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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第三十章  幼き勇者
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祭りの準備

 ホーラックスに指示を出し、フォーレグス王国だけでなく同盟国のドラグマイア国とワレスホルト国、そして難民をかき集めた地域も含めて、祭りをおこなう事を発表させた。

 フォーレグス王国は主にビゼルを紹介する感じの祭りで、その他は僕自身の知名度を上げる祭りになる。

 開催は一ヶ月後。準備といっても国民は友好種がほとんどで、他国からの参加者は飛空艇で直ぐ来られるので、普段より多めに食材を準備すればいいだけだ。祭り=食事会って感じだな。

 同盟国にも知らせたが、複雑な政治的な配慮などという面倒事は、フォーレグス王国にはないので気楽に開催出来る。

 人間の国同士ならいろいろと礼儀作法などがあるものだが、こっちの大半の国民が友好種だからな。そこは相手もわかっていて、あまり礼儀についてはうるさく言われない。

 飲んで騒いで盛り上がるだけの祭りでも、特に問題はなかったりする。

 ただドラゴンとか巨人種もいるので、用意する食材を確保するのが大変になるだろう。

 余裕があるのなら、避難して来ている人間達に食料を廻せって言われそうだしね。実際は自国民でもフォーレグス教の信者でもない人間に施しをする義務も責任も無いのだが、そういうところで文句を言って来る者は多いのだろう。人間達だしな。

 とはいえ例えお腹一杯ご飯を食べさせたところで、信仰してはくれないだろうけれどね。こういうところが人間の理不尽なところなのだろう。

 やっぱりモンスターと付き合っていた方が、気楽でのんびり暮らせそうだ。


 まあいろいろと考えていたが、開催を一ヶ月後に設定したので準備時間には余裕がある。

 今回は一気に信仰対象を増やすのではなく、新しく神になった存在がいるという事と、僕を信仰してもらえたらお得だよって事が伝わればいいかなって割り切る事にした。

 フォーレグス国内の友好種にはもっと直接的にビゼルの事を発表して、一気に信仰を集めたいと思う。

 そっちの方はビゼルのパワーアップした瘴気で、本能的に従う友好種が一杯出て来るのではないかと予想している。魔王に惹かれるのがモンスターだろう。

 友好種自体はそこまで捻くれていないので、たぶん僕よりも上手く信仰心を集める事が出来ると思う。

 僕の方はもっと直接的な奇跡を見せていかないと信仰してもらえないと考えているので、昔マグレイア王国で冒険者を育てていたように、デミフュルスを倒せるだけの人材を育てて行こうかな。

 今の混迷した世界に対抗出来る人材を用意すれば、少しずつでも信仰する者が出て来るだろう。

 後は怪我人の手当てと保護で、知名度と奇跡アピールが出来るだろう。

 本当は直接僕が退治して回れば簡単で楽に信仰を集められるのだろうが、デミフュルスは魔王システムの一部で僕が関与していい案件じゃない。

 勇者じゃないのだし今後の人間の為にも、やめた方がいい。そもそも魔王をこちらで倒したらまたいずれ、僕が死ぬ事になるしな。

 レイシアとビゼルがいるのに、他人の為に命を捨てる気はもうない。それは神の仕事でもないしね。

 とりあえず時間をいじくって、食材を量産する事にするかな。


 野菜や穀物の類はコボルト達のおかげで十分な量が収穫されている。

 難民の数が凄いけれど、現時点でぎりぎり養えるかなって感じだろうか。そのうち難民自体が育てている野菜などが収穫出来るようになるので、飢える心配はまずないだろう。

 ただ祭りに廻す程の収穫量はきついかな。

 その分をこちらが補ってやる必要はありそうだが、一番不足しそうなのが肉だ。

 今現在出荷出来るメインの肉の大半はカピパラモドキ。そこに高級っていう程ではないが、価値の高い肉として鳥や豚、牛の肉と続いていく。

 カピパラモドキ以外はこのままでも問題ないのだが、肉類はさすがに自国内に廻す分だけで精一杯だな。

 なんていっても友好種のほとんどは、肉大好きっ子ばかりだから・・・・・・カピパラモドキを家畜化していなければ、とっくの昔に暴動が起きたり人間が襲われたりしていた可能性が高い。

