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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第三十一章  変わる世界
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神の一族

 お守りについてお試しで教会に顔を出して配ってみると、結構受け入れられた。まあそれはそうだろう。デメリット無しで、幸運な事が起きるのだから持たない理由がない。

 お守りの効果については少し考えて、信仰心に影響されて幸運度が上がるようにしてみた。それとそれぞれの神に対応した信仰を持っていると、更に幸運度が上がる仕組みにしてみた。

 つまり自分の信仰する神様から、お守りを貰いましょうって感じだ。ちなみに複数の神を信仰していても構わない。

 そしてお守り自体は、僕達があらかじめ持ち歩くといっても、屋敷に置いておいてその都度取り出す感じだけれどね。そして何かの都合で会った時に配る。町に行くたびに集られてはたまらないので、配るタイミングは決めた方がいいかな。

 まあこんな感じに自分が信仰している神に会えて、上手く行けばお守りが貰えるぞって感じだな。信仰していない神のお守りも一応貰えるだろうけれど、効果はそこまで上がらない。って感じでいいかな。

 扱いは神社のお守りと同じだな。

 ふむ。使い終わったお守りを燃やすイベントもやってみるか。

 年始のイベントにうってつけだしね。


 お守りについての追加報告がある。

 いろいろと協議した結果、教会の販売部が立ち上がり、そこで販売する事になった。まあその方がこっちも追い掛け回されなくて済むしな。でも一応出先で会えば、ゲットできるって感じのアイテムになった。

 素材となるお守り自体はマジカルドールのフォレイヤが木彫りで作ってくれて、紐で首から吊るすタイプになっている。

 これに僕達が魔力を注げばご利益のあるお守りの完成となるのだが、実は僕とビゼルとホーラックス以外はフライングして神のお守りとなっている為、実は微妙に詐欺というか偽者のお守りだったりする。

 特にレイシアだな。他は眷属なので、その上位の神である僕が魔力を注ぐ事でそれぞれのお守りになるのだが、レイシアだけは繋がりが無い状態なのだ。一応魂の結び付きはあるのだが、まあ現時点ではただの人間だからな。

 だからかなりの代理神として、力を貸しているお守りになるっている。

 まあとはいっても効果は自体は変わりない。そこで差が出ては問題があるので、お守り自体には差がないようにしている。

 それぞれが神格を得ればこの代理も必要なくなって、胸を張ってお守りを売れるようになるだろう。


 《神格 が一つ上がりました》

 のんびりと見守りながら暮らし始め一年後。また神格が上がったようだ。

 神格はなんというか、LVと違って上がりにくいものだな。だからこそ1つの差がでかいのかもしれないが、上げるのがかなり大変だと感じる。

 そしてレイシアなのだが、年齢が十六になり、薬を使うことにしたようだ。

 別に薬を飲んだからといって、光ったり何かしら演出はなかったけれどね。ちょっとしたシロップを飲んでいるみたいだって言っていた。

 まあこれでレイシアも正式に神の一員なのかな? 人間の限界を超えた訳だしね。

 神格を手に入れれば、現神人ってやつになるのかも?

 今は英雄か勇者みたいな存在なのだろう。いや仙人の方が近いのかな? まあとにかく超人になったわけだ。

 「何か薬を飲んだ感想はあるか?」

 「うーん。特にはないかな。別に力が湧き出して来るとかそういうのもないし、実感がないよ」

 まあ薬で強くなっただけだし、その薬自体もシロップを飲んだだけみたいな反応だったからな。それでは実感も何もないだろうよ。

 ただ、この後LVを上げて行けば、人間にありえない力を発揮するようになっていくだろうな。それこそ化け物よばりされる事もあるのだろう。まあ僕達と一緒なら神の一族だからで終わりだろうがね。

 人間の中に混じるならば、迫害される事もあるかもしれない。

 レイシアはそんな存在になったのだ。


 「一応こっちではのんびり過ごせばいいが、経験値を稼ぎたいのなら専用ダンジョンを造ってもらってあるぞ」

 造ったのはホーラックスだけれどね。

 元々ダンジョンマスターだったホーラックスに頼めば、バランス調整などは間違いはないだろう。後は何処まで強くなるかわからないが、がんばってもらいたいものだ。

 そういえばこの状態で神格を得ると、レイシアもLVが無くなるのかな?

