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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
終章  神が暮らす星
238/240

復興の裏側。その頃のフォーレグス王国

 魔王討伐が終わり一年過ぎようとしていた。

 その間勇者パーティの凱旋が終わり盛大に祝福された後、彼らは神託に導かれ世界各地で暴れる上級アンデットの討伐を請け負い、各地を回っていた。

 その為かつて仲間であったアタッカーのアラギが生きている事を、彼らはまだ知らない。

 そして難民の子供達は訓練を終え、無事冒険者として独自に世界を旅している。まあ元ブロアド国が彼らにとっての第二の故郷になっているようで、たまに帰って来ているようだけれどね。

 大人の難民達はかつての故郷に帰る事無く、その場に居ついたみたいでチョビの指導の下、幾つかの町を造っていた。

 まあこちらがいろいろと指導していたが、位置付けは他国なので町長などの選出は彼らに任せている。

 こちらは技術提供みたいな事をしたものの、ある程度自分達だけで生活できるようになった後は、手出しをしていない。

 いずれ自分達で国を造って統治して行くだろう。


 僕達はどうしたかといえば、アンデットを全て鍛え終わり、その後はのんびりとした生活を送っている。

 フォラウにいろいろ技術的な事を教えつつ、育てたアンデット達にも臨機応変に対応できるよう、さまざまな戦い方を教え込んでいた。

 まあこれ以上戦力を鍛えて何と戦うのだって感じなのだが、いざという時に役に立たないよりはいいだろう。

 暇をしている元魔王軍の生き残りとの模擬戦などもして、交流させたりもする。

 それによってさまざまな戦闘技術を磨いていた。


 戦いばかりしていた訳ではない。そんな殺伐とした生活は嫌なので、月に一回はやっている祭りに家族で参加したりもした。

 こっちはフォラウが運営側をやりたいと言ったら露店など開いてみたり、当然客側としても参加してみたりした。

 おかげでフォーレグス王国については、いろいろと見て回れたと思う。

 飛空艇に乗って国内を巡ったりもしたしな。家族サービスはばっちりだろう。

 レビルスのような反抗期もなく、家族仲良く暮らせている。あれってやっぱり個人的な性格が問題だったのかね?

 フォラウが僕の事を嫌ったりして来ないので、日々楽しく平和に暮らしていられるよ。


 しかし国内とは違い、外はまだまだ大変そうだ。

 神が頻繁に神託を下し人々を導いているようだが、食べる物もろくに無いような生活をしている者も多いらしい。

 そこでサフィーリア神からも、今回の魔王によって人間は数を減らし過ぎた。これ以上減るのは忍びないから、出来る限り手助けして欲しいと、協力を要請された。

 とはいえ、こちらとしてもただ食料を配り歩きたくはない。

 自分達で畑も耕さず、座っているだけで神が助けてくれるなんて考えられては困るしな。僕は便利屋ではないのだ。

 なので難民達が造った町で、許容できそうな数だけ引き取る事にした。

 彼らにも生活がある。なのでそれを圧迫しない数だけは助けようと思う。

 これでサフィーリア神のいう可能な限りの手助けにはなるだろう。

 僕としては、人間はもう少し減ってもいいかと考えているからな。群れると増長するのが人間の本質だ。

 ならば協力しなければ生きて行けないくらいの数で、ちょうどいいのかもしれない。そこまでいけば、馬鹿な考えも抱かないだろう。

 馬鹿な事をしたら自分が死ぬなら、おそらくはやらないからだ。

 いや、よほどの馬鹿なら気にせずやるのか? やらかしそうで怖いな。


 「バグ様、子供達が周辺国より難民を連れて帰って来たようですが、いかがいたしますか?」

 久しぶりに家族サービスでもと考え料理を作っていると、メリアスがそんな報告をして来た。

 子供達っていうと難民の子供達だよな。そして周辺から連れて来た難民って、食糧事情などから彼らの造った町にはもう、そこまで余裕はなかったと思うのだが?

 子供らしい正義感やら同情などで、つい連れて来てしまったのだろうか?