 そんな訳で余裕は全然無い。

 ちなみに初期に捕まえた頃に比べると、カピパラモドキの味は劇的に変化している。

 品種改良という程の変化ではないが、餌をいろいろ変える事で肉質や味をコントロールする事に成功している。家畜担当のイオルドががんばってくれたおかげだな。

 おかげで人間が食べても病気になったりしない、普通に食べられる類の肉になった。

 今は肉食ではない有効種が畜産の仕事をして、フォーレグス王国全体の肉供給を賄っている。具体的に言えばフェアリーやピクシー達かな。

 彼女達の主な仕事は餌になる穀物の世話だ。対格差があるからね。直接的な世話は難しい。

 カピパラモドキ事態が肉食ではないので、フェアリー達が襲われる心配はない。ようは放牧みたいな感じで、好きにゴロゴロさせてどんどん増えてもらっているってところだ。

 それと出荷作業は彼らには無理なので、魔王軍所属のアンデット達がおこなっている。

 無論衛生管理が少々気になったので、専門作業者を選び出し、骨をピカピカに磨き上げて作業させた。

 精肉になってしまえば後は普通に流通させるだけだしね。


 「フォレイヤ。手隙のマジカルドールはいるか?」

 「います」

 「ならばしばらく食糧生産の仕事が出来る者を何人か選び出してくれ。祭り用の食料が大幅に不足している。しばらく別時間の中で作業をしてもらいたい」

 「了解しました」

 最初のパペットだったフォレイヤに指示を出す。

 彼にリーダーになってもらい、必要な食料を生産してもらおう。

 こういう通常の何倍もの時間の中で作業してもらう時、マジカルドール達は役に立つ。彼らには年齢など関係無いからな。

 そして仕事を与えられる事が生甲斐なので、喜んで活動してもらえる。

 特に僕からの直接の仕事だ。

 普段おこなっている仕事の分担とは違い、気合の入れ方まで違ってくる。マジカルドールにとって創造主たる僕の命令は、存在意義でもあるらしい。

 だからちょっとどうなのだろうかと思うこういう仕事でも、喜んで引き受けてくれるみたいだ。

 ただ命令で動くゴーレムとは違うので、出来れば孤立して作業させるとか申し訳ないのだけれどね。

 毎回裏方でがんばってくれるマジカルドールには、どれだけ感謝してもし足りないな。


 申し訳なく思いつつもカピパラモドキの牧場へと移動する。

 地上で畜産などしようものなら腹減り者達に食い荒らされかねないので、畜産場は地下に造られている。

 ドラゴンや巨人などの大喰らいが多いフォーレグス王国なので、畜産場の広さはかなり広大だ。

 今回はその一角に間借りして、カピパラモドキとマジカルドールを配置する。

 それと臨時の解体施設を設置すると、精肉の保管施設も併設した。

 保管施設の時間は止まっていて、肉が痛まないようになっている。これで祭りに使う肉を確保出来る仕組みだ。

 「ではフォレイヤ、後は頼むぞ」

 「はい、バグ様。それでは仕事を開始させてもらいます」

 マジカルドール達がそれぞれに散って、仕事を開始するのを見ながら結界を起動させた。これで結界内部の時間は加速し、移行結界を解除するまで肉を生産し続ける事になるだろう。

 問題は・・・・・・国内の友好種だけでどれ程の肉を消費して、来訪客もどれくらいやって来るのかってところかな?

 こればかりはさすがに予測出来そうにない。

 これから世界各地の難民を集め、そいつらにも分け与えなければいけないからな。かなりの量が必要になるだろう。

 あー、そう考えると肉だけでなく穀物ももっと盛大に必要になってくるのか?

