新設、王立冒険者養成学校
第十章 新設、王立冒険者養成学校
王子の指導の下、王国に冒険者育成を目的とした学校が出来ることとなった。学科は大分けすると騎士科と、冒険者科らしい。細かく分けると騎士科には騎士見習い教室、従者教室、文官教室があり、文官教室には宮廷魔術師候補なども混じっている。冒険者科の魔法使いからの引き抜きなんかもあるかな。
冒険者科の方は戦士教室、魔法使い教室、神官教室、盗賊教室があって狩人の技術は共通でそれぞれの教室で指導されるようだった。弓の扱いは戦士教室だけかな。希望者は戦士教室に習いに行けるらしい。
教師は剣を扱う者は、王国から近衛騎士の人が来ることになっているそうだ。魔法は、宮廷魔法使いから来るという。
神官は、王宮とは関係ないけれど教会と連絡を取り、一人教師として派遣してもらえる手はずになっているという話だ。宗派の違いは地球程ギスギスしていないようで、信者集め競争みたいなものはないみたいだね。まあ神の声を聞いていない人はこの教室に通えないので、取り合いにはならないのだと思う。ここはあくまで神聖魔法の技術を学ぶところなので、前提として神の声を聞いていなければ、通えないそうだ。普通の教会ならば、魔法が使えなくても信者として入って行けるのだけれどね。
問題は盗賊になるのだが、こちらはブレンダに伝手を当たってもらって、一人派遣されるという話だが、まだ本決まりにはなっていないそうだ。
僕達の元にも教師の話は来ていたのだけれど、それぞれにやりたいこともあるので、非常勤教師として席だけ置くことになっていた。
今は学校になる校舎を建築中で、まだ開校までは時間がかかる。
学校運営は王国がやるので、パペット達は派遣していない。僕達はそこまで国とは関わらない感じで、あくまでも自由な冒険者の立場で手伝うだけだね。
今日の僕とレイシアは、別行動をしている。
レイシアは今のLVだときついということで、ホーラックスとは戦わないでその手前までを繰り返し移動して、ダンジョン内で経験値集めをしている。今頃ホーラックスは倒されたモンスターを、一生懸命補充していることだろう。
僕はといえばブレンダと合流して、王子と学校に関しての打ち合わせなどをしていた。
話の中身は、王国側に不足している授業の内容とか必要な行事、運営方法等々、こっちも素人だけれど一応学校を卒業しているので参考意見にというのと、どこまで手伝ってもらえるかの打診だった。
ブレンダは他国の貴族である為に、あくまでも出来得る限りの物資の販売などで、僕に関してはその都度気になる部分があって、介入してもいいと思えることだけという話をしていた。
ようは王子が経営するのだから自分でがんばれって事だな。そんなあまり助けにはなっていないような話し合いが終わり、ブレンダを連れて拠点へ来ていた。
何でか王子の相手をしているのは疲れるのだ。
リビングで、のんびりお茶をしながらブレンダとの話し合いを進める。こっちはこっちでホテルの経営の仕方などを、現代日本の知識で教えていく。
まだ中級ダンジョンの製作に時間がかかっているので、ホテルの建設は始まっていないけれどね。
その為、打ち合わせは従業員の質の向上などマニュアルを作っていって、それを徹底指導する話をしていた。
それと、ホテル内部の備品は、そのほとんどが日本電化製品を真似して作り上げる魔道具にする予定なので、それの使い方などをブレンダに説明していく。
いずれはホテル経営の総責任者が、実家の方からこちらに派遣されて来るって話らしいのだけれど、その人材が今だに決まってはいないのだそうだ。予想だとド田舎の見知らぬ国に、左遷されるって感じに思っているのだろうね。
まあある意味正しくはあるのだが、近代化した環境になるはずだから、逆に慣れると帰りたくなくなると思う。
昼少し前くらいに、ブレンダとの打ち合わせが終わり、せっかくだからと昼食を一緒に済ませた。
その後に帰って行ったはずのブレンダからなぜか通信が来た。
『えっと、さっき振り』
「ああ、そうだな。で、どうしたのだ?」
『えっと、申し訳ないのだけれど、勇者がこっちに来ていてね。レイシアさんに会わせて欲しいって話なんだけれど・・・・・・ 私としては断る訳には行かないので、困っているのよ』
