サフィーリア神殿
翌日村の調査が終わったらしいので、早速該当する村へと転移して交渉をすることにする。素材となる草は、もう少し開発するのに時間がかかるらしいので、先行して土地の確保をしておくかな。
「失礼する。今時間などはあるだろうか?」
まずは候補の一つへとやって来て、村長へと話を付けることにする。
「ああ、・・・・・・どのような御用で?」
多分この村長は、僕の名前を思い出せなかったのだな。まあでも顔を覚えていたみたいなので問題ない。
「まだ実物はないのだが、こちらの村で育てて欲しい草がある。その草の栽培を引き受けてもらえるかどうかを交渉しに来た」
「はあ、草ですか・・・・・・しかし内の村の土地は痩せ過ぎていて、まともな野菜はあまり育たないのですよ。申し訳ありませんがお断りを・・・・・・」
「育ててもらいたい草は、食べ物ではないので多少土地の栄養が足りなくても、問題なく育つと思います。その草が売れるようになれば、おそらくこの村にもいい収入源となって、土地を豊かにするような肥料や生活に必要な品々も買えるようになると思っていたのだが・・・・・・」
「はあ、そういう草があるのですか・・・・・・」
ちょっと興味が出て来たみたいだな。この村が一番生活に苦労していたし、もういっそここを紙作りの村にしてしまうのも一つの手かもしれないな。
「そうだな、まだ全てが途中なので未定の話になるのだが、今から育ててもらいたい草というのは、紙の原料となる草なのだ。その草を使って子供達に勉強を教える為の本を、この国中に配ろうかと考えているので、もしよければこの村で草の栽培から紙の生産、本の印刷と本に仕上げる作業まで、全部やってみないか?」
「そうですね、確かにこの村は土地も痩せていて、村の周りにあるごくわずかな森で日々の生活を続けるだけの動物を狩る意外に何もない村ですから、何かしらお金を稼ぐ手段が増えるなら試してみるのもいいのかもしれません」
「では、こちらの準備ができ次第、手始めに草の栽培から始めてみよう」
「よろしくお願いします」
何とか話もまとまったようだった。この調子で他の村にも草の栽培をしてもらうことにしよう。
後はこの紙が売れないと話にならないから、そっちの販売ルートも確保しておかないと村はタダ働きになっちゃうな。
やっぱりこういう時はブレンダがいいかな? 彼女は商売人だからこういう時はいろいろ相談できたり、何かしらのアイデアを持っていたりするだろう。
「今時間あるかな?」
『ああ、バグ。こっちは今レイシアと本の内容を話し合っているところよ。また変わったことを始めたみたいね』
「いやそこまで変わったことではないと思うのだがな~。まあいいや、それでこの本なのだが今のところこちらの国中の子供達に使わせて、読み書きを習わせようと考えている。その読み書きを教える教師役っていうのは、マグライアっていう神様のいる教会に頼めばいいのかな? それとこの紙を流通させたいので、販売ルートを構築したい」
『そうね、マグライア様は豊穣を司る神様で村などには大抵神官がいたりするものだけれど、彼らはそういう子供の面倒とかを見たりはしないわ。主に作物などの豊作を願って、日々の天候などを神様にお祈りしているくらいかな? だからこの話を教会に持って行くつもりならサフィーリア様、慈愛を司る教会にお願いするのがいいかと思うわよ。
後は紙の販売だったかしら、こっちは実際に紙を見てみないと、値段を付けられないわよ。完成したらこちらで考えてみるので、まずは作ってみてくれるかしら?』
「わかった、いろいろありがとうな。また進展したら連絡入れるよ」
ブレンダと話していてふと思ったことだけれど、この本の元になる知識って司書パペットに聞けば一発で完璧なものができるんじゃないか? まあそうすると下手をすれば頭のいいやつが一杯増えそうだから、やっぱり任せておいて読み書きだけ覚えさせればいいかな? 賢くはなって欲しいものだが、悪知恵が働くようになるのはまずい。
下手にずる賢いのが増えると、かえって厄介かもしれないしね・・・・・・詐欺とか・・・・・・
さて土地の確保は他の村とも話が付いたので大丈夫みたいだ。そうなると草の開発が終わるまでは教会の方を当たってみるか。
まずは拠点へと戻ってサフィーリア教の本部とでも話してみるかな~
本部はどうやら今まで一度も行ったこともない国にあるようだった。なので地図を出して場所を検索、サフィーリア教本部の上空へと転移して、正面に降りて中に入ると近くにいた教会関係者と話をすることにする。
「失礼する。子供の教育のことで話があるのだが、どなたか話が出来る人はいないか?」
神官っぽい人だったので、おそらくこの教会の人であっていると思ったから聞いてみる。
「はあ、それならば、ゼクレイト様がよろしいかと思われますが・・・・・・貴方様はどちら様で?」
「僕は冒険者をしているのだが、今はマグレイア王国というところを拠点に生活している。今回は子供の読み書きができない子供が多かったのをみて、勉強を教える教師をしてくれる人がいないかどうかの話をしに来た」
