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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第三十一章  変わる世界
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限界突破薬

 一度仕事場に戻って来ると、いろいろと決めた事を眷属達に指示した。仕事増やしてごめんよ。でもがんばってくれ。

 更にそれぞれの種族が衝突することなく、上手く付き合っていけるように案を募集する。

 まあ今直ぐどうこう出来る案件ではないので、いろいろ考えながら進展するのを待つだけなのだがね。何はともあれ、それぞれの町を繋ぐ道が完成しなければ、話も進まないだろう。

 「ねえバグ。私、そろそろ薬を使ってもいい頃かな?」

 薬?

 一瞬何の薬だって思ったが、そういえばこちらに来てだいぶ成長したよな。日本人と根本的に違うので、15歳になったレイシアはもう立派な大人の女性のようになっていた。何となくまだ表情には幼さが抜け切っていないけれどね。

 これ、今なら付き合ってもロリコンって言われたりしないよな? 年齢で考えれば確実にロリコンではあるのだが、見た目的にいえばそこまで言われるほどではないと思う。

 まあこの世界でロリコンなどというやからはいないのだがね。

 下手すれば赤ん坊が相手でも付き合う貴族がいるそうだ。まあ物理的じゃなくて婚約? 書類上の夫婦みたいなものだ。

 だからどれだけ年齢が離れていようと、こちらではそれは普通に起こりうることなので、別段おかしなことでもないようだ。寿命と死亡率を考慮しての考えだろうね。

 「そうだな。身体能力的にはどうだ? 未成熟のまま年齢が固定されると、能力を発揮し切れないぞ」

 「そうよね。でも多分問題ないと思う。逆に力が有り余っている感じがするもん」

 「大丈夫そうだな」

 それなら限界突破の薬を持って来ようか。

 副作用は今のところ認められていない。神の目で見ても、問題は特に無いように思える。

 これでレイシアもようやくレベル上げに戻れるのか。

 正直、こちらで戦闘など早々する出来事でもないのだが、まあ専用ダンジョンでも用意するかな。


 「ウクルフェス。限界突破薬は完成したか?」

 レイシアとの話し合いの後、一度元の世界へと帰って来た。そして早速目的の物について、ウクルフェスに聞いてみる。

 「バグ殿か。今のところ異常は無いのう。完成と見てよいぞい」

 「そうか。では一つ準備してくれるか」

 「もう用意はできておるわい。効果を取り消す事はできん。使う時はよく考えるんじゃぞ」

 「ああ、わかった。ありがとうな」

 「くくっ、なかなかいい研究テーマだったのう。また何かあれば来るといいぞい」

 薬を受け取り、ついでに裏ボス的な悪霊群を見てみる。

 格的な差がほとんどない為、神の目を持ってしても詳しくは見られない状態だな。つまり実力的に同等の相手といっていい訳だ。これは厄介な。

 となると何かしら悪さをしているはずだが、どうやら異形達の魂を嬲って満足しているようだな。それならこちらの準備が整うまで、まだ遊んだままでいて欲しいものだ。

 周囲に被害が拡大しないのであれば、時間的な猶予はまだあるとみていい。

 地球へ行って、神格を上げまくろう!


 「レイシア、この薬はやり直しができないそうだ。飲むタイミングは任せるが、後で後悔しないようにな」

 年齢は成人といっていい年になっているが、体はまだ成長途中だろう。

 薬を使うということは、これ以上の成長を止める事になる。もう少し成長しておけばよかったなんて、後で後悔してほしくはないからな。使うタイミングはレイシア次第だ。

 世の中にはもう少し身長が欲しいとか、もう少し成長するはずと騒ぐ人もいる。どこがとは言わないが。

 今のレイシアは、昔出会った頃のレイシアと同じくらいの身長で、肉好きはそこそこ。いや出会った頃と比べるのがいけないのか? あまり良い生活をして来なかったらしいからな。