「転送用の水晶は、僕個人の物だから、例え国王でも許可無しには使わせないぞ」
『まあそうなのよね。それで勇者の方から、全人類の敵になるのかって言って来た訳よ』
「あー、勇者だから何でも言う通りになると、勘違いしちゃっているのか。ブレンダでは、押さえられないって事なのだな?」
『ええ、申し訳ないわね』
「まあ、相手が人類の希望とか名乗っているなら、仕方ないかもしれない。人格はともなっていないみたいで、残念なことだけれどね。それで、勇者はどこにいるのだ?」
『えっと、今家の応接室で待ってもらっているわ。水晶の所まで来たんだけれど、そっちに飛べないからって荒れているところよ』
「そっちに行くよ」
僕はそう言うと、ブレンダの実家の応接室へ直接転移して乗り込んで行った。
そしてそのままの勢いで、勇者を殴り飛ばす。
いきなりの事で、まるっきり対応できなかった勇者が、壁にぶつかって止まった。
「曲がりなりにも勇者を名乗る者が、この程度も避けられないか・・・・・・口だけの未熟者だな」
「何だ貴様は、モンスターか!」
「なるほど、頭も悪いただのお子様だったか。レイシアに話があると聞いて、わざわざ守護天使の私が来てやったのだ、頭を下げて感謝を述べよ」
「貴様、勇者を愚弄するのか!」
そう叫んだ勇者の後ろに、僕は転移して足払いを仕掛ける。
あっさりと倒れる勇者の腕を捻って、後ろ手にして踏み付けてやった。これで彼は身動きが取れなくなったはず。
「弱い、弱過ぎる。お前はほんとに勇者なのか? レイシアのようにがんばっている冒険者の方が、お前より強い気がしてきたな」
「くっそ!」
勇者は悔しげに足元で暴れていた。そこにブレンダが来て、部屋の中へと入って来る。
「バグ、やっぱりこうなっていたのね」
「ああ、躾のなっていない子供みたいだからな」
「誰が子供か!」
「アデルフィラ様、お分かりかと思いますが、レイシアさんを強制的にどうこうは出来ないんです。諦めてくださいませんか?」
「何を言う! 彼女は今後の僕のパーティーに必要な人材なんだぞ」
何らかの事情があるのかな?
「ブレンダ、レイシアの家の事情とか、そういうものか?」
「いえ違うわ、バグ。例の町全体がそのまま怪物――異形になって、今あなたの結界で閉じ込められているって状況なのは、知っているわよね?」
「ああ、ギルドがレイシアに死んで来いと言っていたやつだから、よく覚えているよ」
「まあ、経緯はよくわからないんだけれど・・・・・・その討伐で勇者パーティーに何人も欠員が出たのよ」
「つまりは異形退治に失敗して戦死者が出たから、補充にレイシアをってことなのだな?」
「ええ、そうよ」
「何だそんなものは、こいつ一人でする仕事じゃないか。何で他人を巻き込んで、しかも守れもしないで死なせているのだか。実力不足を他人のせいにする勇者か・・・・・・死んだやつらも、無駄死にしたものだな」
「貴様!」
「お前のミスは他人から絶大な力を貰ったが故に、努力するということを忘れたことだ。勇者の力などに頼らずに、己を強くしようと努力さえしていれば仲間は死ななくて済んだし、そもそもが仲間さえ必要とはしなかったはずだ。
まあいい、お前に期待していた人々が愚かだったのだろうな。勇者の加護さえあれば魔王すら倒せると勘違いした男など、何の役にも立たないのにな。面倒だが死んで行った者達を、このまま無駄死にしたままでは浮かばれないだろう。
私が異形達を殲滅して来よう。ブレンダ、ここで待っていてくれ」
「わかったわ。気を付けてね、バグ」
「今ならおそらく、そこまで気にする相手でもないと思うよ」
僕はブレンダと別れて、結界の張られた町へと転移した。
「サンダーレイン!」
上空から町を見下ろしながら、威力を高めた魔法を使う。
手を抜いて生き残られても困るので、ここで殲滅し尽くせるだけの威力を込めさせてもらった。
多分、オーバーキルっぽい威力になっていると思う。今町には、高威力の雷が雨のように降り注いでいるので、この雨が止む頃には町に存在していた異形だけではなく、人が作り上げて来た文化的な物も何も残らないに違いない。
調査のスキルで、異形達が次々に消滅していくのを確認してから、ブレンダの元へと戻って来た。
「戻ったぞ」
「凄く早いわね・・・・・・もう終わったの?」
