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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第三十一章  変わる世界
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レイシアの経験稼ぎ

 ホーラックスを天界へと送り出した後、レイシア達と経験稼ぎへと出かける。

 テッシーの神格については、電脳世界ベギウスオルクで駒田のおっさんの追加要素がどうなるかで判断しようと考えている。

 上手く行きそうなら、テッシーを信仰する種族って感じの別の世界を構築してしまえば問題はないだろう。

 まあその場合、僕とテッシーで種族毎に信仰対象が別れる感じになるのだろうけれどね。

 でも、種族で信仰する神が違うとなれば、取り合いにはならないぶん仕事は少し楽になるだろうな。

 とりあえずおっさんからの連絡を待ちつつ、レイシアの経験集めを進めて行こう。


 「ファイアフィールド! ファイアビット!」

 テッシーとビゼルが挑発しつつかき集めて来た異形の群れが、レイシアの放った炎の絨毯であぶられる。

 一部感がいいのか、テッシーとビゼルが飛びのくのと同じタイミングで範囲外へと逃れた異形もいたのだが、その異形には同時発動された固定砲台の火の矢が降り注ぎ体力を削っていった。

 「止め! ファイアランス!」

 ほとんど死に掛けとはいえ、ファイアビットだけでは削りきれなかったようで、即座に次の魔法を使っている。

 「ソロで倒せるまでもう少しっていったところかな?」

 「うーん。まだまだかな? 前と違って魔法だけしか鍛えていないから、接近されるとちょっとつらいかも」

 「そうだな。昔は召喚獣が盾役をしてくれていたから大丈夫だったが、魔法オンリーではちょっときついか」

 「だねー」

 テッシー達がいてこそ、無双状態で倒せているって感じだろうか。

 召喚の代わりをしてもらっているって感じだな。

 「まあソロに拘る必要もないわ。わらわ達が付いておる。レイシアは気にせず経験を稼ぐがよいわ!」

 「任せて」

 ビゼルとテッシーがそう言って次の異形を集めに走って行った。

 ゲームのパワーレベリングみたいになっているな。

 というか、レイシア達の経験稼ぎにはなっているが、見ているだけの僕とビフィーヌには経験にならないのだが・・・・・・

 まあいい。僕達だけならいつでも経験は稼げるしね。

 レイシアは人間なので睡眠を必要とする。その寝ている間にでも経験集めすればいいのだから。


 「もうそろそろ異形相手じゃあ、経験を稼ぐのも限界かな?」

 「うーん、そうね。魔法以外だとまだまだ強敵かなって思うんだけど、魔法だけなら負ける気がしないかな。まあ不意打ちとかされるとわからないけどね」

 まだ生き残っている人間の近くで、比較的異形が多い地域に跳んでは経験稼ぎがてら討伐を繰り返して来たのだが、さすがにそろそろ効率が悪くなってきたように感じる。

 「私が守る。レイシアが不意打ちを受ける事はない」

 「まあそれ以前にわらわ達を抜けて、レイシアの元に辿り着ける者などおらんわ」

 テッシーとビゼルが自信満々に言っているように、異形も片手間に倒せるようになってきていた。

 後は難民の子供達に任せて、僕達は拠点のダンジョンで経験稼ぎかな~

 元々人間が自分達でどうにかしなければいけない問題だったのだから、これ以上は自分達でがんばって欲しいところだろう。

 というか、もっと責任ある立場の大人達にがんばって欲しいよな。

 そこら辺り、どうなっているのだろうか?


