないところであろう。鏡のように磨かれた体のせいで、ビームが全部反射されたり、反らされたりして逆にこっちに跳ね返って襲いかかって来る事もあった。
ゴーレムが複数いるところでビームを撃った時など、上手く反射誘導されて僕に当たるまで反射されたビームに狙われ続けたりもした。
そして忘れた頃にひょっこりと、想い出したと言わんばかりに罠が仕掛けられていたりもする。まさに油断も何もあったものじゃないダンジョンである。そんなダンジョンに潜りどれくらいの時間が過ぎたのか・・・・・・おそらく体感時間では丸々一日は潜りっぱなしだと思われるが、やっとの事でボス部屋じゃないかなってところへと出る事ができた。
さて、いよいよボスとのご対面だ! 予想だとでかいゴーレムか、複数のゴーレムとかだろうね。そう考えつつ最後の扉を開ける。
そこに待っていたのは、ゴブリン要塞? ゴブリン達が要塞の中からビーム砲を撃って来ていた。
上等だ、あんな雑魚蹴散らしてやると転移で突撃してみれば、いきなり背後から強い衝撃を受けた。いつの間に背後にって思って振り向けば、またしても背後からの攻撃を受ける。
そして今度こそ相手を補足してみると、パワードスーツみたいな物を着込んだゴブリンが、こちらに転移しながら攻撃を仕掛けて来ていた。
舐めるな! って感じで殴ってみても、パワードスーツは頑丈で、少し凹んだ程度のダメージしか受けていない・・・・・・
ならば操縦者に衝撃を伝えて、パイロットを狙いしとめて行く作戦に切り替える。
何機かいるようでパワードスーツを相手にしながら、要塞のビーム攻撃をかわしたり、あるいは別の場所へと捻じ曲げたりしながら戦っていると、パワードスーツの中でやられたゴブリンを引きずり出して、代わりに乗り込むゴブリン達を目撃した・・・・・・
あー、つまり普通なら機体を使い捨てにするところを、こいつらは中に乗っているパイロットを使い捨てにしている訳か・・・・・・。いいだろう、パワードスーツが動かなくなるまでボコボコにしてやろうじゃないか・・・・・・
それからはこれでもかってくらいにひたすらに殴り付けて、要塞もろとも破壊していった。傍から見れば、ゴブリンより余程野蛮なモンスターのようだったよ・・・・・・。日本刀とか、滑ってまともにダメージにならなかったので、殴るしかなかったからね~
そしてようやく要塞が沈黙した瞬間、最後の最後で要塞が自爆してくれた・・・・・・
とことん最後の瞬間までもひたすらに油断ならないダンジョンだったよ・・・・・・。ダンジョン部屋を抜けて宝箱のある部屋で魔道具を使わないでの開錠を試す事一時間くらい? やっと開ける事ができてため息を付くと、中身を漁る事にした。
まあ冒険者ではあるのだけれど、自分のダンジョンで自分に報酬ってのも変な感じなのだけれど、ちょっと中身が楽しみである。
そこで僕は危険を感じて即座に宝箱との戦闘を開始した。ほんと、最後まで油断できないよ・・・・・・ミミックくらい大して手間はかからないで倒す事はできたのだけれど、その後本当の宝箱がせり出して来て、それを見た瞬間また鍵開けをしないといけないのかって思いが沸き起こった・・・・・・
ちなみに報酬は幾ばくかの金貨と、魔法のかかったミスリル製のフルプレートと魔法のマントだった。武器は無いのだな・・・・・・まあいいが、とりあえず報酬にはそれなりにホクホクしながら帰還したよ。
みんながそれぞれに経験稼ぎをして過ごして数日が経ち、ナルフィクト国から指定された町へと出向く事にした。
「おお! これが転移魔法か・・・・・・ほんとに一瞬で移動できるんだな~」
「凄いですね・・・・・・」
レイシアとは顔見せを済ませていたのだろうが、僕は久しぶりに顔を見る事になった、ランドルとフェザリオがそんな事を言っていた。
「こんな魔法がホイホイ使えたら、この世界は悪党だらけになりそうだな。いつ後ろに敵がやって来ても、気が付かないだろう」
シリウスは便利なだけでなく危険性を訴えている。
「転移魔法はそんなに便利なだけではないよ。失敗すると命に関わるみたいだからね」
「そうなのか!」