「なるほど、とりあえずこちらへどうぞ」
納得してくれたのか、教会内を案内してくれるようだ。
しばらく歩くと中庭に通じる扉が一杯あるところへとやって来た。多分ここで仕事みたいなことでもやっているのだと思う。そう思っていると一杯ある中の一つの扉の前で、案内してくれた神官の人が止まったようだ。
「ここで少しお待ちください」
「わかった」
そう言って神官の人は扉をノックして中へと入って行った。少し時間が過ぎて、中から出て来た神官の人は話しかけて来る。
「どうぞ入ってください」
「失礼する」
部屋の中は一応片付けてはいると思われるのだが、たくさんの本と書類が置かれて、手狭になった部屋の中で大きな机で書類を見ていた男の人がいた。
「それではゼクレイト様、お飲み物をお持ちしますのでしばらく失礼します」
そう言って、案内してくれた神官の人が部屋を出て行く。
さて、早速話をしてみるかな。
「突然の訪問失礼した。僕は冒険者でバグという。子供に読み書きを教える教師役をしてくれる人材を探してここに来た」
「ふむ、しかしマグレイア王国という名前には聞き覚えがありません。教育をして欲しいというのは、その国なのでしょうか? そういう話になるのだと、神官を派遣するのにもかなりの時間がかかってしまうので、難しい話だと思われるのですが?」
僕は多目的シートに地図を描いて、この国とマグレイア王国の位置関係を見せることにした。
「お互いの国の位置関係ならばこんな感じになるが、移動手段は魔道具を使ってもらえればと考えている」
「魔道具ですか?」
「はい、二つの水晶を設置して、その二つの間を自由に行き来できるようにするものなので、話を受けてもらえるのならば、距離はそこまで重要にはならない」
「なるほど、それで離れているにもかかわらずこちらに話をしに来たということですか」
「ええ。それで今考えているのは、マグレイア王国の子供達全員に読み書きを教えたいということと、もしかしたらだがリンデグルー連合王国の方でも子供に教えていけないかと思っているところだ。それでその下準備として、教育をおこなう為の本と実際に覚える時に必要になりそうな、書き取り用の紙などを開発している」
トントン
どうやらさっき出て行った神官の人が戻って来たようだな。
「ゼクレイト様、お茶をお持ちしました」
「入りなさい」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
一旦お茶を飲んで考えをまとめる。
「なるほど、いろいろと準備は進められているようですね」
「はい、まだ全てが途中の段階で結果で示すことは出来ていないのだが、今は出来ることをやっている状態かな」
「では、読み書きを教えるのは村単位になりますか? それとも主要な町に子供を集めておこなう感じで考えていますか?」
「そこはまだ考えている途中なのだが、村長などに話を伺ったところ、家庭によっては町などに子供を出すのは嫌がるところもあるのではと言われたので、始めは村単位がいいのではと考えている」
「確かに、親元を離れるのは子供としても辛いことですからね」
「ですね。町まで安全に、時間をかけずに通うことができれば問題はないのだろうが、魔道具の乱用はあまりしたくないと思っているので、やはり最初だけでも村単位がいいのかもしれない」
「では、こちらの神官の派遣人数を、どれくらいだと考えていますか?」
マグレイア王国の情報を僕は思い出す。大きな町は城下町である今現在僕達が拠点にしているところ一つで、小さな町が四つ、村は二十六つくらいだったと思う。
その全ての町や村に神官の人に来てもらうのは、大変だろうから村の方は一人の神官で二つ三つ担当してもらうのがいいかな? そう考えると町の方で五人、村で九人位に来てもらえたらいいかもしれないな。
「そうだな。十四人程来てもらえるのなら、助かるかと」
「そこまで大変な人数ではありませんね。失礼ですが、マグレイア王国という国は小さな国でしょうか?」
「はい、とても小さくて資源なども無くて、そんなに裕福な国ではないところだな」
「なるほど、それでは前向きに検討させてもらいましょう」
「よろしくお願いする。それではこちらも、みなさんが生活するのに不自由しないように、町や村などに教会を建てるようにしてみよう。完成したらまたこちらに伺います」
「そうしてもらえると助かりますね。住むところがあるということならば、多少でも安心して向うこともできますし」
「突然の話だったが話を聞いてくれて感謝する。それでは失礼する」
「ええ、それではまた」
話し合いは無事に終わり、何とか教師を務めてもらえる感じだった。まあその代わりに教会を建てないといけないけれどね~
多分村の方は問題ないな、土地はそれなりにあるから・・・・・・問題は町の方なのだけれど、こっちは王子にでも相談した方がいいのかな?
