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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十一章  ダンジョン王国
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マグレイア王国のこれから

 マグレイア王国、本来何の資源も豊かな土地も無いこの国に、多くの冒険者が集まって来ている。

 リンデグルー連合王国からやって来るベテラン冒険者達ももちろんその中の内なのだけれど、周辺にある国からも冒険者達がやって来るようになっていた。

 その冒険者達の殆どは、自分達の実力不足を何とかしたいと考えているようで、最近できた強くなれるダンジョンの噂を聞き付けてマグレイア王国まで、わざわざ長い時間をかけてやって来ているのだそうだ。

 その中には、のんびりとしたこの国を気に入って、そのままいついてしまう冒険者までいて、引退後はこの国で冒険者関係の仕事をして行くのもいいなって言っている人達もいるようだった。

 そんな状況になって、周辺にある国々がこぞって密偵を放っていたという話を、後々王子から聞いた。

 僕も一年以上も前にこの国の国境に、悪意を持った者の進入を阻害する結界を張っていたことを、その話を聞いてやっと想い出したくらいだよ。

 どうやら国境を越えようとして、結界に阻まれていたっていう密偵を国境警備隊の人達が捕まえていたそうだ。これは警備兵が優秀だったのではなくて、結界に蜘蛛の巣のように捕らわれていたのだそうだ。

 そんな機能は、考えていなかったのだけれどな~


 まあそんな訳でまずはギルドから噂が広がり、その噂を確かめる為に周辺の国々が密偵を放ったのだけれど、そのことごとくが捕獲されることになったので警戒し出したところ、次いで商人がこの国にやって来るようになって、子供用ダンジョンの存在を知った一般人などがやって来るようになって、マグレイア王国にはさまざまな形のダンジョンがあるという情報が、各国へと広まって行ったそうだ。

 「突然だが各国との会議に、君達にも参加してもらいたい」

 ブレンダの店にやって来た王子の発言であった。

 「ほんとに突然過ぎて、何がって言いたいところだな。説明をすっ飛ばし過ぎて、もはや何を言いたいのかわからないぞ」

 「ああすまん、順番に話して行こう」

 王子はそう言って、お茶を飲んでしばしどう説明して行くかをまとめたようだった。

 「少し前に、この国の周辺の国々から、ダンジョンに関する問い合わせが相次いで届けられたのだ。本来ならそれなりの使者などがやって来るところなのだが、どうやら使者もこの国に入れないという話で、他国から来たそれなりの身分の商人達が王宮へと、手紙を運んで来た。それによると、マグレイア王国はダンジョンを今まで隠し持っていて、戦力の強化をひたかくしにして、周辺の国へと戦争をしようと考えているのではないかという話だった。その説明などをする為に、周辺国が共同で用意した会議場まで出向けという話らしい」

 「出向けばいいじゃないか」

 長々と語った王子に、僕はそう言ってやった。何を子供みたいに不安だから付いて来てよみたいなことを言っているのだろう?

 「いやだから護衛も兼ねて、付いて来て欲しいのだ。ダンジョンは元々お前が用意して来たものであろう? 王家に質問されても、こちらとしても詳しいことは何も知らんので、返答のしようが無いのだ」

 「じゃあ、無視しておけばいいだろう? どうせ相手はこっちには入って来られないのだから、構うことは無いと思うがな」

 「うちは弱小国だ、不和になるようなことはなるべくしたくはないんだが、相手が平和を望んでいるとは限らん。だから護衛と説明役を兼ねて、一緒に会議に出てくれ」

 「どうしてもっていうのなら行ってもいいが、その結果会議で暴れるかもしれんが、それはいいのか?」

 「なるべくなら、控えてくれ・・・・・・」

 ふむ、まあ確かにダンジョンを創ったのは、僕の指示なのだが僕もよく知らないのだよな・・・・・・

 でも即戦争とか、争いにならないようにって話しなら、顔を出してもいいのかな? 周りの国の考え方なども調べてみるのも悪くないのかもしれないしな。

 「ちなみに、会議はいつだ?」

 「一ヶ月後だ」

 それはまた、結構先の話だな・・・・・・複数の国が参加するから、一ヶ月でも早い方なのかな?

