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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第三十一章  変わる世界
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戻って来た地球での活動

 《神格 が一つ上がりました》

 ぼちぼちと神格が上がり始めたようで、少しホッとする。

 さてここに、僕が神様として管理する世界がある。そんな世界にオリジナルな種族がいないのは何となく寂しいと思わないか? いや単にもう少し違う種族が欲しいかなって感じたのだ。

 駒田のおっさん達を見て、昔と同じ環境は与えて上げられないが、もう少し似せた生活ができないかと考えたこともある。

 コンセプトは昔滅んだ文明の遺産。それを神が拾い上げ手を加えた種族。

 そして創っちゃいました。判機械人、マシナリー族。

 機械の体なのだが、普通の人間と同等の魂を持っている種族だ。

 まあ機械の体といいつつ、改造は出来ないのだがね。それをしてしまうと、際限なく強くなりそうなのと、人種ではなくなってしまいそうだったから無しにした。

 あくまでも機械の体、昆虫の外骨格みたいなものであって、それをパーツのように取り外したりは出来ない。人間で言う血肉を引き剥がしているようなものだからだ。分解=死亡だな。

 そして彼らは多少の機械文明を復活させ、昔懐かしい日本の生活をわずかだが体験できるようにしてもらう。

 具体的に言えば一部電化製品の復活である。

 冷暖房、電子レンジ、洗濯機、冷蔵庫などなど。逆に駄目なのがパソコン、テレビ、ラジオ等々。

 おっさん達はパソコンを使いたいだろうが、さすがにそれを認めてしまうと将来的に文化が進み過ぎるだろう。いやそれぞれパスワードを設け、他人にはあつかえないようにしたらいいのかな? 後通信も禁止にして、ゲームで遊ぶくらいに機能を制限させるとか。

 それなら有りかもしれないな。どうしてもっておっさん達が望んだ時に考えよう。


 ただおっさん達が住む場所は他の人達と離しておこうと考えている。さすがに文明レベルが違い過ぎるからな。

 でもそれだとおっさん達が孤独になってしまうので、他の町への転送用の門を設置した。ストーンヘンジみたいなやつだな。

 古代文明の技術って感じで作ってみた。

 これで町の近くに跳んで、買出しや現地人との触れ合いを楽しめばいいだろう。

 おっさん達が文化を教えて、周囲の文明が追いついて来たら交流を始めるのがいいだろうな。ここだけ独自の文化を維持し、それを広めない方向ならそれはそれでもいい。

 そこの判断は任せておこう。

 マシナリー達は古き良き日本の文化を維持し、ある程度復活させることを目標にさせておく。ちなみに武具関係は発展させたくないので、ここにはモンスターを出さないようにしておく。

 あくまで文明レベルが高いだけで、戦闘能力が高い訳ではない。

 あー、そうなるといずれ合流する時に、ちょっと危険かな?

 仲間アピールとして数人、ここから外に出て世界を廻るのがいいかもしれないな。はぐれの冒険者みたいな感じだ。

 彼らも新たな人類として、LVとスキルが上がっていく生命体だ。

 外で剣を振り回して冒険するようになるだろう。ちなみに魔法適性は皆無の方向で考えている。


 「ねえバグ、種族同士の喧嘩とかはどうするの? 今はまだぶつかり合っても喧嘩ですんでいるけれど、武力衝突になったら、それぞれ彼らの神としてどう対処するのが正しいのかな?」

 「普通に間違っている方を裁けばいいのではないか?」

 これは法律の話になってくるので、基本は他人の嫌がる事をしないというのが正しいと思う。ただこれは無意識にやっちゃうこともあるし、種族の違いで何が間違っているのかわからないこともある。独自の種族風習ができて来るからな。