 それだと元々人間だったって事もあるのだが、神としてはかなり弱い神様が誕生する事にならないかな?

 いや別にレイシアが戦う必要はないのだが、本人に気にされてもこちらが申し訳ない気持ちになる。

 付き合って、早々にLV上げでもした方がいいのかもしれないな。

 それもビゼルが嫉妬しない程度に、あるいはビゼルのご機嫌取りでもした方がいいのかな? 妻が複数人いるとこういうところが不便なのだろうな。

 まあビゼルにとってもレイシアは大事な友達だろうし、一緒に付き合ってくれるだろう。


 そして不満が出ないよう家族サービスをした結果、魂の転生情報通りにビゼルに子供が出来た事が判明した。

 僕は生命を司る神なので把握できているのだが、本人であるビゼルはまだこの事を知らない。

 何となく怪しく感じるまで黙っていた方がいいのだろうか? それとも早々に知らせてやった方がいいのだろうか?

 しばらく悩んだが、今回は本人が望んでいた事もあるので、知らせる事にした。

 「ビゼル、おめでとう」

 「うん? 突然何のことだわ?」

 あー、さすがにいきなり過ぎたか。とはいっても僕としてもこういう事を言うのは少し恥ずかしい気がするよな。だがしっかりと伝えないと駄目だろうな。

 「子供を欲しがっていただろう? どうやら妊娠したようだ。まだ生まれて来るのは先になるがな」

 「そうか。そうか・・・・・・ついにわらわにも、子供が出来たわ」

 初めは何となく、そして実感がないのかジワジワと言葉が染み込んで行くかのように結果を受け止める。

 ビゼルはまだ膨らんでいないお腹を撫でさすりながら、嬉しそうに微笑んでいた。

 「よかったな。おめでとう」

 「うむ。バグよ、嬉しいわ」

 ビゼルもちょっと恥ずかしいのか、照れ笑いしながらそう言って子供が出来た事実を噛み締めていた。


 僕がビゼルに妊娠を告げて以来、ビゼルは随分と大人しくなった。

 どうやらお腹の子を気にして、激しく動きたくないようだね。周りもそんなビゼルを気にして手助けしている。

 もちろん僕も積極的に手助けして、負担がかからないようにした。まあそこまで注意するにはまだ早いと思うのだが、気分的なものだな。

 ビゼルも今は神経質になっているだけで、その内気が付くだろう。

 レイシアも一度経験があることから、いろいろと話して聞かせているようだ。

 僕や眷属では経験がない為、こういう時には余り力になれない。いやそうでもないのか?

 司書のマジカルドールであるヴィリアンなら、適切な知識を持っているのでいろいろと助言して力になれるかもしれない。

 という事で呼ぶことにした。

 「すまないが、ビゼルの相談役になってくれ」

 「バグ様、かしこまりました」

 そして早速ビゼルといろいろな話をしてもらう。

 後は僕より女性の方がいいだろうな。任せよう。


 《配下が神格を得た事で 眷属神 が誕生しました》

 《眷属神 が得た 神格 が一定量に達した為 神格 が一つ上がりました》

 レイシアに付き合いダンジョンでLV上げをしていると、眷族の誰かが神格を得たようだった。

 これは紗枝かな?