「ああ、魔法はまだ続いているが、おそらくは何も残らないと思う」
それを聞いた勇者は、悔しそうに俯いていた。
「念の為にもう一度言っておくぞ、もう他人を巻き込むのはやめろ、出来ないのなら勇者を辞めろ。お前が辞めればもっとまともな勇者が現れるはずだ、そっちに期待した方が人類全体にとってよっぽどいい結果になる。じゃあブレンダ、またな」
「ええ、またね」
そうしてブレンダと別れて、拠点へと戻った。
数日後、中級ダンジョンが完成した。ダンジョン造りが終わったパペット達は、次のホテル建設を始めている。
レイシアは、あれから経験集めをずっとしていて、拠点とダンジョンの往復ばかりしていた。
学校の方は校舎をまだ建てている最中で、その間に授業内容や教師の用意、ルールの取り決めなど初めての試みなのでやる事は一杯のようだった。
異形の町の方は、やっと雷の雨が止んで、野次馬などがその場で見ていたのだそうだけれど、ほとんど更地のようになっていて、動く者は存在していなかったそうだ。
それを確認した勇者が、パーティーを解散して修行の旅をしているという話を、ブレンダから聞いた。勇者関係の方も、これで多少は落ち着いたかな。
さて僕の方は、今は拠点で待機している。
久しぶりというか、ようやくというのか、進化の素材になりそうなモンスターが、マグレイア王国へと向かって来ているそうだ。まあぶっちゃけると、暗黒竜っていわれるドラゴンなのだそうだけれど。
こっちに来ちゃっているのならば、とりあえずキープとか言っていられない。
暴れられる前に捕獲しようと思い、到着を待っている状態だった。
ちなみに王国の人達は、暗黒竜が来ていることをまだ知らない。この情報は、鳥型のパペットからの情報だった。
後、他にも巨大な亀のモンスターがいるそうで、そっちも素材になりそうだという話なので、後で捕獲しないとだな。
みんながそれぞれに活動してがんばっているし、いい機会なので僕もここらで次の進化を目指してみようと考え、素材の確保をすることに決めた。
いろいろと考えてみると、やっぱり闇の属性が無いのは精神系の魔法が使えなくなって、素材集めなどが大変だっていうこともあるからな~。やっぱり使えない属性は無い状態にしたいって思ったことと、やっぱり男に戻りたいなと思った。レイシアもがんばっているのに、こっちはのんびりしているのは落ち着かない気がしたしね・・・・・・ここら辺りで進化したいと考え出した。
現状の力量を考えると、これ以上強くなる必要はあまりない気もするのだけれど。まあでも、前に魔王の配下らしき奴に出会って、勝てる気がしなかったからやっぱり強くなる事には意味がある気がする。
後どうやら勘違いしていたみたいなのだけれど、よくよく考えてみるとヴァルキリーって、天使じゃなくて女神様って分類だったんじゃないかな?
ネットで確認できないから、ずっと勘違いしていた気がする。
どうりでスキルに創造とか、天使じゃ扱いきれないものがあったりする訳だよなって思った。
そんな女神の上の進化、見てみたかったりするとともに、それでも勝てそうに無い魔王の配下が恐ろし過ぎるよ。魔王は邪神とか、そんなランクの敵なのだと考えられるな。
やっぱり僕だけ、次元の違う戦場に立っている気がする。そんな事を考えながら待機していると、いよいよ暗黒竜が王国の国境を越えてやって来たようだ。
鳥のパペットからの報告によれば、国境警備の人達が、慌てているそうだ。
国境を守っている人達、ちゃんといたのだな~
他国の人達は、おそらく見向きもしていないので来ないと思うけれど。
さて連絡も来たことだし早速ドラゴンの元へと転移して、他人を巻き込まない場所で戦闘を始めることにしようか~
「スタン、スリープ、パラライズ」
転移して直ぐ先制の魔法攻撃を叩き込む。突然現れた僕に驚いたドラゴンは、難なく魔法に抵抗してのけた。やっぱりドラゴンは強いな~
さて魔法には抵抗されたけれど周りに被害を与えないですむ、戦うにはちょうどいい場所に足止めできたので、ここからどうやって戦って行くか考えるかな。精神を削ったり幻覚を見せたりって方法は、闇属性が無くなった事で使えなくなったから、別の手段で相手を捕獲しなければいけないのだが、上手くやれるだろうか?
