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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第三十章  幼き勇者
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金属細胞の増やし方

 残る問題は要となる金属細胞の培養なのだが、残念な事にホムンクルスの時に使った培養液に浸けても増える事はなかった。

 これでは装備一式造る事がためらわれる。

 鉱石からいろいろな素材を抽出する段階で、大半の金属細胞を失った事が悔やまれた。

 どうやら細胞内にある水銀を抜き取ってしまうと、細胞自体が死んでしまうらしい。

 昔北極か南極かどちらかで、マンモスが氷付けになって発見された事があり、その細胞から再生させようって騒いでいた事があったようだけれど、あれも細胞が死滅していたようだ。今回のはそれに近いのではないだろうか? 死滅した細胞は、増やすことが出来ないのだ。

 とにかくまだ生きている細胞があるので、どうやれば増殖するのか調べる必要がある。手がかりはないのだが・・・・・・

 というかこれって生き物のように、増殖する類のものなのかな?

 てこずりそうだな・・・・・・


 名前 アーゲルト(レビルス)  種族 ヒューマン  職業   EXP 71%

 LV 33-46  HP 328-473  SP 281-422  ST 304-453

 力 46-59  耐久力 51-65  敏捷 48-61  器用度 42-55

  知力 29-36  精神 32-41  運 52  素質 96-78

 属性 聖*

 適正 武器戦闘

 スキル LV一 業感知 盾強打* 再現* 直感* 重装行動* 生存* SP消費減少(微量)

  LV二 応急手当* 急所斬り* 三連撃* 反撃* 受け流し* 接近* 痛覚遮断*

  LV三 底上げ* 方位感覚* 強斬撃* 斬撃波* 迎撃* 移動攻撃*

  LV四 勇気* 二段斬り* 強化* 自動回復(小)*

  LV五 反撃* 察知(生命)*

  LV六 肉体強化* 盾術*

  LV七 斬撃向上*

  LV八 剣術*


 息抜きがてらレビルスの様子を見に来ると、順調にスキルを増やしていた。LVの方はそこまで極端に上がってはいないな。それでももう中級冒険者並みには強くなっているようだ。このままで大丈夫だろう。

 今のペースなら装備の方ももう少し時間的余裕はありそうだ。そっちの方にホッとした。

 一生懸命造ろうとしているのに、さっさと勇者として巣立っていかれては、完全に空振りしてしまう。まあこの分だとそこまで時間的余裕があるって感じではないけれどね。

 出来るだけ急いで準備したいところだ。

 後は難民の方も軌道に乗り始めているので任せておけばいいし、神の仕事の調子でも見てみるかな。

 とはいっても、眷属として生み出したエンジェル達にお任せなのだが・・・・・・今も処理が終わった情報には特に問題点は見られない。

 いや、ちょっと引っかかるものがあるような・・・・・・ミスの類ではない。でも無視しておけない何かがありそうだ。

 元トルグブルト国の領地を見渡して、それと合わせて何かが引っかかったのだが、いったいなんだろう?

 今では難民の村というか、人数的には町といった方がいいものが出来上がっており、やって来た人間が畑を耕している。そしてこっちの国民であるゴブリンやコボルト達も、街道沿いに幾つもの町を造って畑を耕しているのが見えた。

 食糧援助をしたところで、これらは全て寄付扱いになるからお金にならない。そんな無意味とも思える活動の為に、コボルト達がせっせと畑を広げる必要など無いのだが、これも僕が神になった弊害なのだろう。申し訳ないが付き合って欲しい。

