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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第三十章  幼き勇者
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残された住人達

 別に人間が嫌いって訳でもないのだが、なんというかそこまで好きって程でもない。

 何でそんな事を考えているのかといえば、異形に気が付いてこちらに向かって来る住人達の後ろ。荷物を運んでいた牛も異形に気が付いて必死に住人達を追いかけて走っているのが見えたからだ。

 犬猫のようなペットでもないのに、必死に主人といえばいいのか、住人達に置いて行かれないよう付いて来る牛。なんだかそっちの方を優先して助けたくならないか?

 住人達は打算的に、それもこっちを意図して巻き込もうとしている。

 それも僕達の身に着けている共通の鎧を見ればわかるとおり、他国の兵士だとすれば国際問題になりかねない状況にもかかわらずだ。

 まあ単純に生き延びる可能性が高いからなのだろうが、これは完全なる敵対行為でもある。

 そんな人間より本能に忠実に行動している牛の方が、助けようかなって気になるのだ。

 それとこっちも打算ありきなのだが今だ牛が引っ張っている荷物を守れた場合、これから向かう避難所の住人の信頼度が上昇しそうだ。ゲーム的要素でいえば、高感度が貰えるイベントだろう。

 という訳で僕は指示を出す。

 「異形から背後の馬車ごと牛を守るぞ」

 人間を守るのはあくまでついでみたいな感じだな。

 どちらにしろ最後尾でかなり出遅れている牛を助ければ、住人達は自然と助かる。

 だからあそこが最終防衛ラインといっていい。

 「住人じゃなくて牛なの?」

 「積荷を守って、交渉を有利にって事だわ!」

 「取り残されたあの牛が、案外可哀相だったのかと」

 びっくりするレイシアと後付で考えた言い訳を言い当てるビゼル。そしてポツリとビフィーヌが正解を言い当てる。

 何となくだが牛の方がこんな事に巻き込まれて、可哀相じゃないか?


 商人風の住人達と位置を入れ替わるようにすれ違う。

 その先、牛が必死に置いて行かれないよう走って来るのが見えた。

 そういえば北側は順調なのだろうか?

 まだ戦闘開始まで少し時間があるので、神の目を使って様子を窺ってみた。

 向こうは街道沿いに進みつつ異形を討伐しているようだな。

 街道の先には小さな町があり、かなりの数の異形達がひしめいている。

 その小さな町や周辺の村から脱出して来たと思われる避難所も近くに発見出来た。

 ならば異形退治より先にそちらとの交渉を優先して欲しいかな。倒してから向かうより、これから倒しに行くぞって言った方が恩を売りやすい。

 場合によっては倒さないで放置した方がいい人間もいるだろうしね。

 ああ、そんな歪んだ人間はもう、生き残ってはいないかな?