「果て無き時空、ここに顕現せよ」
時間の流れを狂わせて、生きたまま異空間に閉じ込める合成魔法をドラゴンに飛ばしたのだけれど、危険を察知したのか回避しやがったよ。
元気一杯だから、動きもそれなりに素早いのかもしれないな、ちょっと疲れるまで相手でもしてあげるか。
そう考えると両手にランスを創り出して、突撃を仕掛けて行く。
ランスは、あまりドラゴンを傷付けたりしたくないので、先端を丸くして突きのダメージではなく打撃にしてみた。
内臓にはそれなりのダメージが行くだろうが、自然にしていても完全回復が出来るダメージで攻撃して行くことにする。
後、右手のランスには風属性の雷の力が宿っていて、攻撃を当てることでスタンを狙える魔法武器に。左のランスには水属性で氷の力で相手の体温を奪い、動きの阻害と自然の眠りを誘発する魔法武器にしてある。
これらを使ってしばらくは接近戦で相手をして、弱らせてから捕獲しよう。
武器を構え飛んで接近戦を挑む僕に、ドラゴンは距離を取って来た、このドラゴンは頭がいいかもしれないな。
下等生物って見下して懐へと入らせてくれれば話は簡単なのだけれど、プライドより堅実な方を選んで来たよ。普通にやっていたら、鬼ごっこになってしまって余計に戦闘が長引くと考え、空間移動してドラゴンの死角から攻撃を仕掛けることにした。
それでも危険に関して感覚が鋭敏なのか、体を捻って攻撃を避けようとして来るのだから、最高の素材だといえる。まあ、逃がさないけれどね。
体を捻るドラゴンに対して、ランスを投擲した。普通ならば武器を投げるなど、勝負を諦めるような行為だけれど、僕の場合は空間を操って呼び出せるし、武器を失ってもまた創り出せばいいので、こういう攻撃方法も使える。
さて避けきれなかったドラゴンの体が、電撃に打たれるのを確認することもなく、左手のランスによるチャージを叩き込んで行く。
感電しこちらに気付く事が出来ないドラゴンは衝撃と共に、冷気に包まれた。
僕はドラゴンに当たった後、重力に引かれて落ちて行く雷のランスを、空間転移で呼び戻すとまた両手にランスを構える。
ドラゴンは、しきりに頭を振って体調を戻そうとしている。
そして僕に対して逃げていてはやられると思ったのか、今度は自分から襲い掛かって来た。
手始めはドラゴンの十八番になっているブレスで、暗黒竜らしく闇の属性の攻撃が来た。それに対してランスを魔法で回転させることで防御する。
ブレスを吐き続けながらドラゴンがこちらに噛み付いて来たが、逆に左に遊ばせていたランスを突き出すことによって、打ち破る。
自分の突撃のダメージが、チャージの威力となって自分へと返っていく。しかも魔法効果の冷気ダメージと共にだ。
グガアアァア
ドラゴンが苦悩の叫び声をあげた。ちょっと物悲しくも聞こえる声に、可哀想な気もしてくるけれどまあ仕方ないだろう。
世の中強い者が相手を支配できる。素材として必要でないのならば、このまま逃がしてもやれたのだけれどね。
それからの戦いは、ドラゴンから攻撃してくれば全てカウンターを決めて行き、距離を取ろうとすれば転移で死角に跳んで攻撃をし、たまにフェイントで真正面から挑んだりする。ドラゴンは次第に攻めることも逃げることもできなくなって行った。ついには心を折られたドラゴンには、抵抗といえるようなものは感じなくなっていた。
最強種だけに、どうやら心はそれ程までには強くなかったのだろう。
動きの鈍ったドラゴンをそのまま異空間へと送り込む事で捕獲することに成功した。
その後になるのだけれど、拠点から持ち出して来た首輪をドラゴンの首に巻き付ける時には、ドラゴンはもう無抵抗で受け入れていた。
必要な残り素材は四体。ドラゴンとの戦闘でわかった事だが、ヴァルキリーになった事で魔法だけではなく接近戦にも優れていることがわかった。なので武器で弱らせて異空間に送り込むようにして捕獲という流れを作り出して、素材集めをすることにする。
前に発見されていた亀に、新たに見付かった上位精霊のベヒモス。そして活火山の中にいた、フェニックス。
そして最後の素材はというと、フェニックスを捕まえた時に偶然見付けた魔族? 魔人? 何かそんな奴を捕まえることにした。
ひょっとしたら魔王の手下かもしれないけれどね。
「ほう、俺に戦いを挑もうなど、身の程がわかっていないようだな」
こいつは偉そうな口を利くだけあって、LVでいけば僕とほぼ同格だった。
かなりの苦戦をするだろうけれど、素材としては申し分ないので、ぜひともがんばりたいところだな。
「やってみなければ、わからんさ」
本当に、戦ってみなければわからないけれど、ここで引くことはできない。
「ちなみに教えてもらえるかな? お前は魔王の配下の者か?」
「ふん、あんな奴の元で働くなど、考えるだけでも虫唾が走る」
どうやら、危険を感じた配下との敵対行動にはなりそうにないな。これは幸先がいい。
「それだけ聞ければ十分だ、そろそろ殺り合おうか」
「ふん、後悔するがいい!」
そうして言葉少なげに会話をした後に、戦闘へと入って行く。手順は変わらずに接近によりダメージを蓄積させて、弱られたら捕獲だ。
最初の攻撃は、右腕に持ったランスでのチャージから始まった。相手はそれを大剣で受け流すように弾いた。その瞬間、雷が魔族の全身を打ち抜く。
まあ、雷を金属で受ければそうなるよね。
だからといって、攻撃の手を止めないで左手のランスで追撃をおこなう。
グアッ
今まで捕獲して来た敵のように、初めはランスの攻撃を簡単に食らってくれた。
さて、問題はここからになる。
距離を取るのかこのまま接近戦を選ぶのか、はたまたは逃げに徹するのか・・・・・・
「おのれ、雑魚の分際で!」
魔族は怒りに任せた接近戦の継続を選択したようだった。
右手のランスで連続突きを繰り出す。さすがに魔族も受けるのはやばいと判断したのか、ランスを避けることで電撃を食らわないようにしている。そんな魔族の隙を突くべく魔族の背後、無詠唱の火属性である爆発を仕掛けた。
(ファイアボム)
グア!