 今生き残っている大人というか、王侯貴族辺りの情報を検索して多目的シートに表示させて見る。

 うーん。王族関係は生き残っていてもその国の周辺に、数える程の人数に減っているようだな。

 国王として残っているところは二十ヶ国あるかどうかで、王族どころか貴族自体が全滅している国も複数あるくらいだ。

 これはハウラス達が暴れたせいでもあるようだな。

 異形に堕ちるだけなら、ここまでの被害が出る事もなかっただろう。

 それもこれも魔族化したハウラス達が、中途半端な知能を残したまま暴れまわったせいだな。そのくせ心のどこかに仲間意識だけは残っていたという、なんともやりきれない部分が余計に被害を大きくしていた。

 理性を失くして獣みたいに暴れるだけなら、もう少し被害は少なかったはずだ。

 それもここ最近は被害が出ていない様子。

 というのも、該当魔王ハウラスと生き残りの四天将が次に狙っていたのがフォーレグス王国の同盟国、ワレスホルト国だったらしい。

 その同盟国には悪意を持って入る者を遮断する、いや今の結界は無理に入ろうとすれば捕獲するものになっていた。

 当然やって来た魔王達はその結界に阻まれ、捕獲されているのを巡回に廻っていた死の軍団であるアンデット達に発見されていたようだ。

 さすがに魔王達をこちらでこっそり倒す事も出来ないので、そのまま放置しているみたいだが・・・・・・いずれレビルス達が強くなったらどこかに移動させておかないと駄目だろうな~

 結界に捕らわれて動けない魔王を倒した勇者って・・・・・・さすがにちょっと微妙だと思う。

 というか、魔王のくせに捕獲されるなよっていいたい。

 おかげでいずれ対決する場を設けなければいけなくなったではないか。余計な仕事を増やしおってからに・・・・・・

 まあそこら辺りの演出というか調整は、後々用意すればいいかな。どうせ異形の討伐ばかりしていても、最終的なLVは足りないだろうからね。

 やはり最終的には勇者用のダンジョンで修行してもらう方向になるだろう。

 (ホーラックス。いずれ必要になると考えられる勇者用のダンジョンの準備を頼む)

 『我が主よ。お任せを』

 講習が終わり次第、準備に取り掛かってくれるだろう。

 ホーラックスも正式にダンジョン運営を任される神になるからな。安心して任せられる。


 レビルスの事はこれでいいとして・・・・・・こっちはこっちでそろそろ専用ダンジョンでの経験値稼ぎに移行かな?

 「おーい。そろそろ拠点のダンジョンに移動するぞー」

 「やっぱりそうだよね。そろそろLVも上がらなくなってきたみたいだし。そうしようか」

 「うむ」

 みんな異存はないようだ。

 これ以降の異形討伐は、レビルスと難民の子供達だけに任せる感じでいいだろう。

 いや、普通に大人達も倒してほしいものだよね。

 さすがに世界中に溢れている異形を、子供達だけで倒して行くっていうのは、無茶な気がする。

 これ以上異形が増えないというのなら、少しずつでも減っていくのだろうけれど、おそらく少しずつ増えていくと予想出来る。

 こればかりは人間という性としか言いようがないかな。

 誰しもが善人として生きられない。

 生きる為にはこずるい事もしていかなければいけないのだろう。あるいは無自覚に傷付けたりとかな。

 それが行き過ぎると、他人に害をなしても平気になって行く。

 僕としては多少こずるくても仕方がないと考えるが、せめて迷惑にならない方向に頭を使って行動してほしかった。

 まあ楽な方に流されて行くのも、大半の人間の性なのだろう。


 まあとりあえず対策を済ませよう。

 生き残りや難民達を寄せ集めている国で、冒険者や自警団みたいな活動をしたい大人を募集してみよう。

 そうして集まった人達を鍛えて、今だ暴れ続けている異形討伐を任せれば、神々達から頼まれている人間達の保護の仕事も落ち着くだろう。

 問題はその指導役を誰に頼むか、かな?

 あるいは今子供達にしている訓練を、まるごとそっちに移すってパターンもありかもしれない。

 まあそうなると、チョビの変わりだけは準備というか、任命しておかなければいけないだろうけれどね。

 それか今後の事も考えて、新たな外交官的な眷族を創るとかかな。

 ・・・・・・いや、祭りが終わって手が空いてそうなビルトフォックに任せてみようか。

 魔王軍で雑用などしていたから、彼ならそつなく何でもやってくれるだろう。

 (突然だが元ブロアド国に行って、現地の人間達のうち自警団として活動するか、冒険者として異形退治しそうな者を育ててくれないか?)