 「じゃあ急用が入らなければ、参加してもいいよ」

 「いや、こっちを優先してくれ」

 「それは無理だな。僕はこの国で暮らしてはいるが、他国からやって来た旅人だ。王家に従うつもりは無いよ。貴族でもなんでもないから何の義務もないしな」

 「では正式にこの国の貴族にならんか?」

 「それはデメリットしかないから嫌だな。貴族にされたら面倒ごとばかり言われて、こっちに利益なんか一切なさそうだ」

 「ぐっ」

 「話は終わりか?」

 「なるべく会議に出席する方向で、よろしく頼む・・・・・・」

 あんまりからかって落ち込まれても面倒だし、まあ探りを入れる意味でも、これくらいにしておくかな。

 「わかった。じゃあ一ヶ月後にまた来てくれ」

 「そうする」

 そう言って、王子はなんとなくしょんぼりとしながら去って行った。


 「勝手に話を進めてしまったけれど、レイシアは会議の出席は問題なさそうか?」

 「ええ、私は別に問題はないよ」

 「じゃあ、後は結構先の話だし、この話自体忘れないようにするだけだな~」

 「くすっ。そうだね」

 さて、王子の面倒臭い相手が終わり、レイシア専用ダンジョンも、またグレードアップする為に閉鎖されていたので、こっちはこっちで地道に活動でもして行こうと思う。

 正式な勇者と認められたハウラスは、ブレンダが仲介して毎日のように異形退治へと向かっているそうなのだけれど、さすがに彼だけでこれからも、全世界を渡り歩いていくのはきつそうなだから、上級ダンジョンを造ってみようかなと思い始めているところだった。上限として、パーティーを組めば異形退治もできるかなってくらいまでLV上げが出来ればいいかなってダンジョンを考えていたりする。

 それと前の魔王の残党のような強い敵などが来た場合、さすがにてこずるのはどうかなって思って、僕専用ダンジョンも欲しいなと思ったのでそうなると、ホーラックス一人では、ダンジョン管理が大変じゃないかと考えた訳だ。

 そこで僕はダンジョンを管理するチームを創り上げようかと考えた。

 「眷属作製!」

 ホーラックスの部下として、ダンジョンの創造や補修、敵としても戦って行ける眷族を何人か作り出した。

 まずはミスリルゴーレム。この子はダンジョンの基盤である壁や床とか、ダンジョンそのものの改築などができる能力を持たせてみた。必要に応じて、拠点内にいるパペットなどを連れ出して、一緒にダンジョンを管理して行ってくれるだろう。

 ちなみに、この子はミスリル製なので普通の鈍重なゴーレムと違い、巨体には似合わない速度で動き回る身体能力がある。

 おそらく上級ダンジョンでも出会うことは無いと思うけれど、ダンジョンを作っている最中にでも出くわしたら、かなりの強敵になるだろうな~。そんな気がしたよ。

 次に、ある意味でダンジョンに付き物のトラップを担当する、アートイミテーター。何でか既に絵が描かれていて、多分これは僕の後姿じゃないのか? 何気に勇者と戦っている感じに書かれているのに、後姿の僕の方がメインだって感じの主張が凄かったりしている。

 まあ好きにさせておくけれど。とにかくこの子も普通に敵としても戦えるだけの能力を持たせてあった。

 次の子は、ぱっと見れば担当するものが丸わかりなミミック。ダンジョン内に存在する財宝や素材、そういった物を管理させる為に創ってみた。まあ、この子も当然ながら戦闘参加可能だ。

 そして最後の子は、ある意味ではこの中のリーダー格の女性型魔族。

 角と羽が無かったら普通に人間と変わらない外見でありながら、ダンジョン内の環境管理とモンスターを創造する能力を持たせた、ホーラックスの副官であり部下達のリーダーであるサキュバス。

 彼らは、魔法生物と違い眷族として創ったので、これから彼ら自身も成長して行ってくれるだろう。どうなって行くのかは、僕にもわからないな。

 おそらくは初めは僕の命令に従い、いずれ自立して行ったりもするのかもしれないね。

 「一杯創ったね~」

 隣で見ていたレイシアが、眷族を見てそう言っていた。

 「ホーラックスだけではこの先、ダンジョン管理も大変だろうと思ってね。部下を創ってみた。ホーラックス、こっちに来られるか?」

 「我が主よ。何用だろうか」

 こいつは魔王魔王しているのに、何でこんなに僕に対しての忠誠心が高いのだろうな~。ギャップが凄いよ!

