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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第二十九章  混沌の時代が始まる
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神の仕事

 しばらく復興作業でばたついたりしたけれど、日常が帰って来た。

 結局のところ、町の住人には一時的に死傷者が出たものの、全て回復することが出来て被害者はいなくなった。まあ、だからといって無かった事にはならないけれどね。

 グミナラフ魔法王国の国民及び、周辺国ではいろいろと騒ぎが起きているらしい。

 一部の人間は、フォーレグス王国を危険視する声も上がっていたようだけれど、公式発表では今回の騒動は正当な報復行為であって、非難することは出来ないとしているらしい。

 実際のところ、まともに国内も安定させることが出来なかったり、兵力差を気にして喧嘩を仕掛けないよう配慮したようだ。グミナラフ魔法王国のように、逆襲されたくは無かったのだろう。

 そもそも今の情勢は、他国に構っていられる状態じゃないらしいしね。


 そしてこちらもこちらで、今までと何が変わったのかを確かめる事にした。

 その一つとして考えるには大事過ぎるのだが、サフィーリア神から天上界と考えられる場所へと呼び出されたりしていた。

 天上界と勝手に名付けたものの、実際には空の上にあったり死後の世界だったりする訳ではない。精霊界と同じく別の次元なのかな? 他の空間になるのかまあそんな世界に来ていた。

 「あなたには、今まで私達が担って来た仕事の一部をやってもらいたいと考えています。厳密に言えば他の神々とも重なったりする部分があるのですが、やってもらいたいのは命の管理ですね。命の誕生を管理するのか、命の終わりを管理してもらいたいのです。どちらにしますか?」

 でもっていきなりこんな質問をされたりしている。

 唐突過ぎて付いて行けないよ! いきなりそんな大仕事っぽいこと出来る訳がないじゃないか。こっちは神格を得て神様になりましたって言われたばかりなのだぞ。

 「まだ混乱しているようですね。ですが直ぐに慣れるでしょう。どちらの仕事も今のあなたにとってはそう難しい事ではありません。命の誕生であるのならば、いつどこでどんな生き物が生まれて来るのかを決めてもらうだけです。最終的には生き物の総数を維持してもらう事になるでしょう」

 ざっとした説明を聞いただけでも、大仕事じゃないか。どう考えても一人でやれる仕事ではない。

 「命の終わりに関しては、いつどこでどういった終わりを迎えるのかを決めてもらいます。こちらは余程の事が無い限りは、絶滅させないよう気を付けてもらえれば嬉しいですね。まあ最終的な決定権はお任せになるかと思いますが、不安があるようでしたら他の神々と相談するといいでしょう」

 さらっと怖い事を言ったよ。

 場合によっては人間を絶滅させてもいいよって事か? 説明を聞いたらそうとも聞こえたのだが・・・・・・僕が扱うには重過ぎる内容だぞ。まさに神の所業だな。


 さらに話を聞いて行くと、どうやら神の末席に至ったからには、何かしらの役割を果たさなくてはいけないのだそうだ。

 信仰されて神格を得てはいるけれど、その神格の維持に必要なのが神の定義になるらしい。僕の場合は生命の神なので、命にまつわる役割が回って来たのだそうだ。

 ちなみに今まで命の誕生と終わりはどうしていたのかといえば、他の神々が兼任していたのだそうだ。新たな生命関係の神が誕生したので、兼任をやめてこちらに任せようって事らしい。彼らからしたら、専任が誕生したって感じなのだとか。

 ただいきなり全てを任せるのはまだ早いだろうからどちらか一方をまずは担当して、行く行くは残りをと、これでも段階は踏んでいてくれたらしいのだ。話を聞いたら余計に断り辛くなってしまったな。

 もう少し踏み込んで、僕が神格を放棄して神を辞めるのはどうかと聞いてみると、一度生命の神へと昇格しているので今後地上では命が生まれなくなると共に、命が終わりを迎える事も無くなるそうだ。