 それを思えば豊満な体型といってもいいだろう。

 顔はちょっと可愛くなっているな。昔は昔でよかったが。ということで、僕的には今でももう少し後でも、どちらでも文句はない。

 若過ぎて駄目って事もないので、後はレイシアが納得するかどうかになる。

 「わかった。じっくり考えてみるね」

 「ああ、今後ずっとその姿のままで生きて行く事になるからな。後悔はしないように」

 「うん」

 「レイシアばかり狡いわ。わらわももっと構って欲しいわ」

 そういえば、ビゼルにはいろいろとしてもらっていたが、どちらかといえばレイシアばかり構ってしまっていたかもしれない。

 感謝しているのは確かなので、機嫌を取るとするかな。

 「そうだな。ビゼルも何かして欲しい事とかあるか? ちょっと手の込んだデザートを作るのでもいいぞ」

 今の僕ならば、神の叡智から最高のデザートでも作れるに違いない。能力の無駄使いみたいに思えるが、たまにはこういう日常的な使い方もいいものだろう。

 神様だって休日は欲しいのだ!

 いや疲れたりしないし、ほとんどの仕事を眷属がしてくれるので、時間は結構あるのだがな。あくせく働きたくはないのだ。


 何か考えてみるというビゼルと、薬を使うタイミングを考えるというレイシアと別れ、まったりしよう。

 こちらの世界もそこそこ信仰は広まってきているので、後は更に広まり人数が増えるのを待つのみだ。

 僕達が関われる部分は、揉め事が起きた時。いや起きる前に止めたいから、その改革などだろうな。

 教会の腐敗防止とかも必要になってくるか?

 神が街中を歩いている状況で、それはないか。あるとしたら世代を超えた後の教会だろうな。そこでどれだけ神に対して真摯的であるかどうかだろうな。

 そういう意味では、教会のトップは神に認められた者のみというシステムか、教会自体に結界を張り嘘がつけなくするとかかな。

 それなら審議の場としても問題はなくなる。

 他にもビゼルの神官達には審議の奇跡を使えるようにしてもいいな。そうしたら何処にでも出張して揉め事を解決できるだろう。

 ではビゼルを始め、眷族や教会関係者にこの事を伝えよう。そして、各教会には結界を張っていく事にする。

 他にできることはないかな?

 考えてみるけれど、直ぐには思い付かない。

 そういえば、結局のんびり出来ていないので、今度こそのんびりしようかな。


 本来僕には睡眠というものは必要としないのだが、のんびりする為に夜寝るようにしよう。

 そして次の朝早くに目覚めると、ちょっと無視できない情報を見付けた。それは魂の転生に関する情報である。

 生命の神となってから転生者の情報は、エンジェル達眷属に任せているのだが、常に最終確認だけは僕の役目になっている。まあ情報を見流すだけだけれどね。

 問題があればエンジェルの方で対処するか、できなければこちらに話しが来る事になっているのだが、一度も問題が発生した事はないからな。実質眺める業務だ。

 つまり今回も見流すだけで終わりだと考えていたのだが、その情報の一つに目が留まったのだ。いや、問題が見付かった訳じゃないぞ。そこに自分と知っている者の名前が載っていたのだ。

 「あー、ビゼルの欲しいものが何か、わかったな」

 思わず呟いてしまった通り、どうやら僕とビゼルの子供の情報である。

 何となくだがレビルスの一件以来、子供には苦手意識があるのだよな。あれって男だからなのか、レビルスだけの出来事なのか。僕の子供は全員あんな感じで、僕に反抗的になってしまうのだろうか。

 生まれる前から少し憂鬱に感じてしまうのだよな。

 ちょっと憂鬱になりつつも、とりあえず魂の確認でもしておく。


 まあわかっていた事ではあるのだが、この魂は今まで僕達に係わり合いのある者ではなかった。つまりどんな子供が生まれて来るのかは、不明といってもいい。

 しかし前世でどう活動していたかを見れば、大体の性格を知る事は可能だと思えた。

 性格自体は周囲の環境でどうとにも変化するのだが、どういった考え方をして、どんな発想に至るのか。のんびりしているのか、せっかちなのか。周囲に合わせ変化する表層の性格ではなく、奥にある基本の性格は変わらないので、そちらを見ればある程度の傾向がわかるのである。

 まあ、あくまでも傾向なので、絶対じゃない。

 後はつまらなくなるのだが、不確定な未来を見る方法もある。こっちは今後の事がお手軽にわかるのだが、何が起こるのか全て把握できるので、つまらない人生になるのがわかりきっている。