 生命を司る神としては、あまり人間に死んでもらいたくないのだよね。書類が増えるから・・・・・・

 まあコボルト達を見た感じ、彼らがこちらの都合を理解しそうにないのだけれどね。ただ黙々と働いている。


 周囲に広がる畑を眺めていると、違和感の正体がわかった。

 人口増加の影響で、この国を潰して領土を拡大したのだけれど、チョビに任せた国民のほとんどがゴブリンやコボルトといった低級の友好種なのだ。

 それの何が引っかかっていたのかといえば・・・・・・・彼らはとにかく増えやすい種族なのだ。弱いからこそ沢山生み、子供が成長しきる前に死んでしまっても、種が途絶えないよう進化して来た結果なのだろう。

 引き継いだ時の情報も合わせて比較してみると、フォーレグス王国が誕生して以来、ゴブリンやコボルトといった増えやすく死にやすかった種族には劇的な変化が見られた。

 それは死亡率の低下である。

 出産率が高く一度に何人も生んでいたのだが、その死亡原因が老衰ばかりに変わっていた。

 つまり寿命が尽きるまで活動し続けていたのだ。出産率や多産率は変わらないまま・・・・・・

 維持に必要な魂総数も、どちらかといえば過剰なくらいだろう。まあこれは人間が減っているので相殺されて、目だっていなかった訳だが・・・・・・一目見てこれはまずいって判断した。

 過去の情報を検討してみて、つい最近までゴブリン達の寿命が少し延びているところにも注目する。

 そういえば僕は生命を司っているから、種としての寿命にも干渉出来るのだった。

 サフィーリア神が少し調整していたのだろう。その調整作業を僕も引き継げばいいのだろう。教えてもらえなかったけれどね・・・・・・

 自分のした事なので、自分で気付きなさいって意味なのかな~


 「仕事を増やしてすまないが、調整をお願いしたい」

 「主様、何なりとお申し付けください」

 早速バランス調整の為、天使のヘルシオル達が働いている書斎へと向かった。

 早速状況説明と、今後の対策を伝えて行く。

 「という訳で、今後は徐々に生まれて来る人数の減少と、寿命を延ばしていって欲しい。最終的には人間くらいになるのかな? 生命力が強そうだから人間以上になるかもしれないが、まあそこは見て調整して行こう」

 「わかりました。直ぐ始めます」

 早速調整を始める天使達。

 管理専門で創ったのでみるみる調整幅を決め、過去に出来上がっていた既存の情報を書き換え始めた。

 ゴブリンの今までの平均寿命は大体十年。サフィーリア神が少し調整していて大体二十年くらいまで寿命が延びている。

 世代を重ねる度に徐々に寿命が伸びていっている感じだ。

 その寿命の延び方は、自然に進化するはずの工程を、早回しで見ているかようだ。まあ実物を見てそう感じることは出来ないのだが、データ上を見るとはっきりと数字で理解させられる。これグラフにした方がわかりやすいかもね。

 そして今まで子供が多ければ十人くらい生まれていたところを、徐々に減らすよう調整されていた。

 これも突然一人とかに減らしたら、いくらなんでも種族全体で危機感とか抱かれたりしそうだからね。そこまで知能が高くないので少しずつ減らしていけば、気付かれないうちに一人しか生まれなくなってもおかしいと思われないだろう。

 一代二代の調整じゃないところがちょっと大変かな。

 今回早めに気が付いてよかったといえばいいのか、領土を拡大するまで気が付かなかった事を悔やむべきなのか・・・・・・

 こんな世界規模の重要な作業も、神がして来た仕事なのだろう。ぱっと見てわからない地味な調整。重要度は高いのに、この世界で理解出来る者がいないとか、神とは大変なのだな・・・・・・