 不死身か! って思ったけれど、意識があるゾンビみたいな存在になるそうだ。それは嫌だな。そしてどうやら断ることも出来そうにない。

 結局引き受けなければ駄目そうだった。


 面倒だがいつまでもごねてばかりはいられないみたい。とりあえずどうしてもやらねばならないのなら、前向きに内容を確認してみよう。

 命の誕生も終わりも、未来の可能性と共に設定していけばいいようだ。もしこうだったら子供が出来るとか、こうなったら事故にあう。あるいはこうなら病気になる。それら原因に到達しなければ寿命はこれくらい。みたいな感じに設定していくらしい。

 パソコンのプログラミングにある、フローチャートを作るような感じだな。ある程度慣れて来るとランダムで設定出来るので、命数がいてもこなせるようになるそうだ。適当にやると、不幸な者が出て来るやつだろう? 他人の人生を設定しろって、荷が重いよ・・・・・・

 それでも今は経験を積んでランダムの幅や、自由度を広げて欲しいと言われる。

 まあどいつもこいつも、同じ原因で死ぬとか不自然過ぎるよな。子供が出来る時期だって、人それぞれにしなければいけないだろうしね。

 とりあえず内容を聞いた限りだと、命の誕生の方を管理する方がまだ簡単そうだと判断した。そちらを担当させてもらおう。


 しばらくは今まで仕事を兼任していたというサフィーリア神にいろいろと手順などを習い、引継ぎをして行く。もうこれって普通に会社員だろう。やっている事は神の御業だけれど、単なる上司と部下になっているよ。

 いや、よくよく考えてみればこれってレイシア達に会えなくなるのではないか? ひょっとしたら天上界で暮らす事になるのか? それは嫌だな~

 「私達とは違い、あなたは地上で神へと至りました。仕事さえ覚えてもらえば今まで通り、地上で生活しても構いません。ただし、神の力を悪用するような事は無いように。神格が歪めば、禍つ神となり報いを受けるでしょうから」

 報いって、一体何をされるのだろうか・・・・・・それにどこまでが許容されるのかもわからないぞ。

 「わかりました。一つ質問なのだが、私達と違うとはいったい?」

 「私達が生まれたのは元々ここなのです。人々の願いにより誕生し、それ以来ここで人々を見守って過ごして来ました。あなたのように地上で生まれ育ち、人々の願いを受けて神へと至った存在とは根本から違うのです。言うなれば、人がいてこその神でしょうね」

 何だ。創造主みたいな存在だったり、そういう存在に創られた神とかじゃないのか。別世界にいた高次元生命体ってパターンも考えていたのだが、違ったようだ。しかも始めは人間がいて、後から神が出て来たなど、予想もしていなかったよ。

 「私達は神と呼ばれ崇められていますが、私達からすれば人間こそが神々に見えますよ」

 なんとなく話しやすかったり、上から目線で話して来ないのは、そういう生い立ちだからなのかな?

 生い立ちだけ聞くと、人間の方が偉く見えるのだがそんなの錯覚なのだろうね。ますますサフィーリア神が、ただの上司に見えて来たよ。


 何日か研修のようなやり取りを経て、拠点に戻って来た。

 まるで新入社員にでもなった気分だったよ。やっている内容も、書類仕事みたいなものだしね。

 他人の人生を決める仕事・・・・・・ある意味重圧が酷いよな!

 始めは全ての生命と言われ驚いたのだが他の神、豊穣の神マグライアと業務が被るそうで、動植物の内植物に関しては任せる事になった。

 確かによくよく命が大事だって言うけれど、精々ペットくらいしか大事にしないからね、人間は。僕としてもそこに友好種が入ってくるくらいだ。さすがに植物までとは考えていなかったよ。水をあげたりとかはすると思うが、命と言われてぱっと思い浮かばない。

 それにしても植物は担当してもらえたが、膨大な仕事量だろう? 動物は当たり前として昆虫とかも僕の担当になるらしいからな。

 これで植物もよろしくって言われたら、あきらかに僕だけでは手が足りない。豊穣の神なんて神様がいてくれて助かったよ。

 まあその農業も、この世界の人間は麦作りくらいしかやっていないようだが、彼らにしてはパンが主食だからね。無いと相当困った事になるのだろう。

 それでも仕事量は相当な量に及びそうだ。虫なんて一体どれくらいいるのだろうか。人間の総数を軽く超えているのだろうな・・・・・・

 しかし過去の記録を見せてもらったのだが、人間と違って動物や虫などはほぼ内容が同じになっていた。正直助かった~

 知能が高過ぎるっていうのも、考え物だな。それは友好種も同じだ。

 最近のコボルトやゴブリン、それにミノタウロスなども、昔に比べたら知能が高くなっている。それに合わせて必要になる選択肢がかなり増えていた。これは結果的に余計な事をしてしまったかもしれない・・・・・・

