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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第十章  新設、王立冒険者養成学校
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問題児

 トーナメントから数日後のこと、ふらりと学校へやって来た僕に、決闘が申し込まれた。

 どうも貴族でもなんでもない冒険者なんかが、特別待遇を受けているというのが気に入らない教師が一部にいるという話だった。騎士科に所属している生徒にも、不満に思っている者がいるのだそうだ。

 決闘そのものを申し込んで来たのは、トーナメントの時に声をかけて来た男のようで、まあ相手が生徒でないのなら遠慮もいらないかなって思える。

 決闘は訓練所で正式に行われることになった。

 ここできちんと、実力を内外に示しておこうという、そんな思惑もあったのだと思う。

 目の前に立ったその男は、フルプレートを着て盾に槍を持っていた。

 それに対して僕は平服で、武器を持っていない。

 知らない人から見れば、試合にかこつけたリンチとも取れる構図であるが、僕には不安の要素は一切ない。

 周りの教師や生徒の反応は、こんなの勝負がわかりきっているといった様子だった。

 「武器はどうした!」

 「ハンデだ、必要ない」

 どうやら、この男は近衛騎士に所属している男で、相当の実力者だという話らしい。

 通りで威張っていたはずだ、貴族の中でもエリートだったようだ。

 「後で後悔しても知らんぞ!」

 「面倒だ喋ってないで、こんな茶番はさっさと終わらせろ」

 「ただの馬鹿だったか、さっさと終わらせてやる」

 男がそう言って、こちらへと突撃して来た。

 攻撃をして来たと判断した瞬間、その男の懐へと潜り込んで、逆に一撃を叩き込む。

 「おーい、誰か死なないうちに、助けてやれよー」

 まさに秒殺、その後の男の救助の方が、時間がかかるくらいだった。

 拳の形に変形した鎧を何とか脱がせて、その間神官が回復を続ける。数人がかりの作業だった。

 「お次、誰か決闘を挑む教師や生徒はいないか~」

 救助が終わったのを確認して、そう周りに聞いてみるが、誰もそれに応える人はいなかった。

 「なあおっさん、本気を出した僕とまだ戦いたいか?」

 救助が終わった近衛騎士に、そう聞く。

 「いや、必要ない」

 「じゃあ、今回の騒動はどうけりを付ける?」

 「けりとは?」

 「僕に喧嘩を売ったことだよ。これが王国の総意って言うなら、この国を潰してもいいと思っている」

 近衛騎士がビクリとしていた。まあそうだろうね、どれだけの実力差が開いているのか、想像もできないのだから・・・・・・

 「そうだな、僕の選んだ生徒を騎士や、近衛騎士に推薦する権利くらいならもらえるかな?」

 「掛け合ってみよう」

 「後一つ相手の実力も測れないうちは、自分を未熟だと思った方がいいよ。相手の強さを把握するなんて、冒険者じゃあ常識的過ぎる」

 こうして教師達に実力を認められ、どうして特別扱いされているのかが理解されたようだった。


 翌日、学校に顔を見せた僕は、一部の生徒から授業を受けたいという申し入れを受けた。

 それに対して僕は、ステータスを確認して、全てのスキルが使えるのかどうかのチェックをして行く。

 そして使えないスキルを教え込んで行くのと、能力値からどういう風に戦うのが向いているのかを教えていった。

 まあ僕は身勝手な人間なので、意地悪なやつや態度の悪い生徒には、教えてやらなかったけれどね。

 そんな感じで教師をしていると、僕の前に天敵とでもいいたいような、困ったチャンが現れたよ・・・・・・

 「先生! 僕にも指導してください!」

 「だー、ハウラス。お前は才能がないのだって何度言ったらわかるのだ。どの武器も駄目だっただろう?」

 「そ、それでも僕は冒険者になりたいんです!」

 「そんな事を俺に言ったところで、才能は増やせん!」

 「先生しか頼る人がいないんです!」

 「ちっ、関係なさそうなことをやってもいいか? 歌を歌わせるとか、絵を描かせるとか・・・・・・」

 「それ、ほんとに冒険者じゃないじゃないですか! ひょっとして遠まわしに転職を勧めているんですか?」