 そういう時は一度争った者同士話し合いの場を設け、譲り合うことが大事だろう。

 「そうだ、それぞれの種族の神官に仲裁をさせ、次は同じミスをしないように説教すればいいのでは?」

 それでも繰り返すのならばわかっていてやっているので、ミスではなく意図的に嫌がらせなりなんなりしているとみなせる。ミスとわざとしてやっているのでは違うからな。

 後は事故か。これも許せるミスと、一度でも許せないものがある。

 人の命が懸かったミスは、駄目な部類だろう。しかしそこにミスを無くそうとした努力があるなら、情状酌量の余地はある。人的ミスはどうしてもなくならないからね。

 そこまでギチギチに神が裁く必要はないだろう。

 僕達神が裁くのは、意図して他者に危害を加える者達だ。しかも証拠を残さないタイプ。

 それ以外は現地の者や、神官達で話し合って解決していけばいいと考える。

 裁判に関してはビゼルだけではちょっと難しいかもしれないかな。手が空いていたらみんなで一緒に判断していこう。

 ビゼルだけでやらせると、感情で判断しかねない。


 細かいところをみんなで話し合いつつ様子を窺っていく。

 素質のある神官も無事見付かり、それぞれが育て組織化していったりもした。まあとはいっても対立したりしていないので、神官は皆同じ宗教に属しているみたいな感じだけれどね。

 多神教って感じか? 資質を認められて神官になってはいるが、どこの神とも仲がいい。

 そこに壁とかを作らないで、みんな同じ神に仕える神官であるって感じだ。

 宗教戦争とかはさすがに嫌だからな。

 「で、その今回の喧嘩ってどんな感じだ?」

 「種族的には獣人同士なんだけれど、虎と狐なんだよね。脳筋とか小狡いとか、そんな感じの争い」

 「それはまたありがちな喧嘩だな。どっちが最初にからかったかというか、被害が出ているかが問題か?」

 「一応周囲に被害は無いけれど、まあ町の真ん中で喧嘩を始めて周囲の邪魔って感じかな。野次馬まで集まって騒いでいるからよけいね」

 「被害が無いならそのままでもいいだろう。その手の争いは本人達が納得するまでやる感じだろうな。そうなると邪魔にならない場を造った方がいいのかもな。闘技場とか」

 「なるほど。早速町の端の方にでも造らせるわ」

 「今後は争う時、闘技場以外で暴れた場合は、罰金とでも言ってやるといい」

 「はーい」

 喧嘩ですむようなものは、単なるじゃれ合いみたいなものだ。本来は仲良しだったのだろうな。


 種族間の争いは、今後増えていくと考えられる。とはいってもまだまだ先の話だ。

 まだそれぞれの町から周辺の様子を探っている段階なので、まずは幾つかの村が出来てそれが発展して町になり、やがて国になってからの話だろう。

 あー、そうなると国家間の争いになるのかな。

 なら前もってどういう種族がいるのか、神殿を通じて話を聞かせておいた方がいいだろう。

 ちなみに争いがあるのは獣人だけみたいだな。

 あそこはレイシアとビフィーヌという二柱神で別れているだけじゃなく、各獣という部族毎に別れているので余計に争いがあるようだ。完全な同一種族じゃないからな。他所から見れば全員モフモフ集団でしかないのだが。

 それだけ外見の違いは大きいということか。

 とにかく何の獣であっても、それぞれ長所と短所があるので、上手くまとまってもらいたいものだな。

 何か共通の目的とか、共同作業的な催しなどを準備するといいかもしれないな。簡単なのはモンスターの襲撃をみんなでまとまって撃退するとかそういうイベントだが、下手をするとお互いに足を引っ張り合うから却下か。

 後怪我されたりマッチポンプみたいな方法は避けたいところだ。

 そういう理由からモンスターの襲撃イベントは無しだ。

 他に何かイベントに使えそうなものはあったかな? 他部族が混じってわいわい楽しめるイベントといえば、運動会的なものか?

 神殿を通じて共通で騒げるイベントでも出来ればいいが。


 建前は神事として、何かして成し遂げれば獣人全体に祝福があるみたいな感じかな?

 でもって、単一部族だけでは成し遂げられないので、どうしても協力しなければいけない。こんな感じか。

 そうすると祝福のダンジョンみたいなものでも造ればいいのかな。

 一年で一定期間のみ開かれて、次の年まで獣人達を祝福する神のダンジョン。いいのではないか?

 早速ホーラックス達と相談してみよう。

 「いいわね!」

 「ふむ、面白そうだわ。他の種族にもそれぞれダンジョンを与えるのもいいわ」

 「あー、そうか。獣人だけに祝福を与えるのは、不公平になるな」

 確かに他の種族に不満を抱かせるのは避けた方がいい。

 いわゆる種族クエスト的なものになるのかな。ゲームっぽい考えだとね。

 じゃあそれぞれの種族に一つずつダンジョンを造ろう。

 「という話になったのだが、ホーラックス、いけるか?」

 「無論。我に任せよ」

 「では皆それぞれにコンセプトを決め、それぞれの種族に合ったダンジョンと、祝福を考えてくれ。ホーラックスは人間担当な」

 「了解だ、主よ」

 ちなみに僕の方のダンジョンも問題だな。種族に一つなのだが、これってエルフ全体なのかな?

