平和はまだ先
フォーレグス王国に帰ってからは、漫画を読みながらのんびりと暮らす。
いや、のんびりしようと考えていたのだが、どうやらまた面倒事が発生したみたいだ。
「バグ様、こちらを」
メリアスがやって来て知らせてくれた情報を、多目的シートで確認する。
ウルクスダルト国の住民達が、今回の魔王討伐騒ぎの黒幕をフォーレグス王国が仕組んだ出来事だと言って、騒いでいるらしい。
こいつらって、神の名を語って散々好き勝手していた奴らじゃないか?
何。また騒ぎを起こしているのか?
上の者の大半いなくなったというのに、また馬鹿な騒ぎを起こすっていう事はもうこの国の国民全て、根こそぎ討伐対象にしろっていう事か?
さすがに暴走していたのは一部の強欲なやつらだけだと考えていたのだが、そういうやつらに洗脳されていた信者は、結局最終的には周りに迷惑をかけるという事なのかな?
サフィーリア神には悪いが、殲滅した方が世の中の為だろうかね。
あーでも、また洗脳されているようならまずはそっちを解除できるか、見てからじゃないと駄目かな。
とりあえずあまり刺激しないよう眷属を侵入させ、洗脳などされているようなら解除して落ち着かせてみよう。
送り込む眷族は調停官をしているイオルドと、魔王軍で医療を担当していたベルスマイアだ。
二人とも人間の見た目なので、潜入しても気付かれる心配はなく、問題があればそれぞれで対処できるだろう。もちろん武力もあるので襲われたとしても、問題はないはずだ。
洗脳状態だった場合、ベルスマイアの回復魔法で解除できるかどうかわからないのだが、イオルドもいるので何とかしてくれると信じる。
確か洗脳を解くには少しずつ違和感を持たせ、矛盾を突いて正気に戻して行くのだったかな?
日常生活を思い出させるって言えばいいのか、まともな生活に戻すまで、結構長い期間が必要になる作業だったはずだ。
まあまずは洗脳の痕跡があるかどうかだろうがね。
『バグ様、よろしいですか?』
ベルスマイアから報告が来たみたいだな。
「ああ大丈夫だ。わかった事を教えてくれ」
『はい。まずは軽度の洗脳はありましたが、今回の騒動は洗脳によるものではありません。いろいろとたまった不満のぶつけどころを探していたところ、たまたま聞いた噂話を鵜呑みにして独自の正義感で行動したものでした』
「噂? 何か変な噂でも流行っているのか?」
『どうやら世界各地で発生したアンデットは、フォーレグス王国が行った儀式のせいだとか。それと魔王討伐に手を貸していたり、難民を助けていたのは黒幕を自分達ではないとアピールしつつ、自国の存在を認めさせる為のマッチポンプだったのでは。そんな噂が流れているようです』
「何だか無理やりな噂だな。大元の噂の出所はわかるか?」
『ウルクスダルト国が流した噂ではないとだけ。ですがこの噂を聞き付け、かつてフォーレグス王国にしてやられたのに、またもかと国民達が騒ぎ立てているようです』
「これ以上噂に惑わされ、周辺の人間にも飛び火したら面倒だな。結界でも張って、隔離しておこう」
『そうですね。それでは帰還させてもらいます』
「ああ、ご苦労だった」
やっと平和になったかと思えば、また直ぐ争い事を始めようとする。
どうしようもないやつらばかりだな。本当に悪人は全部異形に変わった後なのかって、ハウラスに問い詰めたい気分だよ。
結界を張ってウルクスダルト国の国民達が外に出て来ないようにしたのだが、どうやら既に国外に出ていた者達が残っていたようだ。
厄介な事に、その者達は都合が悪くなったら結界に閉じ込めて、隔離して来たと言いふらしたようだ。
それを鵜呑みにした者達が、ウルクスダルト国の周辺にポツポツと現れ、反フォーレグス王国勢力が形成されつつあった。
本当に厄介なやつらだ。
元宗教国家の者であった為か、あちこちに移動して噂を声高々に広め、賛同者を集めている。
彼らに扇動された人間達が、どんどんと増えつつあった。
しかしこれを武力で排除するのはもちろん論外であるのだが、僕の無実を訴えかけようとしても、彼らは一切聞き入れないのだからたちが悪い。
完全に踊らされただけの人間達を、攻撃する訳にもいかないところも厄介なところだった。
もうここまで来たのなら結界があるので、何もせず収まるのを待つしかない。敵意ある者は、こちらの結界を通る事は出来ないのだから。
騒がしくなる国外、それに対し聖サフィアリア国がフォーレグス王国を庇うよう神託を発表するものの、収まる気配がない。いやそれどころか、聖サフィアリア国もグルなのではないかと噂が流れる始末だ。
他の神々も神託を下して、人間達の間違いを正そうとしているものの、どうやら信じてくれる者は少ないらしい。
これってもう、神の信仰自体疑われているのではないだろうか?