 『本当に突然ですね。まあやる事はわかりました。異形を相手に出来るくらいに育てればいいですか?』

 (ああ、よろしく頼む)

 『わかりましたー』

 これで後は人材が育つのを待つだけでいいだろう。


 よくよく考えれば、僕達が魔王軍にいた時と、かなり状況が違っているしな。

 僕達の場合、軍対軍。魔王軍という大規模な集団に対し、人類軍との対決だった。

 それが今回は魔王と四天将がそれぞれ個々にバラバラに暴れているのに対し、勇者側は人類を代表するパーティーだけで対処している。

 パーティーで対抗している事自体、集団戦とは考えていない。

 たった一人の人間が、魔王と戦えるのであればそもそも他の人間だって、魔王や魔族と同等に戦えるからね。それが出来るのだとしたら特殊な加護を貰っているか、装備がいいのだろう。

 だから人間側は魔族などの個に対してパーティーで挑む必要が出てくる。

 まあそんなパーティーを支援していくのが今回の人類側といった感じだろうね。だがしいていえばサフィーリア教が支援しているだけで、他にはどこも支援していない感じだしな。

 既に人類をまとめて反抗しようという国が見当たらない。

 生き残っている国自体が自国の運営で手一杯って感じになっている。

 既に独自に討伐隊を指揮した国は、壊滅に近いダメージを受けて崩壊していた。英雄級の強者はいなかったようだな。

 どこにいったかわからない聖剣でも持たせたら、こんな状況でも何とか出来たのかな?

 ・・・・・・いや、たった一人では異形はどうにか出来たとしても、四天将は荷が重いだろうな。

 さすがに人間を超える能力を持った魔族と化したやつら相手に、それなりに強いといっても人間から外れた訳でもない個人では、性能面だけを見ても無茶が過ぎる。絶対回避など間に合わないだろう。

 魔法装備を整えてギリギリになるかどうかかな?