シリウスの発言に、昔に僕が教えた転移に失敗したらどうなるのかを想い出したと思われるレイシアがそう呟いた。そして転移後に何かと座標が重なったら、どうなるのかとか説明しているらしい。ランドル達が青い顔をしていた。
「それじゃあ早速行きますわよ」
それぞれに衝撃を受けていた昔の仲間達が、ブレンダに促がされて気を引き締めた。確かに謝罪として呼ばれているのだろうが完全に信用していいものでもなく、また何かの騙まし討ちの可能性もあると判断してか、油断しないぞって気迫が感じられた。
レイシアは特に危機感のようなものを抱いてはいなかったものの、文句を言ってやるぞっていった感じかな? まあそれぞれに気合を入れて、町へと入って行く事にした。
町に入る時に身分証を提示すると、直ぐに案内役の人がやって来て、僕達を今回の会場へと案内してくれる。会場となっていた場所はどこかの貴族の屋敷らしく、どうやら国王が今回の為に借りたのだろうと思われた。
そして早速通された部屋は、パーティーなどを開く事ができそうなところで、所狭しと料理が並べられていて、国王達が既に座って待っていたが、僕らが来たのがわかると立ち上がって声をかけて来た。
「ようこそおいでくだされた、ブレンダ嬢、バグ殿。我はカナトダル・ボード・ナルフィクトという。この度は、多大なる迷惑をかけた事をここで改めて謝罪させてもらいたい」
初めての時のように僕の前で、玉座に座り軽く頭を下げていた時のような謝罪ではなく、深々と頭を下げてブレンダに謝って来た。ここには自国民が多数いるので、体面を気にするのならば決してやってはいけない態度とも取れるが、それだけ申し訳ない事をしたのだと行動で示しているともいえる。
まあ、だがしかし今回問題といえるのは受け取り側にそれが伝わるのかどうかという事であろう。確かに一見すると、体面を気にしないでの謝罪ともいえるものであるが、ここにいるその他大勢が全員身内だった場合はプライドも体面も気にする必要がなくなるのだからね。
「まずは納得がいくよう説明をしてもらえるかしら? 何故ここまで愚かな行動ができたのか、その理由を聞かせてくださいますか?」
周りが少しざわついていたが、国王が頭を下げたままであるので、特に文句を言って来る者は出て来なかった。
「では食事でもしながら説明させてもらいましょう。どの道、説明しようと思ってはいましたので」
国王のその言葉で、とりあえずは席に着いて食事をしながら聞く事になった。
「我がナルフィクト国とブグルイート国は、昔はリンデグルー連合王国と共に戦う程には付き合いのある関係であった。ブグルイート国は初代勇者のゲオノース様が生まれ育ち活躍していた国で、我がナルフィクト国には王子でありながら勇者と共に旅をしたクラッド王子がいたのだが、リンデグルー連合王国にはそういう目立った人物は誰もいなかった。
魔王が倒された後勇者と共に戦った者達もそれぞれの故郷に帰ったのだが、何年か後になっても魔王軍の残党が各地で暴れる事があったそうだ。その討伐に勇者あるいは共に戦った仲間が参加する事はよくあったらしい。そして魔法軍の残党の内の一部がリンデグルー連合王国に存在していたダンジョンに立て篭もる事件が発生した。その残党を退治している時に、事故が起きたのだよ・・・・・・」
ブレンダの誘拐に関しての説明だと思ったのに、何故か勇者の話になっている・・・・・・何か繋がりでもあるのかな? 不思議に思いつつもまだ説明が途中なので、とりあえずは全部聞いてみようかと思う。
「リンデグルー連合王国の公式発表では落盤事故と言ってはいたが、あきらかに人為的な破壊工作がおこなわれたものと思われる事故だった。その事故により我が国から派遣していたクラッド王子が亡くなった事に対し、リンデグルー連合王国はあくまでも事故で押し通して詳しい調査もおこなわれなかった・・・・・・。今だ明確な証拠が見付からない状態で追求ができない状態なのだよ。
そんな状態だったのでそなたらには申し訳ない事だったが、救援を求める事ができずに独自に解決しようとした結果が今回の誘拐という話だ。これから人材を育てるなど気の長い話かもしれんが、他に手が無かったのだ。許して欲しい」