 まあ念の為に先に交渉って感じがいいだろう。

 彼らには今後、現地の人間達と協力して戦って行ってもらいたいからな。早速指示を出しておこう。


 さてさて北の状況を把握しつつ指示を出した後、こちらも配置に付くと商人風の住人を追いかけて来た異形達が攻撃の有効射程範囲に入って来た。

 異形の数は三十四体。

 いきなりハードな展開になっている。

 まずは僕とレイシアとビフィーヌの射程範囲に入って来た異形に向けて、遠距離攻撃を始める。

 「さすがバグ。やるではないか!」

 相手によっては足を狙い足止めに徹するのが僕の役目かなって考えていたのだが、異形達に銃の知識は無い。

 それを見越してヘッドショットを決めてみたところ、これが上手い具合に一撃で仕留める事が出来た。

 それを見たビゼルが喜んでいる。よくやったって言いたいようだな。

 横で足を狙っていたビフィーヌも、それを確認した後はヘッドショットを狙い、何体かの異形を倒す事に成功する。

 出だしとしてはまずまずといったところだろう。

 だがそんな攻撃もさほど長くは通用しない。

 なんと言っても元は人間だった異形達である。

 ヘッドショットで七体も倒されると銃に対してある程度の対処法見付けたようだ。

 まずは直線での移動をやめ、ジグザグに移動し始める。次に銃口を向けたら射線から逃げる。

 はっきりいってそれだけで銃が役に立たなくなる。

 特に僕は戦闘が始まった瞬間から戦闘で気合が入りそうなアニソンを歌い、攻撃力強化の呪歌で支援を始めていた。

 その為銃術など使う暇がない。

 呪歌を発動している間は通常攻撃だけで戦うしかなくなってしまった。それもこれも、今なお世界中で助けを求める人間に、こちらの思考を割り裂かれるからだ。

 まあそれを上手く補ってくれるのがビフィーヌだったりするのだけれどね。


 単調な銃の攻撃でも、ビフィーヌが変わりに銃術を発動して上手く利用してくれるので、それなりにダメージを叩き出す事には成功していた。

 予測撃ち。

 相手が避けるであろう位置に何発かの銃弾を撃っておき、回避した異形に攻撃を当てる技である。

 それさえも避けるやつがたまにいたりするけれど、当たるやつは当たる。

 少しでも数が減るか、何らかのダメージによって行動を阻害出来ればとりあえずレイシア達が対処してくれるだろう。

 ちなみに、並列思考を使えば僕も技が使えるのではないかって意見もあるのだが、残念ながらそちらに余力はなかったりする。ピンチって早々ないと思っていたけれど、世界規模だと結構あるものなのだなー

 まあ難民の子供達への指導の方は眷属達に任せているから問題ないのだが、今この瞬間にも命が尽きようとしている人間達を、奇跡を起こして救い出すのは微妙に手間がかかっている。

 毎回こちらの存在と状況を説明しなければいけないのが厄介なのだろう。

 信者獲得という明確な目的の為に彼らを無視出来ない為、こっちの戦いに並列思考を使う訳にはいかなくなっている状況だったりする。

 まだ奇跡を起こした結果、信者獲得には至っていないのだがまったく効果がないとも言い切れないのだよな~

 はっきりしているのなら、こっちの戦闘に集中出来るのだが・・・・・・まあ今回はみんなを信じて任せてみるとしよう。

 一応レイシアの経験集めもかねている事だしね。

 銃を警戒して足を止める者。構わず突っ込んで来る者がいる中、とうとうテッシーが先頭の異形と接触した。


 こちらのメンバーがそれぞれに戦う中、銃の欠点を見抜かれた僕はいらない子になっていた訳ではない。

 まあ直接狙っていたのでは、これまでと同じでいらない子だったのだが、異形の数は今もって結構多いのだ。

 なら目の前にいる異形が銃を回避するのを見越して、その後ろの異形を狙って攻撃したらいいだけじゃないか?

 つまり押し寄せて来ている先頭の異形を狙うふりをして、その直ぐ後ろの異形を狙えばいい。

 これなら後ろの異形は目の前の異形に邪魔されて、射線を直接見る事は出来ない。

 まあそんな小細工的な方法を使って、参戦させてもらう事にした。

 残りの異形の数は十六体。

 テッシーに接敵するまでに三人の遠距離攻撃で十八体も倒す事が出来たのは上々だろう。

 そのテッシーは、大盾と呼ばれる身長以上に大きな盾を縦ではなく横にして構え、同時に二体の異形をせき止めつつ右手のロングソードでもう一体を牽制している。

 そのおかげで僕というか主にレイシアは安心して魔法攻撃を放つ事が出来ていた。

 何だかんだいって、みんなレイシア並みに能力を低下させつつも、レイシア程弱くないのだよね。

 例えばHP。

 筋力とか敏捷性とかの能力は確かにレイシア並みに低下させているのだが、本来持っていたHPはそのままになっている。

 つまりクリティカルヒットで大ダメージを叩き出されても、僕達の中で死ぬ可能性があるのはレイシアだけだったりする。

 まあそれ以前に身に付けた身体技術があるので多少能力的制限を受けたとしても、危険といえる程の脅威になりえていないのだけれどね。

 安全マージンを取り過ぎたかな?