まあ自国の国民の話なので、王子を引っ張り出すのが一番いいかもしれないな。ブレンダに話すのだったら、リンデグルー連合王国で教育するならば改めて相談って感じだろう。
そう考えると、教会を出た後で王子の元に転移した。
「お邪魔するぞ。少し話があるので、時間を作ってくれ」
「ああ、バグか。もうしばらくかかるからそっちで待っていてくれ」
「わかった」
王子もなんやかんやで、自国の為の仕事をしているのか、書類とにらめっこしていたので、大人しく執務室にあるソファーに座って待つことにした。
護衛の近衛兵などが、ビックリして警戒している感じだったのだが、僕のことは聞いていたのか何も言って来ないで、元の警戒に戻って行く。
王子相手に突然押しかけたりしていたので、待っている間にお茶の準備などしておくかと、デザートを作るパペットを呼び出しお茶の準備をさせた。
しばらくして王子が護衛と共にこちらへとやって来る。
「待たせたな」
「いや構わんよ、話の前にせっかくだから欲しいデザートでも選んでくれ。後ろの護衛も一緒に食べてみるといい」
そう言ってメニュー表を王子に渡した。
護衛の方は一緒に食べるなどとんでもないとか何とか言っていたが、気にするなと王子が勧めたので、それぞれ一つずつ頼んでパペットが早速用意してテーブルに並べて行く。
王子達が堪能しているが、ここらで話を進めて行こうかな・・・・・・
「話の方なのだが、今日ここに来たのはこの国の子供達に勉強を教えて行きたいと思い、その手助けをお願いしたくてここに来た。やって欲しいのは資金援助と、教会を建てる為の土地の確保だな。できそうか?」
「何でまた、お前がそんな事を始めるんだ?」
「そうだな、目に付いたからって感じだろうが、国のトップが考えてくれないからじゃないのか?」
「それは申し訳ない」
「で、話なのだが、受け入れられそうか?」
「教会についてはわかったが、資金提供っていうのは何だ?」
「勉強を教えるのには、本や書き取りなどに道具が必要になって来る。その教材のお金を国の方で出してもらいたい」
「なるほど、それで資金提供か・・・・・・教会の方の土地の確保っていうのは、場所だけでいいのか?」
「ああ、建物をのんびり建てていると時間がかかり過ぎるのでな、場所さえ確保してもらえればこちらで建ててしまいたいと考えている」
「了解した。自国の民の為にもなる話なので、前向きに検討させてもらう。資金についてはどれ程確保できるものなのか、わからないがな・・・・・・」
「とりあえず話し合ってみてくれ。結果が出たら呼び出しでも、こっちに来るのでもしてくれれば話を聞きに行くよ」
「わかった」
こうして国の協力の方も、特に揉める事も無くすんなりと行ったみたいだ。
まあ、国民の為にもなる話なので、ここで無理だとか言われるものではないと思っていたけれどね~。予算確保は、国がそこまで豊かではない為に、どれほど貰えるものなのか、未知数だったけれど・・・・・・
さて、全ての出発点である草の開発状況を見てみるかと思い、拠点の平原へと向った。
伐採用パペットが、僕に向かってこれをって感じで見せて来る。草を用いて実際に作られた紙だね。
「中々いい感じじゃないか?」
触った感じ、ちゃんと紙って感触をしていた。日本で使っていたような紙とは違い和紙っぽさがあったのだけれど、さわり心地とか白さは納得が行く感じの物だった。
問題は実際にこの世界のインクで書いてみて、滲んだりぼやけたりそんな感じで上手く馴染まなかったら作り直しになる。後はシャープペンでの書き込みにも対応できるといいけれど・・・・・・
その場で簡易テーブルを創造して実際に書き込んでのテストをおこなっていく。インクの方で少し乾かすのに時間を使うけれど、特に問題はなさそうかな。書いて直ぐに持ち上げるとインクが垂れて来るとか、裏に染みるとかいったこともなさそうだった。
これは、完成って感じでいいかと思う。
パペットによくやったと労った後次の生産活動に入ってもらい、出来上がった紙を持ってブレンダの元へと転移する。
ブレンダは執務室でレイシアと一緒に教科書の原案作りをしている最中だった。
「お邪魔するよ」
「あらバグ、いらっしゃい。進展があったのかしら?」
「ああ、紙が完成したので持って来た。まだ草の生産に入っていないからこんな小さい物だけれどね」
そう言ってブレンダに試作された紙を手渡す。
「へー。かなり上質じゃない。こんなのが量産されるようになるの? どういう形で加工するのかにもよるけれど、これなら家で取り扱っても問題ないわよ」