 結局自分で仕事を増やした責任を、そのまま自分で取っているようなものなのだろう。


 事務仕事みたいなものは、さくさくやって終わらせてしまいたいところなのだが、さすがに人様の人生を適当に片付ける訳には行かない。これも初めの内だけと考え、なるべく不満が出ないよう設定してく。

 信仰が大事って事は、信仰を失うような行動に気を付けなければいけないって事だ。そこらにいる無関係な人間ならば問題はないが、せめてフォーレグス王国の国民の未来はしっかり考えて行こう。

 贔屓? おう、思いっきり身内は贔屓させてもらうぞ。だって、他人は僕に何もしてくれないばかりか襲って来る奴までいる。それに対して国民は、信仰を捧げてくれたり一緒に国を育ててくれた。直接的な干渉は無かったかもしれないがな。

 やっぱり身内は可愛いのだ。

 まあ僕の仕事としては子作り系なので、子供が出来過ぎないよう調整するのと、望まない子供を減らして行けば問題は出ないだろう。後は孤児になりそうな子供は減らしたいところだな。これはそこらの人間も同じだ。

 ある程度未来がわかるからこそ、そういう調整も出来る。まるっきり子供が出来なくなるのも不自然なので、せいぜい減らす程度の作業になるがね。

 問題は子供が欲しいって夫婦の場合だろうな。基本的にはランダム処理でいいのだが・・・・・・未来で別れる可能性がある時には悩む。別れた後、しっかり子供の面倒を見るのならいいが、放置するような夫婦には不要なように思える。

 なのに子供を望むのだ。

 天罰でも食らわせてやろうか? 未来の行為に対して天罰っていうのも、理不尽だろうけどね。

 これも仕事と割り切るしかないのだろう。


 「バグ、仕事終わった?」

 「今日のところは切りが付いているよ」

 そもそもこの仕事に終わりは無い。今のペースで人類が減れば、終わりも見えて来るだろうけれどね。フォーレグス王国民がいるので、完全に無くなる事は無いだろう。

 えっと何々・・・・・・今フォーレグス王国民は四千六百万人に達しそうになっている。

 何だが随分な数になっているな。おそらくはこの世界のどの国よりも国民が多いはずだ。こんな時代だからこそ、それは歴然とした差になるだろう。今だと一千万人いる国も、少ないのではないかな?

 ちょっと前までだったとしても、ここまでの国は存在していないはずだ。せいぜい二千万人といったところか・・・・・・

 よくよく考えてみれば、現在のフォーレグス王国の国土は、それなりの大国三つ分。二国で足りないからと、さらに一つの国を取り込んだのだがら、国民がそれだけ多くても当たり前だった。

 ついでなのでチョビの様子も見てみよう。

 《神の目 を取得しました》

 おおう・・・・・・多目的シートで情報を見ようと考えていたのだが。チョビの様子や、元トルグブルト国地域の様子が自由に窺えるようになった。

 これが神の目か。何もかもが思うがままに見えるな。便利ではあるが、ある意味これは怖い。情報が思いのまま手に入るではないか。

 「仕事に切りが付いたんでしょう。早くご飯を食べに行こうよ」

 おっと、レイシアが呼びに来ていたのだった。

 今は珍しく書斎で仕事をしていた。一応拠点を造った時に用意されていた部屋なのだが、僕に書類仕事など無かったので、今まで放置されていたのだ。

 せっかくあるので活用させてもらっていた。

 たぶんこれからの日常では、午前中ここで神の仕事をして、午後から自由行動になると思う。

 神になっても、休息は必要だからね!