 司っているのは進化。いろいろな種族を生み出す神のようだ。

 (紗枝、神格を得たようだな。おめでとう)

 これで紗枝も神の仲間入りだな。そしてめでたい事なので祝福の挨拶を念話でしておく。本当は直接がいいのだろうが、まあそれは後でもう一度言えばいいだろう。

 『バグ様、ありがとうございます。これからも誠心誠意お仕えさせて頂きます』

 そういえば紗枝は向こうでも異次元の管理人って感じで、現実世界には存在しなかったのだが、この場合神となった時はサフィーリア神達とどう関わる事になるのだろう? 担当地域が違うので、別世界の神扱いになるのかな?

 まあ紗枝は世界樹だしこっちで本体を創ったので、このままこの世界を管理していってもらえば問題はないだろう。

 (では紗枝にはこのままこの地球を見守って行ってもらいたい。よろしくな)

 『御安心くださいませ。バグ様の期待にお応えし、見事この地球を管理してみせましょう』

 (そう固く考えなくていいぞ。何かあれば僕が対処するからな。手遅れにさえならないならまあ自由に楽しみながら管理していってくれ)

 『承知いたしました』

 紗枝は何処となく古風なイメージがあるな。着物とか着せたら似合いそうだ。名前も漢字だしな。


 「バグ、誰かと念話?」

 「ああ、どうやら紗枝が神格を得たようだ。それで祝福の挨拶をしていた」

 「へー。それはめでたいね! じゃあ戻ってお祝いする?」

 「そうだわ! めでたい時はお祝いをするのだわ!」

 そうだな。そこまでひっ迫している訳でもなし、LV上げは程々にしてお祝いでもするか。レイシア達も乗り気だしね。

 「じゃあ戻ってお祝いしよう」

 「うん」

 「行くわ!」

 二人と一緒にサポートで付いて来たテッシーも連れて、屋敷に戻る。

 マジカルドールのモルモにも早速連絡して、豪華な料理を作ってもらおう!


 僕と同じく分体の精霊でやって来た紗枝を迎え、豪華な食事会をしてお祝いをする。

 「それで、神になって何か変わったの?」

 「いえ。特に何かが変わったというような事はないですね。我は元々動かない樹ですし、能力が上がったとしてもそこまではっきりと感じる程の変化は、ないようですよ」

 「そうなんだ。神っていったら辿り着けないほど力を持った存在のように思うんだけど、案外そんな事ないのかな」

 「バグ様を見ますと、格の違いをヒシヒシと感じますよ」

 「あーバグはそうよね。スライムの時から別格だったんじゃないかな?」

 「さすが私達の創造主様ですね」

 確かに動かない世界樹が神格を持ったとしても、あまり実感はわかないかもしれないよな。でも精神的なものは大幅に変わっているのではないだろうか? 外見に出ないので、わかり辛いだけだろうね。

 レイシアと紗枝の会話を聞きながら、そんな感想を持つ。


 ホーラックスもだが紗枝も、神格を得て神になったからといって、僕から独立しようという考えは微塵もなさそうだった。

 それはそれで信頼関係があるようで嬉しいものだな。

 まあ独立したい者がいるようなら、素直に受け入れたいとは考えているが、さすがにちょっと寂しいというか考えさせられるかもしれない。ちょっと前にも思ったが、接し方に問題があるかもしれないからな。

 致命的な決裂前に、何とか関係を修復したいところだけれど、その機会もないのはやはり嫌なものだろう。

 そういう意味ではレビルスは、どうしてああなったのかよくわからない。

 昔からそういう兆候があったのだろうか? それとも何かしら一回でもミスしたら、そうなるような性格だったのだろうか。

 僕は元々普通の一般人だったので、完璧に行動するなど無理がある。そういう意味では、一つもミスをするなって性格の者なら、相性は最悪だろうな。

 レビルスはそういう相性だったのだろうって気はする。

 ビゼルの子供はどうだろうな。ちょっと怖くはあるが、今度こそと期待する気持ちも今ではある。

 性別のせいもあるかもしれないから次は、女の子がいいな。いやそれだと、結婚相手を連れてこられると困るか?