 そっちはそっちで別のマジカルドール達を呼んで、栽培してもらうとするかねー

 肉と同じく野菜なども品種改良などをおこなう為に造った地下栽培場に来ると、改めて呼び寄せた別のマジカルドール達を配置して結界に包んだ。

 野菜と穀物類は肉程大量に用意する必要はないだろう。こっちは難民がいなければ結構余裕がある。

 祭りがあるから急遽時間操作までして食糧の増産を始めたけれど、少し無理をすればこんなものがなくても難民も収容出来ただろう。

 いや、無理をさせると聖サフィアリア国のように自国にもダメージがある。

 その不満は元がモンスターだっただけに、人間よりも大きな不満になりやすい。他者の為に我慢を強いるやり方はやっぱり避けた方が無難だな。

 難民の正確な数もわかっていないので、やはり余裕は持っておいた方がいいかもしれない。


 ひとまず難民を各地から集めるのは眷属に、難民および祭りで使う食料はマジカルドール達に任せる。

 それに平行して、根本の原因になる魔王対策も進めていかなければ意味がない。

 という訳で、レイシアの方の進捗を確認しておこうかな。

 「レイシア。アーゲルトの調子はどうだ?」

 「そうね。もう異形退治に行ってもいい頃かと思うんだけど・・・・・・まだ複数の相手はちょっときついかな」

 「どのみち魔王に一人で立ち向かうのは無謀だろうな。ここはそっちの連携とか考えて、パーティーを組ませた方がいいだろう」

 「やっぱりそうなるよね。あの子の仲間候補って難民の子達?」

 「ああ、既存の冒険者じゃあ実力的にきついのと、経験はあっても年下の勇者と上手く馴染めるか不安だしな。仕事とか依頼ならどうとでもすると思うが、相手が魔王じゃあ無鉄砲で自信過剰な若者しか名乗り出ないだろう」

 「そうよね。アーゲルトにベテラン冒険者とか、実力者を仲間に引き入れるような交渉が出来ればいいんだけれど」

 「やっぱりそういう交渉事は苦手そうか?」

 「勇気はあるんだけれどね。人付き合いはちょっとどうかな?」

 「じゃあやっぱり一度こっちのメンバーに会ってもらって、何人か連れて行ってもらおう。四人って決めないで五・六人くらい連れて、異形退治に行ってもらおう」

 さすがに魔王を相手に戦うのだ。一人の欠員も出ないで倒せると考えない方がいいだろう。

 後世界中に点在している異形も、集団で襲って来た場合はやはり、無傷とはいかない。

 死ぬところまで行かないとしても、交代要員としてある程度人数がいた方が安心出来る。かなりの数いるだろうしな。

 勇者に選ばれなかった難民の子達は、ある程度集団を作って異形専門で討伐させようと考えている。

 こっちは僕が育てた難民の子供達が、異形を退治して廻るって宣伝して、信仰心を集める手助けになってくれればいいかなって思惑もある。

 早々予想通りいく訳ではないだろうが、ちゃんと活動しているのだなってわかってもらえれば上々だろう。

 神々達にも何とか手助けして欲しいと頼まれたしな。直接ではないけれど、間接的支援にはなるだろう。


 「お邪魔します!」

 レイシアと共にレビルスの生まれ変わりのアーゲルトが、難民の子供達の訓練場所へとやって来た。

 「順調に力を付けているようだな。ちょっと待ってくれ。みんなー、集まってくれ~」

 「はい」

 異形との戦闘を想定した戦闘訓練中の子供達に声をかけて行く。とはいっても、全員が全員それ程強い訳ではないので、程々の敵集団と戦っている者の方が多い。

 まあ優秀なトップ集団は、複数の巨人を相手に戦闘をしていた。

 彼らならアーゲルトと今直ぐ合流して戦えるだろう。

 問題がない訳ではないから、少し相談などが必要だけれどね。

 そんな事を考えていると、戦闘を終えた子供からレイシアの元へと集まり始めた。僕も最後まで戦闘していた子供を連れて、レイシアの元へと戻る。

 「お前達にはあらかじめ伝えておいたと思うが、そろそろ実力的に問題なしと判断した者は、デミフュルス討伐に向かってもらおうと考えている。それと一部の者はここにいるアーゲルトとパーティーを組んでもらい、魔王討伐に向かってもらいたい。アーゲルト。これから一緒に戦う仲間を選んでもらえるか?」