 僕の方のエルフは白エルフなのだが、普通のエルフと共同になるとそれぞれエルフの町から転送で、一緒のダンジョンに跳ばす方法が必要になるぞ。

 やってやれない話ではないのだがな。地球の反対にいるエルフと共同にするか、時期をずらすのか。いちいち手間がかかって面倒そうだな。


 白エルフ。ただのエルフではない僕が独自に設定したエルフ。

 これはもう別物としてダンジョンは僕と紗枝で一つずつ造ることにしよう。

 こちらのコンセプトは信仰獲得の為の人数の増加だ。ダンジョンへの挑戦権を若い白エルフに限定する事によって、次世代を残そうと思考を誘導出来るのではないかと考えた。

 まあ強い個体が出て来たら瓦解するようなアイデアだけれどね。

 祝福の内容は、白エルフの育てた野菜の豊作などを約束するというものだ。ダンジョン最奥で次の年にどうして欲しいのか、祈りを捧げる事によって変えていこうとも考えている。

 神に直訴して祝福を要求するようなものだな。これなら神を身近に感じるだろう。

 子供が増えるまでの間、祝福の効果を各年毎に有る無しにしてみれば、ありがたみが分かるかもしれないとも考えている。祝福のお試し期間だな。いや、これは意地悪になるから止めた方がいいか?

 次世代が育つまでは今いる白エルフの若いのが、挑戦できるようにしておく方がいいかもしれないな。

 うん、その方が反感を持たれなくていいかもしれない。今後伝統にもなっていくだろうしね。

 後考えていたのは、基本白エルフは農業と畜産で生活していくのだが、多種族が来た時に戦力差があると征服されかねない。そこでダンジョンのレベルを多種族の強さで変化させ、ある程度の実力を付けさせようという試みも考えてみた。

 若い白エルフが基本的にこのダンジョンに潜るのなら、戦力が一定以上の集団になるだろう。できれば非戦闘員といわれる者も、このダンジョンにくらいは参加して欲しいところだけれどね。

 まあそんなコンセプトだ。


 ではいよいよダンジョンの中身を決めていこう。

 基本的には神の試練なので、禍々しいものや氾濫を起こすようなモンスターはいらない。かといって試練なのに戦闘しない訳にはいかないだろう。

 ゴーレムっていうのもワンパターンだしな。難にでも対応できて、便利なのだが。

 お約束で自分の影っていうのも、ありがちでなんだかなーって思う。。

 ここは白エルフに対して黒、ダークエルフとの戦いとかどうだろうか? もちろん邪悪な敵じゃなくて、あくまで試練の相手としてのダークエルフで。

 こう紳士的な戦闘種族的な存在。なかなかいいのではないだろうか?

 となるとこの地には白黒エルフが住む事になるのかな。ダークエルフの集落をダンジョン内に造り、試練の場でのみ交流を持つ感じ。

 試練の時にお互い切磋琢磨して争い合う。しかし戦争みたいなものが起こった時は、協力して対処するとか。

 なかなかいいのではないだろうか。

 こんな感じでダンジョンを造ってもらおうかと考えていたのだが、ホーラックスは忙しそうだな。今回は自分で造ってみるか。


 まずベースとなる基本地形を用意する。

 地上部分は簡単に神殿型。最奥に次の階層に降りる階段を作り、簡単な迷路のような構造にする。

 この地上部分は挨拶のようなものだから、ダークエルフ達も罠を仕掛けるくらいでいいだろう。地形は固定でダークエルフには弄れないようにしておく。

 さて地下一階。ここからダークエルフ達にも地形を弄れるようにして、罠なども本格的に仕掛けてもらおう。ただし即死系の罠などは避ける。別にダンジョン内で殺すのが目的じゃないからな。

 まあ初めなので軽く林のようなまばらな森って感じでいいだろう。ダークエルフ達のお手並み拝見って感じの階層だな。

 ちなみに負けた者は地上に追い出す仕様だ。

 そういえば、経験値になるモンスターも必要になるのか。これじゃあ技術は学べてもLVが上げられない。

 かといって邪悪な生き物を用意する訳にもいかないよな。どうしたものか・・・・・・異界からの侵略者を押さえ込んでいるとかそういう設定で、魔物でも用意するか?