 食堂に用意されていた料理は、どれも今まで味わって来たものと、一線を画す旨味が味わえた。

 何だこれ! 深皿に盛られた肉に野菜のスープ。使われている素材はどれもフォーレグス王国で栽培されているもので、特別そうなものは見付けられない。

 しかし今までの料理とあきらかに違うとわかる程、美味しかったのだ。

 「美味しいな。新しい調味料でも見付かったのか?」

 「ふっふっふ。調味料じゃなくて、新しい調理方法が開発されたんだよ!」

 「早速試してみたわ!」

 「調理方法?」

 深皿に盛られた料理は、どちらかといえば素朴な肉野菜煮込みのスープのように見える。南瓜が入っているので、南瓜のシチューってところだろうな。これのどこに手を加える余地があったのだ?

 疑問に思っていると・・・・・・

 「何となく錬金術とかに見えそうなんだけどね、煮込む工程で魔力を加えて凝縮していくの。素材の中に、出来るだけ多くの魔力を凝縮出来れば、美味しくなるみたい」

 「人間にはちょっときついのだが、わらわのような魔族ならば美味しく仕上げることが出来るわ!」

 「ほー」

 ひょっとして、これもホムンクルスの研究の成果が流用されたのかな?

 それとも、ドラゴンの肉は上手いって小説などで言われているし、魔力の有無で美味しさが変わって来るとかって事かもしれない。それを見付けて研究した者がいてもおかしくはないかな。いや、フォーレグス王国でドラゴンを食べるやつはいないか。

 どちらにしても、美味しい料理が味わえるようになったって事だ。これは喜ばしい。


 仕事の後の昼食を、久々に堪能した気がする。いや、いつも大体美味しいのだが、感動を味わったといった方がいいかな?

 そういえば、新レシピが増えるっていうのも最近なかったかもしれない。

 今回の場合は新レシピとまでは言えないのだが、新しい調理方法が生まれた事で、料理関連でいろいろと賑やかになるだろう。何にしても嬉しい事だ。

 日本にいた時にもあったけれど、圧力鍋って考えればいいだろうな。あれはたぶん肉とかを柔らかくするっていう使い方だったと思うが、こちらは魔力圧縮調理法って感じだった。その効果は旨みを引き出す? いや付加すると言った方が正しいな。

 それなりの魔力が必要になるので、人間では使いこなせないようだけれど、これからどんどん普及して行ってくれる事だろう。

 今回の昼食はレイシアが主導して、ビゼルが補助して作ってくれたようだ。レイシアの魔力ではあそこまでの味わいが出せないようだからね。悔しがっていた。まあ少しの魔力でも美味しくはなるようだな。

 料理パペットはどうなのだろうか? あいつも確か魔力を使うタイプじゃなかった気がする。

 今後、この料理法が普及して行くのだとしたら、魔力を使えた方がいいだろうな。

 《革進 を獲得しました》

 うん? 何かスキルが手に入ったが、これは見た事があるぞ。

 確かこれってレイシアが持っていたスキルだな。進化ってスキルの上位のやつだったか?

 ・・・・・・対象を上位の種族または物体へと変化させるスキル・・・・・・

 えっとつまり、パペット達に魔力を持たせたいって考えたから手に入った訳だから、これで進化させろって意味かな?

 考えただけでスキルが手に入るっていうのも、神格を得て本物の神になった影響なのかね~


 せっかくなので早速パペット達を集めて、進化させてみよう。いや、パペットってこの先どう進化するのだ? 出来れば魔力を持つだけでなく喋ったり、料理パペットなら実際に食べて味見出来ればいいのだが・・・・・・これってほぼ人間だな。

 望んだ様に進化するものなのだろうか・・・・・・

 さすがにちょっと不安になって来た。場合によっては何回か、進化させなければいけないかもしれないな。

 「みんな食堂に集まってくれ」

 とりあえず、念話でパペット達を集める。こればかりは悩んでいるより、実際に試してみるしかないだろう。

 しばらく待つと集まって来るパペット達。残念ながらここに集まって来たのは全てのパペットではない。諜報活動などをしている動物型のパペットは、各地で潜伏しているからだ。