 「うっとうしいな、そう思うのなら勝手にしたらいいだろう?」

 一応、僕なりにこいつにはいろいろと教えてはみたのだ。

 だけれどもハウラスのステータスには、スキルが空白のままだった。

 今までのパターンで行くと、四・五位のLVが上がれば何かしらのスキルが出て来るはずなのに、こいつは今だに何も覚えないのだ。指導のしようがない・・・・・・

 さすがの僕でもハウラスには才能無しとして、冒険者には向いていないと言わざるをえなかった。

 それでも、疑問もあるのだよね。

 冒険者に向いていないのなら、他の一般職が向いていてもいいはずなのだが、生産系も何も覚えないのだ。

 考えたのは、戦う生産職だったのだけれど、それも不発に終わった。

 「わかりました、先生を信じて絵を描きます。だから見捨てないでください!」

 「あー、ならとっとと絵を描いて来い! 絵で駄目そうなら次は歌だ・・・・・・」

 一応、絵とか歌とか、僕でも多少駄目だろうなって思うことを試しているのは、ゲームなどで実際にそういう特殊技術で戦う職業があったからなのだ。

 空中に描いた絵が、召喚されて敵を倒すみたいなやつとか。

 歌で敵を惑わしたり誘導したりといったのとか、だから一応はでたらめを言ったり、転職を勧めているのではなく可能性を試してはいる。何かスキルが増えてくれさえすれば、方向性が見えるのに・・・・・・

 一応のヒントとすれば、能力値で器用度が高いので、何かしら芸術肌のものが向いているのではと思う。

 ここ最近、戦闘で使えそうなマイナー職を見付けようと、頭を使いまくっていた。


 進展もないまま数日後、騎士と近衛騎士への推薦する資格が与えられた。

 指導を受けて実力を開花させた生徒が多い事と、実際に実力を付けた生徒が多くいたので大丈夫だろうとの事だった。最終的な判断は王家が行うのだけれど、推薦を受け入れるという話になったようだ。

 そこで早速グアムルと、数人の一般市民を近衛騎士と、騎士へと推薦することにした。

 その結果は確かな実力を見せたとして、無事に卒業できたら受け入れるという話になった。

 この話が王国中に知れ渡るのにそこまでの時間はかからなくて、騎士になりたいという希望者が多数、学校にやって来たという。

 まあ当然の事ながら、今期の入学は終わってしまったので、また来年という話になったようだけれどね。

 そしてグアムルはというと、今までの落ちこぼれ貴族から近衛騎士に内定したことにより将来有望と見られたようで、お見合いの話が実家の方に殺到したという話も聞いた。

 僕はリア充を育ててしまったのかもしれない・・・・・・

 まあ彼は僕の手を離れたから、今後は好きにしたらいいやと思うことにしたよ。

 まだまだ未熟で、教える事は多そうだったけれど、後は知らん・・・・・・


 「先生、絵も歌もやりました。でも僕は冒険者になりたいんです!」

 「もう勘弁してくれ・・・・・・」

 今日も今日とて、彼が僕の元へとやって来た。

 結果、歌も絵も何も反応がなかった為、どうしたものかなってまた悩む。

 「あー、そういえば、調教は試していなかったな。ちょっと付いて来い」

 「はい!」

 学校の門に一歩入った状態だったけれど、反転して町の外へと向かって歩き出す。

 ここら辺りでお手頃なモンスターは、何かいたかな?

 町の外、適当に森を歩いていると、スライムを見付けた。

 何かと縁があるな~。そう思いつつもハウラスに話しかける。

 「手始めに、こいつを調教しろ」

 「えっ。僕そんなことできませんよ?」

 「スライムなら、そう危険もないのだし、何かしら感じたり仲良く出来そうな雰囲気とか、感じたりしないのか?」

 しばらくウンウンうなっていたけれど、結局は何も起こらない様子だった。これも駄目そうか・・・・・・

 スライムを発見した時には、何か因縁があるなって思ったのだけれどな~

 小説のような、劇的な運命とかほんとにないな。

 今まで部屋の中とか、危険のないところでばかり悩んでいたので、しばらく森を歩きつつヒントになりそうなものを探してみる。

 木こりとか?

 でも、斧も駄目だったのだからこれも違うよな・・・・・・

 「なあ、こうやって歩いていて妙に気になるとか、そういうものは何か思いつかないか?」

 「特には?」

 まあ他人との違いなんて本人にもわからないから、この質問には意味がなかったな。水中はどうだ?