 いや、あまり禍々しいものは用意しない方がいいかな。ここは経験値になるスライムでも用意しておこう。

 ダークエルフにもLV上げをしてもらいたいからな。これは一応共通の敵って感じだろう。

 母体となるスライムを創って、子スライムを生み出してダンジョン内に補充する。最終階層に入れるのは年に一定期間だけ。後は子のダンジョン内で戦って経験値を稼がせる。

 こんな感じでいいのではないかな?


 試練用なので全五階層の軽いダンジョンにしてみた。地上は含めず地下五層。

 地下一層は浅い森、二層は森林、三層は鍾乳洞、四層は蟻の巣、五層が最深層で宮殿。

 ダークエルフ達の住居を森林部分に造り、母体スライムを四層の蟻の巣に造る。

 スライムは四層から地上に向けて徘徊して行き、地上の神殿まで徘徊するが、外には出て行かない。

 基本罠の類はダンジョンに設置しないようにして、ダークエルフに任せる。その代わり殺傷能力の無い罠を作り、白エルフを嵌めた数で、ダークエルフには祝福を与えるようにする。

 祝福内容は罠で生産品の品質が良くなる祝福を、直接戦闘で白エルフを捕らえるとその捕まえたダークエルフには、異性を幸せに出来るというもの。これも人数をある程度増やしてもらう為だな。

 五層は精霊とでも戦ってもらおうかと考えている。

 こんな感じでいいのではないかな?

 レイシア達はどうなったのだろうか。ホーラックスと相談しながら造っているので、ダンジョンの方は大丈夫だと思うが、祝福に向いたダンジョンにできただろうか?

 まあ後々駄目そうなら改装していこう。僕の方も含めてだがな。


 まだみんなはダンジョンの打ち合わせなどで忙しそうだったので、今回は一人で町の様子を見に来た。

 おお、こちらが用意していなかった冒険者ギルドが出来ているな。他にも自警団の施設や市役所みたいな建物、裁縫などの工場などもあるかな。

 そういえば服装なども結構お洒落になっている。

 金属製の品物などは、ちょっと少ないかもしれないな。冒険者などはほとんど皮鎧が多い。フルプレートとまではいわないけれど、チェインメイルくらいは着ていてもいい気がするのだがな。最初だからなのか? それとも技術的にまだ難しいのかな?

 武器の方は鉄製の武器があるようだが。ちょっと覗いてみるか。武具屋は何処だ?

 「すまないが、武器防具を売っている店は何処かな?」

 「装備ならギルドの裏手に行けば、たいていの物がそろうぞ」

 「どうも」

 適当な住民を捕まえて聞いてみると、直ぐ教えてもらえた。他所者って警戒されるかと思ったが、そのようなことはなかったな。しかし何故表に造らないで裏に?

 まあ行ってみるか。


 冒険者ギルドの裏に行くと、鉄を叩く音が聞こえて来た。自分で作って自分で売っているのだろうか?

 職人街みたいな区画もあったのだがな。まあいいや、せっかくなので店に入ってみる。

 店には冒険者がそこそこ入っていて、その場で調整などしているようだった。どうやら鉄を叩いているのは、調整のための音だったのだな。防具ではなく武器のだったが。

 一応防具もあるにはある。つまり加工技術が無い訳ではないみたいだ。それなら何故誰も買わない?

 「少しいいか。みんな鉄の防具を買わないようだが、何か理由でもあるのか?」

 「ああ、そりゃあ重いからだ。町の近くだと皮でも十分対処できるしな。なのに錘を付けて動いていたんじゃあ、効率が悪いんだとよ」

 なるほど。確かに町の近くにはあまり強いモンスターは配置していない。

 それならこれから先に向かう人は、鉄製の鎧を使うやつも出て来るのだろう。今はゲームでいうところの初期装備か、初心者が少し奮発してそこそこの装備を買った状態なのだろう。

 それならもう少し様子見だな。


 戦闘職も生産職もちゃんと上手く協力できていて、町の機能におかしなところは今のところないようだ。発展途上だから仕事にあぶれるような人もいないのだろうな。

 まあ働きたくないやつはいるようだが。これはどうしようもない事だろう。金がなくなれば働くだろうしな。

 最悪盗賊とかにならなければ、放置でいいや。

 ・・・・・・うん? 本体の大根の方で呼ばれているようだな。これは狼か? 確か半神分離のスキルで出て来た狼だったよな?