「そうか、じゃあブレンダが取り扱いたいって感じの案とか出してくれれば、そういう加工もしたらいいかもな」
「そうね、ぱっと思い付くのは、私専用の契約書かしら。他の貴族ならその貴族毎で違う契約書を作ってもらえるなら、それ自体の紙が高い価値が付くわよ」
「なるほど、そういう利用方法か・・・・・・今まで使っていた物を参考として見せてもらってもいいか?」
「ええ、といっても普通にどこにでもある羊皮紙だけれどね」
それを受け取り、インクとか書いてある模様などに凝っている部分があるなって感じを受ける。
「これ貰っていってもいいか?」
「ええ、でも後で一応返してもらえるかしら?」
「ああ、じゃあ参考にした後で返しに来るよ」
「お願いするわね」
「後サフィーリア教と話が付いたから、教科書の原案が完成したら一度見せて内容を確認してもらうといいかもしれない」
「結構行動力があるわね、了解よ」
「うん、がんばって作るよ!」
レイシアも、がんばっているよって感じでアピールして来た。
「じゃあまたいろいろ動いて来るから、二人とも無理しない程度にがんばれよ」
「バグもがんばってね!」
「ああ」
そんな感じでレイシアとブレンダの方の進み具合なども、確認して来た。
次に僕の向かったところは一番貧しそうな村である。完成した草を栽培して行かないと、そもそもの紙が作れない為、早速栽培してもらう為にやって来た。
「失礼する。栽培してもらいたい草の種を持って来たのだが、村人との話とかは済んでいるかな?」
「ああ、いらっしゃい。一応話しはしてあります。ですがまだ実際に草なんか育ててお金になるのかって、半信半疑な者が多くて参加者はそこまで多くない状況です。申し訳ないですが」
「まあ仕方がない。それでどれくらいの参加者がいるのだ?」
「現状は村の半数といった感じでしょうか」
「ふむ、じゃあとりあえずそれで始めてみよう。後々栽培と実際の紙にする工程もおこないたいので、後でどっちの方がやりたいのかって話し合いもある。まずはできるところから始めよう」
「わかりました」
村長に草の種を渡して、参加する村人に簡単な育て方などを説明し、それぞれの土地で早速育ててもらうことにした。パペットからの情報だと、この草を育てる期間は大体十五日くらいで、結構早くに収穫できそうだった。まあ見た目はただの雑草みたいな感じだな。そそこそ生命力も強いので、種を植える時に少し森から腐葉土を持って来て水をやれば、後は勝手に生えて来る。
野菜とかに比べて、収穫サイクルが短いので意外と直ぐに生活が楽になるかもしれないな。
そんな事を考えながらも、村の一角に土地を確保して、そこに紙を加工する為の工場を建設させる。後ついでに教会も建設をするように指示を出しておいた。
こっちの建設は、ダンジョンの方も手伝っている関係で、少し時間がかかるかもしれないな。まあ草の栽培で多少の時間が必要になって来るので、それまでにできれば問題ないかもしれないな。
工場の話が片付いたので、他の村でも草の栽培に協力してくれるところへ行って、早速栽培を頼むとしよう。
その後協力してくれるいくつかの村に、種を渡して回った。
二日後、王子から連絡が入り教会を建てる為の土地の確保と、援助資金について話があるということで、執務室まで出向く事にする。
「失礼するよ」
「ああ、バグか。少し待っていてくれ」
「わかった」
前回も好評だったことだし、またパペットでも呼んでお茶の準備でもしていよう。そんな感じで待っていると、仕事に切りが付いたのかこちらにやって来る。
「教会を建てる場所についてなのだが、すまんが町の外れの方になってしまうが構わないだろうか? それと資金についてなのだが、年間資金で金貨百枚が限界だった」
「まあ、初めだし構わんよ。その代わりこれが上手くいって、教会が力を持った時に王家が口を挟めなくなっても、僕は知らないからな。下手をすれば教会に窺いを立てなければ、満足に政策も決められないって事もあるから注意しろよ」
「それは怖いな・・・・・・実際にそんなこと起こりえるのか?」
「脅しじゃなくて、実際にそういう話は聞いた事がある。教会の力は国民の支持で変わって来るからな。この国の国民全てが敵に回れば、さすがに王家が何を言おうと相手にされなくなるからな。国に仕えている兵士だって町に戻れば自分の家族がいる。家族をないがしろにする王家に味方する者など、一人もいなくなるどころか害悪として後ろから襲い掛かって来ても、文句も言えんだろう」
「もう少し交渉してみるべきだろうか?」