 「はい! それならば、戦っているところを見せてもらってもいいでしょうか」

 「そうだな。それぞれの実力なども見てもらった方がいいだろう」

 戦闘能力より相性とか見てもらいたいのだが、まあこれから一緒に激戦を潜り抜ける戦友だ。まずは戦闘能力を見たいっていうのもよくわかる判断基準だろう。

 断る事無く皆の前で、いつもチームを組んでいる集団で戦ってもらった。


 「これくらいどって事ない! どんどん叩け!」

 「よし! 次来い!」

 トップを独走する集団の子達は、四匹出した巨人を相手に危なげなく戦っている。

 盾役がしっかりと相手を引き付け、その他のアタッカー役の五人が確実に数を減らしているのだ。魔法使いがいない割にはしっかりと、堅実な戦いぶりだ。

 回復が出来るヒーラーがいないのだからまあ、こうなっても仕方ないだろうな。

 アーゲルトの様子を窺うと、うんうんと頷いて高評価って感じかな。

 ただ勇者パーティーとして見るのなら、バランスは悪くなる。

 相性を見てこの中の何人かを引き抜く感じになるだろう。

 次にトップ集団ではないが、そこそこ戦える集団が戦いを始めた。

 こっちは魔法が使える者がいて、間違いなくその子が勇者パーティーに選ばれるだろう。バランスを考えても、戦力的に見てもおそらくは決定だ。

 他の子はトップ集団の子と比べれば拙いので、どうなのかな? 性格を鑑みれば予備として連れて行く可能性もあるだろう。

 魔法を使える子がパーティーに入れるのなら、予備として参加出来るくらいの力はあると思う。

 そこから下は、一応流れで戦わせているだけって感じになった。

 この子達は今戦場に出ても負傷するだけかな。

 しかしもう少し経験を積めば、近い将来異形退治に行けるだけの実力が身に付くはずだ。

 単純に勇者と一緒に戦う為には、時間が足りなかっただけなのだからね。それだけで余り者でも不必要な人材でもない。

 これはアーゲルトがいなくなってから残った子に言っておかないといけないだろう。劣等感は持って欲しくない。

 「うっしゃ~。次は俺の番だな! ここから俺の伝説が始まるぞ!」

 下から数えた方がいい実力集団の中、なんか難民の子供に混じって叫んでいるやつがいた。

 まあいいけれど、あいつまだ自分の事を勇者だとか言っているのか?

 騒がしい日本人から来た男が、難民の子供に混じって戦っている。

 おいおい、そこは自分が盾役に回るところじゃないのかよ。何子供に盾役させて、楽に敵を攻撃しちゃっているのだ。

 ないわーって思ったのだが、多少重い武器に振り回されつつも、結構いいダメージを与えているみたいだな。

 ・・・・・・いや違う。

 よくよく見ると、その他のアタッカー役の子供とそこまでダメージは変わっていないように見える。

 たぶんステータスが子供以下しかないので、盾役をこなせない。自分に見合った武器ではダメージを稼げない。

 子供達が考えて出した答えが捨て身で背後から安全に、重い武器を振り回す攻撃だったのではないだろうか。

 上位の敵には通用しない事の方が多いだろうが、役に立たずにうろちょろされるよりはいいのかもしれない。いや素直に足手まといだから、参加しない方が子供達の為だろうな。

 後で排除しておこう。

 申し訳ない、お邪魔虫になっているとは思わなかったよ。

 あの男はもうソロで何とかしてもらった方がいいよな。たぶん戦うのは趣味で終わりそうだし。

 どう見ても異形討伐には参加出来そうにない。


 後から後から追加で増え続けた子供達だが、今現在預かっているのは大体七十人くらいかな。

 その全ての戦闘を見終ったアーゲルトは、次に面接というか直接話を聞きながらパーティーの仲間を決めて行く。

 アーゲルトはトップ集団全員をパーティーに誘っているみたいだけれど、そりが合わないのか三人がお断りしていた。

 「バグ先生。私達、ここに残ってもいいですか?」

 「残ってもデミフュルス退治はしてもらう予定だぞ」

 「はい! もう少しここで鍛えてから、みんなと一緒に活動したいです」

 「それならまあいい」

 残った三人は僕の答えを聞いて、あきらかにホッとしている様子だった。

 彼らはここを追い出された後に行く所がないからな。下手に断って、追い出されないか気になったのだろう。

 ここでの暮らしを捨てたくないとか、そういう感情もあるだろうな。

 こっちは戦うのが嫌だと言われなくて助かったってところか。

 まあ勇者パーティーの方は魔法使いの二人が付いて行く事になったようだし、最終的人数は八人だから十分そうだ。

 「レイシア。みんなの連携訓練をしてやってくれ。大丈夫と判断出来たら実際に何回かデミフュルスと戦って様子見だな。その時は僕も一緒に行くから、大丈夫そうなら送り出そう」