何を言っても信じようとしない人々を前に、僕は早々に諦めたぞ。
フォーレグス教の信者達も、どうやらマッチポンプだったのだと言われ、信仰が揺らいでいるようだしな。ああこれは国外の信者達だ。
国内の者は、結界に包まれているおかげで噂など、欠片も伝わっていないので平和に暮らしている。
この地の者達が、外に出たがるような者達でなくてよかったといえるな。
しばらく不穏な日々が続くものの、最終的には結界があるので沈静化するだろうと考えていたのだが、二人の人物が合流する事で事態は急変していった。
少なくともそれぞれの神に仕える信者達がいるので、いずれ先導されて踊らされていると気付くのではないかと考えていたのだが、どうも甘かったようだ。
違うか。
甘いと言うより人間は集まると、ろくでもないという証明なのかもしれないな。
それぞれの神が目を覚ませ、勘違いして愚かな行動をするなと言っているのに、それでもなお突き進むほど馬鹿だったといってもいいのかもしれない。
今こちらに向かってきている者達は、かつてフォーレグス王国にけちを付けて襲い掛かって来た国の民達。それと何故魔王討伐をいろいろと支援して来たにもかかわらず、敵対するのか訳がわからない勇者達。
いろいろと先導して煽っていた噂の元凶の、勇者に憧れていた曽根だった。
どうも曽根は、低級アンデット退治で住民達にちやほやされ、英雄気分を味わっていたらしい。
しかし同時に相手が雑魚で、自分では異形を倒すほどの実力がない事も理解できていたようだ。ならば低級アンデット退治で満足していればよかったのだが、勇者になる夢を諦め切れなかったらしい。
そこに魔王討伐を果たした勇者の噂が、各村や町に知れ渡る。
曽根はそれを聞き、自分の役目を横取りされたのだと考えたようだった。しかも自分の実力不足を、装備品の底上げ不足だと無茶苦茶な解釈をした。
おそらく僕達が異形退治をする者達に装備させた武具を、勇者に与える必須装備だと考え、それがあれば自分でも魔王を倒せたのだと判断したのだろう。勇者には聖剣みたいなものだな。
とにかく腐ってやさぐれた曽根は、今まで感謝してくれていた村や町などに戻り、根も葉もない妄想を実際はこうだったとして触れ回っていたらしい。
どうやらそれがどんどん広まって、国外にいたウルクスダルト国の連中に伝わってしまったようだ。
それを聞いたウルクスダルト国の連中が、更に曲解と誇大妄想をブレンドした噂にして、手当たり次第に周辺の人間に喧伝して回ったのだ。
そしてそれを逆輸入的に聞いた曽根が、勇者パーティを扇動してフォーレグス王国への悪感情を植え付けたらしい。
正直そんな妄想を信じるなよと言いたいのだが、どうやらレビルスは世界中に溢れたアンデットを見て、フォーレグス王国が怪しいのではとぐらついたようだ。
まあ僕の国ではアンデットが軍隊のように行動しているからな。警備兵として街中を取り締まってもいる。
レビルスはそれを見ているので、曽根の言い分もあながち嘘ではないのでは、と考えたようだ。
サフィーリア神からの神託で誤解だと知らされているだろうにと思ったのだが、どうやら僕が生命の神だという事で、裏で悪事をしていてもわからないのだろうと考えていた。いや思い込んだのだろうな。
つまりこじ付けになるのだろうが、細かい事はどうでもよく怪しいのなら潰してしまえって感じなのだろう。
もういっそ、神の神託を信じない信者は破門にしてしまえって言いたい。
信者で噂を信じて行動しているのは、本当に極一部だけらしいけれどね。
いろいろと理不尽過ぎて、納得がいかなかった僕は、レビルスを徹底的に調べてみた。
するとレビルスが誤解した原因らしきものに行き当たった。
神の神託すら無視して僕達を黒幕だと判断した理由は、どうやら魔王討伐の時にハウラスの後ろにいた四天将が切っ掛けだったようだ。
どういう事かと言えば、魔王を倒した後崩れるように死んだ四天将は、あきらかに何者かが意図してあそこに配置していたとしか思えない。
そんなわずかな違和感を持っていたようだ。
そこに曽根が妄想で考えた黒幕説がぴったりとはまり、マッチポンプで自分達を弄んでいるのだという発想に至ったようだ。
本当に曽根は余計な事をしてくれる。
だからと言って今更曽根を排除したところで、都合が悪いから排除したと言われるだけだ。そして放置すれば悪評をばら撒かれる。
もうこれ、どうしょうもない状況だよな。
扇動され集まった人間の数は雪だるま式に増え、もう宗教や敵対心が有る無しに関係なく、波のようにこちらへとやって来ていた。
この状況にはサフィーリア神ももう、お手上げなようだった。
結界を張って閉じこもっていればいずれ、この騒ぎは収まって行くのだろう。
確かに接触できなければ争いも起こらない。しかし、なぜ僕達が隔離されたみたいにならなければ行けないのだろうか?