好きになれない国だとは思っていたが、何やらいろいろやっている可能性もあるか。一方の話だけを聞いて勝手に動くのもなんだし、少しリンデグルー連合王国を探ってみてからこの話が本当かどうかを考えてみる事にしよう。
ひょっとしたら案外勘違いだったとか、捏造された話をしているだけとか、よくある事だからな~。うかつに信じたりはできない。
それに今回の事はブレンダが悪い訳ではないのに、事件を起していると考えれば、簡単に信じるのも危険だと思えた。ブレンダの様子を窺って見ると、一応は納得できる理由って感じだった。
その後に結構な額の示談金をもらい、料理を一杯食べて無事に帰る事ができた。
調査報告を見てみると、実際国王が言っていたような怪しい活動が見られたものの、決定的な証拠は存在していなくて動きようがないと判断できる。
これはどうにもならないな・・・・・・。過去を見せる魔道具とかでも作ればいいのかもしれないけれど、ひょっとしたら当時の部下が勝手にやったと言い切られたらそれまでかもしれないしね。
そんな風に考えて後は何か見付かるのを待っていようかと思っていると、ふと想い出した事があった。
「確か卒業試験の時の洞窟って、初代勇者のいた隠れ村だったのだよな?」
「そういえばそうかも?」
ひょっとしたらあそこから出て来た物が、何かしらの証拠品だった可能性もあるのでは? そう考えて、出土品を詳しく調べるように司書パペットに指示を出してみる。
こっちはこっちで、洞窟をもう一度調べてみるかな。
「ちょっと気になるから、もう一度洞窟を調べに行って来るよ」
「私も行く」
「ブレンダの方はいいのか? こっそり護衛していたのだろう?」
「大丈夫。ランドル達も大分強くなって来ているから、油断しなかったら平気だと思う」
「そうか」
そんな感じのやり取りをして二人で再び洞窟へと跳んだのだけれど・・・・・・洞窟の入り口は埋められていて中には入れなくされていた。
調査のスキルで内部を調べてみると、埋まっているのは入り口から大体八メートルの範囲だとわかった。密閉されている為、酸欠になる可能性を考えて拠点に配置されているトレントの眷族を呼び出して持って行く事にする。
こんなところでトレントを創ったのが役に立つとは思ってもいなかったが、こいつも呼び寄せられて喜んでいるようだった。
準備もできたので、早速洞窟内部へと転送で移動すると、早速村の内部を調査スキルで詳しく探る事にした。
「召喚、ウルフ。召喚、レッドキャット」
レイシアも何かしら発見できないか下僕を呼び出して調べるようだな。レッドキャットっていうのは馴染みがないが、確かに赤い猫だな。ただ体は大型犬くらいの大きさだった。これは猫好きじゃないと可愛いとは思えないかもしれないな。
まあこっちもがんばって何かしらの痕跡を見付けてみよう・・・・・・って思った矢先にレイスがやって来るのがわかった。
「メンタルバースト」
やって来たのは五体で、発見した瞬間に魔法を叩き込んで終わらせる。まだどこかに住み着いていたのかな? そう思っている間にまた前方に湧き出して襲って来た。
「メンタルバースト」
しかし、この先は行き止まりで何もないのだけれど、上から進入して来ているのかな? 調査のスキルで真上の地上など探ってみるが、レイスは発見できなかった。
その代わりとでもいえばいいのか・・・・・・前方の剣が安置されていた部屋のさらに奥、隠し部屋がある事がわかった。
「レイシア、隠し部屋があるみたいだ」
「どこ?」
「こっちだ」
そう言って二人で剣のあった台座の裏側の壁の前に立つ。
見た感じ普通にただの壁であって、扉とかそういうものが隠されているようには見えなかった。アルタクスが壁を調べて回るが、どうも仕掛けの類は無いと判断できる。という事は奥へ行く為には、この壁を破壊して行けって事になるね。
「転移で向こうへ移動するよ」
「わかった。送還、ウルフ。送還、レッドキャット」
レイシアの準備が出来たので、早速奥の小部屋へと跳んだ。
部屋の中には複数の羊皮紙が並べられていた。ところどころ虫にやられ、ボロボロになっているそれらは、触れば直ぐに崩れてしまいそうなものばかりである。
「固定化」