 「難民は、どれくらいの人数なのだ?」

 「それが、二千人はいるかと」

 「予想以上に多いな。その子供達はその人数を養えるとでも思って、連れて来たのか?」

 もしどれだけ多くても自分達ががんばればなんとでもなると考えているのなら、援助もしないで見捨てる選択もしないといけないかもしれないな。

 何事にも限度というものがあるし、綺麗事だけでは生きて行けないのだ。

 彼らにもそれを学ばせなければいけないだろう。

 そうでないと、これから先も厄介事を招き入れそうで怖い。


 「どうやら私達に相談すれば、何とかしてもらえると思っていたようです」

 特に何か考えがあった訳でもなく、初めから他人任せか。

 やはり理解させねばいけないようだな。

 「今回はギリギリ死なない程度には援助してやろう。こんな事が続くようなら援助は出来ないと言っておけ」

 「かしこまりました」

 メリアスを見送り、料理の続きをする。

 まあ隣に飢えた者がいると知って、料理を美味しく食べられる気はしないのだが、こればかりは仕方ないかな。

 レイシア達がこの事を知って、微妙な空気にならないよう注意しよう。


 子供達の行動は想定外だったが、それ以外は概ね予想通り進んでいる。

 周辺国がフォーレグス王国に対し、あまりいい感情を持っていない事も想定の範囲内だった。まあこれは単なる逆恨みだけれどね。

 何故他国の、更に普段は嫌悪さえして来た人間を助けねばならないのか。そして助けなければ逆恨みして怒るとか、もう訳がわからない。

 何か間接的にでも迷惑をかけて来るようなら、排除しようってちょっと考えたぞ。

 ハウラスが生きていたなら、あいつらは異形に変わってもおかしくはないのだろうな。

 睨むだけでは変化しないか?

 まあいずれ何らかの形で牙を剥きそうではあるが、今は放置だ。

 ただでさえ人間の総数が減っているので、サフィーリア神辺りの心象が悪くなるからな。何かしら被害が出るようなら、さすがにサフィーリア神も文句は言えまい。

 それまでは国内を覗けなくするだけで十分だろう。


 「あれ? そういえば曽根とかいうお調子者の男がいないな。どこに行った?」

 「その男なら、冒険者になると言ってどこかに行きましたよ」

 あまり周りの事は気にしないと思っていたビフィーヌが、思わず呟いた疑問に答えてくれた。

 そういえば強い訳ではないが、レベルだけはそれなりに上がっていたみたいだったよな。今だと敵は低級アンデットばかりなので、あの男でも問題なく倒せるか。

 そう考えると、今ならあの男の冒険者気分を満足させられるのだろうな。

 中級のアンデットくらいまでなら、死んだりはしないだろう。

 それで住民などから感謝されるのだから、勇者気分を味わえる。それなら放置で構わないか。

 あまり関わりたくない性格だったので、そう思う事にした。


 ついでに佐渡さんの様子も見ておこうかな。元日本人仲間だしね。

 するとダンジョンでも造っていたり、ダンジョンに篭っていたりするのかと思っていたのだが、普通にフォーレグス王国内で暮らしているようだった。

 しかも結構自由に暮らしている。

 携帯などはないのだが、それ以外は日本的な文明生活を送っているようだった。

 しかし家に漫画なんてあったのか?

 音楽を聴きながら本を見て、時折お茶やデザートを食べている。本の中身は少女漫画のようだった。

 あ、これ。ドラグマイア国出版になっている。

 あそこはいろいろな文化で溢れているからな。音楽や小説なども積極的に出されている。

 男物の漫画などもあるのだろうか?

 どうやら女性用の漫画や小説が多いようだが、ちゃんと男性用の漫画も出ているようだ。今度買ってこよう。

 もうドラグマイア国は同盟国というより、外付けのフォーレグス王国だな。そんな気がする。


 ちなみに同じ同盟国扱いのワレスホルト国の方はといえば、まあ典型的な同盟国だ。

 何かあれば手助けしたりもするのだが、殆どはただの取引相手といっていいだろう。

 向こうからしたらあまり友好種とは深く関わり合いになりたくないようだし、こちらとしても助けに行く事はあっても助けられる事などはない。ただの隣国といっていい国だった。

 せめて友好種と仲良ければそれなりの付き合いも出来たのだがな。

 やはり大半の人間は、モンスターと仲良く出来ないのだろう。

 そう考えるとドラグマイア国はかなり変わっているといえるな。

 女性上位な国柄もそうなのだが、モンスター達も平然と受け入れてもらえている。まあ長年に渡って治安維持や国同士の揉め事など、軍事関係はこちらから兵を出しているので、属国と言い換えてもいいくらいだろう。

 その代わりさまざまな文化を発展させ、娯楽を提供してくれている。そっち方面は友好種では苦手な分野なので、完全にお任せ状態だ。

 軍が必要ない分の国家予算が、娯楽関係に回されているところもドラグマイア国の特徴だろう。

 街中にはセイレーン以外の友好種も、沢山観光で訪れていたりする。

 国ぐるみのいい関係が維持されていた。

 あー、フォラウが見て来たのは国内ばかりだったので、ドラグマイアに観光しに行ってもいいな。

 家族旅行にちょうどいいところだろう。


 国内は相変わらず平和で僕が特に何かすることもない。なので気楽に家族旅行に出かけられそうだ。

 では早速ドラグマイア国へと旅行に行こう!

