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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
終章  神が暮らす星
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神が暮らす星

  終章  神が暮らす星


 改めてレビルスの強さを見てみると、現時点でも魔王とそこそこいい勝負が出来そうなほど、強くなっている事がわかった。勝率は四割といったところか?

 魔王を相手取っての数値なら、結構高い方だと思う。なんといっても人間の範疇での強さだからな。

 ただの人間が人間を止めた魔王に挑み、四割の勝率があるというだけでも驚異的な強さだ。まあ仲間と装備を足している数字だけれども。

 しかしこれ以上を求めるのならば、やはり人間を止めるしかあるまい。

 いや限界までもう少しって所なので、もう少し強くはなれるのだが、これから鍛えたところで勝率はそれほど変わったりしないって感じだ。

 レベルでの強さは打ち止めといっていいが、そこは技術で多少補えるか。

 それとパーティーメンバーのレベル上げだろうな。

 レビルスを鍛えるには、技術を身に付けたり戦略を練ったりするくらいしかない。パーティーメンバーとの連携も含まれるな。

 まあ仲間とがんばって、もっと力量を上げようってところだろう。


 そうすると今のままダンジョンに挑んでいても、あまり効果はないと考えてよさそうだな。

 技術や連携、どちらかといえば頭脳戦を意識した戦い方を学べるように、ダンジョンを作り変えた方がいいだろう。

 「ホーラックス。ダンジョンを改装してくれないか。レビルス達のパーティーが連携したり、もっと頭を使った戦い方を学べるように」

 「我が主よ。任せよ」

 「そういうのって、学校とかで座学をして学ぶんじゃないの?」

 確かにレイシアの言うように、学校で基礎を学ぶのが普通だろうな。その点でいけば、難民の子供達の方がその辺りのことを理解しているかもしれない。

 多少でもフォーレグス王国の教育を受けていたはずだ、レビルスよりは頭を使って動けるのではないだろうか?

 「まあそうかもしれないが、今更レビルスが学校に来て学ぶとも思えないからな。後は実践の中で工夫しながら覚えていってもらうしかないだろう」

 一人だけではどうにも出来ないって事があるとだけでも、学んでくれれば勝率も上がるだろう。


 今現在潜っているダンジョンの階層以外を、ホーラックスが人知れず改装して行くのがわかる。これは一度戻ったりする時に困るかもしれないな。攻略済みの階層が、変化しているのだから。

 まあ帰りは疲れているだろうが、がんばってくれ。

 「父様。今ダンジョンの様子を見ているのよね? 自分だけ見てないで、私にも見せて」

 「うんうん、そうだよね。フォラウ」

 「そうだな。みんなで相談していたのだったな。ちょっと待っていろ」

 フォラウとレイシアに指摘されたので、みんなにも見られるようにしよう。とはいっても僕は神の目のスキルを使って見ているのだが、念話みたいなやつの応用でいけるかな?

 いやみんなで顔を合わせているので、ウィンドみたいなものを使ってみんなで見たいな。

 となると、今僕が見ている映像を多目的シートに映し出せばいいか。これだとテーブルの上に広げているので、端の方が見えにくいか。立体映像のように空中に投影したいところだな。

 イメージが固まったおかげか、何となく神の力を使えばそんな映像も表示できるとわかる。これならみんながテーブルに着きながら、レビルス達の活躍を鑑賞する事が出来るな。

 どこか箱庭系のゲームのようだ。

 ダンジョンだと、細かいところや壁の向こう側の状況なども見られるので、余計にわかりやすくていいな。


 「見た感じ、難民の子供達は連携して戦うのが基本になっているが、レビルスは単独で処理する事の方が多いな」

 「そうみたいね。多分勇者って事で、自分ががんばらなきゃって思い込んでいるのよ」

 「確かにそういう傾向がありそうだな。自分が支えている間に周囲を排除してもらうか、その場を任せて一番きつそうなところに単身で向かって行っている。雑魚は周囲に任せているな」