「いや、始めたばかりだから今はこれでいいって話だよ。結果を見て、教会側や国民側に不満が出ないよう立ち回ることだね」
「なるほど、では時期を見て追加の支援を検討するように掛け合ってみることにしよう」
「そんなところでいいかもしれないな。それで土地の方はどこになるのだ?」
そう言って多目的シートを広げて、そこにこの城下町の地図を描き出す。王子はそれを見て、城下町の城壁のあるところを指で指し示した。
「ここ辺りだ」
「ほんとに僻地だな。それならば、もういっそこの壁ごと広げてもかまわないか?」
「はっ? 城壁を崩してそこに建てるのか?」
「ああ、教会を建てるついでに、関連施設などもまとめて作ってしまえばいいかと思ってな」
「それは、少し待ってくれ、掛け合ってみるよ」
「城壁もこちらで建てるので、そっちには負担は無いと思うぞ」
「わかった、それも伝えてみるので、直ぐには動かないでくれ」
「了解した。じゃあなるべく了解を取るようにがんばれよ」
「努力してみる」
僕らはそんな話し合いをして、後は雑談などしながらデザートを食べたりしていた。女子もいないので華やかではなかったけれどね・・・・・・
王子との話し合いが終わり、拠点へと帰るとダンジョンが完成したとの報告があがって来たので、早速ブレンダの店と役場で上級者用ダンジョンへの入場券の発行手続きを開始することにした。
ただ、上級者用に入る資格としては、中級者ダンジョンを一定回数以上クリアできないと受け付けられないようにと指示も出しておく。無謀な挑戦をされるのは、こちらとしても迷惑になるからね。
さて、これで拠点のパペット達の手が空いたので、本格的に教会などの建設などをして行くとしよう。
優先順位としては、教材の開発だろう。
建物は、教科書ができてからでも十分だと思われる。教会側も、直ぐに建物が建つとは考えていないだろうしね。
そんな訳で、シャープペンの本体をドワーフパペットに、芯の部分と消しゴムを伐採パペットに作るように指示を出した。女性型パペットには、裁縫関係で衣服に着色などをする関係で、染料の知識があるから特殊インクの生産をお願いする。
特殊なインクは、この世界の人間には作れない技術で開発してもらえば、唯一無二のものになって貴族などの契約書などの価値が高まると思う。
珍しく今回は、ゴーレムパペットに開発を頼む物は特に無かったな・・・・・・まあでも、この子には引き続きブレンダからの注文の武器防具などを作ってもらえば問題ないかな~
草の収穫まではまだ時間がかかるので当面やることは、教会の建設くらいになった。シャープペンと消しゴムはわりと早くに開発が終わり、特殊インクはもう少しかかりそうだけれど子供の教育に関しては、後は紙を作ってレイシア達の原案をサフィーリア教と打ち合わせして本にしたらほぼ終わりって感じだね。
大分終わりは見えて来たよ。
王子の王家内の交渉は、どうやらがんばったらしく城壁をこちらで壊して建て直すなら拡張してもいいという条件をもらえたようなので、この際だから思いっきり僕達関係の建物をここに詰め込もうとパペット達と相談して大幅な拡張計画を考えている。
実際の話し、攻めて来る敵なんかいないので、こんなに立派な壁は必要が無いのだけれどね・・・・・・
危険種なども、全部倒してしまって王国内で暴れるようなものは、殆ど被害が少ないタイプのモンスターくらいだ。
そんな訳で、この壁近くの区画に最先端技術を詰め込んだ区画が誕生した。移動が面倒なのでこっちにブレンダのお店二号店も造り、僕達の待機場所もこっちに移す予定である。
そしてこの区画で一番目立っているのは、サフィーリア神殿で、見た目が質素でそんなに豪華な装飾品を使っている訳ではないのに、見事な彫刻などが神殿のいたるところを飾っていて、観光名所になりそうな出来栄えになっていた。
まあ、どこかからお客さんなどが来た時などに、泊まれる場所として宿屋なんかも作ってあるけれどね。この宿屋は、基本サフィーリア教会が管理してくれればいいと思っている。
戦争孤児とか、そういう訳ありの人などを一時的に住まわせたりとか、そういう事にも使えるだろうからね。
さて、まだ教科書などの生産が出来てはいないのだけれど、神官達を迎えに行ってみますかね~
まずはこちら側の神殿の転送の間に水晶を設置して、もう一方をあちらに置かせてもらおう。
「すまない。ゼクレイトさんに取り次いでもらいたいのだが・・・・・・バグという者が、教育の話で来ていると伝えてもらえるか?」
