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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第九章  新たな力
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人工ダンジョン

 前回の研究所に関して、昔の遺跡調査報告を参考にした報告書を作って役場へと提出した後、あまり成果はなかったのだけれど、ダンジョン探索はやっぱり楽しかったなと思った。

 なので、人工ダンジョン計画を考えたよ。

 造るダンジョンは三つ。レイシアの経験値を稼ぐ目的の、本格的なダンジョンが一つ目。

 これはレイシア専用なので、入り口を僕達だけが使えるように設定しよう。

 そして他には、それなりに戦闘ができる人達が参加する、冒険者用のダンジョン。どうやらこの国の兵士達とかは、周りの国から弱小と呼ばれているので、そういう人達を育てる目的も持ったダンジョンだ。

 まあ、兵士だと戦うのは他国の兵士なのだろうけれど、戦争はして欲しくないからそっちに訓練はいらないよね?

 そして最後のダンジョンは、とにかく怪我一つさせることがないよう配慮された、レジャーダンジョン。

 コンセプトとしては、子供が楽しめるワクワクのダンジョンだな。

 この国には冒険者がいないのだけれど、モンスターがいない訳ではないので、多少は戦える人達もいてもいいはず。強くなりたい人、冒険者に憧れがある人などが、ここで修行してくれればいいな。

 そんな訳で、ダンジョンの管理人を創り出すことにする。

 パペットでもよかったのだけれど、ここはラスボスなどをやってくれたり一緒に戦う場面が出て来るかもしれないなど、いろいろな可能性も考えて眷族の方を創ろうかと思った。

 ダンジョン攻略者が強くなれば、ボスも強くなってくれなければいけない。レイシア専用のダンジョンなどは、僕にも内緒で創って欲しいところだしね。

 「創造!」

 目の前に現れた眷族は、魔王っぽい雰囲気を持つ者だった。中々いいじゃないか!

 「やることはわかっているか?」

 「むろんだ、我が創造主よ。ダンジョンを三つ造り、管理すればいいのであろう? ただ、ダンジョンの製作は、我が一人でするのか?」

 「いや、こちらの拠点に、生産が好きなパペット達がいる。彼らを上手く使ってくれ」

 「了解だ、主よ」

 中々威厳などもありそうな奴だった。

 その後、細かい打ち合わせと、ダンジョンをどこに造ろうかとかいろいろと話をした後、早速パペットを呼び出してダンジョン経営の話を彼らにもして、行動に移すよう指示を出した。


 さてとこっちはこれでいいとして、次は役場とかにでも、話を通す必要があるかな?

 そう考えて役場へと向かった。

 「少しいいだろうか?」

 「はい、バグさん。今日はどういった御用でしょうか?」

 受付の女性とは、討伐依頼などでよく顔を合わせていたので。もう普通に会話できる仲になっている。

 「今度、町の外にダンジョンを二つ作ることにしたので、その報告を伝えに来た。一つは子供でも怪我をしないで気軽に入れるダンジョンで、もう一つは冒険者などが経験を積めるようなダンジョンだ。こっちは国の兵士が入って行ってもいいと考えている。まだ今さっき造り出したばかりなので、完成は先になるのだけれどな」

 一瞬ダンジョンと聞いて、ギョッとしたみたいだけれど、話を聞いてなるほどって感じになった。

 「えっと、それは計画書みたいなものは、もらえますか?」

 「いや、今回は私もダンジョンに潜る側になるかもしれないので、眷属に全てを仕切らせている。なので細部については私にも不明だ」

 「そうですか、とりあえずそういう話が来たと、報告を上げればいいですね」

 「そうして欲しい」

 「わかりました。何か聞くことができたら、またお伺いしますね」

 「了解した。ではよろしく」

 役場にはこれでいいかな。

 後から王子辺りが訪ねて来るかもしれないけれど、それはその時に対応しよう。


 拠点に戻ると、レイシアがそわそわしていた。

 「ひょっとして、ダンジョンが楽しみとか?」

 「うん!」

 大物の討伐とかほとんど終わって、平和になったから、ちょっと運動不足だったかもしれないな~

 やっぱりこういう本格的な冒険者の活動がないと、退屈になっちゃうのかもしれない。ダンジョン、どれくらいで運営できるだろうか?