そう考えると、人間達に付き合うのも馬鹿らしく思えた。
特にレビルスとの二度目の対立が決定した今、なんともやるせない気持ちになる。
レイシアやドラグマイア国のようなまともな人間もいると知っていなければ、地上から人間を消し飛ばしたいと考えていたかもしれないな。
まあ今は今後どうするか、そっちを考えよう。
そう思ったのだが、何と言うかこっちの世界に未練のようなものがまるでない。ならばかねてから考えていた地球があった世界に国ごと移動してしまうのが一番いいのではないだろうか?
そうすれば面倒な人間と関わる事もなくなるのだ。
まあその為に地球と反対側に、惑星を用意していたのだしね。
そうだな、これはちょうどいい機会だったのかもしれない。
早速転移の用意を始めよう。
かつてワレスホルト国を転移させた時のように、魔道具の力を借りる。
神の力を使えば簡単に互いの位置を把握できるのだが、せっかく作った魔道具があるし、こちらの方がより状況を把握しやすくてやりやすい。
あーでもその前に、同盟国も一緒に転移させるかどうかも考えた方がいいかな。
特にワレスホルト国は一緒に転移しない気がする。逆にドラグマイア国は着いて来たいと言いそうだな。
それとフォーレグス王国内にも少数ながら人間が存在している。地球からの転生者は一緒に来るだろうが、それ以外の元々この土地に住んでいた人間達の生き残りだ。
彼らの意思を確認し、一緒にいるに相応しい者は連れて行ってもいいかなとは思う。
残念ながら、何かよからぬ考えを持つものは、この機会に置いて行こう。
出来るだけ人間は排除した方が今後の為になりそうだ。まあドラグマイア国ほど信頼関係があれば、大丈夫のような気がするけれどね。
「父様。地球という世界に行くの?」
「いや、地球がある世界には行くが、僕達が行くのは地球とはまた別の場所だ。太陽を挟んで反対側。僕達だけの惑星だから、邪魔して来る者は誰もいないところだ」
「誰もいないのは寂しい」
「おそらくドラグマイア国の国民は一緒に付いてくるはずだから、今までとそう変わりはないはずだぞ」
「そうなんだ。なら平気ね」
国ごと未知の世界に移動するなど、フォラウからしたら不安で仕方ないのだろうな。
土地も友好種も丸ごと転移してしまうので、ひょっとしたら移動した事さえ気が付かないかもしれないのだが。まあ初めてだとそんなものかもしれない。
そうだ! ゲーム世界である次元の隙間も一緒に転移しないと駄目じゃないか。下手すれば、ゲームで遊んでいる連中が閉じ込められる可能性があるかもしれない。それはまずいな。
ゲームをメンテ中にしたらいいだけなのだが、廃人のようにのめり込んでいるやつが、大人しく従う気がしない。
まあ何とかなるだろう。
後は神としての仕事関係か?