 そう考えると、つまらなくなるよりはまだ不安の方がマシじゃないだろうか。未来に希望は持ちたいしな。

 レビルス二号はいらない。

 普通の子でいいから、親子らしい間柄になりたいものだ。ふとそんな事を思った。


 「バグよ。わらわもレイシアみたいに子供が欲しいわ!」

 朝食の後、ビゼルに呼び出された僕はそんな事を言われた。既に情報を手に入れていただけあって、驚きはない。だから未来を知るのは問題があるのだ。

 「知っていると思うが、望んでいるような性格の子が生まれて来るとも限らないぞ。それでもいいのか?」

 「それはバグが気になっているだけだわ。わらわは別にどんな子が生まれても問題ないわ」

 はあ。これが母は強しってやつなのかな。

 元は魔王の娘だったのに、随分と人間らしくなったものだ。

 「わかった。さすがに朝っぱらからっていうのもなんだから、おいおいな」

 ビゼルは元魔王で今は邪神。神格を持つ遺伝子に対応できるよな? 多分大丈夫だろう。

 転生する魂の情報はあるから、子供は大丈夫なはずだ。問題は母体であるビゼルの方だ。まあ経過を見て、何かしら様子がおかしかったら手を打つとしよう。

 それにしても子供が欲しいって、要求がストレートだな。

 もうちょっとムードとか何か、ないものだろうか? ビゼルらしく欲しいものは欲しいって感じだが。まあ素直に要求してくれるのは嬉しいかな。

 「それにバグにはレビルス以外にも沢山の子供がいるわ。その中の一人と相性が悪かったからといって、躊躇する理由はないわ」

 あー、眷属達か。確かに彼らは僕にとって家族であり、創り出した主というより親になるのか。

 「そうだな。ちょっと気が楽になったよ」

 「うむ。嫌々子供を作るのはわらわも嫌だわ」

 「確かにそうだな。望まれて生まれて来て欲しいものだな」

 「そうだわ。それにわらわ達の子供が、レビルスみたいになるものか」

 あー、そこは微妙に対抗心があるようだな。

 そうだな。今度こそしっかりと育てよう。

 「今度こそ良い父親を目指すよ」

 「そうするがいいわ」

 そのまま二人でのんびりと過ごす。

 そういえばいつもビフィーヌが側にいるので、ビゼルと二人というのもかなり珍しいのかもしれない。今日はレイシアもビフィーヌも、僕達に遠慮したのか姿を見せない。

 考えてみるとレイシアを失いそうになっていた時、ずっと側で支えてもらっておいて何も返せていなかったのだなと反省する事ばかりだ。

 今ではビゼルもいなくてはならない僕の伴侶なのだから、もっと積極的に誘うべきなのだろうな。子供はいい機会になるだろう。


 「ねえバグ。昔の地球では結婚ってかなり遅れてからだったんだよね? 何歳くらい?」

 翌日、朝ごはんを食べているとレイシアが質問して来た。

 「あまり気にしなくていいと思うが、男性なら十八、女性は十六歳だったな。後二十歳までは保護者の許可が必要だったかな」

 「随分遅いんだね」

 「いや、それが最低年齢ってだけで、女性の場合殆どの人は二十歳過ぎから三十歳までに結婚って感じだったよ」

 「え、それって下手したらそのまま寿命が来ちゃうよ」

 「まあこっちの世界だとそうだな。だが昔の地球では平均寿命は男性で八十歳を越えていたからな。女性は九十歳くらいだった。そう考えればこっちほど生き急いでいないからそこまで遅くはないだろうな。人口も増え過ぎなくらいだったから、そもそも結婚しない人もいたぞ」

 「はぁー、凄いね」

 「医療技術で寿命が延びたっていうのもそうだが、人間にとっての危険が少なかったのも理由の一つだな。病気以外には事故くらいしか死亡理由がない、いや殺人っていう理由もあるか。一部地域に限れば戦争もあるか」

 「それはこっちもそうだし、仕方ないよね」

 まあ人間同士争うのは、もうどうしようもない事だろうね。

 「モンスターがいないというのが凄いわ」

 「ああ、それでいえば普通の動物が危険生物になるが、殆ど駆逐されていたからな。山に入り込まなければ熊などに出会わない。海ならなるべく海岸沿いで遊ぶって感じか。それでめったに動物には会わなかったな」