 ああ思い出した、この犬っころと卵の組み合わせ。

 一番初めに僕がレイシアに合成された時の面子じゃないか。何でこっちに来ている?

 あー、魂レベルで繋がっているから向こうからこっちに来られるのか。そして何か言いたい事があって来たみたいだな。

 何だろうな。とりあえず行ってみるか。


 大根の元に移動というか、分裂をやめて本体に戻り、再び別れたら移動終了だ。

 すると直ぐに気が付いた犬っころが嬉しそうに尻尾を振り、卵を転がしてこっちに来た。

 この卵が大事なのか? 何となく伝わってくるイメージによると、この卵を僕に食べさせようとしているっぽいな。

 これって一応僕のスキルから分離しているだけで、元は僕と同じものだぞ。いくら卵でも目玉焼きにして食べても意味がないと思うのだがな。卵でも分体みたいな扱いだからな。

 うーん。そういう意味の食べるとは違うのか? どちらかといえば吸収に近いか。

 ふむ。存在の吸収。僕が卵に割り裂いていた魂という力を、完全に吸収することで新たな力にするのか。あー、何となくイメージが出来たぞ。

 こいつには無垢な魂があるのだが、思考能力とかそういったものはまだ生まれていないのだ。そしてその状態で僕と合成された為、卵から成長することもなくなった。

 つまり意思なき魂が一つ、無意味に存在して僕の力が割り裂かれているので、この機会にそのリソースを完全に取り込んでしまえという話だな。メリットはこの精霊としての分体の強化になる。

 この卵一つだけでは力不足だけれど他にもいらないやつは取り込んで、こっちの分体の力が増せばこっちを本体のように扱うことが出来るようになりそうだ。

 なるほどこれはいい情報を持って来てくれたな。何故そんなことを知っているのかわからないがな。まあいい、確か合成した中には危なくて出せないような魔族とかもいたよな。あいつなんか完全に取り込めばいいリソースになりそうだ。


 それでは早速魔人を筆頭に、絶対味方にならないだろうと思う魂達を、吸収させてもらおう。後卵もだな。

 卵はもはやただのエネルギーの塊でしかない。育てたら生まれるっていうのなら話はまた違ってくるのだが、運が悪かったと思ってもらおう。

 犬っころと違って、かなり強い素材を集めて来たので、大半の者が味方にはならない気がする。例えばバフォメットとか、デーモンとか、エルダーリッチとか。

 力で押さえ付けたりは出来ても、後で絶対に裏切りそうな連中だ。でもそういう連中だからこそ、可愛そうとは思わずに吸収できるともいえる。

 手順としては自分の内側で分解、再構成する感じでいいのか。

 この再構成する時に、本体から別けた分体を強化できるみたいだな。

 魔人だと肉体能力が強化できて、デーモンは魔法の素質が強化できるみたいだ。他にもエルダーリッチで魔力が精密に操れるようになったり、クラーケンで細胞の再生速度が上がったりする。

 ああ、これはあくまで基礎能力を引き出しているだけだな。それも神格を持っている僕の場合は微々たる違いかもしれないが、より深く扱えるようになるというのがいい。

 しかしそのちょっとで分体の濃度が変わって来るようだ。

 肉体をより物質として維持できるようになる。つまり今は精霊として魔力で体を構成しているのだが、神が地上に降りる時に受肉したりするらしいが、それと同じように肉体を作り出せるみたいなのだ。

 そして強化終了時点で半神半霊みたいな存在になるみたいだ。

 限りなく人間に近い存在といえるだろう。まあ見た目はだけれどね。

 多種族と子供を作ろうと考えた場合、この半神半霊では相手が危険になりそうだ。神降しと同じだけの負担がかかるからな。そこをもうちょっと修正したいところだ。


 うーん。やはり神というのは格が違うようだな。

 他にもタラスクとかやばそうな魂を吸収しつつ、人間でも耐えられるくらいまで力を押さえられないか考えていたのだが、これはもう人間の方を強化した方が早いだろう。

 魔道具で押さえる手もあるのだが、神の力が子供に宿った場合が危ない。

 限界突破薬って、肉体も神格に耐えられるくらい、強くなるのだろうか? まあ僕としては子供なんていなくていいのだが、欲しいと言われると仮定して準備だけはしておきたい。