死と再生。魂の管理は僕に権限があるままだ。これは世界を跨いでもそのままだろう。
実際に世界を移動していても、互いの世界に干渉できる事は確認している。後今でも地球にいる信者達の声が聞こえていたりするので、間違いはないな。
それにホーラックスが持っている魔王システムの管理権限もそうだな。
みんなで別世界に移動したとしても、仕事だけは継続しなければいけない。それを考えると面倒だよな。
だがそれも必要最低限でいいだろう。
向こうに行ってから、最低限の仕事は眷属達にやらせよう。とはいっても、輪廻の状況は自動の設定があるので、ほぼ上がって来る情報を見るだけの仕事だ。
眷属達に適当に見ておいて貰えば問題なく終わるだろう。僕がわざわざ見るまでもない。
逆にいえば多少問題があって、それを見逃してしまっても僕達には影響がない。困るのはこの世界の人だろうが、それでも構わないだろう。
ああ、他の世界に転生とか逆に他の世界から入り込むのだけは防いでおくかな。
それ以外はもうそこまで管理する必要もないよな。
そんな投げやりな事を考えながら、転移準備を進めた。
同盟国であるドラグマイア国は予想通り、一緒に付いて来るらしいのだが一部の者達は残りたいそうだ。これは未知の世界に行くのが怖いとかそういう類かな。
後こちらの世界に未練というか、愛着があるからっていうのも理由なのだろう。まあそれならそれで置いて行くだけだがな。
多分後々後悔するかもしれない。なんといっても文明レベルが段違いなのだ。
酷く原始的な生活になった気がすることだろう。
そしてワレスホルト国はそもそも付いて来る気はないらしい。こっちはある意味予想通りかな。
ドラグマイア国で一部残る者は、ここか難民を集めた国に置いて行く事にする。
土地ごと移動しちゃうからね。
「もう忘れている事はないか?」
「我が主よ。何も問題はない」
「そうか、では転移を開始するぞ」
転移といっても気付く者は誰もいないだろうが、一応周りに知らせておく。
そして転移するに当たって何かしら不都合がでても困るので、眷族達にも聞いてみたのだが、特に問題はないようだった。
ぶっちゃけると、次元の隙間ほど重要なものを忘れていなければ、特に問題はないだろう。
あれは下手をすると、魂が引き裂かれるとか置いてけぼりになるとか、とにかく死人が出るからな。最悪じゃなければ次元を超えても普通に遊んでいられる可能性もある。
それを試してみる気にはならないので、そういう危険がないよう気を付けたい。
まあ魂の情報に、今日これから転移の事故で死ぬ魂っていう情報がないので、問題は起こらないはずだ。
だとすれば、問題があったとしても死人がでる程ではないのだろう。
ワレスホルト国の事を考えれば、何不自由なく成功して何かしたのか? って言われるのだろうな。
そして実際転移してみたけれど、特に問題は起こらなかったようだ。
しいて違いがわかるとしたら、国の結界近くの者達が、周囲を確認して気付くくらいかな?
「転移終了だ」
「え? 父様。もう転移したの?」
ほらやっぱり。
大半の者には転移した事にさえ気が付かなかったようだ。
ここはもう別の世界だと理解させる為、何かしら考えた方がいいかもしれないな。
「ああ、無事に転移する事に成功したぞ。ちょっとわかりにくかったかもしれないがな。それを理解してもらう為に、今からちょっとした映像を出そう」
レイシア達は転移したのだろうって感じの表情だったが、フォラウは半信半疑だったので、やはりぱっと見でわかるよう映像を見せる事にした。
神の目で新たな惑星の転移させた地点を、上空から見た風景を確認。それを頭上の空に投影してみた。
これで国民達全員が転移したという事を理解できると思う。
丸い地表の一部にだけ、人工物が立ち並ぶ場所が映し出されている。うーんこれだけだとわかりにくいか?
映像を拡大していき、そこで暮らしている者達が小さく確認できるよう映し、結界があった境界に沿って映像を動かしていったりしてみた。
ゲームや映画のプロモーションビデオみたいな映像になったな。
後ここが完全に人の住んでいない惑星だと理解させる為、惑星各地を映して回ってみる。
テラフォーミングしてあったので、動植物などがいろいろと映し出せた。
自然溢れる世界にポツリと、近代都市が出て来たみたいなシュールな映像になってしまったな。これじゃあ国ごと異世界転移した物語みたいじゃないか。
いや、内容はあっているけれどね。
周辺の厄介な国がなくなった為、フォーレグス王国と同盟国のドラグマイア国を囲っていた結界は解除してある。
そして国外を見渡せるようになった国民達は、新たに広がった人の手の入っていない土地を目にしていた。
おそらくこれから少しずつ周辺へと踏み出す者が現れるのだろう。
というか既に冒険好きな者が仲間を集めて、外に行こうと話し合っているようだな。
大抵そういう者はゲームで遊んでいたやつらだ。チャレンジャーというか冒険好きなやつらが多い。
まあ今なら例えゴブリンでも、そこまで危険もなく踏み出せるのではないだろうか?