 「今後、上級ダンジョンと僕専用ダンジョンを作ってもらいたいので、お前の苦労を減らす為に部下を創造してみた。彼らと協力して活動して行ってくれ」

 「おお! 我に部下をいただけるとは、主よ感謝する」

 「上級ダンジョンは、異形と呼ばれるものをパーティーで何とか倒せる程の実力が付くくらいのLVで創ってみてくれるか?」

 「了解だ、主よ」

 そう言うと、ホーラックスはレイシアに目礼してから部下を連れて、ダンジョンへと転移して行った。

 何度か戦っているみたいなので、もうすっかり顔馴染みって感じだな~。ダンジョンでは敵として戦っているのだろうに・・・・・・

 「ダンジョンでホーラックスに会った時とか、何か話とかするのか?」

 「うーん、またよろしくとか、そんなことは言っているかな」

 「なるほど」

 殺伐と、無言で戦うとかではないみたいだね。


 今日は王子が来たりダンジョンの追加を計画したりして結構時間も使ったので、このまま拠点でのんびりと過ごす事にしたよ。

 とは言っても、まだ昼なので昼食を食べた後で、何かして遊ぶとかって感じになりそうだけれどね。

 まずは腹ごしらえということで、僕はコンロの上に鉄板を用意して、小麦粉みたいなものを水で溶いた生地を用意して、野菜や肉、卵などを用意していく。

 本当は野菜を複数煮込んだ特性のソースがあればこのお好み焼きは美味しいのだけれど、残念ながら今だに開発には至っていないので、変わりになるデミグラスソースみたいなやつで、料理をして行くことにした。

 町を歩いている時に、屋台の鉄板を見た時から、なぜか懐かしくてどうしても食べたくなったのだよね~。そんな訳で、まだソースが開発できていないけれど、僕はお好み焼きを作っていった。

 「美味しい!!」

 レイシアが出来立ての焼き立てを食べて、そう言ってくれるのだけれど。ソースの美味しさを知っている僕としてはいまいちって感じがする。まあそれでもどうしても食べたいっていう、欲求は収まったからよしとしておくかな~

 一枚だけじゃあ満腹にならないかと思ってその後も何枚かその都度、中の具材などを変えていったお好み焼きを作って、レイシアに出していった。

 うーん、ねぎみたいなものを使ってソースではなく醤油で食べるお好み焼きが、結構いい感じだったかもしれないな。

 やっぱり代用品で作るものよりは、知っているもので作ったものの方が美味しく感じるよ。

 レイシアにとってはどれも美味しかったらしくて、とても満足してもらえたようなので、やってよかったとは思ったけれどね。

 とりあえずソースの開発が終わったら、もう一度リベンジすることにしてこんなものだと思っておこう。


 そこそこ満足もできた食事も終わったことだから、手の空いているパペット達も呼んで僕らは一緒に遊ぶことにした。

 パペット達の暮らしている草原部分にみんなで来た僕達は、ボールを使ってドッジボールをすることにしたのだけれど・・・・・・

 みんながそれぞれに能力を使っていたから、誰もボールを落とさない・・・・・・

 これなんかイメージしていた和やかなものじゃなくなっているのだけれどと思いつつ、飛んで来たボールをキャッチして目に付いたパペットに向けて投げ付ける。

 ボールを投げ付けられた蜘蛛型パペットが糸を飛ばしてキャッチしたボールを、そのまま振り回して別の相手に投げ付けていた。

 次に狙われた、ストーンゴーレムのパペットが胸の部分を開いて、そこから複数の手を出してボールをキャッチ、また別の相手にボールを投げる。

 狙われたのがレイシアだったのだけれど、結構強烈なスピードで飛んで来たボールを、余裕で受け止めてパペットに投げ付けていた。

 あー、これ身体能力が優れた人がやっても、普通に受け止めて終わるだけなのか・・・・・・僕ら向きの遊びじゃなかったなって思ったよ・・・・・・

 サッカーにバレー、バスケット、いろいろとやってみた結果、蜘蛛型パペットに反則負けって言いたくなった!