 「多分突出して強いから余計なのね」

 「でもこの戦い方が通用するのは、自分達が勝てる相手だけよね。父様」

 役割分担と見れば、何も問題はない。

 ただ敵がどれもこれも強い相手だった場合、レビルスは体が一つしかないので敵を引き付けたりできなくなる。

 全員で強くならなければいけないだろうな。

 「これってどうすればいいのかな? どっち道、連携するならこの形になっちゃうんじゃない?」

 「まあそうだよな。鍛えるならレビルス以外の子供達を鍛えて、レベルを上げる方法かな?」

 「みんなが勇者並みに強くなればいいって事?」

 「極論を言えばそうなるな。現状だとレビルスだけが経験値を稼ぎ過ぎている。確かに一番きついところに立っているのだから、経験が美味しいのは仕方ない。だが偏り過ぎれば周囲との連携も難しくなるぞ」

 「そうね。じゃあ個別に鍛える?」

 「レビルスと他に分断して鍛えた方が、効率がいいかもしれないな。子供達にはかなりきつい戦闘になるかもしれないがな」

 レビルス自身も鍛えるので、追いつく為にはレビルスよりもハードに特訓しなければいけない。

 脱落者が出なければいいのだが。こればかりは上手く調整するしかないかな。


 「ではホーラックス。レビルスと分断してそれぞれ鍛えてやってくれ」

 『我が主よ、了解した』

 「そうすると後は周囲に集まった異形が問題だな」

 「そうだね。今は集結途中のルートに難民の子供達のパーティーを向かわせていたんだったっけ?」

 「ああ、三グループだったと思ったが、あれから増えたりしたのかな?」

 確か魔王と戦うような実力はないのだが、冒険者志望で異形なら倒せるようになった子供達にチームを組ませ、異形を倒して回ってもらっていたはず。

 魔王よりも異形を優先って子もいたか。

 とにかくそういう子供達を、異形の数を減らす為に向かわせていたのだ。

 それ以外にも後続として育てていた子供達がいたので、そちらから実戦で戦えそうな子がいたら、チームが増えていてもおかしくはない。

 というか、増えていて欲しいな。さすがに人数が少な過ぎて、このままだと殲滅できないからな。


 「それで今の戦力はどんな感じなのだ?」

 「我が説明しよう。はっきり言えば、冒険者と呼ばれる者達は使い物にならんな。まあそれでもほんの一握りだけ育つ者もいるが、複数相手取れば死ぬだろうよ。難民の子供だが、そっちはちらほらって感じだな」

 フォーレグス王国で国王を任せているビブナイクスがそう答える。

 どうやらしっかりと国王をしているようだ。この調子でがんばってもらおう。

 「なるほどな。それで今現在活動している人数はどうなっている?」

 「レビルスパーティーを除けば、二十二人の四パーティーだな。追加出来たのは一パーティーしかいない。訓練している者はまだいるのだが、実力がともなっていない者が多いからな。そうそうパーティーは増やせないぞ」

 「ソロは無理だよな?」

 「さすがに無理だな。五人から六人のパーティーを組んで、最初は異形一体。慣れて来て二から三体の異形って感じだろう」

 いくら鍛えているからといって、そうそう強者を用意する事は出来ないか。

 そもそも子供に無理させる事も出来ないしな。そう考えると、今のペースを維持して少しずつ削っていく感じになるのだろうな。

 あるいは兵器の開発。

 下手に攻撃を仕掛ければ、その場にいる異形全部がリンクして襲い掛かって来る。ならば一部だけ孤立させるような魔道具などを開発するのがいいかもしれない。

 悪用されると厄介かもしれないな。もうちょっと考えた方がいいだろう。


 「ねえバグ。異形って、今後も魔王が出て来るたびに人間が変化するんでしょう?」

 「おそらくはそうだろうな」

 「なら聖剣と同じで、ある程度対抗手段として受け継がれていくタイプの武器でも作ったらいいんじゃないの?」

 レイシアも僕と同じ意見みたいだな。

 「まあそうだな。ただそれを良い方に利用してくれるならいいのだが、どこかの国が独占したり装備や魔道具を使う代償を求めるような人間の手に渡っていたりすると、面白くないだろうな」

 「確かにそんな事に使われるのは嫌ね」

 そうだな。独占されないように、魔道具同士は一定距離離れていなければいけないとかなら、何とかなるかな。

 魔道具を使う代償を求めるようなやつなら、聖剣みたいに使う相手を選ぶシステムを組み込むとかかな?