 「なるほどだわ。ほとんど駆逐済みなら怖い物がないわ」

 「だな。こっちの世界だとありえないかもしれないが、モンスターや動物は逆に保護対象になっている感じだ」

 「保護するの?」

 「ああ、殺し過ぎて種が絶滅したなんて事も珍しくなかったからな。あくまで危険がなければって話だぞ。まあ熊や虎なんかも動物園で保護されていたがな」

 「もうそこまでいくと、人間の方が脅威だわ」

 だから人間が傲慢になったっていうのもあるのだろうな。自然も壊したい放題だし。

 国によっては環境保護など気にしないところもあったしな。自然が壊れたら他に移住したらいいとか、頭狂っているとしかいいようがないような思考もあったくらいだ。お前こそ壊れろといいたい。

 そう考えると、こっちの世界の方がバランスはいいのかもしれないな。適度に人間の脅威があるので、環境が再生する余地がある。

 この地球にモンスターを配置したのは正解といってもいいのではないかな。まあそもそも人間を管理する神がいるのが大きく違うのだろうな。


 「まあとにかくあまり地球に拘らなくていいぞ。こっちから見たら適齢期を完全に過ぎているからな。幼過ぎるのも問題だが今のレイシアなら肉体年齢的に見て、十分結婚の対象になりうるだろう」

 「うんわかった」

 どうやら参考にはなった感じだな。

 体の一部を見てもう少しって呟いていたけれどね。いや僕はそこまで気にしないぞ?

 好きになった相手そのままがいいだろうし。体目的で結婚したい訳じゃない。元々今のレイシアは、最初に会った時と体が違っているから今更だ。

 まあレイシアとは記憶が戻った時点で結婚しているようなものだから、そこまで形にこだわる必要はないように思われる。それより今はビゼルもいるので、付き合っていくバランスが難しいな。

 そっちに気を使っていかないと駄目だろう。今まで待たせた、ビゼルに申し訳ないしな。

 二人共に不満がでないように、平等に付き合っていかないとだな。こんな面倒な状態がいいって物語の主人公の気持ちが、よくわからない。だからといって今更二人の内どちらかを切り捨てる気もないがな。

 指し当たって時間的余裕がある今、デザートでも作ってご機嫌を取ってみるかな~


 さて何を作ろうか。地球が滅ぶ時に確認できたレシピは何でもある。うーん、迷う。

 いやそもそもデザートならマジカルドールのモルモを呼べばいいのでは? もっといえば、こっちで信仰の事ばかり気にしてきたけれど、もっと快適に暮らせるように環境を整えればいいのでは?

 そうだな、時間はたっぷりあるのだし、身内をないがしろにしてまでやる事でもなかったか。

 まずはそうだな。仕事場ではなく、寛げる拠点を造ってみようか。

 これで本当の意味でのんびりとできる空間ができるかな。

 間取りなどは元の世界の拠点と変わらなくていい。そちらの方が安心できるからな。

 そうと決まれば次はモルモを召喚し、ちょっと豪華な昼食を準備するとしよう。

 「そういう訳で、家族サービスをしたいので豪華な料理を頼む。食後にデザートも用意したいのだが、一口サイズで種類を豊富にできるか?」

 「お任せください」

 「できそうか。なら頼むな」

 「はい」

 相変わらずマジカルドール達は、僕からの指示を嬉しそうに受けてくれるな。彼らも僕の子供達、家族の一員だとするならば、僕の方こそもてなさなければいけないところなのだがな。

 彼らはこちらの方が嬉しいらしいので、まあ仕方ないのかな。

 「モルモもせめて、食事は一緒に食べよう。お前も僕の家族なのだからな」

 「ありがとうございます!」

 嬉しそうなのでよしとしよう。

 こんな事で喜んでもらえるってことは、今までこんな事もして上げられていなかったってことかな。反省しなければ。

 それでは昼までの間に今後の付き合い方について、レイシア達と相談してこようかな。喧嘩や取り合いとか、身内で争いたくないしね。


 「今まで外にばかり目を向けていたように思う。だから今後は家族の付き合いを大切にして行こうかって考えているのだが、二人もそれでいいか?」

 「うん! もちろんだよ」

 「わらわももっとバグと一緒にいたいわ」

 まあ今までも一緒にいるだけはいたのだがな。仕事ばかりで一緒って感じではなかっただけで。だからか当然のように二人とも賛成し、夜も含め今後どう過ごして行くのか話し合ってみる。

 ちなみにビフィーヌとか、べったりくっ付いて来る眷族などもいるので、そっちについても相談してみよう。

 僕の子供みたいなものとはいえ、別に血の繋がりがある訳でもない。しかし身近な家族で眷属だ。大事にしたいのは確かなのだが、さすがに結婚する気はない。

 結婚したいのかと聞ける訳でもないしな。どうしたものか。好かれてはいるのだが、眷族とか家族としてなのか、男性としてなのかわからない。いやそもそも自意識過剰なのか?