 異形との距離が接近距離になったので、僕は呪歌の支援をメインにして参戦している。

 接近メインのビゼルにも、活躍の場を残してあげないとだよね。


 元々レイシアを含め、僕達は異形を軽くあしらえるだけの力を持っていた。

 だから難民の子供達とは違い、ちょっと数が多いくらいで焦ったり戸惑ったりしない分、安定して討伐に専念する事が出来る。

 単純に攻撃する為の手段が変わっただけで、どうすれば相手をしとめる事が出来るのかは既にわかっているのだ。

 何が相手には効いて、どの攻撃が効かないのかがわかれば、後は効果がある攻撃を工夫して叩き込んで行くだけになる。

 まあ射線が見切られて、それならって感じで曲芸撃ちをしようとしたら、魔法で作り上げた弾丸では岩などに跳弾しないって弱点を発見してしまったのだけれどね。

 これが出来れば岩などに反射させて、背後に弾丸を当てるとか出来ると思ったのだがな~

 銃のお約束が出来ないっていうのは意外だった。

 「うすのろども、私のような子供に勝てないなんて、所詮は雑魚だな」

 テッシーが異形を挑発して引き付けようとしている。

 しかしそこら辺りにいる魔物や動物と違って、上手く引き付けられないようだ。

 「こっち来い雑魚ども。・・・・・・むー、低脳とはいえ元は人間だ。多少でも知能があるらしいな。挑発してもこっちに来ない」

 それでもテッシーの近くにいる異形は押さえてくれているので、盾役としては十分役に立っている。

 テッシーを無視して後衛に向かって来ようとしている異形はビゼルが右側を、左側はレイシアが魔法で攻撃していた。

 僕達はレイシアと同じ左側に牽制として攻撃を仕掛ける。

 子供達ならこの数はきつい数だったと思うが、僕達なら何とか捌ける数かな。

 これ以上の数はさすがに僕達パーティーでも今はちょっときついかもしれないが。でも接近される前に半分くらいは数を減らせているので、後は時間の問題って感じだろう。

 そう考えていたら、足元からかすかな振動が伝わって来た。

 初めは集団戦だからどたどた走り回ってそれが地面を揺らしているのかと考えた。

 しかし振動はそこまで大きくはないものの、徐々に大きくなってきている。

 これは何かが地面の下にいるな。

 調査のスキルで地下を見てみたら、デカい蟻が地上を目指して穴を掘っているところだった。

 おそらく蟻の巣の上で戦闘を始めた為、驚いて出て来ようとしているのではないか?