 適当に進捗状況など、聞いておかないとな~。ちなみに、新たな眷属のステータスも見ておいた。


 《名前 ホーラックス  種族 魔王  年齢 0  職業 ダンジョンマスター

 LV 68  HP 4712  SP 3956

 力 154  耐久力 168  敏捷 86

  器用度 114  知力 162  精神 137

 属性 火 土 闇 生命 無

 スキル 眷属創造 罠創造 ダンジョン創造 財宝創造 自動復活》


 どうやら財宝なども配置してくれるようだから、いろいろと楽しめるかもしれないね。冒険者なら喜びそうだ。

 種族は魔王みたいだけれど、その割に能力が低いのは、生まれたてだからかな?

 攻略者に合わせて、段々と強くなっていってくれるのかもしれない。

 まあ、僕から見てそんなに強くないかなって思っただけなので、レイシアが相手をするのなら、強敵だろう。

 それにしても、こいつは眷族なのにレイシアにとっては敵扱いになるのか・・・・・・

 好敵手と書いて、ライバルと読む関係だなって誤魔化しながらも、やっぱり仲間同士争うとかは、少し複雑な気持ちになるものだった。


 レイシアと共にダンジョンの完成をそわそわしながら待っていると、最初のダンジョン完成の報告が上がって来たのは子供用のダンジョンで、頼んでから八日過ぎた朝だった。

 早速ダンジョンへと向かい、中へと入ってみることにした。

 「おー」

 入って直ぐにわかったのは、所々に配置されている光苔に照らされた通路だった。

 人工的に作られた通路は、怖いというよりは幻想的で、夜空の中を歩いている気分にしてくれる。

 そんな通路を光る蝶が飛んでいるのも見られた。ダンジョンは怖いってイメージだけれど、これは綺麗って感じだな。

 少し進むと、前方に別れ道が見えて来て、そこに膝までの大きさの、デフォルメされたキノコの縫いぐるみみたいなものがいるのが見えた。


 クワー


 アヒルみたいな鳴き声をして、こっちに向かって来た。

 その姿形から危険をまるっきり感じられなかったのだが、向かって来たので殴り付けると、一定ダメージが入ると倒れるようになっているのか、シオシオって感じに萎れて消えていった。

 「へぇ~、これなら子供でも安全に戦闘ができるかもしれないわね」

 「子供によってはモンスターを怖がる子も、いるのかもしれないな。やんちゃな子なんかは結構簡単に倒せるから、調子に乗りそうだ」

 「あー、ありそうね」

 僕らは、とりあえず右の方へと進むことにした。しばらく進むと、ちょっとした広さがある部屋が見えて来る。

 部屋には扉がついていなかったので、部屋の中が見えていた。

 部屋の真ん中には、ゴブリンの縫いぐるみみたいなやつが待ち構えているのがわかる。そしてその後ろ、少し大きめに見える宝石箱が置いてあり、いかにも守っていますよって感じに見えた。

 「ちゃんと報酬も用意されているのね。子供なんかは、喜びそうなダンジョンだね」

 「まあそうだな、箱の中身にもよりそうだが。これはある程度入場料とか、取るべきかな?」

 「そうね、子供のお小遣いで、来られるくらいならいいかもしれないわね」

 「いやそれよりは、親が年間フリーパスのような物を買って渡すのがいいかもしれないな。初めは一ヶ月用の方がいいか?」

 「フリーパス?」

 「ああ、ステータスカードみたいなカードとかをお金を払って先に買ってもらって、そのカードを見せたらこのダンジョンに入れるようにするってシステムだな。期限を付けて買ったカードによって、一ヶ月なら何回でも入れるとか、一年間は入れるとか、そういう感じだ」

 「なるほど。そっちの方がいいね」

 「ダンジョン公開の日とかは、記念でタダでもいいかもしれないがな」

 「そうね。最初はここが、どんなところかわからないと、不安に思う親もいるでしょうしね」

 僕達は、そんな話をしながら、ゴブリンを殴り倒して、箱を開けた。

 箱の中に入っていたのは、お土産屋でありそうな木刀とキノコのぬいぐるみ、こっちの縫いぐるみは動かない本当の縫いぐるみみたいだ。男女で、中身を変えているのかな?

 そう思いつつ、ここは行き止まりだったので、戻って左の方へと進むことにした。

 その後も、何度か分かれ道があったり部屋にはモンスターがいたり、たまに行き止まりなど、そこまで難易度がないものが続き、かなり大きめな部屋へと到着する。

 「ここは、休憩所? テーブルと椅子が置いてあるわね」

 「座れってことかな? 部屋の奥にはトイレがあるから、ここで小休憩しろってことだな」

 席に座ると、妖精がこちらまでお菓子を持って飛んで来た。そしてゴーレムが飲み物を乗せたお盆を持ってやって来ると、目の前にジュースを置いていった。

 完全なレジャー施設だな~。まあ、子供用だからそこまで気にしない方がいいか?