 全体的に見直してみたが、フォーレグス王国での死亡原因はほとんど老衰だった。

 次に多いのがダンジョン内でモンスターに殺されるという死亡原因。これはパーティーが全滅するとか、ソロで無謀な挑戦をするみたいな場合が多いらしい。

 ほとんどの場合は死亡しても蘇生が間に合うみたいだな。そこは冒険者同士助け合っているみたいだ。

 日本で多い事故や病気などは、ほぼこちらではありえないようだ。ああ、この世界でも国外では普通によくある死因だけれどね。フォーレグス王国ではほぼ無い。

 何かしら治療が必要な時は、地味にフォーレグス教ががんばっているようだ。

 信者が増えるはずだなー

 そのおかげで神格を得て、本格的な神になってしまったのだが、なってしまったものは仕方が無い。

 増えた仕事は増やした眷族が引き受けてくれるので、どうとでもなる。

 まあいい、さっさと金属細胞の培養方法を見付けよう・・・・・・

 『バグ様。ベギウスオルクの裏側へ続くダンジョンで、ボスが倒されたようです』

 気合を入れたところで、メリアスから連絡が来た。

 「わかった、様子を見てみる」

 『はい』

 ここしばらくは仕事が忙しく、あまりゲーム世界に行っていなかったのだが、どうやら元々日本人を避難させていた裏側世界へと続くダンジョンの最終ボスが撃破されたようだ。

 ダンジョンが発見され百を越える階層が攻略されたものの、長い間最終ボスを倒す事は出来なかったのだが、何でこの忙しい時期にクリアされるかなー

 まあフォーレグス王国の国民にしたら、諸外国がどれだけ荒れていようとまったく関係は無いのだろう。

 こっちはモンスターが中心の友好種と、人間の国を追い出されたり帰れなくなった者達が暮らす国だ。周囲の人類がどれだけ減ろうが、あまり気にする事でもない。

 だからってのんきにゲームをして遊んでいるなんて・・・・・・僕と変わってくれ・・・・・・


 次元の隙間にゲーム製作者の魂が吸い込まれ、融合した誕生した世界がベギウスオルク。電子の世界になる。

 始めは単なる暇潰しの手段として管理していたが地球が危機に陥り、日本人をゲームのキャラクターとして取り込んだのが裏側にある世界だった。

 当初は両者に交流させるのも手だと考えたのだが、途中で銃器という危険な力が普及した事で世界をリセットさせたりもした。こちらの世界でも格差が生まれないように、銃器に対応する術を模索したりもしたのだが、今となっては裏の世界も普通のファンタジー世界となっている。

 ただ裏側にいるのは元が日本人達ばかりなので、魔法技術は表より遅れているけれどね。

 後人間の寿命に対し、友好種達の寿命はかなり長い。僕を含め、ゲーム開始当初から生きている種族なんかもいて、ゲーム内アバターのLVが恐ろしい事になっていた。

 さすがにこの状況で異文化交流はまずいよな~

 だから接触させないようにしようと思う。

 元日本人達からしたら、こっちはどう見てもモンスターばかりに見えるので、出会えば争う事になるしね。さすがにそれは避けたい。ある意味魔王が大群で攻めて来るようなものだろう。ちょっと怖いな・・・・・・

 それにこちらはゲームでしかないのに対し、裏側は生身というか生きている存在になる。こういっては何だが、命の重さが違い過ぎる。


 地球を捨てて宇宙に脱出した外国人達は、どこかの星に辿り着けたのだろうか? もし人間が住める星を見付けているようなら、そこに合流させるのも一つの手だろう。

 そう思い、記録を探してみた。

 というのも、ゲーム世界ベギウスオルクに住んでいる人間の管理までこちらが担当していたので、ひょっとしたら過去の地球に住んでいた人間の管理も僕が担当になるのではって考えたからだ。

 記録があれば、どこに飛んで行ったのか探す手間も減るだろう。

 しかしどうやら過去の地球に関しては、管轄外だったようだ。向こうにもちゃんと神とかいたのだろうか・・・・・・

 さすがにこちらの神様のデータには、他所の世界の情報は無いようだな。

 ついでにその後の地球を見てみると、同じくらいの大きさの惑星とぶつかって瓢箪のような形のまま、動きを止めていた。 周囲に他の星々が無いので、かなり辺境まで飛ばされてきたようだな。