 どこにボールを飛ばしても、糸を飛ばしてキャッチされるので、完封されるのである・・・・・・バレーの場合、キャッチすると反則になると思ったら糸で弾くとかもできるようで、全てのボールを弾かれてしまった。結構本気で地面にめり込むのではってくらいのアタックを決めたボールが、普通に反って来た時は叫びたくなったよ・・・・・・こいつらに球技は向いていなかったな。


 数日後、レイシアと一緒に学校へと顔を出してみた。

 新年度となって生徒はそっくり入れ替わり、見知った顔は当然誰もいない。

 今回は、仲間外れになっているような生徒もいなさそうで、滑り出しとしてはいい感じだと思われた。なので他の教室などにお邪魔させてもらったりしていたのだけれど・・・・・・

 十代前半の子供達の何人かが、メモも取らないで授業を受けていることに気が付いた。

 「ひょっとして、あの子達は読み書きができないのかな?」

 「多分そうだと思うよ。多少でも裕福な家なら、教会で少し習う時間もあると思うけれど、そうじゃないところでは子供でもお手伝いしないといけないって聞いたから」

 「この国は、村でも大分生活が楽になっていなかったか?」

 「でもそれは私達が来てからだから、最近の話だよ。今までずっとお手伝いして暮らして来た子達が、いきなり変われないと思う」

 「なるほどな。ちょっとそっちも見てみる必要がありそうか~」

 学校は特に問題もなく順調に行っているようなので、僕らはそのまま学校から引き上げ、幾つかある村を回ってみることにした。


 「あ、レイシアお姉ちゃんだ! あそぼー」

 適当な村に転移してやって来ると、何人かの子供がレイシアの周りに集まって来た。

 「これはこれは、レイシアさん。ようこそいらっしゃいました。今日はどうしましたか?」

 子供達が騒いでいたからか、近くの家からおばあさんが出て来て、そう言って来た。

 「すまないが、今この村では子供達に読み書きなどは、教えているのだろうか?」

 レイシアに子供の相手を任せて、僕は丁度いいとおばあさんに質問をすることにした。

 「そうですね、時間ができた時には教えていることもありますが、そんなにしっかりと教えている訳ではないかと思いますよ」

 「子供が手伝わなければいけない程、それぞれの家庭は苦労しているのかな?」

 「そうですね・・・・・・どうしても家庭によって環境は違ってきますが、農作業などを手伝っているところなどは、勉強する時間は無いかもしれませんね」

 十分な収入が得られていないってことなのだろうか?

 品種改良された種などをブレンダの店で売っていたのだけれど、味も良くそれなりの悪環境でも育つ感じで作らせたと思ったのだけれどな~

 レイシアが完全に捕まってしまったので、僕は別れて畑や村人達の行動などを調べる為に、村のあちこち見て回ることにした。

 そしてこれは父親がしっかりと働いていない為のしわ寄せが、子供に行っているのではって気がして来た。だって昼間から村に一つしかない食堂に集まって、お酒を飲んでいたりしたのを見たから・・・・・・

 子供の相手をしているレイシアを横目に、僕は村長の家に向かうことにした。


 「失礼します。少し聞きたいことがあるのですが、いいですか?」

 「はい、あー確か、バグさんでしたか。どのようなことでしょうか?」

 子供などが、急に高熱などを出した時に、僕は転移してレイシアと一緒に村まで来ていたので、どうやら村長には顔と名前を覚えてもらえていたようだった。これならいろいろと話を聞けるかもしれないな。

 「えっと、この村での子供の生活状況を聞きたかったのだが、時間などいいかな?」

 「ええ、構いませんよ。どうぞ中へ入ってください。お茶でも出しましょう」

 「ありがとう。失礼する」

 村長の奥さんが入れてくれたお茶を前に、僕は二人から子供のことを聞くことになった。

 「それで子供の生活状況ということでしたが、また病気などでしょうか?」

 「いえ、今回は大事ではなくて、読み書きなどの勉強ができる環境があるのかどうかを調べたくて伺った」

 「読み書きですか・・・・・・この村にも、こじんまりとしてはいますが、マグライア教から来ている神官様がいらっしゃいまして、どうやら子供好きな方のようで、時間がある時にはそちらで勉強していますよ」