 聖剣があるのでLVをマックスまで上げれば、ソロでも倒せない事もないかもしれない。

 まあその時は、次の魔王になった時にまた、四天将集めをしないといけないかもしれないけれどね。

 それはそれで面倒そうだな~

 なんといっても魔王システムがホーラックスの仕事になったみたいだから、他人事のように後よろしくーっとはいかなくなった事が面倒だ。

 それにそもそもギリギリで戦って、負けた場合が余計に面倒だしね。

 そう考えると、やっぱりちゃんとした勇者であるレビルス用のダンジョンも必要そうだな。


 神格を上げる為に必要な信仰をわざわざ人間から集めなくてよくなったので、神々から頼まれた人間の保護に対する比重が一気に減った。

 そんな状況で、今代の勇者の支援などが一気に面倒臭く感じてしまうのは仕方がないことだろう。

 それでも支援するのは単純に、勇者がレビルスの生まれ変わりという、ある意味身内だからって事が大きい。

 そうでなければ僕が創った国が平和なら、その周辺の国々がどうなろうとそんなに気にはならないだろう。

 まあ後はちょっとした借りや、神格を得た時に少しだけ指導してもらったという、縁があるから引き受けているに過ぎない。

 だけれども、ちょっと大変なお願い事になってしまっているように感じるな。

 そのぶん今回で貸し借りは無しってことになりそうだけれどもね。

 「さて、バリバリやるよー」

 いいかげん他所の国に関わるのが面倒になっていると、早速レイシアが専用ダンジョンへと突入し始めた。

 ここは僕用のゴーレムが出て来るダンジョンを、ちょっとグレードダウンして調整してもらったダンジョンで、今のレイシアでもいい経験稼ぎが出来るだろう。

 「だがレイシアよ。お前ならもう少しゆっくりと鍛えてもいいのではないか?」

 「え? 早くバグやビゼルと同じくらい、強くなりたいんだけど?」

 ビゼルの発言に、何でそんな事を言うのだろうって感じでレイシアが悲しそうな声を出す。

 「いやその気持ちはわからんでもないわ。だが、レイシアの体はまだ未熟だわ。実際今も魔法系の経験ばかりで、肉体的な特訓などはろくに出来ていないわ」

 「うー」

 確かに、レイシアの今の体の素質が魔法系だっていうのもあるのだが、実際まだ七歳という年齢である。いやもう直ぐ八歳になるかな。

 日本にいた時と比べてこちらの世界では、これくらいの年齢になると案外しっかりした体付きになってくる。

 だがやはりまだ幼いといえば幼いのだ。

 ハードな運動というか、戦闘はきついのも当たり前だろう。

 「確かに今無理に鍛える必要性はないだろうな」

 なので僕も焦ることは無いと言っておく。

 「わかるんだけど・・・・・・早く強くなりたいのよ」

 「まるで魔族のようだわ」

 強さを求めるのは魔族や魔物、野生動物などにありがちだよね。

 ということは案外、レイシアは野性に目覚めたってことか?

 なーんて、単純に一人だけ僕達に置いて行かれるのが嫌なだけなのだろう。

 ならば人間に拘るのをやめるのが最善のだがな~


 「うー、バグ。人間の限界を超える方法って、見付かったんだよね?」

 「一応見付かったようだな。まだ安全は確認出来ていないようだが」

 ウクルフェスの研究で、一応の成果は出ているって聞いている。

 ただし、副作用がないかどうかの確認はまだ出来ていない。

 ああいうのって、隠れた条件があったり何代も経過して副作用が見付かったりと、ぱっと見では安全が確保出来ているようでその実わからないところが怖いのだ。

 だから早々安易に使わせられない。

 「もう少し様子見?」

 「だな。だからそれまでのんびりとしていればいいぞ」

 「レイシアよ。そんなに急ぐ必要も無いと思うわ」

 まあどれだけ焦ったところで、所詮人間では追付けない差があるのだけれどね。

 ビゼルもそうだけれど、人間を遥かに超えた能力があるモンスターがベースになって、それが更に神にまで到達しているのだ。

 人間がちょっとがんばったところで、到達出来る場所にはそもそも立っていないといえる。

 レイシアも進化すれば同じ場所に来られると思うのだがねー

 残念だ。


 『バグ様。聖サフィアリア国より使者が来ています。技術支援をして欲しいと言われましたが、どのようにいたしましょうか?』

 「技術支援? 飛空艇が欲しいとか言って来たのか?」

 さあこれから経験稼ぎを始めるぞって気合を入れたところ、メリアスから念話が来た。

 それにしても貸し出し許可なら出してもいいのだが、さすがにあの技術を渡す気にはなれない。

 以前作った個人用のグライダーでさえ、戦争に利用しようとした国があった。

 こういうやばい技術などはあまり発展させない方がいいだろう。

 「お仕事?」

 思わず声が出てしまったようで、レイシアがこちらに反応して聞いて来た。

 「ああ、直ぐ終わるから始めていてくれ」

 「はーい」

 「こちらは任せるがいいわ!」

 軽く手を上げてちょっとダンジョンの隅の方へと移動する。

 テッシーやビフィーヌ、何よりビゼルがいるので上級用ダンジョンでもレイシアに危険はないだろう。

 『技術提供の内容ですが、どうやら野菜の種や栽培方法などを教えてもらいたいようです』

 あー、農作物の技術が欲しいのか。周辺国から難民が流れ込んでいて、食糧事情がきついからな。

 多目的シートを広げて世界地図を確認してみると、フォーレグス王国はどちらかといえば西寄り。それに対して聖サフィアリア国は中央辺りに国がある。

 ここの周辺国にはそれなりに美味しい野菜が伝わっているようだが、さすがに中央にまではまだまだ伝わっていなかった。

 今回の支援物資の野菜などを届けた事により、そうした美味しい野菜に注目されたのではないだろうか?