 地表も完全に剥がれ落ちて、中心核も熱が既に無くなっている。水も分厚い氷となっていて飲める状態ではない。これはもう人が住めるような環境ではないだろう。惑星というよりはデカい隕石の塊だ。

 生き残りの地球人は・・・・・・管轄が違うからちょっとよくわからないな。

 アニメとかみたいに船団でも作ってあちこち漂流しているのかもしれない。だけれど神の目を持ってしても、見た事も無い宇宙船を見付けることは出来なかった。

 まあいいけれどね。

 壊れた地球が見付かっただけでもよしとしておこう。ただ太陽も無く闇の中に漂う岩の塊なので、ここにゲーム世界に取り込まれた日本人達を移住させる訳にはいかないだろう。

 よくよく考えればダンジョンボスは倒されたのだが、直ぐに裏側と接触する訳じゃないな。

 二つの種族が接触するには、更に数百のダンジョンを突破する必要がある。表と裏が合流するちょうど中間にボスがいたのだから。

 そう考えればいずれ合間見えるとしても、まだまだ時間的な余裕がありそうだ。


 太陽も無く水も無くなってしまった惑星では人は住めない。

 他に移住に適した星を探すかテラホーミングするか、今の僕ではまだまだ力が足りないので大掛かりなことは出来そうになかった。

 だからとりあえず保留にしておこう。僕にだって他の仕事は一杯ある。

 レビルスと一緒に経験稼ぎでもしようかな~


 《名前 バグ  種族 生命の神  年齢 346-347  職業 管理者  EXP -%

 LV -  HP 17966-68015  SP 23168-85416  ST 15883-61834

 力 1754-4933  耐久力 1804-5062  敏捷 1823-4906  器用度 1753-5028

  知力 8289-12739  精神 8352-12429  運 77  素質 58-51  神格 1

 属性 焔 清 地 空 聖 滅 魂 混沌 零 時

 適正 格闘戦闘 武器戦闘 水中戦闘 精霊 空中戦闘 空中 水中 真空 神聖魔法 攻撃魔法 並列戦闘 創造*

 スキル LV無し 無詠唱 保管魔法 念話 影渡り 人化 転生 生存 自動行動 成長 飛行 レイシアとの絆 ビーゼィフォルトとの絆

  LV一  磔 魂変換 回転攻撃 応急手当 逃走 再生 魔物化 淫夢 負の感情 悪魔の契約 繁殖 狂暴 盟約 半神分離* 毒術* 過去視* 未来予測* 神の目* 革進*

  LV二  鱗化 精霊界

  LV三  咆哮 不運 堕落 神の手* 強制回復*

  LV四  夢支配 石化眼 帰巣本能*

  LV五  海流知識 竜化 仮死 死の宣告 魔族の忠誠* 勇気*

  LV六  呪歌 歌唱 魅了 狂気 破滅の風*

  LV七  記憶回収 羽撃 魂化

  LV十  銃術 騎乗 縄張り 対話*

  LV十三 浄化の炎 不死者の絆 発火現象 必中爪撃* 部隊召喚* 満腹*

  LV十五 光合成

  LV十六 高速移動(水中)* 系統樹*

  LV十七 記憶操作 竜の一撃 水泳*

  LV二十 二十重詠唱 底上げ 調査 体内爆破 超回復 超感覚 SP消費減少(大)  消費魔力緩和 気功法 達人 万能吸収 創造 亜空間 全耐性半減 共振 時空干渉 自動防御障壁 局地魔法陣 連撃 鑑定 範囲拡大 万能感知 呪い 支配 衝撃波 記憶 素材知識 挑発 守護 夢干渉 誘導感覚 属性攻撃(全)  薙ぎ払い 爆破撃 鍵開け 罠解除 ステータス 分身 武器術 連発 分解 精霊 武器破壊 双爪撃 超常の加護 透明化 司令官 調理 サフィーリアの加護 召喚モンスター 狩人 自然 意思疎通(精霊・植物・魔物) 芸術 戦術 人工知能 感情判断 日の視界 幻術 視線 共振破壊 魔物知識 罠知識 植物知識 石知識 風の目 収集術 毒知識 配下 不死の領域 天候操作 物まね 念動力 蘇生》


 ステータスチェックしてみたのだが、どうやらLVの概念が無くなっている?