 せっかく出て来たので、ジュースとお菓子を食べて休憩した後、僕達は先に進む。

 先程の休憩所は、どうやら折り返し地点だったようで、倍の時間をかけて進むと、ちょっと終点って感じの、豪華な扉のある部屋の前に辿り着いた。

 僕らが近付くと、自動で開いたけれどね。

 そして、部屋の中には玉座があって、その手前にデフォルメされた縫いぐるみの悪魔が二匹、玉座に眷属の魔王をデフォルメした者が待ち構えていた。

 「良くぞここまで辿り着いた、勇者よ! 我は他の者達とは違うゆえに、心して来るがいい!」

 部屋に入ると、魔王が喋ったよ

 「おー」

 レイシアも、喋るとは思っていなかったのか、そんな声を出していた。まあ、とりあえず戦ってみるか。

 僕達は、魔王を殴りに行った。

 手下二人は、他のところにいた縫いぐるみよりも強くて、連携していたずら攻撃を仕掛けて来た。おお、結構楽しめるじゃないか。

 それを殴り倒して、魔王も殴るのだけれど、こっちは全然攻撃が届いていない。

 「何だ? 無敵か?」

 「無敵って、倒せないってこと? ちょっと卑怯じゃないかな?」

 「いや、そうじゃなくて、何かが足りないのだと思う。倒す為の仕掛けがどこかにあるのかもしれない」

 こちらが殴るのをやめると、魔王は高笑いをしていた。

 「フハハハハッ。無駄無駄、我に通常の攻撃は効かぬのだ! 諦めて死ぬがよい!」

 そういいつつも、魔王はこちらに何もしてこなかった。

 考える時間をくれるようだな。

 じゃあと、部屋を見回してみると、壁に何やら仕掛けがされているのに気が付いた。

 あー、結界とか、そういう感じの仕掛けをこれで解除してねってことか。スイッチを押すだけの物だったりレバーだったり、中には謎々とか算数の問題だったり何でこんなところにって感じのものが仕掛けられていた。

 「ついでに、勉強もしましょうってことかしら?」

 「なるほど、そうかもしれないな。結構冒険ってのは謎解きなどもあるから、頭を鍛えるっていうのもありそうだ」

 僕達は全てを解除して、改めて魔王を殴り倒した。

 魔王が倒れると背後の壁が開いて、出口と思われる通路が出現した。

 出口の手前、ひときわ豪華な宝箱を発見、中を見ると腕輪が二つ入っていた。ダンジョンクリア記念かな?

 それを取り出して、外に出た。出て来た場所は、ダンジョンの入り口だった。

 「うん、中々楽しめたんじゃないかな?」

 「結構面白かったよ!」

 子供用にしては、それなりに内容の詰まったダンジョンだったように思う。一度役場の人にも見てもらうといいかもしれないな。

 「役場の人に、体験してもらおう」

 「そうね! 早速行きましょう」

 僕らは連れ立って、役場に向かった。

 「失礼する。子供用のダンジョンが完成したので、一度見学に来てもらいたいのだが、いいかな?」

 「もう出来たのですか! 結構早かったですね~」

 そう言って受付の女性が、他の職員の人達と相談を始めた。

 「じゃあ今からこの三人の職員が見学するので、ダンジョンの入り口まで案内をお願いしてもいいですか?」

 「ええ、こっちだ」

 そうして、僕らは職員をダンジョンへと案内した。

 それなりの時間入口で待って出て来た職員達を見ると、三人ともやりきったって感じの表情をしていて、十分楽しめたのだと判断できる。

 その後、いろいろと話し合いをして、このダンジョンは正式にオープンすることとなった。

 入り口には結界を張り、レイシアと話していた通り入場カードを持った人が中に進めるようにして、カードは一回限りの物、一ヶ月の物、半年と一年の物と用意することにした。

 このカードは役場か、ブレンダのお店で買うことができる。

 そして最初のオープン記念に、一ヶ月だけ無料開放されることも決めた。


 子供用ダンジョンが受け入れられて子連れの親や、物珍しさで来る大人なんかもダンジョンに来るようになる頃、冒険者訓練用ダンジョンと、レイシア用ダンジョンが稼動できるくらいの完成度になったという報告が上がって来た。