 そりゃあ美味しい野菜があれば、食べたくなるよな~

 この世界の料理はあまり美味しくないからな・・・・・・

 「野菜などなら構わない。なるべく痩せた土地でも育つ作物を優先して支援してやれ」

 『わかりました』


 そういえば今ってホーラックスは天界で研修を受けていなかったか?

 他国の使者が来たって事は、城の謁見の間で対応したはずだよな?

 メリアスが対応したのか?

 「使者の対応はメリアスがしたのか?」

 別に誰が対応してもいいとは思うのだが、一応ちょっと気になったので聞いてみた。

 『いえ、四天将が代理で対応しました』

 「あー、そういえばそんなやつらがいたな。じゃあ後の対応は頼む」

 『はい、お任せください』

 そもそもホーラックス自体が邪神だし、いくらフォーレグス王国の事を知っている国の対応だといっても、人間が対応するのには不向きじゃないか?

 邪神の瘴気はかなりきついはず。なんといっても使者は、そこらの一般人と変わらない者の場合が多い。

 やはり外交向きな眷属が必要かもしれないな。

 一応舐められないよう威厳があって、ある程度の腕っ節がある文武両道な眷族がいると今後に役立つ気がする。

 それになにやらホーラックスの仕事も、結構いろいろあるみたいだからな。

 新たな眷属を創って、仕事の分散をして働き詰めにならないよう注意したい。

 という事で早速・・・・・・

 「創造!」

 ・・・・・・ホーラックスに変わる国王ってイメージで創造してみたのだが・・・・・・目の前に立たれれば思わず跪いて敬服したくなりそうな威厳が備わっている眷族が出て来た。

 「お主が我が主のバグ殿か。これからよろしく頼むぞ」

 「あ、ああ。よろしく」

 これはまさに王族として相応しい容姿じゃないかな? ホーラックスとは別の意味で畏怖されそうな気もするけれどね・・・・・・

 「ふあー。凄い美形だね」

 「むむむ。いや、バグもそこまで悪いって事もないわ。なんというか落ち着く顔だし、安心出来るというか・・・・・・」

 こちらのやり取りを聞きつけ、様子を窺ったレイシアとビゼルが思わずって感じで固まっていた。

 手が止まった二人をサポートしているテッシーとビフィーヌは、ちらりとこちらを見た後そのまま今まで相手にしていたゴーレムの破壊に乗り出す。

 今まではレイシアに合わせて盾役をしていただけで、別に攻撃が苦手とか一人じゃ相手に出来ない訳でもないからね。

 そのメインになるはずのレイシアがボーっとしているので、僕も銃で攻撃に参加してゴーレムを倒す事にした。

 平凡な顔で悪かったな・・・・・・


 「あ、あの。ごめんね」

 「すまん。つい手を止めてしまったわ」

 二人が時期に気が付いてゴーレムとの戦闘中だった事を思い出したようだが、視線の先には既に破壊されたゴーレムが倒れていた。

 まあ、レイシアからすればあきらかに格上の戦力三人だからな。

 テッシーとビフィーヌ、それと僕が集中して攻撃を仕掛ければ、これくらいのゴーレムは秒殺出来てもおかしくはないだろう。

 「いや、構わんよ」

 別にたいした事ではなかったので、軽くそう言っておく。

 「では改めて名乗らせてもらおうか。我はビブナイクス・ロデマント・フォーレグスという。バグ殿よりこのフォーレグス王国の国王になるべく創造された者だ。よろしく頼む」

 レイシア達の視線を奪ったイケメン国王が、ばさりとマントをはためかせながら自己紹介をした。

 「よ、よろしくです」

 「よろしく頼むわ」

 微妙に頬を赤く染めながら、二人がビブナイクスに挨拶するのを眺める。

 ひょっとして二人とも面食いなのか?

 まあ確かに、僕も多少ではあるが美化された顔をしていると思う。

 でも元々の顔立ちが平凡だったからな。レイシア達からしたらイケメンのビブナイクスに目移りしても仕方がないのかな?

 そう考えると、ここには他にも女性が二人いることに気が付いた。

 テッシーとビフィーヌも面食いなのかな?