 特に日程なども決めず気になったところを回りつつ、フォラウの好きなように観光してみる。

 セイレーン達の生コンサートなどにも行ってみたが、これにはフォラウも感動したようで凄く喜んでいた。

 料理なども元は日本の料理だったものが、独自素材や更なる研鑽を積んで、かなり美味しい料理になっていて満足のいく出来だった。

 モンスターと違ってさすが人間。いろいろと発展していくものだな。

 フォーレグス王国では、特に僕が広めなければそのままの生活がずっと続くのだがな。

 そういう意味でもドラグマイア国とは今後も良い関係でいたいと思ったよ。


 《神格 が一つ上がりました》

 何もしていないのに神格が上がったな。これは地球で信仰が稼げたようだ。

 黒幕の悪霊群の討伐が終わったので、特に時間の流れを止めたりしていなかったので、普通に向こうで時間が流れた分がこちらにも影響している。

 おかげで神格が上がる事もあるようだな。

 まあこうしている間も、向こうで神が必要とされるのならば、それなりの対処はしているけれどね。積極的に信仰集めをしていないだけだ。

 「バグ様。フラウミン様が面会を求めています」

 一瞬誰だと思ったが、ドラグマイア国の今の女王がそんな名前だったな。

 観光に来て何日か過ぎているので、今更挨拶ではないのだろう。厄介事でも起きたのかな?

 「連れて来てくれ」

 来客を教えてくれたビフィーヌにそう伝える。

 「はい」

 いつも一緒にいるが、なんかこのやり取りだと秘書みたいな立ち位置だな。


 「御寛ぎの所申し訳ありません。失礼しますバグ様」

 「のんびりしていただけなので構わんよ。久しぶりです、フラウミン様」

 まずは挨拶を交わし、用件を聞く。

 「それで、挨拶に寄った訳ではないようだが、何か厄介事でも?」

 「厄介事ではないですが、取引になるでしょうか? 出来れば利権の一つをいただきたく窺わせていただきました」

 「ふむ。詳しく聞いても?」

 「ええ。フォーレグス王国では体感型のゲームをしていますよね?」

 「あるな。ひょっとしてこちらの国でゲームを開発したいとか?」

 「はい。前々から気になってはいたのですが、もうずっと変わり映えのしないゲームを永延とやっていますよね? こちらでも参加者はいるのですが、もしこのまま続けるのならば別のゲームを出して欲しいと要望がありまして。それならば、私達の方でゲーム自体を作って運営したいという者が多かったのです。どうですか?」

 ふむ。確かにおっさん達にまかせっきりになって、殆どレベル上げゲームになっていた。

 追加といえば更に強い敵を出すとか、マップを広げるくらいだったかな?

 友好種にとってはそれだけで大満足なのだが、人間にはつまらないと思われていたのだろう。まあ僕もあまり遊んでいなかったしね。

 それならドラグマイア国側に任せ、いろいろなゲームを作ってもらうのもいいかもしれない。

 おっさんも次元の隙間から解放され、今は管理者もいない状態だ。

 それでも遊んでいる者が多いので、維持だけはしている。いやあれは必要なものなのだ。

 モンスターがほとんどいなくなり、友好種達のストレス発散に役立っているのだ。闘争本能とか持っている者は、ゲームで敵を倒して満足感を得ている。

 ゲームが無くなると、現実で暴れる者が増える可能性が出て来るので、それは避けたいところだ。


 「それでは試しに運営させてみようか」

 「はい! 新しい職種が増えるのは、歓迎しますよ」

 あー、仕事の種類が増えるっていう点もあるのか。友好種にとっても、何か参加できる事があるかもしれないな。

 それも含め、任せてみよう。

 問題は世界構築かな?

 ゲームとはいっているのだが、あそこは別の世界といっていい。

 そんな場所でさまざまな物体を作り出すのは、ある意味神の行いだろう。

 普通の者では構築できないだろうな。

 パソコンのような物を作って、渡さないと駄目かな。


 「ゲームの舞台をいじる為の装置を用意するので、それまでそちらでも必要な人材集めなどよろしく頼む」

 「わかりました。では今日のところはこれで失礼しますね。また詳細が決まりましたら、連絡いたします」

 「了解。こちらも必要な装置が出来た段階で、連絡を入れる」

 「お待ちしております」

 という事になったので、昼間はフォラウと観光はそのまま付き合い、眠った後に装置を作る事にした。

 そういえば人間のように夜寝ているが、ビゼルは眠らなくても平気なのに、フォラウはいつも夜に寝ているな。まだまだ子供だからか?