あー、いやそうでもなさそうだな。野生の動物でも、群れれば危険なやつもいるようだし。まさに冒険ってやつだろう。怪我しないようがんばって欲しい。
「父様。私も行っていい?」
「まあいいだろう。でも一人っきりはさすがに危険だから、誰かは連れて行くようにな」
「うん!」
フォラウも未知の探検をしに行きたいようだな。
さすがにフォラウを傷付けそうな存在は確認できていないが、念の為に一人での行動は注意しておく。
まあ護衛してくれそうな者は一杯いるので、誰かとパーティを組んで冒険しに行くだろう。
「じゃあ、私が付いて行くわ!」
「わらわも行くわ!」
と思ったら、レイシアとビゼルが一緒に行ってくれるみたいだな。
他にもゴッドホムンクルスのテッシーやスライムのアルタクスが一緒に行ってくれるようだ。それなら任せておこう。
「ただいまー」
と思ったら帰って来た。
「飽きたのか?」
「うん」
素直なのはいいことだが、飽きるの早いな!
まあわからなくはない。特に自然以外何もない大地が続いているか、海があるだけだからな。
せいぜい動物がいるくらいか?
とにかくフォラウが楽しめるようなものは、特に何もない。
遺跡みたいなものでも用意しておくべきだったかもしれないな。あるいは敵対勢力。
でも敵対勢力はやがて、戦争の引き金になったりするかもしれないからな。
友好種と魔族の対立みたいな。いやそれはどっちもモンスター同士で訳がわからないかな? 友好種とエイリアンの対立。どちらにしてもあまり物騒な事はしたくないな。
フォラウの遊び場はドラグマイア国が作ってくれるゲームに期待して、国外にある自然満載の大地は国民達の好きなようにさせよう。おそらくは町を広げて行く事になるだろう。
だが地球のように完全な自然破壊までは行かないと予測している。
確かに都市化が進む事によって、自然が破壊されるだろうが、友好種の中にも自然が必要な種族も存在している。
そんな彼らがいる限り、全てをコンクリートやアスファルトで覆うような事にはならないと考えている。アスファルトなんてないけれどね。
適度に自然を残しつつ、町が広がって行くと予想してみた。
いやなるべく広く自然が残るよう、時たま誘導しておこうかな。
完全に任せっきりにすると、せっかくの自然満載な惑星の意味がない。何事も程々がいいからな。
しばらく家族でのんびりしつつ、転移後の細かい調整をして過ごしていると、前の世界から祈りが届いた。
地下水脈をいろいろと効率よく繋いだり移動させたりという調整だったのだが、どうも難民の子供の中で僕達が消えた事に動揺している者がいるようだ。
ちなみに彼らは一緒に転移するかどうか、確認しなかった。
ワレスホルト国ほど付き合いが長くない彼らからしたら、未知の世界に一緒に行く者などいないと勝手に判断させてもらったからだ。
そこそこ付き合いのあるワレスホルト国でも、断って来たからね。
別の世界に行くという情報も、あまり拡散しない方がいいだろう。
異世界召喚とかされては、たまったものではないからな。
まあそれはいいのだが、どうやら自分達だけで生活していたらしいのだが、他所から難民が押し寄せまた助けてもらおうとしたら国そのものが消えていてびっくりって状況らしいな。
そして僕達に直接訓練を受けていた子供達が慌てて、フォーレグス教で祈りを捧げていたらしい。いやこの場合どうしたらいいのかっていう相談になるのかな?
そうだな。好きにするといいと信託でも下しておこうかな。いや止めておこう。下手に答えちゃうと、今後もいろいろと相談されかねない。
今まで手助けはしたが、彼らは信者ではないしね。サフィーリア神の依頼で育てていただけの関係だ。
ならば今後はサフィーリア神に助けてもらえばいい。
しかし本当の意味で僕に対し信仰心を持つ者がいるのならば、こちらの世界に受け入れてもいいのかもしれないな。
都合のいい時だけとか、表面上の信者などはどうでもいいが、本気で信仰心を持っている者なら受け入れても問題ないかもしれない。
逆にこちらにいる者でも、不適切だと判断した者は向こうの世界に追放するか?
それも有りかもしれないな。
元は向こうの世界の者だったのだし、引き取ってもらうというのもいいだろう。
では元フォーレグス王国跡に基点となる場所を作り、本気で信仰している者がその地を訪れたらこっちに転送する事にしよう。
基点は・・・・・・世界樹(大根)でいいか。今の僕の姿だしね。