 ボコッ


 考えている間にそんな音がして、蟻がわらわらと出て来るのが見えた。

 「ジャイアントアント!」

 レイシアが驚いて叫ぶ。

 凄い数の蟻が出て来たようだけれど、おそらくこの程度の雑魚ではダメージを受けないな。

 足元をウロチョロとされて、うっとうしいくらいだろう。

 それは異形も同じらしく、蟻に群がられてもダメージを受けている様子はなかった。

 あーでも、痛くはないのだが群がられたら視界の確保が難しいかな。

 それはこの場にいるレイシア達にもいえるのだが、一緒に襲われている異形にもいえる事だった。

 しかし神の目がある僕なら、直接相手を見なくても攻撃出来る。この隙に数を減らしておこう。


 群がる蟻の隙間から異形を狙って射撃を繰り返す。

 さすがに異形も蟻を跳ね除けようと不規則に動き回っているのと、上空から見た視界で敵を狙うと命中精度が格段に落ちる事から、なかなか致命傷を与えられない。

 それでも何とかダメージは負わせられるので、残り五体までは削る事が出来たようだ。

 ちなみにその間、邪魔な蟻も倒しているのだが、こいつら巣から無限に湧き続けるのでは? といいたい程ワラワラと出て来る。

 こう敵が多いとガトリングで一気に弾丸をばら撒いて敵を一掃してしまいたくなるが、このような雑魚相手に弾をばら撒くのはなんだか勿体無さ過ぎる。

 なので一応身体能力差もあるので、素手で殴ったり蹴ったりして倒しているのだが、一向に敵が減った様子は見られない。

 やはり銃はそれなりの相手じゃないと勿体無いので、こういう雑魚が一杯という状況には不向きな攻撃手段だったな。

 ビフィーヌも僕と同じで普通に殴って倒しているようだ。

 後隙をみて異形に向けて発砲している。

 逆に目の前の異形を倒し終えたテッシーとビゼルは、蟻を相手に無双している。

 面白いように蟻のばらばらな死骸が飛び散っている。

 まあその代わり異形には手が出せていないけれどね。

 それは異形側も同じだ。

 蟻に群がられ、視界を確保するのに躍起になっているのを確認した。

 そんな中レイシアはといえば、後ろで見学していた商人風の住人達を魔法で守りつつ、範囲魔法で蟻を一網打尽にしていた。

 まあ僕達を巻き込まないよう注意しているので、一気に蟻を全部倒すとかは出来ていないけれどね。

 雑魚相手なのでバリアを張りながらも的確に戦えるようだ。あちらは任せておいて大丈夫だな。


 「ラスト!」

 「主さま、さすがです!」

 周囲に散乱する蟻の死骸を踏み付け転んだ異形を目にし、とっさにヘッドショットを決めた瞬間をビフィーヌが見ていた。

 それともとっさに急所を撃ち抜いた事に喜んで声を出してしまった僕を見て、何が起こったのか悟ったのかもしれない。

 サバゲーのように楽しんでしまった恥ずかしさもあるが、何はともあれ異形討伐は終了した。

 後は今だに湧き続けている蟻を始末すれば、全て終了となる。

 これ程までに弱い魔物となると、僕達の中で一番LVの低いレイシアでも経験は貰えない。

 なのでちまちまやらずに一気に毒を使って蟻を掃除する事にした。

 一時的に制限していた能力というかスキルを習得し、レイシアがバリアを張っている場所以外に毒をばら撒いて止めを刺す。ちなみに僕達ならこの程度の毒は効かないので、見方に被害はないはずだ。

 一陣の風が吹き抜けた後に、生き残っている蟻は一体も見付からなかった。

 というか、今の一瞬で生命の神としての仕事が一気に増えたぞ。ヴァルキリー達が転生先を選択している様子が手に取るように思い浮かぶ。

 仕事を増やしてごめんよー

 本来はそれ僕の仕事なのだが、特におかしな事がなければそのまま採用しているので、やっぱり彼女達が忙しくなる事に変わりはない。

 帰還したら何かおやつでも差し入れよう。


 「あのー、このたびは助かりました。それでもしよろしければあなた方はどこの国の兵士様かお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 異形と途中で湧いて出たジャイアントアントの討伐を終え、素材回収の為に蟻の死骸を集めていると、助けた商人風の住人が声をかけて来た。

 「構わないが一つ確認いいか?」

 「はいなんでしょうか?」

 「僕達は今回たまたまデミフュルスを倒すだけの実力があったからいいが、もし力が及ばない他国の兵士達に今回のようにデミフュルスを押し付けていたらお前達はそいつらを囮にして逃げていたのか?」

 「そっ、それは・・・・・・」

 絶句したように何も答えなくなった。

 さっきまでの安堵した表情も、どことなく血の気が引いたような焦ったものに変わる。

 まだどこの兵士か言ってはいないが、下手をすれば他国から何かしらの使命を帯びてやって来たかもしれない兵士達に、敵を押し付けようと画策したのだから、どこからどう見ても国際問題にならない訳がない。

 まあ今の時代、既に他国がどうのなんてあってないようなものだが、何とか生き延びたって思ったら他国の兵士に粗相をして処刑。可能性としてはかなり高いのではないかな?