 ちらりと横を窺ってみるが、とうの二人は特に普段と変わりないように見える。

 いや、ビフィーヌにいたってはこちらを見て来て、何か用事ですかって感じで首を傾げて来た。これはいたって通常状態だろうな。

 あーでも、元々の種族が人族ではないからなのかもしれないな。


 とりあえず夫としては他の男に惹かれられるのはどうなのかっていうところもあるのだが、その相手は眷属だからあまり気にしないようにする。僕からみても嫉妬する気が起きないイケメンだしね。

 誰にでも手を出すような性格でない事を祈るばかりだろう。

 それよりも彼の役目の方が大事だ。

 「ビブナイクス。今後はこの国の国王として活動してもらいたい。部下に文官も創った方がいいか?」

 よくよく考えれば、国王だけいても仕方がない。それを支える部下が必要だろう。

 「場合によっては必要になってくるだろうが、当面は必要ないだろう。今までフォーレグス王国を運営して来た者達に手伝ってもらいつつ、必要な人員はこちらで工面する」

 「そうか」

 裏切りとか対抗勢力になりそうな貴族とか、いろいろ面倒になりそうなのだが・・・・・・普通なら気にしなくてはいけないところだけれど、フォーレグス王国ではあまり気にしなくてもいいだろう。

 眷属やマジカルドール達があちこちで監視しているので、こっそりと悪事を働くなど出来るはずもない。

 それならビブナイクスに任せてしまっても、特に問題はなさそうだ。

 「ではこれまでホーラックスの副官として運営を手伝っていたメリアスから、引継ぎをおこなってくれ」

 「よかろう」

 軽く頷く仕草もかっこいいな。畜生!

 白馬の王子様ってタイプでなく、いかにも戦闘で戦場を駆け回っていそうなワイルドなかっこよさがあった。

 確かにこれなら女子がキャーキャー言うのも頷ける。

 それはそれとして、メリアスに念話で事情を説明して、早速ビブナイクスを転移する。

 これで研修から戻って来たホーラックスは、ダンジョン関係の仕事に集中する事が出来るだろうな。

 ちなみに攻め込んで来る他国がいたのなら、城型ダンジョンで迎撃するのは今まで通りホーラックスに任せる予定だ。

 周辺国が戦争を仕掛けて来た場合、一応ビブナイクスが出ても普通に勝てるくらい強いはずだけれど、国内で暴れられるよりはダンジョンに入ってもらった方がいいだろう。

 そして最奥で待ち構えるボスっていえば、ホーラックス又は彼の配下の四天将が最適な役目だ。


 「おーい。経験値稼ぎを続けるぞー」

 どことなくポーっとしたままの二人を促し、経験値集めを始める。まあ僕はスキルを育てるだけだけれどね。

 「はーい」

 「うむ。了解したわ」

 二人も気合を入れなおしたようで、テッシーの所へと移動するのに続く。

 パーティーの役割自体は異形との戦いとそう変わりない。

 ただ敵のゴーレムは一体ずつ出て来るのでテッシーが盾役として引き付け、ビゼルが横や後ろに回り込んで接近戦を挑む。

 そしてレイシアとビフィーヌ、そして僕が遠距離攻撃で体力を削る。

 その役割分担から一番きついのがテッシーなのだけれど、さすがゴットホムンクルスといったところか。巨人を前にした子供って感じの見た目にもかかわらず、どれだけ叩かれても微塵も揺らがない。