 あーでも、異形になっていない時点でそこまであくどいやつはいなくなっているのか? いやあれはハウラスの基準が低過ぎるだけで、最悪殺人さえしていなければ問題ないと判断する勇者の場合は適応されない。

 その基準のあいまいさなのが、難しいところか。

 まあ善悪の設定を作るのなら、僕が基準になるのだろうがな。


 いろいろと考えてみたけれど、これって魔道具を使うほどではないのかもしれない。もっと単純に、異形を集める匂い玉のような物でも投げ込めば、背後からこっそりと倒して行けるのではないだろうか。

 いやそれよりも煙で視界を奪う方がいいかもしれないな。

 さすがにモンスターよりも知能が高いだろうが、本能で動いているので、人間ほど賢くはない様子だった。ならば僕がわざわざ何か用意しなくても、今ある道具でやりようはいくらでもあるのかもしれない。

 「子供達は魔力感知のようなもので、視界が悪くても相手をある程度正確に発見できたりするだろうか?」

 「多分出来るんじゃないかな? じゃないと洞窟とかで光を失った時とかに、かなり危険になるからね」

 「うむ。それくらいは出来るわ!」

 「そうか。なら煙などで異形の集団を包んで、端から削って行けばやがて殲滅も可能じゃないのか?」

 「うーん。多少危険かもしれないけど、出来そうね」

 「異形の中にも悪知恵が働く者もいるわ。小手先の手段はあまり通じないと思った方がいいわ」

 なるほどな。確かに視界を奪ったくらいでは、異形を倒す事は出来ないのかもしれない。

 もちろん異形にも能力の低い者もいるので、倒せるやつは倒せるだろう。

 だが冒険者が視界を防がれても活動できるように特訓しているのならば、逆にそういうやからが異形に変化していれば相当な厄介な相手になるのだろう。

 つまり異形といっても強さがまちまちなのだ。


 「それじゃあ今度、勇者パーティーにも来てもらって試してみるか。強いやつが出た場合は、レビルス達に倒してもらおう」

 「それなら何とかなるかもしれないわ!」

 「そうね。あの子なら何とかしてくれるかも。どうしてもって時は、私達で助けたらいいしね」

 そうだな。危なくなった時はレビルス達が上手く、撤退できるようにしてくれるだろう。どうしてもきつかった時は、こっちで手助けしてやればいいしな。

 上手く行くようならそのまま削って行けばいいだろうな。

 「ねえ、父様。それって私も参加していいの?」

 フォラウがそう言って来た。

 ふむ。おそらく異形ぐらいは倒せるのではないだろうか? ただし、フォラウには元人間を倒すって心構えがないような気がする。そっちでパニックにならないかは心配かな。

 「元は人間だったモンスターだ。それでも戦えそうか?」

 「でも今は害になっているんでしょう? ならそこらのモンスターと変わらないよ。大丈夫!」

 あまり過保護にすると、反抗期になる気がするな。おそらく何かあればフォローしたらいいだけだ。

 本人がやる気になっているのだし、これも経験って事にしておくか。実際、今後人間を殺す事もあるかもしれない。むやみやたらと殺すのはよくないが、必要悪というものは社会では必ずあるのだ。

 いずれ自分の手を汚す場面も出て来るだろう。逆に自分だけは綺麗でいたいって人もいるのだから、今は歓迎してあげた方がいいな。

 「じゃあ一緒に来るか?」

 「うん! 行く!」

 「バグ。危なくなったらフォローするから大丈夫だよ」

 「わらわが見ているから平気だわ!」

 「ああ、そこは心配していない。何かあったらよろしくな」

 それでは一度、異形集団を相手取る作戦を開始してみよう。


 今まで使われていた煙玉を調べてみたところ、どうやら長時間視界を妨げる効果はなかった。まあ緊急避難用のアイテムなので、効果も一時的なものでしかないのだろう。

 今回の用途はもっと大々的に煙に包みたいので、化学反応を利用した新型の煙玉を開発した。

 まあそれでも風の魔法とかで蹴散らせば効果が薄くなってしまうのだが、そういう知恵が回るタイプがいた場合は、レビルス達勇者パーティーの出番となる。

 レビルス達にはそういう頭が回る異形は任せ、周囲の雑魚を子供達が倒して行けるかを確認していこうと考えている。

 どれくらい上手く行ったかで、まだ実戦に出られない子供達の導入も検討できるかもしれないな。ただしかなり危険なので、僕達の内誰かが付いていないと駄目だろう。

 それもこれも時間がない時の対策といったところか?