 あまり脅してもおそらく彼らから得るものは特にない。逆にイメージが悪くなるかな。

 せつな的に生きていそうなので、たぶん彼らからは信仰も得られないだろう。

 ここは避難所で揉めないように、受け入れてもらえるよう取り計らってもらえれば、十分な報酬だろうな。

 「まあ今回はお互い被害はなかった。次があれば例え死のうとも、誰かに向かって走るのだけはやめておけ」

 「・・・・・・はい・・・・・・」

 「では改めて、僕達はフォーレグス王国からこの国に対し、武力支援をおこなう為に来た者だ。簡単に言えば先程のデミフュルスを討伐する為に来た」

 「・・・・・・おおーっ!」

 「これはフォーレグス王国に新たに誕生した生命の神に、他の神々から要請があったからだ。この近くにある教会関係者の下に案内してもらえるかな?」

 「はっ、はい。もちろんでございます!」

 意気消沈していた男は、こちらの目的を聞いて息を吹き返したかのように元気になった。

 東担当は子供達に任せるので、僕がさっき言った神だという話は別にしなくてもいいよな。

 ぱっと見でただの人間っぽい男が神だって主張したところで、胡散臭いだけだから。子供達がこの周辺で活動するよっていう宣言と許可が貰えれば、とりあえずはいいだろう。

 この国の復興などなどの面倒な事は、後々に考える事にしよう。余計なお世話になるかもしれないしね。


 「ようこそおいでくださいました。フォーレグス王国に新たに誕生した生命の神バグ様。神託によりサフィーリア神様から話は伺っております」

 避難所に到着し、早速教会関係者のところに案内してもらうと、サフィーリア教の信者がそう言って出迎えてくれた。

 どうやら前もって信託という形で連絡をしていてくれたらしい。

 僕達は商人風の住人の荷物と共に、歓迎されて避難所の内部に案内された。

 勇者でも出迎えるような歓迎振りだな。

 信仰を集める必要がないのなら、ただ助けを待つだけの人間など助けようとも考えなかったかもしれないのにな。

 難民の子供達だってちゃんとした環境さえあれば、十分に異形と渡り合えるだけの実力を身に付ける事が出来る。そう考えると彼らはただ楽をしているようにしか見えないのだ。

 一応サフィーリア教の信者達は、救済活動として出来る事をしているように感じたので、こういう人達なら助けてもいいかなって思ったりはする。

 後この場にいない戦闘を司るアルファント神の信者達は、出来る出来ないにかかわらずちゃんと人間を守る為に戦場へと向かったようだ。

 あの猫神だった幸運を司るエムファラン神の信者達もいないが、こっちはどこで何をしているのかさっぱりわからない。

 やっぱり信仰している神が猫だから、気まぐれなのか?

 それか危険を察知してどこかに避難しているのかもしれないな。


 「ではフォーレグス王国に保護された難民の子供達が、デミフュルス討伐をしに来ているのですか?」

 「ええ。訓練用のダンジョンを用意する事が出来るからな。今回その子供達の中で、デミフュルスを討伐出来るだけの実力がある者を連れて来ているのだが、彼らはまだまだ新米になる。相手が一体二体なら平気だろうが、百とか二百とかたむろする所へは行かせないようにしてくれ」

 「はい。さすがに子供にそんなところへ行けなど、とても言えません。それよりももっと大人の方に来ていただく事は出来ないのですか?」

 「フォーレグス王国で大人といえば、友好種。人間と仲良く出来るモンスターといっていい存在になる。そんなモンスターを偏見なく人間と同じのように、仲良く扱ってもらえるとは思えない。それにこれは人間全体に課せられた試練だと考えてもらいたい。神がそれに対し何もかも手助けすると考えられては困るのだ。逆に本来であれば手は貸さず、見守るだけだったはずだが・・・・・・まあこのままだと全滅してもおかしくないからな。それで少しだけ手を貸す事になった」

 「そうですか」

 神殿関係者が集まって、不安そうにこちらの話を聞いている。

 主に応対しているのはここの代表をしているらしいサフィーリア教の信者だった。

 神に対し、出来るだけ失礼のないよう気を使っているのがわかる。

 それでも助けて欲しいって顔に書いてあるけれどね。

 「まあ今すぐ全てのデミフュルスを討伐する事は出来なくても、子供達も成長する。いずれこの周辺からデミフュルスは駆逐されるだろう。食料などの援助は、こちらに負担がない程度なら支援可能だ。後でこちらの拠点に来てくれ」

 「わかりました」

 僕達がここに来た目的。今後支援出来る内容などの話し合いが終わった。

 後フォーレグス王国の支援を受けている証として、シンボルの旗を避難地に設置してもらう。

 これで多少は宣伝にもなるだろうし、ひょっとしたらこれを機会にフォーレグスの教会でも建てようって話も出て来るかもしれないしな。

 子供達とバトンタッチする為の話し合いも終え、次にここから一番近い町を開放する計画を話し合って別れる。

 彼らにはその町を拠点に、自給自足が出来るようがんばってもらう予定だ。

 延々と支援し続ける事なんて出来ないので、まずは自分達だけで生活出来るよう手助けする。

 それを足がかりにもう一度、自分達の国を造ってもらえればここは支援終了になるだろう。


 話し合いの後、彼らの拠点となる町へ向かおうとしていたのだがその前に・・・・・・銃というか弾丸の性能を調整しようと思う。

 はっきり言って、跳弾しない弾丸は使い辛かった。常に攻撃方法が直線だからな。

 僕の撃った弾をビフィーヌが弾丸で弾き、軌道を変えるみたいなトリックショットなんかも期待していたのだが、実際には普通に魔法同士がぶつかってお互いの威力が削られるみたいな情けない結果になった。