 レビルスと一緒に経験稼ぎをって考えていたのだが、どうやら神になった事で意味が無くなったようだ。いや、神格って項目が増えているようなので、これが神のLVみたいなものなのかな?

 とすると、これからは神格を上げる事で強くなって行くのだろうか?

 神格なんて、どうやって上げればいいのだ・・・・・・未知の領域過ぎて、わからないぞ・・・・・・

 ・・・・・・神格とは、一定数の信仰を集めた者が手に入れる力。心からの信仰を集める事で、神格の力は増して行く・・・・・・

 おおう。神格の上げ方がわかった。充実したサポートで、新米の神としては大助かりだ。

 つまり今まで避けていた教会での仕事をしていけば、神格が上がって行くって事だな。

 気乗りしないのだが、ビフィーヌ達が喜びそうだな・・・・・・


 現時点で僕と対等に戦える者は、同じ神くらいなものだろう。

 もはや勇者であっても対抗馬にはなりえない。と思う。ホーラックスのような職業邪神も今なら簡単に倒せるな。

 そうなると本物の邪神くらいしか警戒対象はいなくなる。

 実のところこの世界にも邪神と言われる神がちゃんと存在していたりするようだ。ちゃんとって言い方はおかしいかもしれないが、二人もいるらしい。

 今のところちょっかいをかけられたりした事が無いので何とも言えないのだが、アルファント神からの講習でその存在を教えてもらえた。

 現状敵無しだからもう経験値集めは必要無いかと思えば、更なる上位者が出て来た感じだな。まるで格闘漫画のように次々と強い存在が出て来るものだ。

 まあこっちの世界では名前が出て来ただけで、姿も形も見えないのだけれどね。

 しかしその存在を知ってしまったからには強くならねばならない。守らなければいけないものが、随分と多くなったからな~

 苦手なのだが、やっぱり信仰を集めるには地道な救済活動が必要か? それもフォーレグス王国なら信仰が集まるかと思うが、他国はさすがにきついだろう。ある意味こちらは魔王と混同される事が多いしね。

 せいぜい難民を集めて救って、その極一部が信仰してくれればいいかなくらいかもしれない。

 こうしてみるとサフィーリア神とかと違って、僕は信仰を集めにくい神だよねー


 元々僕は矢面に立ったりするのは得意じゃない方だった。リーダーになったり国王みたいな役割を果たしたり。

 確かに何かしら企画をたて、それを実行するのにアイデアを出すのはやってもいいのだが、自分自身が前面に立ち目立つのはちょっと遠慮したい。元がインドア派の一般市民に、リーダーシップはミスマッチだ。

 それなのに、信仰を集める為に前に出て行かなければいけないだなんて・・・・・・これは結構苦痛だ。

 だが今はそんな事を言っていられないので、気乗りしないながらもまずは首都の教会に向かう。

 「主さま。どうぞこちらへ!」

 普段教会に寄る事がない僕がやっと立ち寄るからか、ビフィーヌが張り切って案内しようとしている。

 実際教会を見るのは久しぶりで、中に入った事も一度くらいしかないから案内は嬉しいのだが、ちょっと待って欲しい。

 「なあ、教会はいつからこんななのだ?」

 「この綺麗になった教会でしたら、主さまが神格というものを発現なされた時です」

 教会の何に疑問が湧いたかといえば、その建物自体だ。依然見た時はこじんまりとして遠目にはあまり派手ではない、質素な建築物だったはずだ。それがクリスタルとかで出来ているのか?