 今回の訓練用は、この国にはそれ程強い者がいないという話なので、難易度はかなり抑え気味であるという話らしい。

 レイシア用は、後でいくらでも試せばいいので、今回は訓練用のダンジョンへと、入ってみることにした。

 おそらくだけれど、レイシアでも無双状態であると思われるので、今回ダンジョン攻略を目指すのは、アルタクスをリーダーにしてサポートに狼が二匹付き、この三人組にお任せすることとする。

 ダンジョン内、レイシアはマッピングシートを使って、どういう風に進んでいるのかを確認し、僕は調査のスキルで、地形と共に、出て来る敵などの情報も見ていた。

 アルタクスが誘導して、数々の分かれ道を進み、途中で扉を見付けそれを罠発見、解除、鍵開けとスキルを使い部屋の中へと進むと、このダンジョン初めてのモンスターと遭遇する。

 部屋の中で待っていたのはコボルトが二匹とゴブリンが三匹の合計五匹で、鍵開けなどで侵入者に気が付いていたらしく、扉が開いた瞬間に襲い掛かって来た。

 アルタクスは、それを予測していたように先頭のゴブリンの顔に飛びついて窒息を狙い、その右のゴブリンへと強酸を浴びせかける。

 狼達は隙間をぬうように内部へ突入してコボルト二匹に襲い掛かり、これを仕留めていた。

 生き残っているゴブリン一匹と、負傷したゴブリンは、初めスライムなど余裕と判断していたのか、かなり動揺していて次の行動が出遅れる。

 その間に無傷のゴブリンは、顔に飛びつかれて窒息し、手負いゴブリンは狼にのしかかられて倒れた。

 「何か懐かしいな。昔のバグを見ているみたいで、安心感がある戦いだったね」

 「まあ僕の眷属だし、似たような戦い方になるのかもしれないな」

 「常識的にいえば、スライムは子供でも倒せるって言われているのだけれどね」

 「そういえば、スライムに会ったことがないな。一番の雑魚だとコボルトくらいかな」

 「今普通のスライムを見たら、あまりの弱さにびっくりしちゃうかもしれないね」

 敵の討伐を終えて、探索を開始したアルタクス達の後ろで、緊張感も無くそんな会話をしていた。その後も、罠や比較的に弱いモンスターなどが出てきていたけれど、苦労する程の難易度ではなかった。

 「バグはこんな風に私の事を、いつも見守っていたのね」

 どれくらい進んだ時だったか、レイシアがしみじみとした感じでそう呟いた。

 何かあったのかとも思ったのだけれど、その後何も会話が続くことはなく。

 悩んでいる風でもない様子だった。

 突然どうしたんだろうなって思いはしたのだけれど、何も言って来ないのならまあいいかと、そのまま進むことにした。

 そして調査スキルで確認したところ、そろそろ終わりが近付いて来ている。

 「この奥が、ボスのいるところかな?」

 「ここだけ扉も立派だし、まず間違いなさそうだな」

 「ホーラックスが待っているのかな?」

 「いや、おそらくはちょっと強めのモンスターだと思うよ。あいつが出る程の難易度じゃないからね。あいつが直接出なくちゃいけないLVのダンジョンだと、上級者ダンジョンじゃないかな?」

 「大体どれくらい?」

 「三十から四十LVの冒険者かな? そのLVなら、中級ダンジョンか? まあ、ここの国なら上級になりそうなのだけれどね。まあ、魔王っていってもそれくらいのLVで、何人かでパーティーを組めば倒せると思うよ」

 「まだまだ先だね~」

 「そうだな。お、扉が開いたみたいだ」

 話しているうちに、鍵を開けたのであろう扉がゆっくりと開いて行く。これがゲームならかっこいい音楽でも流れてきそうな場面だな。

 子供用のダンジョンと同じように、王座の間って感じのところで、王座に他より体格のいいリザードマン、おそらくエリートか、リーダー辺りだろうボスが座っていて、それを守るように、六体のリザードマンが待ち構えていた。