 それとなく確認してもらえると助かる。

 二人には先程モルモを呼んで準備させている昼食会の話もしておく。もちろん参加できそうなこちらに来ている眷族も同席させよう。

 「いっそうの事、こっちに移り住む?」

 レイシアがそう提案して来た。まあそれもわるくはない。

 「この世界を創る時に、太陽を挟んだ反対側にも惑星を一つ創っておいた。いずれそちらで暮らしてもいいかもしれないと考えていてな。どちらにも拠点を造ればいいだけだとは思うが、どうする?」

 「そうね。自由に行き来できればいいわね」

 「うむ。わらわも好きに移動できればいいと思うわ」

 「そうだな。両方に拠点を造って、好きな時にどちらにも行けるようにしようか」

 とはいえ、反対側の惑星には何もないのだがな。テラフォーミングをして、動植物など配置して来たので、生き物がいないわけではない。むしろ自然な感じで溢れていてくれるだろう。

 そういう意味では自然な感じを楽しみに行くのはありかもしれないな。いや、疲れた日本人でもあるまいし、自然を見て感動とかしないか?


 「まあ反対側は自然以外何も無いので、拠点造りはまた今度だな。まずはこちらでどこに拠点を設けるか、考えようか」

 「普通に人間の町のどこかじゃないの?」

 「それでもいいぞ。だが種族は他にもいるしな。何処にどういう拠点を造るかだな。複数でもいいだろうし」

 何も拠点は一つしか造れない訳じゃない。僕達なら転移で移動すればいいので、何処を拠点にしてもいいくらいだ。

 教会に住むっていうのも手だしな。

 「ふむ。わらわはどちらかといえばマシナリーの所がいいわ。いろいろと充実しているわ」

 「あっ。それいい!」

 あー、確かにあそこだけファンタジー観が薄れ、現代日本に近い状態だ。いや、下手をしたら近未来的な暮らしになっている。一部魔道具まであるから、近未来ファンタジーか?

 ネットが繋がっていたらいう事はなかったのだが、まあシステムを作ったところで繋がる相手がいないよな。

 検索は役に立つと思うのだが、神の叡智があるので不要だしな。

 「じゃあ拠点はマシナリーの町にするか」

 「うん」

 「うむ。早速行くのだわ!」

 急かす二人に連れられ、マシナリー達の町へと向かった。


 まず拠点を造る上で何処に造るかなのだが、都合がいい空き家などがある訳じゃない。そこで町の外れの土地を貰う事にした。

 今は町の隅だけれど、マシナリー達も徐々に増えているのでいずれ家も建ち並び、気にならなくなるだろう。

 まあ今の僕達ならば町の外れの方が都合はいいのかもしれないな。眷属達も呼べるように大き目の屋敷だって造れるので、かえって広い場所を貰えて都合がいい。

 手が空いているいないに関わらず、拠点の間取りについて話し合いをして、それこそ豪邸のような屋敷を造って行く。

 客が入り込まない空間についてはもう、好き放題に技術をつぎ込んでみた。

 自分達だけなら、幾らでも技術をつぎ込んでもいいだろう。見られたらまずいがな。

 さてこれだけ大きいと、警備とかも必要になるか? いっそ元の世界から誰か連れて来ようかな。元魔王軍の生き残りとか、ドラゴンやノーライフキングなので警備として申し分ないだろう。

 いやこちらに連れて来ては、暇過ぎて嫌になるか?

 せっかくの拠点で仕事をさせるのも、申し訳ないよな。ここは結界でも張っておくか。

 彼らが来るのならば、普通に遊びに来てもらえばいい。こちらならばドラゴンでも、そういう種族だと受け入れられるだろう。ノーライフキングは、さすがに怖がられるかな?