サフィーリア教の本部に転移して来ると、教会に入って手近にいた神官の人にそう話しかけた。
「はい、わかりました。少々お待ちください」
そう言って、神官は奥へと歩いて行った。しばらくして戻って来た神官の人は、僕に付いて来るようにと言って、先導する。
「ゼクレイト様、バグ様がお見えになりました。中へどうぞ」
案内してくれた神官の人がそう言って、戻って行く。僕は案内ありがとうと言って、中へと入った。
「今日は、こちらの国の城下町の教会が、完成したので、知らせにと思い伺った」
「それはそれは随分とお早い完成ですね。ひょっとして小さな小屋のような教会で?」
さすがに準備期間が早かったせいか、嫌味を言って来たようだな。まあわからなくもないが・・・・・・
「いえ、ちゃんとした立派な物を建てさせてもらったよ。と言われてもわからないと思うので、実際に見てもらった方がいいかと思う。早速現地と繋げる水晶を配置させてもらいたいのだが、いいかな?」
「ええ、一応許可などをいただきまして、部屋を一つ用意させました。今から移動ですか?」
「いきなりなので予定などあるようなら、また後日でも構わんよ。後、一つだけ僕も残念なことだが、神殿を建てることになった位置は街の外れなので、そこだけは先に謝っておく」
「いえ、構いませんよ。国の方にもいろいろと思うところがあったのでしょうね」
「まあ、今はまだ始まったばかりなので、この重要性が国に認められるのは、もっとずっと後になるかもしれませんからね」
「そうですね。じゃあとりあえず、その水晶の配置というものを先に済ませましょうか」
「はい。じゃあお手数だが、配置する部屋に案内を頼む」
「こちらへどうぞ」
元々は、倉庫として使っていたこじんまりとした部屋だそうで、案内されたその部屋に僕は水晶を設置して、床にわかりやすいようにと魔法陣を刻み込む。そして部屋の四隅にガーゴイルと台座を設置した。
お互いに国境を越えるので、何かあった時のセキュリティーはしっかりしないとね~
「少しだけ、向こうの神殿を覗いて見ますか? じっくりと見るのはまた後日でもいいだろうし」
「そうですね、では少しだけお願いしてもいいですか?」
「はい、この水晶に触ってもらえれば、向こうの神殿へと跳ぶようになっている」
そう説明すると、早速水晶に手を伸ばした。消えたゼクレイトを追うように、僕も転移する。
僕が転移して来ると、ゼクレイトは凝った装飾のされたその部屋を物珍しそうに見ているところだった。
「こちらへ。まずは外に出てこの神殿の全体を見てみるといい。なんなら城下町を見てみるのもいいと思う」
「ええ、確かにそうですね。では案内をよろしくお願いします」
僕はゼクレイトを連れて部屋を出ると、外を目指して歩き出した。後ろを付いて来るゼクレイトは、驚きながら歩いている。
まあこれ程の神殿が、わずか数日の時間で建ったと言われたら、普通はこんなものだろうね~
そんな事を考えていると、神殿の外へと到着した。
外に出てまず目に付くのは、平らに舗装されたこの地面だろうか。所々に木が植わっていて並木道になっている。なんとなく人工的ではあるが森にでもいるような風景を思わせる造りになっていた。
直ぐ近くに城壁はあるものの、日差しを遮ることが無いように配慮されて造られていて、圧迫感はそこまで感じられない。
神殿の周囲の建物は、宿屋やブレンダのお店などが視界の隅に見えていたりする。
「どうですか? こちらが本気で来てもらいたいと思っているのが、わかってもらえたかな?」
「ええ、それはもう十分に理解できました。まさかこれ程の神殿を私達の為に用意してくださっているとは、予想してもいませんでした。こう申してはお恥ずかしい限りなのですが、もっと個人的な小さい規模での活動になるのだと思っていましたので・・・・・・」
「今日は突然でしたので、詳しい案内などはまた後日がいいかな?」
「そうですね、そうしていただけるとこちらも準備ができて嬉しいです」
「では、連絡用の水晶を渡しておきますので、何かあればそれで連絡を付けるようにしましょうか」
「魔道具ですか、便利ですね」
「そうですね。ですので悪用されないように、細心の注意も必要になって来ます。それだけは理解して欲しい」
「わかりました。ではまた後日よろしくお願いします」
僕は再び転送の部屋までゼクレイトを案内して別れることにした。
各村や町の教会は、まだ建築が途中な所もある為、完全には終わっていないけれども、これでサフィーリア教に関しては大体やることは済んだな。
レイシアとブレンダの方は、どんな感じだろう?