 生まれる前から考えても仕方がないが、やはり少し気になるよな。


 とにかく、眷属達は次々と神格を得て行きそうな感じだ。

 おかげで僕の神格も上がるので、この調子でがんばってもらいたい。

 それにしても紗枝はゲーム世界で管理人をしていたので神格を得るのも早かったのだろうが、次に神格を得るのは誰になるのだろうな。

 マシナリー達が信心深い性格なら、マジカルドールのフォレイヤが次辺り神格を手に入れそうなのだがな。どちらかといえばマシナリーは自然科学を信じているので、神のような神秘には頼らない気がする。

 一応マシナリーも半分は人間なので、全員が全員ではないだろうが信仰心のあるマシナリーがいれば、ドワーフを管理しているフォレイヤが次の有力候補になるだろう。

 そういえばマシナリーにも一応教会があるのだから、やっぱり信仰心はゼロではないのだろう。少ないだけだな。


 屋敷ができ、マジカルドール達が来て料理なども作ってくれるので、僕達の生活は一気に快適になった。

 ついでに問題が起きた時や、信仰集めの相談なんかにも乗ってくれるので、いろいろ助かっている。しかしエンジェル達もいるので、僕達が直接やる仕事は殆どない状態なのだがね。

 そもそも各種族の人数自体が、そこまで多くないせいで信仰もなかなか集まらない。

 モンスターを配置したといっても、それぞれの生活圏の側には配置していない。なので安全に過ごせるはずなのだがな。

 まあ例え落ち着いて子供を作ったとしても、数年程度ではそこまで人数が増えたりはしないか。いっそうの事、別の種族をもっと創るか?

 いや余計な軋轢が増えるだけだな。今いる種族達が増えてくれるのを待つのが一番だろうな。

 そして今いる連中と新しく増えた者達が、信仰心を持ってくれれば十分元が取れるはず。もうバカンスと考えて、レイシア達とのんびり地球で生活でもしていよう。


 数ヶ月が経ち、ビゼルも軽い運動は必要なので、ご近所付き合いのついでに屋敷周辺を歩いて回ったりする。

 まあ僕も一緒に行っているので、万が一な事もないだろうとは思うが、注意だけはしておこう。

 そんな特に事件らしい出来事も起こらない日常の中で、ビゼルのお腹だけが徐々に膨らんで行くのがわかる。大きくなるたびに不安にはなるが、今は無事に生まれて来て欲しいものだな。

 その後はみんなと相談しながら、捻くれないよう育てて行くだけだよな。次こそがんばろう。

 今のところ様子を見るに、体への悪影響などはないので僕が神格を持っていたり、半神半霊の影響はないようだな。

 それだけは確証がなかったので心配だったが、何も問題がなかったようだ。元々魔王の娘だった肉体なので、そもそも簡単にダメージを受けたりはしないのだろう。

 神に属する相性も気になっていたのだが、そっちも問題はなかったようだな。

 僕にも魔大根だった時期があり、魔の属性を持っていたのがいい影響になったとか? なんにしても相性が悪くなくてよかったよ。


 レイシアの時にも味わったのだが、子供が生まれるのを待つというのはじれったく感じるよな。

 徐々に大きくなるお腹を見つつ、まだかまだかって焦る気持ちになる。

 いつ頃生まれるのか、性別を確認していないので、男女両方の名前も考えておかないといけない。必要な服や道具などはマジカルドール達がそろえてくれているので、僕は子供が生まれるのを待っていればいいだけなのだが、やる事がないと落ち着かないな。

 神としての仕事も眷属のエンジェル達だけで何とかなっているからな。

 本当にここでやらなければいけない事は少ない。

 たまに教会に顔を出しているのだが、今はビゼルが気になってあまり行っていない。行っている間に何かあったらと思うと落ち着かないからな。

 レイシアの時もこんな感じだったか? かなり昔の事で思い出せないな。

 まあいいか。このまま何事も無く生まれて来てくれればいい。


 それから数ヵ月後、ビゼルは元気な女の子を出産した。

 名前は僕とビゼルで話し合って決めた、フォラウ・エルモートという。

 フォラウはビゼルの本名から、エルモートは僕の日本での名前をもじったもので、レビルスの時にも付けていた家名になる。まあ別に僕は貴族ではないのでただのバグだけれどね。

 何となく家族の繋がりっぽくていいのではないだろうか?