 ゴーレムの攻撃を受け流すのではなく、全て受け止めて後退りすらしなかった。

 そんなテッシーが一人に対し、アタッカーが四人っていうバランスの悪いパーティーなのだが、ヘイト管理もばっちりなようで他のメンバーにヘイトが移る事もない。

 完璧な盾役だ。

 まあとはいうものの、レイシア以外のアタッカーがレイシアに合わせてLVを下げているからだろうね。

 単調ではあるが確実に経験を稼げていると思う。

 「レイシア、そろそろ接近戦の方も経験を積んで行くか?」

 「そうね。さすがに後衛しか出来ないっていうのも嫌だし、そろそろ体も動かしたいかな?」

 「テッシーが安定して敵を固定してくれているし、範囲攻撃だけ気を付けていけば問題なく前に出られるだろう」

 「うん、わかった。じゃあちょっと前に出てみるね」

 僕とレイシアの会話を聞き、ビゼルがおいでおいでと手を振る。

 テッシーはちらりと視線を送るだけで、黙々とゴーレムの攻撃を捌き続けていた。

 「ビゼル。一応範囲攻撃の時に、フォロー出来るように気を付けてくれ」

 「言われるまでもないわ。任せてくれていいわ!」

 一応前線に行くのなら、一番近くにいるビゼルにも指示を出しておく。

 僕だって全力を出せばビゼルよりも早く駆けつける事も出来るとは思うが、まあこれも連携訓練って思えばいいだろう。

 いや、僕らにいまさら連携訓練など必要ではないかな?

 いうなればレイシアとビゼルの信頼度アップっていった方がいいかもしれない。それはそれで大切だろう。


 「えい! やあ!」

 早速僕の創り出したショートソードを手に、早速ゴーレムへと攻撃を仕掛けているのだが・・・・・・まあ予想通りダメージは皆無といった感じだな。

 さすがに格上過ぎてダメージなど与えられる相手ではなかった。そもそも相手は金属だっていうのもあるかな。

 これで本当に経験値になるのだろうか?

 ・・・・・・例えダメージが無くても、明確な意思を持って技術を活用する事によって経験値は稼げます。結果の大小で得られる経験値量は増減します・・・・・・

 おう。効かない攻撃に不安に思っていると、久々に神の知識が起動した。

 ふむ、まるっきり相手にされていないように見えるけれど、一応ちゃんと経験値にはなっているようだ。なら・・・・・・

 「もう少し腰を落として、全身の力も乗せて攻撃した方がいいな。レイシアはもう少し走り込みをした方がいいかもしれないぞ。下半身を鍛えると安定性が増して立ち回りや、攻撃力の上昇に繋がるからな」

 一応前世の記憶があるからわかっていると思うが、それでも現段階の改善点を教えておく。

 やっぱり年齢相応の体付きなので、ベテランのような動きは期待出来ないようだ。

 「何となく動きは覚えているんだけどね。昔みたいにはいかないな~」

 「まあこれから何年かしたら、ちゃんと扱えるようになるさ」

 「そうだといいなー」

 まあ前世でそれなりに剣を振り回せたからといって、今現在の体でも同じように動ける訳じゃないだろう。

 特に今世の体の素質は、魔法使い向けのようだしね。


 「同じ感覚にはならないかもしれないが、まあ今から徐々に鍛えていけばそれなりには使えるようになるのではないかな」

 「そうだね。がんばってみるよ!」

 レイシアに体重移動やら足捌きなどを見せて、こうだって感じで説明してみる。

 まあそういう僕自体、武道なんて習った事もない素人考えなのだがね。

 しかし、神格を得た神だからなのか、知識としてどうすればいいのかが理解出来た。

 よくよく考えてみれば、日本にいたころ銃を扱った事もない僕が、漫画やアニメだけの知識でトリックショットとか出来る事がおかしかった気もする。

 棍棒片手に振り回すだけじゃないのだから、いくら身体能力が上がったからといって銃弾に銃弾を当てるなど、それなりの技術が要求されたはずだ。

 いや、前に銃を使って戦っていた経験なのかな? それともこれはスキルのアシストなのだろうか?

 改めて接近戦に関しての知識を求めてみれば、どうすればいいのかが手に取るように理解出来る。

 感覚的には知識として認識出来た後、どう体を動かせばいいのかわかるといった感じだ。

 剣ではなく刀の扱い方を思い浮かべてみれば摺り足や兜割り、居合い斬りなどのやり方だってわかった。

 これは! ハウラスにやられた技をお返し出来るかもしれないな!

 まあ僕が魔王になったハウラスを倒すのはまずいけれどね。


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