ブレンダの執務室へと跳ぶと、二人はウンウン唸りながら作業をしている途中みたいだった。
「よう、どんな感じだ~」
「バグ、これ結構大変だよ」
「いらっしゃいバグ。大体は終わって仕上げの作業って感じかしら?」
「おお、結構進んでいたのだな~。少し休憩でもするか?」
「そうしよう!」
レイシアがその意見に飛び付き、期待の眼差しを向けて来る。あーはいはいと、パペットを呼んでお茶の準備をさせるのだけれど、ちょっと期待と違った様子だった。
おそらく僕特製のおやつを期待していたのだろうね。まあそう来ると思って僕は拠点のキッチンに転移して、素早くおやつを用意した。
帰って来ると早速特製のおやつを二人に差し出す。まあテーブルの上にはそれはそれって感じでパペットのデザートが乗っているけれど・・・・・・
今回用意したおやつは、草団子。ヨモギに近い草を見付けて品種改良して、なるべく近い味にした物をお餅と混ぜた後、団子にして串に刺し餡子を乗せた物だった。
「ん~~~っ!」
よし、今回も気に入ってもらえたようで、大成功だったよ。
まあそれはいいとして、ブレンダと紙の値段とかも相談しておかないといけないな。村で作られた紙ではないのだけれど、拠点で作った紙を使って試作インクで書かれた契約書をブレンダに渡す。
「これは村で作った物ではないのだけれど、こんな感じでできるって思って値段を付けて欲しい。インクは特殊で、この水晶を通した光を当てると、違う色に変化するっていうインクを使っている。こんな感じの物でどうだろうか?」
そう言って、水晶も手渡す。
「凄いわね。これは確かに誰にも真似はできないと思うわ」
そう言って、水晶を使って試している。
「そのインク自体は、拠点のパペットじゃないと作れない物だと思うよ。それよりも紙に価値を付けて、村人達に報酬を支払う時の参考にしたい。どれくらいの価値があるものだと思われるかな?」
「う~ん。今この場で値段を出すのは少し難しいわね。この紙って、一般市民も使うようになるのかしら?」
「そうだな、子供の読み書きを習う時のメモとかにも使おうと思ってはいるよ」
「それだとあまり高い値段は付けられないわね。教科書はこっちを使ってもいいかと思うけれど、書き取りなどの使い捨ては従来の羊皮紙にしてみたらどうかしら?」
「ふむ、ならそっちの羊皮紙を大量に仕入れたりとかは、できるか?」
「そっちは任せてもらってもいいわよ」
「じゃあこの白い紙は、契約書や本でのみ使うって感じになるのかな?」
「価値を付けたいのならそっちの方がいいでしょうね。そう考えるとこの契約書サイズ一枚で銀貨一枚って感じがいいかもしれないわね」
「え? ブレンダ・・・・・・この紙一枚で宿屋一泊分もするの?」
「そういうけれど、これかなり上質な紙よ。この白さ、それくらいしてもおかしくはないわ」
「特殊インクを印刷するとなると、さらに契約書は値段が跳ね上がるのか・・・・・・」
「そうね、金貨一枚くらいの価値は出て来るかもしれないわね」
「一気に跳ね上がったな・・・・・・貴族っていうのは、大変なのだな・・・・・・」
「まあ、仕方ないわよ。貴族の発言には、何百人って人間の命が左右されることも、あったりするしね」
「ふむ、そう考えれば、そんなに高いものでもないな」
「でしょう~」
「まあ、正確な値段を付けてくれ。それで村人達への報酬額を決めて行くことにするからな」
「わかったわ。決定したら連絡するわね」
「よろしく頼む」
そんな会話をして、僕らは休憩をした後、また原案の作成作業へと移って行った。
数日して各村や町に教会が完成し、派遣されて来たサフィーリア教の神官達も、城下町の神殿でくつろいでもらった後、レイシアとブレンダを交えた教科書の原案の打ち合わせなんかをセッティングした。
少し驚いたのは、今回の派遣されて来る神官の中にゼクレイトがいたことだったよ。
ひょっとしたら、この神殿が気に入ったので、急遽来ることにしたのかもしれないな。見た感じ本部より大きくて、綺麗だったと思うからね~
こっそりと、思考トレースする魔道具を作りたくなってしまったけれど、心の中を覗くのはさすがに駄目だろうと思って、作らないことにした・・・・・・
まだ教科書の生産ができないので、ひとまず彼らには城下町でのんびりとしてもらうことにする。せっかくなのでそんなに見るところはないのだけれど、観光などしてもらおうと子供用ダンジョンなどにも案内したりした。
そんな感じで過ごして草の収穫の日がやって来ると、早速栽培された草を工場まで運び込む為に、各村から荷馬車が出発する。今回協力してもらった村が十三箇所あったので、全部の草が届くには時間差ができるだろうね。
ちなみに今回の草の輸送は、なるべく早くにお金の支払いなどもおこないたかったので、ブレンダの店から荷馬車を出してもらい、各村で収穫された草をその場にて一キロ辺り六銀貨で取引する感じで回収してもらうことになった。あまり栽培に参加してもらえなかった村などは、大体村全体で十二金貨くらい。こぞって栽培してくれた村なんかになって来ると、百八十金貨くらいの買い付けになったみたいだな。
そして全ての村の草を買い付けした場合の予想金額は、千百金貨辺りだと予想されていた・・・・・・。王国からの資金の五倍以上のお金が必要となった訳だけれど、異形討伐などで稼いで使っていなかった僕達個人の資金から支払っておくことにしたよ。
紙の生産で上手いこと採算が合わなければ、相当な赤字経営になるなー。そう思いながらもとりあえず今回を乗り越えてみようと思った。教科書の方ではまず間違いなく採算が合わないと思う。
教会を通して子供達に配られる物なので、子供からお金を取る訳にもいかないしね。
本来ここで王国からの支援を考えていたのだけれど、支援金が百金貨だとかなり足りないと思われた。教科書の生産だけで約百二十金貨を使う予定なので、それ以外の書き取り用のシャーペンや消しゴム、メモ用の羊皮紙。こまごまと用意していると一体どれだけの赤字になることやら。
まあ、教科書は最初に数をそろえたら使いまわしていけばいいのかもしれないけれど、そうすると紙の生産は殆ど貴族用の契約書作りだけになるのかな?