 「問題はその時間の方で、子供がどうしても働かなくては生きていけない程、困っているのかどうかって事が知りたいのだがどうかな?」

 「はあ、おそらくですが、そこまで困っている状況ではないですね。ただ食べて行くのにはお金がかかりますから、子供にもできる事をさせるといった感じなのだと思います」

 「それなら、勉強をさせる時間は普通にあると?」

 「ええ、昔ならきついこともあったのでしょうが、最近はそれなりに余裕のある生活が送れますから」

 「それでは例えばの話し、子供達を集めて、一定の勉強時間を作るということは可能かな? 又は町などに一定の期間勉強の為に預けるようなことはできるものかな?」

 「村で一定の時間勉強するのは問題ないと思いますが、町に預けて離れての生活になると、賛成しない家庭なども出て来るかと思います」

 なるほど、まあ子供が可愛い親なんかになると、離れたくはないよね。でもそっちは感情の話で、時間自体は特に問題なさそうな感じだな。

 「いろいろ話を聞かせていただいて、ありがとう」

 「いえいえ、こちらこそいろいろと助けていただいていますので。また何かありましたらいつでもいらしてください」

 「はい、また聞きたい事などできたら、よろしくお願いする」

 ある程度の話もできたので、それなりの成果はあったかな~

 とりあえずは国民全員が読み書きできる環境を作ってみることにしよう。それには教科書と、いろいろと書き込んで練習できるノートなどが必要かな?


 久しぶりに小物の生産をする為に、レイシアを回収に向うと・・・・・・

 「お姉ちゃんを連れて行くな!」「お姉ちゃんは僕達と遊ぶんだ! 邪魔するなよ!」

 そんな感じで子供達が駄々を捏ねたり、殴りかかって来たりした。

 おーおー、僕に挑みかかって来るとは、いい度胸しているじゃないか。

 そう思うと、砂時計を創造して子供達にそれが見えるように地面に置く。

 「これがわかるか? ひっくり返すと、中に入っている砂が下に落ち始めるのだが、これが全部落ちきる前に僕に触ることができたら、もう少し遊ぶ時間をやろう。駄目だった時は今日のところはこれで解散だ、いいか?」

 「「「わかった!」」」

 「それじゃあ、開始だ!」

 そう言って、砂時計をひっくり返す。後でいろいろと文句を言われないように、時間は十分ぐらいの砂時計にしておいた。

 子供相手なので調査のスキルも使わないで、次々と襲い掛かって来る子供達の間をすり抜けるように移動する。

 「くそ速い、おいそっちだ、捕まえろ!」

 「だめだ、全然さわれない!」

 「あ! あ! 何で、さっきまで目の前にいたのに~」

 僕は八人くらいいる子供を翻弄し続けた。

 十分後、必死で走り回っていた子供達は地面で荒い息を吐き、ぐったりしていたのだが、逆に僕は平然としていた。

 「じゃあ約束通り、また今度だな~」

 「くっそー、次は負けないからな!」

 そんな負けフラグを立てる子供達を置いて、僕はレイシアと一緒に拠点へと転移するのだった。


 拠点へと戻って来た僕は、少しだけホッとしていた。

 子供相手に大人気ないとか言われるんじゃないかと思ったのだけれど、レイシアは特にそういうことは言って来なかったよ。

 さて、それはさておきまずは教科書作りをする為に、レイシアに元になる本の作製を手伝ってもらうことにしよう。

 「レイシア、読み書きを覚える時は、大体どんな感じだったのだ? 当時のこと覚えているか?」

 「うーん、さすがに昔のこと過ぎて、覚えていないかも」

 「できたらでいいのだけれど、レイシアには元になる読み書きの教科書を作って欲しいのだけれど頼めないか?」

 「それって、ブレンダとかにも手伝ってもらってもいいの?」

 「ああ、構わないぞ」

 「じゃあ、やってみるよ! バグはどうするの?」

 「こっちは内容ではなく、本を量産する為の開発かな。紙自体も作りたいから、素材から生産しようかと思っているよ」

 「なんだか、私より大変そうな事になりそうだね」

 「まあ、やってみないとどうかわからないけれどな~。しばらくそれぞれにがんばってみよう」

 「うん!」

 まずは素材となる紙の生産として、伐採パペットと協力して草の品種改良から始めることにした。空間系魔法を利用して、なるべく真っ白な上質な紙が作れるような草を育てて、それを加工する道具を開発する。

 木の皮などを剥いで作る方法もあるとは思うが、下手にやると環境破壊しそうだったので、育てるのにそこまで手間をかけなくてもよく、ある程度早く収穫できるそんな紙に加工できる草を育てさせる方法で考えている。

 これも普及したらそういう商売になるので、仕事が欲しい人には丁度良い作業になるだろう。それにこっちは食べるものではない為に、多少知識が足りなくても作っていけると思われる。ある意味雑草みたいなものだから、他の雑草と混じらなければ栄養バランスとか気にしないで育てることができるだろう。