 今はそこまで急いでいないので、そこまで危険を冒さなくてもいいかもしれない。

 まあ今回のテストで危険具合を検討して、今後に生かして行こう。


 ダンジョンで鍛えているレビルス達と、異形を討伐に向かってあちこち移動している子供達に連絡を取り、全員に都合がいい時期に予定を入れる。

 とはいっても難民の子供達ははぐれた異形ぐらいしか倒せないので、今は帰還中だった。さすがに集団の中に向かっていく無謀は冒さなかったようだな。

 という訳で、レビルス達の予定次第で作戦決行となる。

 「作戦開始!」

 計画を話すとレビルス達も乗り気で、わりと直ぐに集結する事が出来た。

 なので早速子供達を集め、なるべく異形が少ない集団の所へと転移した。そして早速作戦はレビルスの合図と共に、開始される。

 まずは異形が反応しない位置から、彼らの領域を奪うように煙幕をばら撒いていく。

 この作業自体は実践にはまだ早いと判断された、難民の子供達が手伝ってくれている。煙で包む範囲がかなり広いからな。大人数で一気にやらないと、効果はあまり期待できない。

 まだ早いとはいうものの、そこらの冒険者より余程実力は上だ。単に異形のような強者相手では、実力不足というだけなので、既にこういう連携した作戦などでは十分役に立ってくれる。

 チャンスがあれば、異形退治に参加させてレベル上げ出来ればいいなっていう打算もある。

 やっぱり効率よく進めないといけないからな。


 「そろそろよさそうだな。ではチーム毎に固まって前進!」

 周囲一帯を煙幕が包み込んだのを見て、レビルス達戦闘チームが突入を開始する。

 それに反応して動き出す異形達。この反応を見るに、やつらも魔力を感知して獲物を探しているようだ。

 これは作戦失敗だな。

 お互い視界が悪い状態での戦闘ってだけで、結局多勢に無勢な状況は変わっていない。これでは未熟な者を投入する事が出来そうにないな。

 「作戦は根本から考え直しね」

 「だな。レビルス達が撤退するようなら、それを支援して帰ろう」

 「父様、今すぐ手助けはしないの?」

 「ああそうだな。僕達はもう勇者と魔王の戦いには干渉しないって決めたのだ。フォラウなら多少はいいぞ」

 実際、手出ししないって決めたのは僕達で、別に誰かから干渉するなと言われた訳ではない。

 しいて言うのなら、一度は関わったので、二度も関わり合いになって死にたくはないのだ。後人間の、負の感情に触れ過ぎて手助けする気が起きない。

 毛嫌いするほどではないが、積極的に関わって人々を助けて回ろうって気持ちにはならないな。

 ただまともな人間も中に入るので、そういう人間なら助けてもいいかと考えている。


 「じゃあちょっとだけ、戦ってくるね!」

 「程々にな。おそらく今のフォラウなら余裕だろうからな」

 「そうなんだ。じゃあ適当に様子見してくるよ」

 「ああ、行ってこい」

 なにげにモンスターとの戦いは、初めてになるからな。フォラウが腕試ししたくなる気持ちは何となくわかる。

 やり過ぎないようにだけ、注意しておこう。

 今回はあくまで、勇者率いる人類群の戦いだからな。毎回毎回僕達が手を貸さないですむ戦い方を、今後の歴史に残しておきたい。

 おや? 異形の中に、同士討ちしているやつがいるな。

 探してみるとレビルスパーティーの周囲で、仲間割れしている異形が何体かいるのがわかる。

 そして見ていると原因も、特定できた。

 これって再現できるのだろうか? やってみるか。


 「フォラウ、周囲の異形に初級の魔法攻撃を使って、お互いに攻撃されたと勘違いするように攻撃できないか?」

 『父様、多分出来ると思うよ』

 「じゃあ試しにやってみてくれ」

 『は~い』

 フォラウに試してもらうと、異形は魔法が飛んで来た方に向き直り、そっちにいる異形に攻撃を仕掛け始めた。

 そして攻撃された方の異形も、攻撃して来た異形に襲い掛かっている。これは使えるのではないか?