 一部の動物型のパペットが集まっているのは、休暇とかなのかな? それともたまたま近くにいて帰って来たのかもしれない。

 まあとにかく今回集まってもらった理由を話してみた。

 『私達は今のまま、バグ様の道具として働いて行きたいと考えております』

 全てのパペットを代表するかのように、司書パペットがそう主張して来た。実際パペット達は、息が合った動きで頷いている。

 どうやらこのまま、道具として役割を全うしたいようだな。

 彼らは昔から道具のように働く事を求めていた。変化して仕事が出来なくなる事や、眷属のように自由になる事を求めてはいないのだろう。これは困った。

 「出来れば今のままではなく、進化してそのまま働いて欲しいのだが」

 スキルでどう変化するかわからないから、安心させる事も出来ないのだよね・・・・・・それと、単純に魔力を扱えるようにするだけなら出来る。わざわざ進化を促さなくてもスキルを追加すればいいだけなのだ。

 実際に最初のパペットは、魔道具を作成する能力を持っているのだから。


 今まで僕に付いて来てくれたパペット達の意思を尊重して、ここは魔力操作に関するスキルを与えるだけにしておくかなって考えていると、最初のパペットが前に進み出て来た。

 どうやら自分を使って試して欲しいとの事だ。

 実際にどんな進化をするのかを試してもらって、自分達の希望に合うのかどうかを実験して欲しいらしい。

 僕としてはどんな進化をするのか気になっている。だがパペット達は人間にはなりたくないと思っているようだ。だからどのような変化になるのか実際に試してみようと考えているようだ。

 それはありがたいのだが、いいのか? 一人だけ他のパペットと違う種族になる可能性もあるぞ。いや、革進のスキルを使う毎に違って来る可能性だってあるはずだ。

 一度進化させたら後戻り出来ないっていうのは、なかなかに怖いものだな。

 それでも僕の試してみたいという想いに応えてくれたのだろう。

 感謝しつつ、スキルを発動させた。上手く行きますように!

 「革進!」

 錬金術の進化合成の様に光が包み込むと、最初のパペットの姿は一変した。

 ぱっと見は人間そのもの? だが関節にあたる部分には筋があったり、よく見ると球体関節があったりして、人形タイプの魔法生物である事がわかった。

 ドールといえばいいのか? 最初のパペットが手を持ち上げて自身の体を確かめている。

 「これが私ですか?」

 おお喋った!

 わずかながら驚いているのもわかる。表情も動くようだな。顔にも筋があって、表情が動くようになっていた。

 パペットの時は顔などなかったので、より人間っぽく進化したのだろう。内包している魔力も感じられるので、おそらく僕が求めていた要素はクリアしていると思われる。

 ああもう一つ確認しなければいけないか。この形態で料理の味見が出来るのかどうかだ。

 普通に考えれば人形が味見など出来ないのだが、どうかな?

 早速料理パペットに指示を出して、軽食を用意させた。

 「バグ様。とても美味しいです。皆さんはいつも、このようなものを味わっていたのですね・・・・・・新たな体を与えていただき、ありがとうございます」

 「いや、こちらこそ。人体実験のように使って悪かった。それと今までもいろいろと助かった。これからも頼むぞ」

 「はい。誠心誠意がんばらせてもらいます」

 うん。求める要求スペックは、全て満たしているようだった。これなら他のパペット達も、嫌ではないのでは? 一応人間に限りなく近くても、これは人形だぞ?

 一部始終を見ていたパペット達は、最初のパペットをねぎらいながら革進を受け入れてくれた。


 順番にスキルを使って行く。結局種族はドール系の何かでいいのかな?