さすがに壊れそうな物を止める為の呪文に心当たりがないので、合成魔法による状態を保存する魔法を使う事にした。これで少なくとも触ったら崩れる事態だけは避けられるはずだ。
(リードランゲージ)
でもって、今だにこっちの文字は読めないままなので翻訳の魔法を無詠唱で使う事にする。幾つか手に取って見てみるが、これはじっくり調べた方がよさそうだな。そう考え何が書かれているのかは、拠点でじっくり読ませてもらおう・・・・・・
そう考えここにある物を拠点へと送ると、床一面に魔法陣が描かれているのを発見した。
「これ、召喚の魔法陣だよ・・・・・・呼び出しているのはレイスだね」
「中心にあるのは魔道具だな。周囲のマナを集める効果があるようだ」
「じゃあ、レイスが一杯いたのはこの魔法陣のせいだったのね」
「そしてレイスがどこから来ているのかを探った者が、この部屋を見付けるだろうって考えたのだろうな~」
これ以上はこの部屋に何も無さそうなので、魔法陣を壊して魔道具を回収し帰還する事にした。
二人してお茶を飲みながら羊皮紙をチェックして行くと、おおよその事の顛末がそこには記されていて、ありがちな話なのだけれど魔王との戦いの後、強い力を持つ勇者とその仲間達の力を警戒した当時のリンデグルー連合王国が、事故や病気を装って勇者とその周辺の人間を害しようと企んだというものらしかった。
仲間と仲良くしていた周囲の人間が一部殺されたところで、何者かの暗殺を悟った勇者が洞窟に逃げ込み、そこで誰が自分達に対して暗殺を企んでいるのかを探ろうとしていたのだそうだ。
まあ、結構状態が悪くてところどころわからないところなんかもあるものの、リンデグルー連合王国の悪事を暴くには十分な記録は残っているんじゃないかな?
「さて、問題はこれをどうするかだろうな~。単純に突付けても偽物扱いされそうだし・・・・・・」
「自白させる?」
「あー、前にやった公開裁判みたいに、自白させる手か・・・・・・最悪そういうのもありかもしれないな」
しばらくの間悩んでみたのだけれど、結局今でもやった事を理解していてそれを公表しようとせず、証拠を消そうと躍起になっている感じなので、リンデグルー連合王国の王族は排除するのがいいのかもしれないと考えた。下手に中途半端な情報を残していたり、この事実が知れたらそれこそ国民を巻き込んだ戦争になるかもしれない。どうせ誰かが不幸な目にあうのだとしたら、今までの悪事を犯していた者がわりを食うのがいいはずだ。
実際には祖先の犯した罪なのだろうけれど・・・・・・まあそれを隠そうとしていたのだから仕方ないかな?
「レイシア。今回は魔王軍の将軍として王家を潰そうと思う。ここで待っていてくれないかな?」
「一緒に行くよ?」
「まだ今は存在を晒すリスクを犯したくない。僕だけなら魔族らしいやり方もできると思うしね」
そう言うとチェンジの魔法を解除して、魔神の姿になる。
「うーん・・・・・・じゃあ私の姿を変えるのは?」
「わかった。何にするかはこっちで決めるよ?」
「いいよ」
「チェンジ」
なるべく目立つ事がないように、蜘蛛の姿に変える事にした・・・・・・掌サイズの蜘蛛になったのはいいのだけれど、何でこの子は白にこだわるのかな? まあいいけれど・・・・・・蜘蛛ならば、糸が出せるので振り落とされたりとかしないだろうと考えた。
さて、早速リンデグルー連合王国の王城上空へと転移した僕は、調査スキルを使って王族の位置や、国の要職の人間などの情報を集める。そうすると、丁度王都のどこかには全員いそうだったので、攻め落とすには都合がよさそうだった。
腐れ貴族が他にもいそうなのだけれど、そっちは後でついでに潰す事にして、まずは王族の処理から始めよう。
「ファイアランス」
炎の槍が、爆撃機から放たれた誘導ミサイルのように、それぞれの目標へと向かって飛んで行く。その後、貴族も排除した僕達は拠点へと戻って、事後処理を検討する事にする。
いきなり国のトップがいなくなったら、混乱するだろうからね・・・・・・
そこで考えた案としては、一時的にでも民主主義で国民が国を運営すればいいかと考えた。まあ、国民次第だけれどね~