 岩に撃てば、まあ普通に岩が削れただけだしね。

 そこで使い手の意思で跳弾する弾丸が撃てるよう、調整を施してみる。

 これで呪歌を歌って並列思考は別の事に占有されていても、通常攻撃をちょっと工夫したらいろいろなフェイントが出て来るようになるだろう。

 目標の町に辿り着くまでに、ビフィーヌと一緒にいろいろと連携技を試す事にした。

 とはいっても単純に反射させたり、お互いの弾丸をぶつけて狙いを変えるだけだけれどね。

 それだけでもこちらの狙いはわかりにくくなるだろう。

 あー後、射撃後の弾丸をある程度誘導出来るようにするのもいいかもしれないな。

 せっかくなので調整しておこう。


 僕らの拠点から見て南側に避難している住人達の新たな拠点候補の町へと向かいながら、調整された銃器の魔道具を試射して行く。

 アニメや漫画などだと弾丸同士をぶつけるトリックショットなど、相当な難しい技術だったりするのだが、能力値がそれなりに高いからなのか結構簡単に出来た。

 いやひょっとすると魔道具とはいえ魔法を使っているから簡単なのかもしれない。

 魔法はある程度意思の力に左右され、使い手の思い描くように行使出来る。

 おかげで弾丸がどう飛んで行くのか、結構簡単に予測出来たりするのだ。後射撃後誘導出来るように弾丸に調整を施したからかもしれない。

 トリックショットが全然必殺技に見えない。

 こうなって欲しいとか考えながら撃てば、その通りに撃てる。

 イメージを思い浮かべると考えている通りに弾丸が弾かれるので、誰がやっても成功するのではと思えた。

 あーでも、そんな曲芸撃ちの弾丸では威力が若干低くなる。敵の隙を付く奇策の域を出ない仕上がり具合だろう。

 まあそんな攻撃でも、雑魚になら普通に強烈な攻撃じゃないかな。

 そんな事を考えながら、異形に占拠されている町へと辿り着いた。


 「百以上の数がいるようだ、油断なく行くぞ」

 「うむ。任せるがいいわ!」

 「しっかり経験を積んで来たんだもん。大丈夫よ」

 「出来るだけ引き付けるようにする」

 ビゼル、レイシア、それにテッシーも気合を入れて返事をする。

 ビフィーヌは特に力む事もなく、僕の斜め後ろで秘書のように付き従っている。

 まあ彼女の場合は僕とペアみたいなものなので、そこまで緊張もしていないのかもしれないな。

 「じゃあまずは遠距離に任せてもらうぞ!」

 異形達の索敵範囲に入ったとたん、こちらに向かって来ていたのはわかっていた。

 町が遠くに見えてきたところで、異形の集団がこちらへと向かって来ているのが見えた。

 その集団に向かい、まずはガトリングで弾丸を撃ち込んでいく事にした。

 ただ単純にガトリングで攻撃したのなら、あっさり攻撃方法を見破られ対処されてしまうので、レイシアの範囲攻撃を目くらましにガトリングを僕とビフィーヌでぶっ放す。

 この方法もそう時間がかかる事もなく対処されると考えているのだが、その前にかなり数を減らせるだろうと予想していた。

 実際レイシアの範囲攻撃もあいまって、かなり数を削れているように思う。

 手持ち無沙汰なビゼルも闇を振りまいて、こちらの攻撃方法を悟らせないように撹乱してくれていた。

 具体的に言えば、レイシアが敵中央に爆発系の攻撃魔法を使い、そこに僕とビフィーヌがガトリングで敵を撃ちまくった。

 後ろから来ていた異形がそれを避け、左右から出て来たところをビゼルが闇で包み込むと、今度はそこにガトリングを撃ち込む。

 これによって異形の足並みは乱れ、かなり混乱してくれた。

 そのまま混乱して足を止め、こちらに来ないのであれば完全にいい的になるのだがな。

 いっそう、そのまま全滅してくれれば楽でいい。レイシアの経験にはならないかもしれないが・・・・・・

 などと考えてみたのだが、やはりそうそう都合よくいかないようだ。

 仲間? の損害を無視してこちらに向かって来るのが確認出来た。


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