 両親共に睡眠が不用なので、フォラウも必要ない種のように思えるのだが。まあいいか。

 レイシアも寝ているし、夜は自由時間として活用できるので、どちらかといえば都合がいい。

 それよりも、ゲーム製作用の装置を作ろう。


 初めはパソコンに近い形を考えていたのだが、こちらの世界の人間に使いこなせるのか疑問に思った。かくいう僕自身、ゲームを作るほどのプログラミングなど知らないのだ。

 であれば素人にもわかりやすいツールを作る必要が出て来るだろう。

 そうなると自分達がやったように、ある程度イメージを思い浮かべつつ、作製していく方がいいだろうな。

 だとしたら魔法を使う時と似ているかもしれない。

 こちらの世界の人達にはそこまで馴染みはないかもしれないが、イメージでいろいろな形や性質を思い浮かべ、仮のデータを作り出して修正を加えていくって感じでどうだろうか。

 一発でずばりそのものを作り出すのは、さすがに誰にとっても難し過ぎるだろうしね。

 という訳でプレイヤーがゲームに入る為の筐体にゲームマスター用の魔道具、水晶球を設置して創作活動が可能にしてみた。

 これによりプレイヤーとゲームマスターを切り替えてゲームに参加もできるようになるだろう。

 後は微調整かな。

 いや、大本の別ゲームを作るフィールドを創り出す必要があった。それがないとどんなゲームを作っても、始めに僕達が創った世界に行かなければいけない。

 完全な別ゲームにしたいので、新しい世界観のベースが必要だろう。


 ゲームとはいえ、次元の隙間に無限に世界を創れる訳ではない。なのでまずはベース世界を創れるゲームマスター筐体を限定させてもらう。

 ゲーム会社に一つとかでいいかな。

 後はそれぞれのフィールドに転送された後、基本となる世界観を作っていく感じになる。

 転送されたばかりの時には、製作者は現実と同じ体で真っ白い世界に出て来ることになる。そこから自分達で考えた陸地や海などを創造して行くのだ。まあ厳密にはデータだけれど。

 場合によってはコンクリートに覆われた世界になることもあるかもしれないな。近未来とか。さすがにそこまでとっぴな想像はできないかな?

 とにかく製作者のイメージ次第で、いろいろな舞台が用意できるようになる。

 こんな感じでいいかな?


 いやこれだけだと、何かしら事件が起きた時に困る。

 あまり考えたくはないが、悪事にゲームを利用しようと考える者が出て来ないとも限らない。

 今まではおっさんや紗枝が見ていてくれたし、友好種がいる場所で事件を起こそうなどと考える者はいなかった。しかし完全にドラグマイア国だけに製作を委ねるとなると、人間なのでそういうやらかしてしまうような者が出て来ないともいいきれない。まさにゲームの中だけでいえば、神に等しい力が振るえるからな。

 ここは最低限、取り締まり機構を作っておくべきだろうな。

 ゲームマスター用の魔道具の複製は元々不可能なので、どこぞのアニメみたいにゲーム内に閉じ込めようみたいな試みは、まず考えなくていい。

 考えられるのはゲーム内のどこかに、帰還禁止区域を作って監禁するなどの不正だろうな。後部屋に入ると麻痺とか時間停止、スキルなどの使用禁止みたいな監禁方法もあるか。

 その手の方法で犯罪に手を出す者も出て来そうなので、あらかじめ世界全てを監視する者が必要になって来るだろう。

 紗枝は、地球で手一杯かな?

 世界各地を監視する諜報用マジカルドールは、今は手が空いているのだが、いずれ人間で溢れてくれば足りなくなる。

 そうなるとやはり新しく創る方がいいかな?

 今後を見越して用意だけはしておこうかな。電子の世界なので、必要な眷族もちょっと特殊だからな。


 とはいえ、紗枝という前例があるので管理するのは楽だろう。

 コンピュータのように検索やデータの保存。おおよそ日本で知っていたパソコンの機能は使えると思う。

 そして情報を統括できるのならば、人工知能を作れば配下も好きなだけ増やせるはずだ。管理AIだな。

 そう考えると、必要な人員は一人でいい。

 「創造!」

 早速ゲームの世界へ赴き、眷属を創り出す。

 電子の存在。以前のおっさんのように次元の隙間に漂う眷属。なので姿形はなく、概念的な存在になったようだ。

 ある意味この世界のどこにでもいて、どこにもいないまさに神のような存在だろう。まあ電子の世界では何でも出来るGMは、まさに神だけれどね。

 名前はフラヤルド。しばらくは特にやる事もないので、自分の分身ともいえるアバターでも作っていてもらおうかな。それと監視システムか。配下の管理AIを用意しておいてもらおう。