 ちなみに母子共に健康で、特にフラグ回収のようなイベントなどはなかった。やれやれって感じだな。

 そしてその日からしばらく、女性陣は赤ちゃんに夢中になっていた。

 それは眷属やマジカルドールも同じで、随分と屋敷が賑やかになったな。まあ元気があっていいのだが。

 ビゼルは子供を生んだ次の日にはケロッとしていたので、そういうところは身体能力が尋常じゃないのだなって思ったよ。

 そういう意味では心配して損した感じだ。口には出して言わないけれどね。

 それと気になるフォラウの種族だが、どうやら半神半魔になったようだ。それも魔の部分は精霊種の血が受け継がれているっぽいな。魔に属する精霊種かな? 精霊の魔王種といえばいいのかな?

 まあそんな感じの結構凄い潜在能力の赤ちゃんだ。


 「この子がわらわ達の子供なのだわ。いい子に育って欲しいわ」

 「ああ、そうだな。今度はみんなで一緒に育てて行こう」

 はっきりいってレビルスで懲りたので、自分一人で育てて行こうという気はない。情けないかもしれないが、こういう時は周囲全員の意見を聞きながら育てていった方がいいだろう。

 家の眷属達なら変なやつは混じっていないので、誰かを反面教師にしたり、マイナス面を学習する事もないだろう。

 つまりフォラウ自身が良いとこ取りでいろいろと学んで行ってくれるはずだ。

 一応自分でもしっかり教育して行くつもりではいる。苦手だからと他人任せにはしない予定だ。

 でもまあ、女の子だからってのもあるのか、みんなで可愛がり過ぎるかもしれないな。程々にしないと、かなりの甘えん坊になりそうな予感がする。

 まあとりあえず玩具が一杯あるので、情操教育からがんばってみようかな。


 そういえば、学校って造っていなかったな。みんなどうやって文字など学んでいるのだ?

 神の目で見てみると、人間とエルフは自分達で学校を造って勉強していた。ふむふむ。義務教育ではなさそうだが、読み書き算数くらいは最低でも、学んでいるようだな。

 ドワーフはほとんど見て覚えろって感じで、教えている? これは個々でかなり出来が変わってくるみたいだな。まあ当然だろうが勉強が嫌いな者は、読み書きできない者もいるようだ。

 獣人は、そもそも勉強などしていないみたいだな。いや、レイシアが担当している知能が高い者は、自主的に習っている。塾タイプの勉学って感じだ。

 マシナリーは、これはかなり独特というか、近未来的だよな。睡眠学習で知識を詰め込んでいるっぽい。これは半機械人だからこその方法かな?

 そしてドラゴンは、知識を封じ込めた宝玉を使い、魔法的手段で受け継いでいるようだ。

 こうして見ると、種族でだいぶ学習方法が異なるようだ。

 フォラウはどうやって勉強させようか。やっぱり無難な感じでマンツーマンな塾タイプがいいかな? 家族それぞれ得意な事を教えて、ついでにコミュニケーションも取れるだろうからな。

 これなら僕も親として面倒を見て行けるだろう。


 新たにフォラウを加え、僕達の生活はにぎやかに過ぎて行った。

 赤ちゃんは夜にミルクを飲んだり夜鳴きをしたり、大変な事が多いと聞くけれど、家はあまり関係がないよな。レイシアは普通に夜寝ているが、それ以外のみなは起きていたりする。