 「うん。わかった」

 予定としてはこんなところだな。

 じゃあこっちはこっちでパーティーの再編成をして、勇者とは別に異形退治用の集団を作って行こうかね。


 レイシアと別れ、早速編成が終ったパーティーに指示を出す。

 「今回のようなパーティーの入れ替えは今後必ず出て来る。そこでこの機会に誰と組んだとしても問題なく連携出来るよう、基礎を訓練して行くぞー」

 「はい!」

 「まず新メンバーについてわかりやすい基準は相手の職業だ。ただし剣を持っているから戦士かといえば、魔法使いでも剣くらい持っている事がある。見た目で決め付けずちゃんと相手に確認するように」

 「魔法使いが剣を持っていた時は、前衛として扱うんですか?」

 「それは相手の戦い方次第だな。前衛として戦いながら魔法を使うタイプなのか、それとも敵が向かって来た時に剣を使うタイプなのか。はたまた変装というか魔法使いだとわからないよう、偽装の為に剣を持っているだけなのか。相手に聞いてみないとわからない。だからまずは新メンバーが増えた場合、相手の戦い方を確認するように」

 「はーい」

 「次に相手の戦い方の確認が済んだら、それぞれの動きを見よう。盾役だからといきなり全幅の信頼を寄せると、役に立たなかった時に全滅するぞ」

 「それはどうすれば見分けられますか?」

 「初めは敵無しの状態でお互いの動きを見て行くのだが、その時のそれぞれの行動に注意する。これは自分の動きと仲間との間合いなんかの確認もするのだが、その時の合間合間でおかしなところがないかチェックして行くしかないな」

 実際戦ってみるまでは相手の動きなんて、知りようがないからな。

 練習で出来る人間でも、実際は動けないって人は多い。逆に練習は失敗ばかりなのに、本番に強い人だっている。

 こればかりは試してみないとなんともいえないだろう。

 「練習で駄目駄目な場合はしばらく連携訓練をした方がいいだろう。本番に強いタイプの人間もいるので、そういう時はもうけものなのだが、そればかり期待すると違った場合が怖い。ちゃんと出来るようになるか、ある程度仲間がフォロー出来るようになってから実戦に行こう。実戦っていっても、いきなり強いところへは行くなよ。最初は余裕で倒せる敵から始めて、徐々に強い敵と戦って行く」

 「慎重ですね」

 「死んだら元も子もないからな」

 「そうだよね」

 「じゃあメンバーに変更があったチームは自己紹介や戦い方を話し合え。変更がないところは前と同じ、経験稼ぎを始めるようにー」

 「はーい」

 子供達が散って、それぞれに活動を始めた。

 曽根・・・・・・日本から来た男は・・・・・・決定的に邪魔になるまではこのままでいいか。苦情が来たら即、排除しよう。

 子供達には悪いが、どう見てもソロで活動させたら死にそうなので、このままやらせておこう。

 ただし、足を引っ張りそうなら一つ下のランクのパーティーに入れ替えたい。邪魔になるからな。

 成長速度も遅いみたいなので、情けない事にどんどん抜かされて行っている。

 それでも今だに勇者になれるって考えているのがよくわからない。自信過剰過ぎないか?