 ふと思い付いたので、早速湖とか川を探して移動した。そして見付けた川にハウラスを突き落としてみる。

 あー、普通に溺れているな・・・・・・

 「何するんですか先生!」

 しばらく助けずに見ていると、さすがに本当にやばいと感じたのか、何とか自力で這い上がって来た。まあそこまで深くもなく、流れもきつくないのだし、頑張れば死にはしないだろう。そう考えて見ていたのだけれどね。死にかけて覚醒してくれればラッキーだしな~

 「可能性を試しているって言っただろ? お前、泳げなかったのだな・・・・・・冒険者目指すのだったら、泳げるように訓練しておけ」

 「うっ」

 ハウラスの反論を、反論で封じ込めて、次へと思考を移した。

 「水が駄目なら、火の中はどうだろう?」

 「殺す気ですか!」

 「お前はそれくらいしないと、駄目なような気がして来たな」

 「マジで止めてください!」

 涙目になってそう訴えかけて来た。でも実際にもう、方法が思い付かないのだよね。困ったものだ。

 そういえばゲームで最強ノービスっていうのがあったな。

 ようはあらゆる職業に就かないで、初心者のまま最強を目指す。スキルが無いからかなりきついのだけれど、やろうとしてできないこともない。縛りプレイが好きな人がチャレンジする遊び方だった。

 こいつのしつこさがあれば、そういう方法もありといえるかな。


 「よし、初心者ダンジョンへ潜ろう」

 「へ? 僕、戦闘技術が学びたいのですが・・・・・・」

 「お前にはその素質が無いから、もうないまま肉体能力で戦え。本当なら、素手なら素手の技とかあるのだけれどな。お前はそっちも才能が無いから、子供のように突っ込んで打たれ強さで生きて帰って来い」

 「そんな無茶苦茶な!」

 「そうか? お前が今まで僕に言って来たことを考えたら、こんなの楽だろう? あれだけ僕に付きまとったのだ、文句言わずにやれ。死んだら少しは悲しんでやるよ」

 「少しですか!」

 「まあ、ちょっと清々するから少しかな~」

 「酷い!」

 暴れるハウラスを、無理やりにでもダンジョンへ連れて行った。

 そして、罠を解除しながらさくさくとモンスターのいる部屋へと突入。

 部屋の中には、ゴブリンが四体。まあちょうどいい数じゃないのかな?

 「ほれ、行って来い」

 「ちょっと、ほんとに死んじゃいますよ!」

 「強くなりたいとか言って、僕に付きまとった結果だ自業自得だろう? 死んでも本望じゃないか」

 「こんなの酷過ぎます!」

 「いやお前がやって来た事は、これくらいなんでもないことだぞ? むしろ感謝されてもいいくらいだ、ほら行って来い」

 モンスターの中へと、彼を蹴り飛ばした。

 前に出てしまったので、ゴブリン四体に狙われて逃げ回り出す。

 ゴブリンはこっちにも一体来たのだけれど、軽く殴り飛ばしておいた。

 多分気絶しただけでまだ生きているだろう。三体になって少しはやりやすくなるはずだ。

 たまに転んだりして、危なくなるたびに手助けしてやっていると、結局ゴブリンは一体も死なないで全員気絶してしまった。つまり、殴って気絶させたのが僕であったということである。

 「一体も倒せていないな」

 「だから、倒す手段がないんですってば!」

 「逆に聞こう、冒険者が何故武器を持たない?」

 「それは、僕に扱える武器を探しているからです」

 「自分に合う武器が無ければ、手ぶらで歩くのが冒険者か?」

 「それは・・・・・・」

 「手ぶらで冒険者名乗っているやつが悪いだろう。お前以外の冒険者になりたいやつなんて、大体は形から入るぞ。それが扱えるかどうかなんか、あいつら後から考えるからな~」