 僕ももちろん睡眠など不要で、それはビゼルも眷属達も同じだった。なので一~三時間おきにミルクを飲ませたり、夜鳴きをしても直ぐ誰かが側で面倒を見ることができる。

 ああ、面倒を見る人数自体も多いのか。道理で子育てがきつくない訳だ。

 そんなフォラウはみんなに構われてスクスクと成長して行った。

 みんなで話しかけていたからか、一歳くらいで片言の言葉を話すようになったし、三歳になる頃にはいろいろな物に興味を持って習ったり作ったりするようになった。まあ作る物は危なくない物に限るのだがね。危険がないものに関しては、なるべくやらせるようにした。

 教育方針としては、選択肢を増やす為に何にでもチャレンジするというものだからだ。あれ駄目これ駄目よりはいろいろな経験ができて、今後の人生に役立つことだろう。

 危険があるものについては、周りにサポートできる者を用意し、魔法などでガードしながらやらせてみる事にした。

 まあ全部が全部、できるとは限らないのだがな。失敗も経験の一つとして、やらせてみる。

 おかげでなのか、今のところレビルスのように反抗的な態度を取る事はない。

 いやあれはもっと年齢がいってからか?

 じゃあまだまだ油断はできないな。気を付けて見て行こう。


 「フォラウも大きくなって来たし、そろそろマシナリーの町以外にも行ってみるか?」

 「うむ。もっといろいろと経験させてやりたいわ」

 「そうね。私達もフォラウに構ってばかりいたから、あまり他の町とかに行けていないしね。行事とかそういうのだけかな?」

 「ああ、年始は大事だからな。後試練。あれだけはどうしても外せない。元々地球に来たのは信仰を集める為だから、それに参加しないのは論外だ」

 「だよね」

 仕事自体少ないけれどまったく顔を見せずに信仰を維持したり、新たに獲得する事はできない。

 どうしても自身で出向いて奇跡を起こしたり、神が見ているよってアピールする場面はあるものだ。年始などもそういう行事の一つになりつつある。

 まあ合間は特に仕事もなく、のんびりできるのだから文句はないよな。

 事件さえ起こらなければだがね。

 そしてあちこちの町に出かける事もたまにはしないと、神を身近に感じる事ができなくなるものだ。教会関係者は問題ないのだが、一般人に信仰心を持ってもらう事が僕達の目的だからな。

 なるべく一般の人に神の姿を見せるようにしないといけない。だからといって教会を蔑ろにもしないけれどね。

 町に行ったらそこの教会には必ず顔を出しておけばいいだろう。

 という訳で、今回も顔見せと町の散策に行くことにした。


 「父様、ここが人間の町ですか?」

 「ああ、いくつかある人間の主要都市の一つ。確か桜という名前の都市国家だったかな。この周辺に幾つかの町があり、更にその周辺に村がある。地球に移住した時の町を元に立ち上げた国の一つだ」

 「元々ここの人間達は地球の住人だった?」

 「ああ、一度地球は滅亡したからな。その時逃げ出した住人達の子孫をまた地球を再生してこちらに戻した。当時は地球規模で環境を整えたりなどできなかったからな。ちょうど次元の狭間って場所を見付けて、利用出来たって事もあったしな。運がよかったのだ」

 そもそも人間の暮らす町自体は複数存在している。

 ゲームの裏に移住させた元日本人達はかなりの人数がいたからな。そしてそこにはそれなりの規模の町が幾つかあったので、その町毎にこちらへと移動させた。

 つまりそこにあった町の数だけ、地球にも町を造ったって事だ。

 その初期の町を基点として彼らは自分達の国を造っている。今のところ争いはなく、町毎に多少の方針の違いがある為、それぞれ都市国家として独立運営している状態だ。

 「町を見て来てもいいですか?」

 「ああ構わんよ。ただ誰かと必ず一緒に行動しなさい」

 「母様、一緒に見て回りましょう」

 「ええ一緒に行くわ」

 ビゼルとマジカルドールのヴィリアンも一緒に付いて行ったようだ。

 では僕は教会に顔を出し問題が起きていないか確認した後、町の様子を視察しようかな。その後フォラウに合流して、一緒に町を回ってみよう。


 人間の町を他に二箇所回った後、次は獣人達の町へとやって来た。

 生活様式はどちらかといえば複数の部族が寄り集まっている感じだな。おそらくここは獣人達が交流する目的の町で、ちゃんとした部族はまた別で町なり村、あるいは集落を形成しているのだろう。