 アルタクス達が部屋の中へと入ると、ボスも立ち上がり、リザードマン達に突撃を命令していた。

 実力差はあるけれど、数の差があるので、油断はできない。

 どうするのかなって思って見ていると、アルタクスがブレスのように、強酸を吹き掛けた。

 先頭に立って走っていたリザードマンが慌ててブレーキをかけて止まったところへ、左右の端からそれぞれ一匹の喉元へ狼が噛み付いて引きずり倒している。

 仲間の危機に隣のリザードマンが、それぞれの武器で狼を攻撃すると、狼達は無理をしないで、直ぐに離脱して隙を窺う。

 そんな中、注意がそれていたリザードマンの一体が、アルタクスに顔を覆われて窒息、その両隣のリザードマンが強酸を受けて、地面に転がった。

 ここでもやっぱりスライムだからと、油断したのだろうな。

 慌てたリザードマン達がまた狼に隙を衝かれて倒れた。

 数が減り出したらリザードマンにそれを止める術がなく、まずいと思ったのだろうボスのリザードマンが、前に出て来た。

 それを受けて、アルタクスもボスの前へと、じりじりと迫る。

 その動きはどこにでもいるスライムだけれど、それまでの戦いを見ていたボスにとっては、油断できない相手だった。

 狼達は、アルタクスの邪魔をさせないように、残りのリザードマンを翻弄している。

 そんな中、あまりにもゆっくりとした前進をするスライムに、じれたボスが先に動いた。

 持っていた武器は、ランス。チャージを仕掛けて来たみたいだな。

 そしてアルタクスがブレスのように黒い霧を吐き掛ける。

 強酸だと思ったボスは、一度止まってやり過ごして前進するのだが、黒い霧はそのまま空中を漂っていて、ボスは自ら突撃してしまった。

 ボスの身に着けていた装備品の全てが腐り落ちていく。

 アルタクスが吐き掛けたのは、腐敗の霧だったようだ。そして慌てるボスに向かって、触手が伸びる。

 崩れかけのランスで、その触手を弾こうとしたようだけれど、そのランス諸共触手はボスに突き刺さった。触手は鉄の硬さを持っていた。

 スキル、肉体変化だろうな。

 ボスが信じられないという目で、スライムを見詰めやがて倒れる頃、狼達の戦いも終わる。

 「中々いい戦いだったな」

 「やっぱりスライムって強いね。普通のスライムじゃないからなのかな?」

 「僕は見た事がないからこれが普通だけれどな。宝箱が開いたみたいだよ」

 ボス部屋の後ろにある宝箱を開けたアルタクスが、手を振っていた。スライムと狼なので、戦利品を持ち帰れない為、回収はレイシアが担当している。

 「今行くよ~」

 レイシアが慌てて駆け寄って、箱の中身を回収している。

 箱の中身はお金とLVの低い魔法装備、宝石等々だった。これが人間のパーティーだったのなら、思いっきり歓声を上げたりしていたのだろうな~

 僕達はそんな事を考えながらダンジョンを出て行く。


 外に出た僕達は、ダンジョンの感想を話し合うことにした。

 「やっぱりここの管理は、役場にお願いかな。役場の許可を貰った人がここに潜れるっていうのが一番いいのかもしれない。後は兵隊だけれども、こっちはお偉いさんが許可を出したらいいかもしれないけど、知らないからな~。向こうが接触して来るのを待ってみるかな」

 「そうだね。後は、兵隊さん達は盗賊がいないから、罠とか鍵開けとかできないよ」

 「そこが問題だよな。特別に、兵隊用に魔法の鍵でも作って渡すかな?」

 「何かずるいな・・・・・・」

 「まあ、確かにそうだね。あっちでもそれなりの専門家とか、用意したらいいのだろうけれども、それも向こう次第かな?」

 「兵隊さん達は、相談してって感じだね。一般の冒険者希望者とかは、このダンジョンいけるのかな? おそらくこの国には、盗賊はいなさそうなのだけれども」

 「この国にも、冒険者養成学校が欲しいところだな~」

 「そうね」

 役場と相談して、罠とか鍵の類はやめるって方向も、考えないとかな?

 僕達は、そのまま役場へと移動して、訓練用ダンジョンの打ち合わせをした。

 そこで当面は、魔法の鍵と罠解除の水晶を貸し出して、盗賊系がいないパーティーに対応するという形を取ることになった。

 罠自体は危険性を把握する為に、消さない方がいいという意見が出た為だった。

 兵隊の方は、訓練ダンジョンを公開した後で王子が尋ねて来てそこで話し合いをし、王国近衛騎士隊長がダンジョン入場権利を受け持つこととなった。

 鍵や罠への対応は、必要が出て来るかもしれないので、自分達で一部の兵士に技術を学ばせるらしい。

 そんな感じで、話し合いが終わった。

 王子が関係して来たからなのか、意外と柔軟な対応をしてくれたのが、ビックリだったな。

 おそらく他所の国とかになってくると、もっとごちゃごちゃしてきただろうと思うと、ここは面倒が少なくて僕らにとっては都合がいい国なのだろうと思えたよ。


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