 ステンドガラスが綺麗ってレベルじゃない。建物全体がクリスタルで出来ていて、一種の芸術的な存在と化している。

 近くに寄って見てみるが、以前と同じで教会自体はそこまでの敷地面積の無い、こじんまりとした建物だった。これは僕が余り派手なのを嫌がったからで、その代わりこれでもかっていう程見事な細工が柱や壁に掘り込まれている。

 それらがクリスタルへと変化し、まさに神々しい雰囲気の教会へと進化していた。

 それはもう初めからこうなるように計算されていたかのように、芸術性を増しているのだ。唖然としちゃうよね。

 ただし、教会の中は丸見えだったが・・・・・・


 僕が教会の美しさに見惚れて壁などの感触を確かめていると、中にいた司祭? それっぽい格好をした有効種の男性が壁越しに祈りを捧げていたよ・・・・・・いや別にそれ自体はいいのだが、それはそれで壁越しにってどうなの?

 思わず挨拶代わりに手を上げてご苦労って感じにしてみたら、周囲の信者かな? 凄い感激した表情で嬉しそうに平伏していた。正直魂的には普通の一般市民なので、崇められるのはやりにくい・・・・・・

 でも隣にいるビフィーヌとかからしたら当たり前なようで、頷いて満足そうにしていた。神としてはこれが正しい姿なのだろう。

 うううっ。これからこういう生活が始まるのか・・・・・・

 「今日は、ドラゴンはいないんだなー」

 「美人の姉ちゃんもいないな。あの子もバグ様の眷属だったのかな」

 げんなりとしていると、周囲に集まっていた市民からそんな声が聞こえて来た。

 教会がこんな綺麗で神秘的な物になっているので、町の観光名所にでもなっているのかもしれない。周囲には人で一杯だったのだが、そんな市民の声が耳に入って来た。

 そういえば、勇者と戦っていた時にいろいろ体の中から出て来たな。おそらくゴールドドラゴンと、サキュバスの事を噂しているのだろう。あれって結局なんだったのだ? 進化合成の時に吸収した者達だと思うのだが・・・・・・

 ・・・・・・半神分離のスキル。数多くの信者の声を聞き、複数の信者に手を差し伸べる時に分け身を向かわせる事で、さまざまな問題を解決出来るスキル。体内に取り込まれた魂がある為、別人格として外に出て来たのが前回の特殊な分け身である・・・・・・

 どうやら手に入ったスキルが自動発動したみたいだな。

 むっ。説明に別人格ってあったか? どうやら進化合成で神になったおかげか、特殊仕様らしい。

 上手くすればそいつらに神としての活動をお願いすれば、信仰も集まるのでは?

 ゴールドドラゴンの場合、以前進化合成の時に取り込んだエンシェントドラゴンなのだから、以前集落で暮らしていたドラゴン達の所へと行かせれば、そこの土着神みたいに出来るんじゃないだろうか。

 他にもいろいろ取り込んだ友好種達を、それぞれの町や村などに向かわせ担当してもらえれば、僕が神でーすって出て行くより信仰を集めやすい気がする。

 適材適所。何も目立つ事が苦手な僕が前面に出て行かなくても、分け身に任せておけば神としての布教作業が出来るのではないだろうか。

 他に生み出した眷属達と同じだな。こういうのは出来る者達に任せよう。


 さてさて、ここで自分の変わりの分け身に布教を任せたとして、それはそのもの僕の信仰となりえるのか。おそらくは分け身自身が信仰の対象になってしまうのではないだろうか。

 それって結局信仰が分散して神格の格が上がらない可能性がある。さすがにそれでは意味がない。最悪分け身に取って代わられたり、独立した神になったりするのではないだろうか?