 「フラヤルド。今後ここにいろいろなゲーム世界が出来ると思う。そこの治安管理を任せる。だが今しばらく猶予がある。それまでに自分の体となるアバターを作り、監視システムの構築と必要なら部下となる人工知能を作っていてくれ」

 「了解です」

 これで大体必要なことは終わったかな。


 翌日。後々の取締りなども考えて、王族にゲームマスターの魔道具設置の権限を譲渡するよう、女王に話をつける。

 「王族だけの制限は、問題あるかな?」

 「そうですね。こちらで業務委託した者が判断するとか、出来ますか?」

 よくよく考えれば、いちいち王族が出張っていては、身分的に問題があるかな。

 相手としても、会社の仕事にいちいち王族を呼ぶとか、謁見に窺うとか手間でしかない。そう考えると、委託先にお任せというのが一番いいのだろうな。

 ゲームマスター用魔道具の設置や起動など、委託者を判断して作動するよう微調整して納品する。

 王族には大元となる杖を渡し、委託者はその杖から魔力を流された指輪を装備し、王族の代行として仕事するようにしてみた。

 元の指輪自体は魔力の付与されていない、安物の指輪でも構わない。むしろ余計な魔力が付与されていない物がいい。

 「後は魔力を流して起動するだけで準備完了だ。委託者が不正など行ったとわかれば、杖から魔力を遮断するようにすれば、委託を解除できる」

 「なるほど。助かります」

 「一応眷族にゲーム世界を監視させるが、そちらでも法律を作るなりして取り締まりはして欲しい」

 「それはもちろんです。いろいろお手間を取らせて申し訳ない。それでは早速運営の者を選出して、ゲーム作りを始めますわ」

 これでしばらくすれば、ゲームが出来上がるか。いや、一からゲームを作るとか結構時間がかかるはず。何年か待たないといけないだろうな。気長に待つことにしよう。


 出来ればフォラウにも楽しんで欲しいので、早急にゲームを仕上げて欲しいところだけれど、プロジェクトが発足したばかりでゲームの製作ツール自体まだ渡したばかりだ。

 ツールに慣れるだけでも最低一ヶ月はかかると見ていいだろうな。

 その後ゲームの企画を立て、実際にゲームを作り始めてとなると、余裕で一年以上はかかると思う。これから会社を発足させる段階だしね。

 やっぱり直ぐ遊ぶ事は出来ないか。逆にこの状態ですぐ遊べるゲームだと、駄作になりそうでそれはそれで嫌だな。

 初めて遊ぶゲームが駄作とか、さすがに可哀想だ。

 それならホーラックスにダンジョンを造ってもらって、暇潰しをしている間にゲームを完成させてもらった方が、いいだろう。後今回みたいな観光もいいな。

 そうだ、この世界の別の国ということで、比較対象にワレスホルト国にも観光に行ってみよう。

 あまり面白いものはないと思うが、フォーレグス王国とドラグマイア国だけだと、国の基準がずれそうで怖い。逆にワレスホルト国をこの世界の一般的な国として、基準と見てもらえればいいだろう。

 まあこれも社会勉強みたいなものだ。


 その後一週間ほどのんびりと観光し、予定通りワレスホルト国に観光に行った時のフォラウの台詞はこれだ。

 「ねえ父様。早く帰りましょう」

 「ああ」

 うん。即効で興味を失っていたな。

 到着までのワクワクした目が、死んだ魚のような目に変わった瞬間を見たぞ。

 フォーレグス王国が一昔前の日本だとすれば、今のワレスホルト国は中世ヨーロッパを地で行く文明力の低さだ。それじゃあフォラウが楽しめる要素など、何もないだろう。歴史を感じるくらいか?

 闘技場とかあればまだマシな方だが、ワレスホルト国にはそれもない。

 見所が何もないのだ。ちなみに料理も素材はいいだけで、そこまで発展してはいなかった。

 素材は同盟国なので、こちらから種を輸入して育てた分だけ、良質な野菜になっているからな。

 それ以外はあまりこちらと深く関わっていないのだ。文化もどんどん差が出て来て、更に意固地になって自分達だけで国を良くするとか言い出す者が多い。

 面倒なので深く係わり合いにはならないようにしていたら、気付いた時にはこうなっていた。

 最低限式典とか、そういうのだけ参加していたよな。まあ、それだけの関係ともいえる。



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