 まあ出来が悪い生徒を助けるのも、教師の役目かな。そう思ってショートソードを創り出して渡す。

 気を失っているゴブリンを叩き起こして再戦だ。

 「ほら戦え」

 ハウラスは、泣きながらゴブリンと戦った。

 それこそほんとにボロボロになって、四体のゴブリンを倒し終え床に転がる。

 気を失ったハウラスを小脇に抱えると、学校へと帰って行った。

 はぁ、パーティーに入っていれば、仲間の経験値をもらえるとかだったらもっと簡単なのだがな~

 それか、最後の止めを刺せばいいとかな。

 ゲームならそれでさくさく強くなるのだけれど、やっぱりリアルはちゃんと自分で戦わなければ経験になってくれない。その代わりというのか、敵を倒さなくても、起こした行動の経験が手に入るのはありがたいのだけれどね。

 どっちにしてもずるが出来ない以上、この方法で少しずつでも経験を貯めるしか、ノービスは強くなれない。

 こいつが、ゴブリンを殴って倒せるようになるまで、どれくらいの時間がかかるのだろうか・・・・・・


 次の日さすがにハウラスは、学校を休んだようだった。

 これで冒険者を諦めるのなら、まあそれはそれでいいと思う。

 それでも冒険者になりたいというのならば、がんばるしかないのだよね~

 そう考えつつも経験を奪うことなく、支援する魔道具を考える。回復の魔道具を作れば自動回復みたいな身体能力の成長を阻害する結果になる。

 それはスキルが手に入らないということでもあるし、単純な肉体の復元力を鍛えることに対しても、阻害していることになる。これは没だな。

 日本刀みたいな武器も、一瞬で倒すことはゲームじゃないから意味がないしな。この世界ではそれは武器の経験になりそうだ。やっぱり没。強い防具も打たれ強さを鍛えることが出来ないから、没だし・・・・・・

 あー、召喚とか調教でも使えていたら。そっちから経験値がもらえるのに・・・・・・

 もういっそ、あいつを素体にして合成を・・・・・・

 駄目か・・・・・・モンスターになってしまう・・・・・・。人外にしちゃ駄目かな?

 こうなって来ると、一人でもダンジョンに潜れるように、補助する方を考えた方がましな気がしてきたよ。そういう結論に達すると、一定ダメージを受けると、学校の教室へと転移する魔道具を作製した。

 HP残量を振り切るようなダメージを受けた場合は、ダメージの一部を肩代わりさせて、死亡だけは無くす方向で開発。

 後は、再び僕の元に来て冒険者になりたいというなら、これを渡すことにしよう。


 その四日後、彼は僕の前にやって来た。

 本気で冒険者になりたかったのか、剣と鎧を買って来て、見た目だけは冒険者っぽくなっていた。

 「先生、やっぱり冒険者になりたいです」

 「やり方が変わらない事は、理解しているのか?」

 「はい、それで冒険者になれるのなら」

 「そこは自信がないな。はっきり言ってしまえば、お前がどれくらい強くなるか次第で、足手まといになるからな。自分の命がかかっているから、足手まといはパーティーを組んでもらえない。昔のレイシアのようにな」

 「レイシア先生が?」

 「出会った頃のあいつは、落ちこぼれで誰にもパーティーを組んでもらえなかったから、一人でダンジョンに潜っていたよ。今じゃあ、あいつに勝てる冒険者なんかいるのかってくらい強くなっているけれどな」

 「やっぱり強くなりたいです! 例えパーティーが組めなくても」

 「じゃあ、これを渡しておこう。一定ダメージでこの教室まで戻って来る魔道具だ。これを持っていれば一人でダンジョンに潜っていても死ぬことは無いと思う。好きなだけ経験を稼いで来い」

 「はい、行って来ます!」

 それからのハウラスは、ダンジョンに毎日のように潜り続けているようだった。

 経験を積んで、LVが上がっているのがわかったのだけれど、相変わらずスキルが何もない・・・・・・

 いっその事、僕の加護でもあげた方がいいのかな?

 魔人になってもいいのならそれも一つの方法なのだけれど、多分そういうのは本人が望まないだろうなって考えてやめた。僕としてもあんな天敵のような弟子みたいな者はいらん。どうしても弟子を作らなければいけないっていう話なら、そこら辺の子供を弟子にした方が、まだましだろうな。


 僕の身の回りも落ち着いて、たまにレイシアとダンジョンに潜ったり、ブレンダからの依頼を受けたりといった、日常を過ごしていると、ハウラスのスキルに変化があったのを発見した。