 レビルスのことを考えると一緒に遊ぶのは問題ないが、一緒に暮らしていくには合わない気がするのだよな。こっちは別に嫌ってもいないのだが、向こうが一歩引いて接して来ていた気がする。

 やっぱり理解できないものの相手は、苦手だな。犬猫とか・・・・・・


 今までレイシアに合成されて、取り込んだまま無意味な存在を全て吸収し終えた。

 これで一応分体とはいえ、人間の姿になれたようだ。今では大根の世界樹の方が分体といえるだろう。これは無いと白エルフを創った意味が無いのでこのまま置いておこう。

 だがこれだけではまだマイナスって感じだ。相手がパワーアップした事も含めると、まだまだかなりマイナスだ。

 もっといろいろな種族を増やすべきなのか? それとも現状を維持して人数が増えるのを待つべきなのか。

 下手に増やすと種族同士で争い合ったりするから、そう安易に増やせないのだよな。

 『バグ何処―』

 噂をすればというやつか、レイシアから声がかけられた。

 「本体のいる場所で、分体の強化をしていたぞ」

 『あ、そうなんだ。こっちみんな、大体ダンジョンの相談が終わったよ。後はホーラックスに造ってもらって、調整かな』

 「そうか、じゃあこっちも切が付いたから、一度戻るよ」

 せっかくだし、それぞれの種族が争わないような予防線でも、みんなで考えてみるかな。

 それぞれの大陸に隔離とか、そういう身も蓋もない対策はしたくないしな。種族毎の運動会は、友好種で懲りた。


 「お疲れ。せっかくだからそれぞれ担当した種族同士、争う事無く交流する方法も考えておこう。友好種でやった運動会みたいなイベントは、種族毎で能力が違い過ぎるから禁止な」

 「あー、基礎能力が違うからね。ダンスとかは?」

 そういえばせっかく覚えてもあまり踊らないからな。それにあれはある程度身分のある立場の者がやるやつだからな。一般市民なら盆踊りか。お盆が無いから何踊りになるのだ?

 まあ庶民的なお祭りを種族毎にやって、交流するのもいいだろうな。オークションやバザーみたいなものもいいかもしれない。もっと特産品みたいなものが増えてからになるかな。

 「僕達が習ったダンスは一般向けじゃないから、もっと簡単なのがいいな。一応種族毎に時期をずらして祭りをやらせよう。祭りでやるみんなで踊るやつなら誰でも適当に踊れるだろう。それに合わせてオークションとかバザーもいいだろうな」

 「それはいいかもしれないわ。出店もあれば美味しいものも食べられるわ!」

 ビゼルも乗り気だな。食欲が刺激されているだけかもしれないが。

 「確かに庶民のお祭りといえば出店だな。それにはもっと町同士の行き来が盛んにならないと駄目だろう。これは冒険者にがんばって欲しいところだ」

 モンスター避けの道具とか、考えないといけないかな。

 それを道に設置して交易路を確保する。まだまだ先の案件になるか。

 「祭りが開かれたらバグも出店を出すのだわ!」

 「まあ手が空いていたらな」

 ふむ。料理か。

 各種族でしか食べられない特産品。戦争などで手に入らなくなったら困る食材や、調理方法? いや香辛料とかか?

 食料に打撃があれば、自国の民も怒るだろう。食べ物の恨みは恐ろしいからな。

 そして日本人の食に対する執着も、凄いと思う。

 戦争して争えば、食材が手に入らなくなるってなったら、早々争わないかもしれないな。他所で育ったら意味がないけれど、そこら辺りを考えればいける気がするな。

 「何か思い付いたの?」

 「ああ、種族毎に独自の香辛料を持っていて、争えばそれが手に入らなくなるとかなら、どうだ?」

 「いいかも。確かに美味しいご飯は重要だよ! お腹一杯食べられれば、争いなんて起きないよ」

 さすがに食欲以外もあると思うぞ。権力欲とかな。

 だが生きている者は皆、ご飯を食べる。食事は日常でかなり大事な要素だ。それを奪おうとする者を許さない者も多いだろう。

 上手いこと調整したいものだ。



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