 人間と違った文化をちゃんと持っていて、観光するだけならそこそこ楽しめそうだ。まあガッツリと楽しめそうな町ではないな。

 という訳でここも教会に顔を出した後は、さらっと町の様子を窺って他に行く事にした。

 「父様、あまりモフモフはしていないのですね」

 「尻尾はモフモフしてそうだが、可愛がりたいのならやっぱりペットがいいだろうな」

 年相応に可愛い物好きなフォラウだが、さすがに厳つい男の獣人にモフモフは求めていないようだ。これなら羊のマジカルドールがいるので、そっちに抱き付いていた方が喜ぶだろうな。マジカルドールにとっては不本意かもしれないがな。

 まあ元の世界に戻った時の楽しみにでもしておいてもらおう。


 次はエルフなのだが南極の普通のエルフの町へと向かった。北極は僕が管理しているので、今回の視察に含めなくていいだろう。普段見ているからな。

 「うわー、綺麗だね!」

 木を上手く活用して作られた森の中の町。

 自然に溶け込んでいて一番観光に向いているのではないだろうか?

 僕が教会に行っている間にフォラウ達には観光してもらい、こっちはこっちで問題が起きていないかどうか見ていく。

 「あ、バグ。もう少し時間いい?」

 「ああ、構わんぞ。別に予約とかあった訳じゃないから、残りは明日でも問題ないからな」

 戻って来るとフォラウはエルフの子供を交えて遊んでいるところだった。

 同年代の子供達と遊ぶのもたまにはいいものだろう。

 フォラウが満足するまで、遊ばせておこう。こっちの視察は終わったけれどね。

 大体何処も眷属ががんばっているので、大きな問題は起きていないようだ。改めて見て廻る必要すらない状態だが、まあ見ているよってパフォーマンスなので続けよう。


 翌日向かったのはドワーフの町。

 職人達にとって見る物はいろいろあると思うが、ここは女の子向きの町ではないな。

 フォラウにも魔法を教えているが、まだ体が未成熟なので武器などの扱いは教えていない。ここにある物は武器や鎧がおもになるので、今のフォラウにとっては綺麗だなくらいのものでしかない。

 まあそれ以外にも技術的な差があって、自分達で作った方がいい物を装備できる。わざわざここで探したり見たりする必要性がないのだ。あー、一応デザインは見る価値があるかもしれないかな。

 チラッと窺ってみたけれど、装飾は細かくて綺麗だが、女の子が使うと考えれば無骨過ぎるな。

 やはり男性冒険者向けが多い。または体格のいいがっちりとした女性用かな。

 後の見所はお酒。こちらは完全に子供には関わりがない。


 次はドラゴン達の町へと向かった。

 ここは体の大きさもあって、独特な町になっている。

 ドラゴンとはいっても結構器用なのか、彼らなりにがんばって造った町並みが出来ていた。ぱっと見は蟻の巣のような洞窟だけれどね。おそらくは魔法を使って道や巣を整備したのだろう。

 そして所々に魔道具のようなものが埋められ、通路は幻想的な雰囲気になっていた。

 ドラゴンといってもそれぞれに属性があるからか、それぞれの巣に特長がでていてそれが見所になっている。

 でもまあ、あまり人間が観光するのには向いていない町だな。

 全ての大きさがドラゴンサイズなので、見て廻るのも大変だったりする。後町が立体的で、羽がないと見て廻れない。

 ここはこういう独特な場所だと考えておけばいいのだろう。



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