 「フォラウ、そのまま距離を取って弱い攻撃で倒してみてくれ」

 『うん、わかった』

 神の目で見てみるが、お互いへの攻撃に夢中になっていて、フォラウに攻撃を仕掛けて行く様子はなかった。

 これはもしかしたら、魔力感知で獲物を探す能力はずば抜けているのだが、獲物の選定が馬鹿になっているのかもしれないな。視界が余り良好でないという理由もあるが、いくらなんでも見たら仲間だとわかりそうだしな。

 それでもお互いに攻撃をやめないという事は一度敵認定したら、誰が相手でも倒れるまで攻撃をやめないのかもしれない。

 もしこの仮説が正しければ、今まで戦力外だった子供達も、攻撃に参加できるようになるかもしれないな。

 『父様、倒せたよー』

 「ああ、ありがとう。じゃあ次は出来るだけこちらに近いところで仲間割れさせてみてくれ。今まで攻撃に参加できなかった子供達に戦ってもらおう」

 『じゃあ私はそのバックアップね!』

 「ああ、すまんが手伝ってくれ」

 『大丈夫。私だってちゃんとお手伝い出来るんだから!』

 そう言うとフォラウは次々と魔法を放ち、周囲の異形を仲間割れさせていった。

 うーん、これはこれで、上手く誘導する技術が必要になってきそうだな。

 レビルス達で出来るか?

 無理そうならフォラウに実践してもらって、覚えてもらった方がいいのかもしれないな。この方法なら楽に異形を倒せそうだし、ぜひともマスターして数を減らしていって欲しいものだ。


 「攻撃開始!」

 合図と共に、今回はサポートだけの為に参加していた子供達が、異形に向けて魔法攻撃を始める。

 若干威力不足ではあるものの、順調に削れているかな。しかし攻撃が当たらない事もあったり、バランスよく攻撃しなければ危険なところ、片方にだけ攻撃が集中してしまう事もあって、同時に異形を倒す事が出来ない事もある。

 そうなってしまうと、異形のターゲットがこちらに向いたりした。

 まあそういう時にはフォラウが倒してくれるので、子供達自体に被害はないのだがこれは僕達の手を借りずに戦う訓練でもあるので、フォラウの手を借りた時点で作戦は失敗していた。

 まあでも失敗はあらかじめ予測できていた事でもある。

 レベル上げも兼ねて、ここでしっかりと何が悪かったのか、どうすればよかったのかを教えていく。

 異形ならまだまだ大量にいるから、練習台には事欠かないしね。

 「こらそこ! 片方にだけ攻撃を加えるな!」

 子供達の指導役として一緒に来ていたビルトフォックが怒鳴り散らす。

 いつの間にか熱血教官になっているな。

 「でも先生。どう見てもこっちの方が体力ありそうだよ」

 「そりゃ見た目だけだ。ちゃんと魔力量を見てみろ。図体が馬鹿でかいだけで、弱っちいやつだぞ」

 「あれ、あっ、本当だ!」

 「情報は目に映った物だけで判断せず、あらゆる可能性を見て判断しろよ」

 仲間割れしている相手を攻撃して、無傷で倒そうって発想はよかったと思う。しかし同時に倒そうっていうのはやっぱり難しく、片方が倒れるとターゲットがこっちに向いて来るのが危険なところだな。

 やはりある程度戦えるようにならないと、異形討伐はきつい仕事なのだろう。


 結局のところ、作戦は半分成功で半分失敗といったところだな。

 わざわざレビルス達を引っ張り出して試した作戦だったのだが、どうやらレビルス達に頼るようなものでもなかったようだ。結果論だけれどね。

 今後の計画は、今まで少数の異形を討伐して廻っていた子供達をリーダーとして、ある程度煙幕に包まれた地域で今回同様の作戦を決行。危険は既に活躍していた子供達が排除しつつ、連携して後続の子供達を鍛え、異形の数を減らして行くというものになった。