 ・・・・・・分け身を信仰の対象とした時、本体もまた信仰されたものと捉えられます。神格はそれにより成長するので問題になりません・・・・・・

 おおう。

 何かしら対策がいるよなーって考えていたら、いいタイミングで解説されたよ。

 一応考えた対策は、注目されている状態で分け身を出して、これらは僕の眷属みたいなものだよーってアピールする事だった。説明を聞いた限りもうそんな必要なくなったみたいだけれど、まあ念の為にやっておくかな・・・・・・

 (半神分離!)

 パッシブだったらどうしようと考えつつスキルを発動させると、僕の中から今まで進化合成で吸収した者達を象った分け身が出て来た。彼らは早速それぞれの集落のある場所へと移動して行く。

 いや、残っているのが一体いるな。

 一番最初に合成された時、こちらをじっと見ていたあのわんころだ。

 まあ、こいつはなんというか神様っぽくない。どちらかといえばペット枠? こんなのに怪我など癒されても感謝するより困惑しかねないな。だって、全然神様らしくないのだ。尻尾を振っているし。

 どうやらなついているようだし、こいつはまあ変り種とでも思ってこっちで連れて行こうかな・・・・・・このわんころを神として崇めてくれる相手が思い浮かばない・・・・・・


 さてゲームの裏側の方はまだ時間があるので後回しでいいとして、出来るだけ急いだ方がいいのがレビルスの装備を造る為に必要な、金属細胞を増やす方法の確立である。

 これはさっぱり思い付かないのだが、神の知識みたいなスキル解説とかしてくれたあの機能で、ヒントでも貰えないものだろうか?

 ・・・・・・デクトラウトは鉱物組織で出来た肉体を持つ珍しい魔族種族です。その肉体は死しても周囲の魔力を取り込み行き続け、頭脳があれば何度でも蘇生します。しかし頭脳が破壊された場合この種族は蘇生することは出来なくなります。このデクトラウト肉片は、通常高魔力を浴び続ける事で再び別人格として成長しますが、肉片だけを成長させたい場合はグリーンメタル合金と名付けられた金属を取り込む事で増殖します・・・・・・

 本当にヒントというか、回答が出たよ・・・・・・しかも僕が勝手に名付けた金属が正式名称になっているし・・・・・・これっていいのかな?

 まあいいか。これで金属細胞っていうか、こっちもちゃんと名前があったのだな。デクトラウトはあの時の魔族の種族らしいが、その肉片の増やし方もばっちりわかった。

 早速資材置き場から金属を持って来て・・・・・・どうやって取り込ませるのだ?

 わからないのでとりあえず、デクトラウトの肉片の隣に置いてみる。駄目なら溶かして混ぜてみよう。

 実験で短剣を造った時の要領でいいよな? というか、あの時にグリーンメタル合金を使っていれば増えていたかもしれないのか・・・・・・素材が貴重過ぎてランクの低い金属と合成するのは勿体無いから、ミスリルかオリハルコンしか使おうと考えていなかったのが間違いだな。


 金属細胞改めデクトラウトの肉片の培養は、ヒントのおかげで順調に進んでいた。隣にくっ付ける様に置いておけば、増えて行くようだ。

 残念ながら物は生態金属だったので、山のようにグリーンメタル合金を用意しても、一気には増えてくれない。観察してみたところ、徐々にグリーンメタル合金を侵食して取り込んで行っているって感じだった。

 それでも、レビルスの武具一式を仕上げるには十分な量を確保することが出来るだろう。

 まあだからといって今すぐ装備を造る訳ではないけれどね。

 彼はまだまだ子供で成長期でもある。今すぐ造ったところで、フォーレグス王国を出て行く時とは体型が違っていて、調整しなければいけなくなるだろう。

 だから素材だけ確保出来れば後はいずれって感じだ。

 人仕事終わってほっと一息、信仰を集める作業も神の仕事も眷属達にお任せなので、後は難民の食糧問題と治安を見て来るかな。


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