 お米だと、虫対策とか水遣りとか肥料とか、いろいろと大変だからね~

 まあ草はこのままパペットに任せるとして、紙の生産道具の開発だ。

 こっちは和紙を作る要領で良いので、草を煮込んだりして水に溶かし込み、繊維質を木枠で囲ったざるみたいなもので何度かすくって薄い膜を作り、乾燥させれば紙になる。

 ただこれを手作業でするのは大変な作業なのだよね・・・・・・量産したいのに、ちまちまとやっていたら時間がどれだけかかるかわからない・・・・・・

 だから開発は、これをある程度自動化させることから始めることにする。例えば、水の流れを利用した水車で、流れ作業的に動く機械を開発してみるとか、良いかもしれない。

 水がない時なども考えると、自転車みたいな人力とか、動物に杭の周りをグルグルと回らせるとか、まあ何かそこら辺りで考えてみるかな。

 できれば、この作業には魔道具を関わらせないで、現在の技術を応用して開発してみたいと考えている。こういう技術ができれば、それで稼いでいける人も出て来るので、工業が発展するのではないかと思われる。


 紙をすいて量産する機械は、木で作る為にドワーフパペットの協力で開発中だ。さすがに手先が器用なだけはあって、綺麗な歯車がいくつも作られていく。

 これ、普通に人間の職人には難しい加工じゃないか? まあそこまでの精度を求めなくても動けばいいのかな?

 まあ、そんな事を考えながらも、こっちはパペットに任せて次の工程へと進むことにした。

 紙を作ったのなら、次は現行技術での大量印刷技術が必要となる。印刷の技術が広まると、何か世界に影響って与えるものかな?

 もし与えない類ならば、こっちは魔道具でもいい気はするのだよね。他では印刷できないとなれば、それだけで印刷の仕事が一杯入って来るので、印刷屋としてはいい稼ぎになるはず。

 それにこっちは力が必要ない為に、力仕事の不得意な人が働くことができると思う。うん、こっちはちゃんと見ておけば問題ない気がするな。

 僕はパペット達と協力して、印刷用の機械を魔道具として開発することに決めた。一応念の為に、何かしらの影響がありそうなものを扱おうとした場合は、写真機の見張りをしているパペットが機械を止めればいいな。

 うん? ということは、写真機も犯罪に使われそうなら壊してしまえばいいんじゃないか? 犯人は捕まえた方がいいかもしれないが、写真機が壊れてしまえばそれ以上の犯罪性は無くなるな。

 ちょっとブレンダと相談するか・・・・・・

 「今、時間ありそうか?」

 『もう少し待ってもらえたら、時間が取れますわよ』

 「じゃあ、切りが付いたら教えてくれ」

 『ええ、わかったわ』

 ブレンダの用事が終わるまで、とりあえずは印刷機を造っているかな。

 あまり小型化すると、何かあった時に簡単に移動させられてしまうので、備え付けの機械として開発することにする。

 教科書には、文字だけではなくて絵や写真も載せたりしたいので、やっぱり水晶で情報を読み込んで印刷って感じが良いだろうな。後は、水晶を持っていかれないように印刷機自体に内蔵させて、ある程度厚みがあったり、立体的なものでも記憶させることができるようにして取り込むようにする。

 後は、本って三百ページくらい覚えこませたら問題ないのかな? 一ページずつ印刷していたら、かなり時間がかかるからそこも自動でやってくれた方がいいよね?

 まあ念の為に四百ページに対応させて、紙を自動で送り込むよう開発しておけばいいかな。インク自体はこの世界でもあるので、まあ出来上がる物は全部白黒でいいだろう。

 この印刷機自体は魔力で動くようにしたので、魔法使いが動力を動かして他の人が操作ってパターンでもいいかと思う。

 まあ、こんなものだろうか・・・・・・


 『きりが付いたわよ。今日はどんな用件かしら?』

 「以前作った写真機のことなのだが。今そっちで犯罪が起こるたびにパペットが現場にチームを送っているよな?」

 『ええ、段々と犯罪件数が増えて来ていて、対策チームの人達も忙しいみたいだわ』

 「それで、こっちで別の魔道具を開発中だったのだが、パペットに調査させて問題があったら、機械その物を止めてしまえばいいかって思い付いてな。写真機の場合は、そのまま壊しちゃえば、もう二度と犯罪には使えないんじゃないかって思ったので、連絡してみた」