 彼の初めてのスキルは、魂解放。微妙に自爆技っぽくて嫌なスキルを覚えたな・・・・・・

 まあそれでもスキルの効果を、僕もあいつも知っておくべきだと思ったので、今日は中級ダンジョンの方へと、あいつを連れて行った・・・・・・

 「先生! 僕まだ初級も満足に進めていないのに、中級なんか無理です!」

 「ハハハッ 久しぶりの反応だな~。懐かしいぞ~」

 「先生何故ですか、ちっとも成長しないからですか?」

 「いやいや、どうも変わったスキルを覚えたっぽいから試してみるだけだよ」

 「スキルですか?」

 「ああ、でも自滅技っぽいのだけれどもな・・・・・・」

 「えー」

 中で適当に出て来る雑魚モンスターを蹴散らして、大物っぽいモンスターを探す。

 今のハウラスでは、絶対に倒せそうに無いやつがいいな。

 「あ、試す前にこれを着けとけ」

 そう言うとハウラスの腕に、HPの無茶苦茶高い身代わりの腕輪を着ける。

 これは自爆技だった場合、どれくらいのHPを消費するのかを調べる為の腕輪だったりする。

 HP全損が確実に必要なスキルの場合、身代わりのアイテムを複数所持しなければ使えないけれど、一定のHPを消費するってパターンなら多分これで持ち堪えられるはずだ。

 「お、あいつなんて良さそうだな」

 見付けたのはヒュドラ、再生能力が高く複数の首のあるでかい蛇だ。

 「無理無理無理!」

 逃げ腰になっているハウラスの背中を押して前に出すと言った。

 「なんとなくだが、魂を開放する感じで行ってみろ」

 「魂の解放?」

 ポツリと呟いて前に出たと思ったハウラスは、一瞬で相手の懐へと飛び込んでいた。

 そして、信じられないという顔をしながらも剣を振り下ろす。

 何度か切り込んでいるとなまくらだったのか、剣が折れて壊れてしまった。

 それでも相手が倒れていないので、素手で攻撃を続ける。

 それを後ろから見ていて、腕輪のHPが凄い勢いで減っていくのを確認した。

 なるほど魂を解放して、HPが続く限り戦い続けられるってパターンか。HPが0になったら死ぬパターンだな。

 そう考えると、必要な魔道具は、今回の腕輪で正解か。

 それと、あの力に耐えられる武器も無いと駄目そうかな。

 日本刀を作り出して、それに無属性の魔力を込める。下手な属性を乗せると、使い勝手が悪くなりそうだからな。

 「おーい、これを使え」

 そう言うと、彼に向って日本刀を投げて渡した。

 それを受け取ると、早速それで攻撃を再開する。

 さすがに武器があると、ダメージも高くなったのか、しばらくしてヒドラは倒れて動かなくなった。

 でも、スキル効果止まらないじゃん!

 戦闘が終わったというのに、スキルの効果は持続したままだった。結局は自爆技かよ・・・・・・

 身代わりになって砕け散った腕輪と、気絶して教室に飛ばされたハウラスを確認して、疲れたように帰ることにした。


 翌日、今度は寝込んだり閉じこもったりしないで出て来たハウラスを教室に連れて行く。

 「昨日のスキルの話しは覚えているか?」

 「はい、なんだか凄く強くなれた感じでした」

 「まあ、確かに強かったな。ただあれは本来自爆技で、使うと死ぬ技だ・・・・・・」

 「え!」

 「昨日は、腕輪を身代わりに助かっただけで、本当ならお前はあれで死んでいた」

 なんとなく強くなれたと思っていたようなハウラスは、落ち込んだように暗い表情をした。

 「そこで、お前に魔道具を作って来た。お前のスキルを三回だけ使えるようにする腕輪だ。ただしルールがある。敵を倒して、そこにはめ込む宝玉を作らなければ、使えない」

 「どうやって作るのですか?」

 「倒した敵に、吸収って合言葉を言えばいい。敵によっては力不足で、宝玉にならない時があるが、その時は数を倒せ」

 「わかりました」

 「後は、その日本刀もやる」

 「いいのですか?」

 「ああ、いずれ金が貯まったら、お金を回収に行くよ」

 ニヤリと笑ってやった。

 「ありがとうございます!」

 まあ結局は、普段に使えるスキルじゃないから、弱いままだけれどね。

 また次のスキルが出て来るまでは、このままだな~。だって打つ手が無いのだし・・・・・・


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