 一応ステータスで確認しておくかな。


 名前 メイソン  種族 マジカルドール(使徒)  職業 収集家  EXP -%

 LV -  HP 400(+500)  SP 300(+500)  ST 500(+500)

 力 300(+600)  耐久力 300(+600)  敏捷 200(+600)  器用度 300(+600)

  知力 150(+600)  精神 150(+600)  運 46  素質 81

 属性 水 土 闇

 適正 収集

 スキル バグの加護

  LV二十 採掘 収集術 空間移動 鉱脈感知 水脈感知 鑑定 暗視 棍術 打撃向上 強打 鉄壁 再現 帰巣本能 縄張り 危険感知 再生


 基本的には魔法が使えるドールらしい。こいつは魔法技能を持っていないようだが、それでもマジカルドールなのだそうだ。

 それより使徒って書いてあるな。まあ正式な神になったので、使徒って扱いになってくるのか。後は種族が変化して名前が付いたみたいだな。

 ちなみにこいつは採掘担当パペットだったやつだ。

 それよりふと思ったのだが、人間に近くなったから服が無いのが気になる。よく見れば人形で間違いは無いのだが、裸の人間に見えるのはどうかと思う。

 女性型のパペットもいる訳だし、先に服を用意してもらった方がよさそうだ。人形を見て興奮する変態ではないのだが、何だか落ち着かないからな。


 人型のパペットは元の体型そのままに、マジカルドールへと進化するみたいだな。ドワーフ型はドワーフそのままになったぞ。例外はゴーレム型のパペットが見た目、大きく変化したかな。

 作業も工程も今までとは違い、魔法で補う感じらしい。二メートルを大きく超える大型の人間に見える。よく見ればこれも人形なのだがね。

 裁縫と司書のパペットは、やはり服を先に用意させて正解だったと思う。これ、完全に普通の女性に見えるよ。

 他のマジカルドールも共通なのだが、皮膚はちゃんと弾力がある。

 だから下手をすると、人形だと気が付かない者も出て来るだろうな。そんな気がした。

 さて、次は蜘蛛型のパペットや羊型などのパペットがどう進化するかだな。

 「革進!」

 うん。予想通りだ! 本物とほぼ変わらないだろう。

 羊なんて、フサフサの毛に包まれているから、マジカルドールだと気が付かない程だ。ただし野生の羊と違って、魔法を使っている個体がいる・・・・・・ステータスを見ると、どの固体も上級冒険者じゃあ歯が立たない強さがある。

 パペットと同じでLV固定らしいが、能力は遥かに底上げされていた。

 一度諜報担当のパペット達も返って来てもらい、進化してもらった方がいいだろう。より隠密性も高くなるしね。


 そしてふと思い付いた事がある。

 フォーレグス王国も元々は僕が造ったというか、造るよう指示を出したのだけれど、結局管理運営はホーラックスを始めとする眷族に任せっぱなしになっている。

 神様の仕事も僕がやるより専用の眷属達に任せた方が効率よくないかな? ある意味押し付けているのだが、使徒というステータス表示を見て閃いた。

 この仕事の場合は神の使いって感じで、天使って言いたいがね。

 実際受胎の天使とかそういうのが確かあったはずだ。ぴったりの仕事じゃないか?

 結果的にちゃんと管理出来ていれば問題はないだろう。そんな訳で、眷族を創ろうか!

 「創造!」

 イメージは決まっていたのでとても楽だった。

 ちょっとヴァルキリー寄りになった気がするのだが、まあ戦闘も出来る文武両道でいいかと思う。

 「早速仕事を手伝ってもらいたい。やり方はわかるか?」

 「もちろんです。主様」

 仕事はいろいろと他人の人生を選択して行くのだが、僕はやりやすいようウィンドウを表示する感じでそれらを選んでいた。ひょっとしたらこの表示自体僕じゃないと出来ない可能性があったのだが、どうやら杞憂に終わったみたいだ。

 創造したエンジェルは、早速ウィンドウを呼び出して人生を確定させて行く。この時点で僕より手馴れているな。

 そして作業が終わった結果は、何故か僕の中で整理出来ていた。

 どうやら呼び出しているウィンドウは、僕の力で呼び出しているらしく、何をどう処理したのかが逐一わかるようだった。これはミスがないかどうかのチェックになってよかったかもしれないな。

 後、常に結果報告されるみたいだけれど思考の裏側とでも言えばいいのか、日常生活の邪魔にならない感じなのもよかった。

 彼女の手際を見ると、もう自分でやろうとは思えなかったけれどね・・・・・・やはりこういう事は専門の者に任せるべきだな。

 僕がやるより断然いい結果を出してくれそうだ。

 おそらく近いうちに死者の管理の方も任されるのだろう・・・・・・


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