 『なるほど、その手もあるわね』

 「問題は、写真機は別に壊してしまってもいいと思うのだが、罪を犯そうとしていたやつらはどうするのがいいかって話なのだよ」

 『あー、その相談って話なのね。そうね、できれば捕まえたい気持ちもあるのだけれど、段々と件数が増えて来ていて、このままだと対応できない感じなのよね』

 やっぱり、普及していけばそうなるか~。こればかりは仕方ないというのか、それだけ人間が欲にまみれているというのか・・・・・・

 『ねえ、このパペットは、犯罪の種類とかは判断できるのかしら?』

 「正直なところ、映像だけでどれだけの犯罪性があるかは、難しい判断だと思う。明らかなものなら多分、判断できると思うぞ」

 『じゃあ、軽犯罪みたいなのは写真機の破壊で終わりにして、犯人を捕まえた方がいいって判断できるものは対策チームに知らせるとかって、できないかしら?』 

 「おそらく、できると思う。それでやってみるか?」

 『お願いできるかしら? それから、写真機はもう結構出回っているのだけれど、今から変更ってできるものなの?』

 「まあ何とかできると思う。パペットにそういう力を与えるよ」

 『作業にはどれくらいかかるかしら?』

 「時間そのものはそうかからないから、直ぐできると思うよ」

 『それじゃあ、早速お願いするわ』

 「パペットを、こっちに転移させても大丈夫か?」

 『あー、ちょっと待って・・・・・・対策チームに一応話を通しておかないといけないから、また後で連絡するわ』

 「了解、じゃあまた後で」

 『ええ、また後でね』


 その後紙の自動生産機と、印刷機の開発をして待っていると、ブレンダから連絡が来たので、パペットを回収して写真機の水晶に干渉できる力を与えた後、印刷機ともリンクできるようにして、再び対策チームのところへと派遣する。

 レイシアがまだ内容を作っていない為、こっちも時間があるのでその間に印刷の完成した紙を、本にする為の道具などを作っておくかな。

 その前に、原材料を作る為の土地とかも確保しておいた方がいいのか・・・・・・どこかに仕事がしたくても仕事が無いって村でもあれば、やってくれるだろうか?

 ちょっと調べてみるかな~

 「村に関して、仕事が欲しいけれどできないって人がいそうなところはあるか調べてくれ」

 情報といえば司書パペットということで、聞いてみることにした。

 条件が特殊過ぎるので、さすがにこんなデータは水晶には記録されていないのだよね。とりあえず了解したようで、早速調査を始めてくれる。

 こっちも情報待ちでこれ以上は進めそうにないな。

 本に加工する為の道具作り、続けていよう・・・・・・

 折り返しの真ん中を糸で縫って、折り曲げた後で余分なところを切り落とし、表紙を付ければ完成かな。

 まとめて折り返すと段差が酷くて、下手をすれば内に行くほど文字のところも切り落として、外は丁度いいか少し端が余る感じになるな。

 そうなると十ページか二十ページ毎に折り返して、それを重ねた方が綺麗な本ができそうだな。これは原材料の紙の厚みも関係しそうだから、そっちができてから考えることにしよう。

 ということで、本作りの工程は全部保留になってしまった・・・・・・


 本が駄目なら、書き取り用の筆記用具を開発してみよう。

 必要なのは、鉛筆は木が軒並み消えるという話を聞いた事があるのでシャープペンの開発と、消しゴムがあればいいな。

 後考え付くのは、下敷きや定規とかになって来るのだけれど、読み書きだけならこれは必要ないだろう。

 それと、ノートはもったいないという人向けに、黒板とチョークなんかもいいかもしれないな。ここら辺りを作っていけば、勉強に不都合は無いと思われる。黒板は粗悪品のようなものならあるようなので、もう少し綺麗に使えるものを開発してみる。

 いちいち雑巾でふき取り、乾かして使うとか効率が悪そうだったからな~

 まあ、これらを作るのにドワーフパペットと、伐採パペットの協力がいるから、直ぐに取り掛かれそうにないかな・・・・・・

 やっぱり開発がストップしてしまったよ・・・・・・

 ダンジョンも追加と改修で忙しいからな~。後あるのはソースの開発か?

 この世界に詳しくない為、レイシアの手伝いとかできないから、その日は夕食の準備をしつつソースの開発をしながら過ごして行った。


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