それだけだと紙の利用価値が低過ぎて、採算が合わなくなりそうなので、何かしらの本の生産も考えていった方がよさそうだね。手短なところでは、王子の学校の教科書辺りから始めるのもいいかもしれない。
集まって来た草を村人に手順を説明しながら加工してもらいまずは紙へ、それが終わったら次にレイシア達が考えた原案を印刷機に取り込んで加工して行く手順を説明して、早速本の形へと作っていってもらった。
「おお~。これが本ですか。綺麗ですね!」
最初に出来上がった本をみんなで見て触って騒ぐ村人に、どんどん作ろうと言って作業を促がして数を作っていく。本は何かがあった時に予備もあった方がいいので、少し多目の数を作る予定になっている。
この本が数揃ったら城下町の神殿へと持って行って、神官に渡して各村などの教会へと転移してもらい、早速授業を始めてもらう手はずになっている。だからサクサクと作業をしてもらわないと後が支えているのだった。
しばらく村人の作業を観察して、問題なさそうなことを確認すると、最後に不良品がないかのチェックをするように言ってから、出来上がった本の一冊を見せにまずはレイシア達のもとへと転移した。
「最初の本が完成したぞー」
「見せて!」
「やっとできたのね~」
レイシアが早速見たがったので渡すと、ブレンダも横から出来を覗き込んで確認していた。
「凄く綺麗で、立派な感じだね!」
「ですわね。全然よれていないし文字も白と黒ではっきりしているから、とても見やすいですわ」
そう言ってブレンダは、レイシアが持っている本をあちこちの角度から眺めていた。
「少し依頼とかしてもいいかしら?」
「何だ?」
「家のお店から物語の本を、この形で売り出して見たいのだけど、いいかしら?」
「そういう話なら、逆にこっちからお願いしたかったよ。教科書の納品が終わったら、紙の利用価値が下がりそうで、何かしら考えなければって思っていたのだ。王子の学校の教科書でも作ろうかと考えていたところだったよ」
「そっちもあると便利よね」
「ああ、確かに便利ではあるのだが、あっちはその為の資金がもらえるかどうかわからないから、微妙だったのだよ」
「確か今回の資金援助も少なかったんですよね?」
「まあな。僕の方で立て替えている感じだよ」
「なるほど、じゃあなるべく早めに原案を渡して本にした方がいいのね?」
「そうだな。今はまだいろいろと作る物があるから、その後活動できればいいかなって感じかな」
「じゃあ早めに動いてみるわね」
「ああ頼む。それとブレンダの方の契約書は、もう作り始めてしまってもいいのか? 一応昔のデザインそのままで作る予定ではいるのだが、要望とかあるなら聞くぞ。後どれくらいの数を納品したらいいのか教えて欲しい」
「デザインについては、もっと私らしさが欲しいわね。当主が代わったので昔のままって言うのは味気ないからね。それと数は手始めに三百枚程お願いしたいわ」
「了解、デザインができたら一度持って来るよ」
「わかったわ」
「さてじゃあそろそろ教会の方にも見せに行って来るよ。またな~」
「またね、バグ」
「後でね~」
本を返してもらって、教会へと本を持って行った。ここでも予想外の立派な本の出来栄えに驚かれて、気合を入れて子供達に授業するぞって感じで盛り上がったよ。
その後一定数の本をそれぞれ担当教会に送りながら教師をしてくれる神官も、それぞれの神殿へと転移させて村長との引き合わせなんかもして行く。いろいろ迷ったのだけれど、教会は非常事態が起きた時の避難所にもなりそうだったので、乱用しないよう釘をさして転送機能を備え付けることに決めた。
村の担当者は、一人三つの村を担当してもらいたいと思っていたので、その担当教会同士を転移できるように設定する。馬車とかでの移動になると移動に時間がかかり過ぎて、それだけ授業を受けられなくなるかなって考えたからだ。
基本的には転送機能を使えるのは神官だけになっていて、非常事態だと判断された時は、この制約を解除する方針でやってみる。
そんな感じで子供達の識字率アップ作戦がようやく開始されたのだった。