 『バグ様。ウクルフェス様が拠点に来て、お話しがあると言っています』

 引き続き指導をしていると、メリアスから念話が来た。

 「直ぐ行く」

 転生後のウクルフェスは、フォーレグス王国で魔法と魔道具の研究をしてもらっている。

 最近はヒストカルム、彼の知識だけ受け継いだホムンクルスと共同研究をしていたはずだ。テーマは人間の限界を超える事。

 LV九十九までしか成長出来ない人間の、限界を突破する何かについて研究を任せていたのだ。

 もしかしたら、何かしら成果が出たのかもしれない。

 まあ研究途中でまるっきり違う成果が出た可能性もあるけれどね。

 上手く行けば、レイシアが生神になれる可能性もあるなー。ウクルフェスには是非、がんばってもらいたいものだ。


 「バグよ、来たか。早速だがわしのステータスを見てくれんかのう」

 「いきなりだな。わかったちょっと待てよ」

 拠点の談話室というか食堂というか、みんなが休憩に来る場所で待っていたウクルフェスの隣に座ると、早速そう言われた。一緒に付いて来たビゼルとビフィーヌが、隣に座る。

 長々と研究の話をされるよりはいいので、早速ウクルフェスのステータスをチェックする。

 するとLVが百と表示されていた・・・・・・つまり、ウクルフェスは人間の限界を超えたという事になる。

 「人間の限界を超える方法が見付かったのか!」

 「うむ。その通りじゃ! 他にもいろいろと発見したのじゃが、副作用がないかどうかはこれから調べる事になるじゃろうのう」

 「いや、実験する前に調べろよ。何自分で試しているのだよ」

 「ふぉふぉふぉ。既に転生の魔法は発動済みじゃ! 失敗しても問題ないわい」

 「いや問題だらけだ。ここでお前が死ねば、次に会うのがいつになるかわからないぞ」

 いや、こういう時って誰に転生させるのか決めるのって、僕になるのか?

 そうすると失敗した時には、近場の人間の子供として転生させれば直ぐに会えるようになる。まあ実際は会話出来るようになるまでっていうのと、一人で歩けるようになるまでに時間はかかるが、探し回る必要自体はないだろうな。

 いっそ直ぐ行動出来るように、ゴブリン辺りに転生させるか?

 「バグよ。よからぬ事を考えておらんじゃろうな?」

 「いや今の僕は生命の神だから、お前が死んだら僕が転生させるのかなって考えてな」

 さすがにゴブリンにっていうのは、黙っておこう。僕も一度転生しているから、案外成長が早くていいぞ。

 「なるほど。モンスターに生まれ変わるのもいいかもしれんのう~」

 「モンスターでいいのか」

 「お主を見ておると、モンスターも悪くないのではって思えて来てのう。人間より寿命も長いし、魔法も人間より優れておるじゃろうから、案外良いかもしれん」

 「まあ確かに、僕は人間に転生しなくてよかったって思っているよ。最初は会話も出来ないし、召喚魔法に束縛されて最悪だって思ったけれどな」

 「まあ今だからこそってやつじゃな」

 「だな。それで本当に最悪の事態になった時は、モンスターに転生させるのか?」

 「うむ。ヴァンパイアなんてどうじゃろう。あいつなら寿命も無いどころか、長生きする程強大な力が手に入るのであろう?」

 「いやあいつら、子供を生んで増えている訳じゃないから。吸血して死体になったやつが仲間として生き返っているだけだから、転生なんて出来ないぞ」

 「なんじゃ、つまらぬのう」

 なんだって言われてもな。どう考えても死体に転生って意味がわからないだろうが。

 実験の失敗で死ぬのなら、そんなおかしな死体をアンデット化する訳にもいかないだろう。ミュータントアンデットになってしまう。

 「うーん、ドラゴンとかよさそうだが、あれも会話が出来ないからな。でもウクルフェスなら変身の魔法があれば問題ないか? ドラゴンの特性まで消えるだろうが、寿命は長くなると思うし。他に人間っぽいのはアンデットばかりだな。転生の条件には当てはまらない」

 人型になると、やっぱりゴブリンとかになってくるのかな。

 ウクルフェスならゴブリンソーサらー辺りなら、問題なくないか?

 「ドラゴンか! よいではないか!」

 「あーはいはい。じゃあもしなんかあった時は、ドラゴンに転生な」

 「もういっそう、今からドラゴンに転生したいのうー」

 「仲間が増えるのは歓迎だが、そうぽんぽん転生なんてするなよ。僕が言うのもおかしいかもしれないが、絶対に大丈夫だと言えないからな」

 前回は成功したかもしれないが、転生の魔法が失敗していた時、ただのドラゴンになっちゃうじゃないか。

 レビルスを見ていると改めて思うが、こっちは知っているのに相手がお前誰って状態は寂しい。

 それがもっと身近な人間。レイシアだったらもう、ずっと気になって仕方がないくらいだ。

 知り合いが側にいるのに、赤の他人として付き合っていかなければ行けない。向こうからしたら、知り合いでもなんでもないのだからな。

 「そうじゃな、失敗したらよろしく頼むわい」

 「ああ任せろ」

 まだ僕に決定権があるとも限らないが、その時はドラゴンに転生させてやろう。

 でもお前、既に不老になっているから事件が起きない限りはドラゴンになる機会はないよ。老衰にならないからな~

 覚えているよね?


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