吹き飛ばされた魔族へと左手に準備していたランスの突きをお見舞いする。
爆風の威力で、チャージ攻撃になった冷気ダメージが魔族へと叩き込まれた。
「正直ここまで強いとは思わなかったぞ、いいだろうこちらも本気で相手してやるよ!」
そう叫んだ魔族は今までの優男風な体格から、倍くらいのゴーレムみたいな魔族へと変化した。
スキルに載っていた第二形態ってやつかな。ちなみに、変身はここまでしか載っていなかった。
ステータスを見て変身するのがわかっていた為、油断も驚きもなく変身直後の魔族へと、右手のランスでチャージを叩き込んだ。
「効かぬ、効かぬわ!」
魔族がそう言うように、ダメージはかなり軽減していることがわかる。だが軽減しているだけで、無効化された訳ではなさそうだ。
「では、こちらも本気を少しだけ出させてもらおう」
魔族に張り合って、武器を持ち替えることにする。
ダメージ量の増減から、大体の力量を見極めて、これくらいならいいかなって思った武器を作り出す。
刃を潰した日本刀で、魔法属性は光。
刃の部分を潰していても、居合いはできるように創ってみた。
剣を鞘に収めたまま構えをとる僕に、魔族が油断なく距離を取る。
うかつに飛び込むと、何が来るかわからないって感じなのだろうね。そんな魔族に付き合うことなく、空間転移で懐に飛び込んで、居合い斬りを発動させた。
グフッ
まともに当たった魔族が背後に飛ばされて、岩肌に叩き付けられた。
お腹に一文字の焼け跡みたいな物が残っている。属性効果で、魔族にダメージが入った為であろう。
「貴様何者だ。この力、只者であるはずがない!」
今だ立ち上がれない魔族がそう言って来た。
「さあな、私は私だ。それ以外は知らん」
魔族の目には、まだ諦めというものが見受けられなかったので、さらに踏み込んで居合いを叩き込んでいった。
暗黒竜とは違い、この魔族はプライドの塊みたいな者だったみたいで、完全に気を失うまで、何度でも立ち上がり挑もうとして来たので、何度も何度も居合い斬りを叩き付けて魔族を吹き飛ばし続けた。
ようやく動かなくなった魔族に首輪を付けて、拠点へと戻ったのは辺りが暗くなった後だった。
「ただいま~」
「お帰り、バグ」
今日はレイシアが先に戻っていて、ご飯の用意をしてくれていた。
丁度いいので、素材が五体集まったことを話して、進化の準備をお願いしておこう。
「レイシア、手が空いたら次の進化をお願いしてもいいかな?」
「うん、いいよ。あっ、でも今の私なら、素材は六体いけるかもしれないわ」
夕食の席で進化の話をしていたら、素材をもう一体用意しなければいけない事実が判明した・・・・・・
一体増えちゃったよ・・・・・・
「わかった、集まったら、また声をかけるよ」
「うん、じゃあ時間ある時に、今集まっている分の魔法陣を構築しておくね」
「よろしく」
その後の食事を力なく終わらせた。食後、ちょっと無気力でボーとした後、改めて次ぎの素材を検索。
もうドラゴンでいいやと見てみたら、
ゴールドドラゴンの群れの中にエンシェントドラゴンっていうのがいるのがわかった。
今度こそ最後の素材はこいつで決まりだなって考える。