 まあ下手に刺激しなければ、お互いに危険はないだろう。ここはマシナリーの町だし、人間のようにいきなり襲い掛かっては来るまい。


 屋敷の間取りを考えた後はせっかくなので、向こうにいるマジカルドール達も呼んで建築して行く事にする。

 彼らは物を作るのが好きだからな。もちろん僕からの指示っていう事もあるのだろう。僕達が考えた間取り以外の装飾なんかも、独自に考え細かく仕上げてくれる。それでいて成金みたいな悪趣味な装飾などはない。

 おかげでシックな落ち着く屋敷が出来上がった。いや、今も地下を造っているところかな。

 個人の部屋の家具なんかも造っている最中なのかもしれない。だが外見は完成した。

 相変わらず魔法のある世界は凄いな。一瞬で屋敷も造れてしまうのだから。

 裏ボスである悪霊群に対抗するにはまだまだ神格が足りない。いや、確実に倒すのならばだな。おそらく泥臭い戦い方なら、今でも五分五分の戦いはできると思う。確実性が欲しいのだ。

 大根になったのは予想外だったが、これ以上死にたくはないからな。

 レイシア達にも心配をかけるしね。

 そう考えるとこっちの地球でいったどれだけの時を過ごす事になるのだろう。

 この屋敷はそんな僕達の憩いの場となるはずだ。しっかり造り込んで、和める場所にしたいものだ。細部の造り込みを任せよう。

 その前に昼食だな。モルモに言って、こちらに運び込んでもらい、みんなで昼食にしよう。


 どっしりと構え、年数をかけて信仰を集めるようにしようと考えている。

 多種族が接触する時に揉め事が発生したりするが、基本的に殺し合いになる事は少なかった。どうやら教会で宣伝した種族の特徴などが知れ渡り、いきなり襲い掛かったりはしなかったようだな。

 それならそれでもっと友好的な接触をすればいいのに、お互いに自分達に有利になるよう主張し合うから揉める事が多かったみたいだ。これも様子を見ていると、神官がちゃんと仲立ちをして揉め事を収めていた。

 これなら僕達がいちいち出て行かなくていいので、見守るだけでよさそうだな。

 まあ逆にそれだと、神々が身近じゃなくて信仰が集めにくくなりそうだけれどね。そこはバランスだろうな。

 大半の揉め事は自分達で収めてもらって、どうしてもって時は僕達が出て行く。それとは別で、神と接触出来るイベントを作るのがいいだろうね。

 揉め事の仲裁ばかりだと、断罪ばかりしている神の印象が付いちゃいそうだからな。ここは祭りみたいな明るいイメージも必要かもしれない。

 ああそうだ。それぞれの種族で、年に少しの期間だけ試練のダンジョンを開放していたから、そこに参加すればいいのではないだろうか。参加といっても出店とかだ。

 現地種族も何らかのお祭り騒ぎみたいなものはするだろうし、それに便乗して何か出し物に参加するとか。

 祝福みたいな後々まで続くものはしないけれど、会えればその日一日幸せになれそうな何かをプレゼントとか。

 そういうイベントもいいかもしれないな。


 「そんな訳で、たまには顔を出して忘れられないようにしようと考えている」

 「そもそも神様の事を忘れたりはしないよ」

 ありゃ、こっちの世界だとそんな認識か。日本だと姿を見せないものはいないって感じなのだが。

 まあこちらには神官がいるから、また考え方が違うのかもしれないな。でもそれだけだと神官にしか接触しないから、教会の腐敗とそれ以外の無神論者が増えそうだ。

 やはり全ての人間に接触の機会はあった方がいいだろう。

 「まあ年に一回だし、全ての人間に顔を見せる機会はあった方がいいだろう」

 「そうね。わかったわ」

 「年に一度なら問題ないわ」

 ああ、また何かしら仕事を増やしては、自分達の時間が無くなるな。こっちのバランスも大切だったよ。

 日本風にそれぞれの神からお守りをプレゼントして、身に付けたその日一日が幸運になるアイテムをプレゼントって感じにしよう。転売禁止で、効果があるのはその年内のうちの一日だけにしたら揉めないよな?

 これなら神の存在が身近に感じられるだろう。まあお守りを用意するのが大変かもしれないが、魔力を注ぐだけでいいようにしたら、問題はないだろう。

 人気不人気の神が出て来そうだけれどね。



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