 その為、レビルス達は再び自分達の訓練に戻って行った。

 魔王と戦えるほど強くなる頃には、それを囲うように存在する異形の群れは、かなり減っているはずだ。

 今回の勇者と魔王の戦いは、国を挙げて軍隊行動みたいなものをしないタイプの戦いになりそうだな。少数精鋭ってやつだ。

 まあその代わり子供達が大活躍していて、大人達としては情けない時代なのだろうがね。


 「だいぶ慣れて来たみたいね」

 「もうわらわ達が見ていなくても、平気だわ」

 「だな」

 レビルス達以外による、異形討伐作戦を監視しながらのんびりとする。

 開始直後はやはり、不慣れな事もあって戸惑ったり、危険があったりしたものの。何日も続けていると、レベルもそれなりに上がったり連携を取れるようになってきて、安心して見ていられるようになった。

 まあだからといって油断はできないのだが、知能の高い異形の集団がたまに出て来るので、そういう時はフォラウが活躍していた。

 フォラウはすっかり子供達のお姉さんだな。

 もう少しがんばれば、今フォラウがやっているサポートも、元々異形集団を倒していた四チームで何とかできそうだ。

 そうなれば、完全にこの作業も任せられるようになるだろう。

 そうなると聖サフィアリア国への支援も、そろそろ完全に止めていい頃合かな? 文句というか、もっと支援しろって言われそうだが、まあそんな事僕達には関係がない。

 フォーレグス王国は元々、人間から弾き出された者達の国だ。そんな国にいつまでも縋ろうとするのがそもそもおかしい。

 子供達だってそろそろ自立しそうなのだからな。

 大人たちもがんばって欲しいところだ。


 という訳で、支援の終了を聖サフィアリア国へと告げに行く。

 「フォーレグス王国はサフィーリア神の要請を終えたと判断し、支援を終了させてもらう」

 そして国のトップである教皇に直接告げた。

 「待ってください! まだ国内は元より、国外からも難民が押し寄せている状態です。今あなたの王国から支援を止められては、支えきれません」

 「僕達は今まで、かなり長い期間さまざまな支援をしてきた。それもサフィーリア神からの要請だからだ。それは食糧支援だけじゃなく、その押し寄せて来た難民の子供を引き取るという内容も含まれる。他にも世界中に散らばっていた異形の討伐も当然入っている。そちらはその間、何をしていたのだ?」

 「我々もできる事をしていました。決して手を抜いていた訳ではありません」

 「手を抜いていないのなら田畑を耕し、食料生産量も増えているはずだ。今世界中の異形は一ヶ所に集まり、もうあなた達にとって脅威となるようなものはない。十分復興していけるはずだ」

 「確かに少しずつ余裕は出て来ました。ですがそれも支援があればこそなのです。もうしばらく続けていただけませんか?」

 「あなた方人間と、我々友好種達。こちらから譲歩する事は何度もあったが、人間側から支援してもらった事は一度もない。支援しろという割には、何も見返りがないのだが?」

 「では、我が聖サフィアリア国が復興を果たした後、感謝の印として友好条約を結びましょう。そしてフォーレグス王国に何かあれば、今度は我々が手助けさせていただきたい」

 「おそらくわかっていると思うが、僕達に人間の手助けは必要ない。だからこそサフィーリア神も僕に要請を出して来たのだ。そのような国に今後困った時に手を貸すとか、ありえない約束をしても意味が無くないか?」

 「では、我々がフォーレグス王国の事を語り継ぎ、今後そちらに迷惑をかけないよう配慮いたしましょう。それならどうですか?」

 「僕の国は、結界に守られている。元々悪意を持っている者は、中に入る事も出来ない。どれだけ周囲の国で騒ごうと意味は無いのだよ。今回はサフィーリア神の要請で動いただけだ。後は人に頼るのではなく、自分達で何とかするようがんばればいいのではないか?」

 「そうですか。わかりました、できる限りがんばらせてもらいます」

 まあ確かに直ぐ復興する事は難しいのだろう。

 でもやる前から出来ないとかいう前に、努力くらいはして欲しいものだな。

 後、食料がきついってわかっていたのなら、前もって田畑を広げておくべきだったのだ。先を見る目がなかったのだろうな。



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