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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第二十九章  混沌の時代が始まる
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混沌の時代が始まる

   第二十九章  混沌の時代が始まる


 今僕達は、マスタールームといわれるダンジョンの中枢に来ている。

 広い部屋の中、自分達で持って来たテーブルに椅子を用意し、そこでのんびりとお茶をしてくつろいでいた。

 肝心の佐渡さんはどうしたのかっていえば隠し部屋の中で一人、黄昏ているのか想い出に浸っているのか、とにかくしばらくは一人にしてあげようと考えた。誰にでもそういう時間はあった方がいいだろう。

 ちなみに保存の魔法が効いていたようで、部屋の中は依然見た時と変わりないように見えた。女性の部屋になるのでじっくりは見ていないけれどね。たぶん大丈夫だろう。

 後は佐渡さんが満足して出て来るのを、ここで待っていればいい。

 料理パペットを召喚してデザートを用意させつつ、雑談するとしよう。お茶はレイシア達がわいわいやりながら淹れていたので、パペットはデザートを用意しただけになる。すまんな、それだけの為に呼んだりして・・・・・・

 だがおかげでのんびりと待っていることが出来たよ。


 どれくらいの時間、雑談などをして過ごしていたのか。平和を満喫していたところに、物騒な念話が届いた。

 『バグ様。現在の魔王軍四天王の一人、フェザリオが勇者に討たれたようです』

 「ほうー。詳しい状況を多目的シートの方に表示してくれるか?」

 『わかりました』

 異世界でハーレムパーティーを作って豪遊しているだけかと考えていたが、ちゃんと勇者らしい活動もしていたのだな。

 多目的シートを広げると、レイシア達もそれを覗き込んで来る。

 なになに、有志の冒険者含む人類軍約五千人でフェザリオ率いる魔王軍を包囲。魔法と弓矢で数を削りながら攻め込んで、最後は勇者アギトが討伐に成功か。

 討伐自体はそれ程手間取ったものではなかったようで、被害も比較的軽微ですんだようだ。それでも死者は百人単位でいるから、脅威度は高かったのだろうな。

 だがなんといってもフェザリオは物理攻撃ばかりで、魔法の類を使って来なかったのが楽だった理由らしい。

 神官だからな~。いや最終的には大司祭だったか?

 こういうのも闇落ちっていっていいのかどうかわからないが、間に染まった者が神聖な魔法を使える訳もない。そしてフェザリオは大して強くなかったしな。そう考えれば、ボーナスキャラって感じか。倒せて当然ともいう。

 他の三人と、本命のハウラスは別格の強さになるだろう・・・・・・まあがんばってもらいたいものだ。


 「お待たせしました」

 その後の勇者達の動向など、いろいろ調査してもらって報告してもらっていると、佐渡さんが隠し部屋から出て来た。

 昔を想い出していたのだろう、目元が少し赤くなっている。まあそこは触れなくていい。

 「持って行きたい物があれば、運ぶぞ」

 「いえ大丈夫です。アイテムボックスがあるので、持って行きたい物はもうしまってありますよ」

 僕達が使う亜空間のスキルのアイテム版かな? それもダンジョンメイクのスキルで手に入ったのだろうか?

 昔なら欲しかっただろうが、今の僕には必要ないだろう。

 いや、パペットとか眷属達が使うのに便利かもしれない。もし入手出来るのであれば・・・・・・いや、それこそ自分で造ってしまえばいい。帰ったら試してみよう。

 「では帰るぞ。ここのダンジョンにはもういつでも来られるよな?」

 「はい! 各ダンジョンのマスタールームを繋げられますから大丈夫です。バグさんに貰った家には転移水晶で移動出来ますし。これでいろいろ自由に生活出来ますよ」

 佐渡さんに渡した転移水晶は、フォーレグス王国に用意した彼女のダンジョンと家だけが対象になる。レイシア達に渡した物とは違って制限があるのだが、おそらくはそれで十分だろう。

 それでは後は帰って、ダンジョンが完成するのを待つだけだな。


 佐渡さんをダンジョンに案内する用件が済んだので、気になっていた新領土の様子も確認しに行って見る。

 転移させたワレスホルト国ではなく、元トルグブルト国の領土だ。

 元々住んでいた人間達のほとんどは、国外に脱出しているはずだが、それでも残った者達もいるらしい。

 彼らと友好種を交えた新しい町を造って行く予定なのだが、今はまだどこにどれだけの住民を住まわせるのか、町の規模をどれくらいにするのか、計画を立てている段階だ。

 ふーむ。さすがに一国丸ごとの領土を管理するのは大変じゃないだろうか?

 フォーレグス王国は既に、二国を統合した大きさの領土を持っている。そこに一国分追加された感じなのだ。国自体それぞれに大きさが違ってくるのだが、元トルグブルト国は少し大きめな国だった。

 ここは管理用の眷族を追加してみるかな。

 いつまでもホーラックスとメリアスだけに任せてもいられないだろう。もう少し重鎮みたいな役職がいた方がいい。

 宮廷魔導師みたい役職に納まっているウクルフェスもいるけれどな。肩書きだけで、仕事としては特にない。

 それはこちらの眷属達だけで、間に合っているからだ。

 この世界の政治が絡んだ話の時には意見を聞く必要もあるが、今は外交政策がほとんどないので相談する事もなくなった。

 ドラグマイア国もワレスホルト国も属国ではないのだが、フォーレグス王国と揉める事はほぼない。お互い意見の対立というか、要求がかみ合わない事もあるけれど、今のところ普通に話し合いで解決出来ている。

 ある程度お互いに譲歩すれば、たいていは揉める事も無く決まるのだ。いい関係を続けて行けそうだよな。

 両国が強気に出られないだけとも言えるかもしれないがね。


 さて、新たな土地を管理するといえば管理官というか、領主みたいな感じかな?

 「創造!」

 新たな眷属として創造したのは、外見人間と変わらない眷族だ。ぱっと見は中年の人間のおっさんに見える。

 汚職などしそうな駄目人間ではなく、なかなか有能そうなおっさんだ。まあ、ちょっと丸々しているのだが、仕事さえきちんとこなしてくれれば気にするほどでもない。

 逆に外見で騙されてくれた方が、都合はいいかな? いい囮にはなれそうだ。

 「新たな土地の開発を頼むぞ・・・・・・チョビヒゲ・・・・・・?」

 「はっ! お任せあれ」

 ステータスで名前を確認したのだが、チョビヒゲって書いてある。

 確かに特徴的なちょび髭が生えている。だが生まれた時点で髭など生えている訳ないじゃないか。

 これはどう考えても眷属を創造した瞬間、誰かが勝手に名前を付けたって事だよな? 神か? この世界には何人か神様が実在するのだが、そいつらの仕業か!

 変な名前を付けられた本人は、特に気にする訳でもなく早速仕事に取り組んでいる。

 小太りで鈍重そうな見た目とは裏腹に、てきぱきと働く姿からは有能そうな雰囲気が感じられた。名前以外文句の付けようはない。だから余計に名前が残念に思えてならない。

 がんばれちょび髭。例え名前が変だったとしても、僕は差別や軽蔑などはしないぞ。

 結果さえ出してもらえれば、文句は何もないのだ。


 ここはチョビに任せておけばいいだろう。

 やる事といえば移住者の選定と町の配置、それだってフォーレグス王国に初めて町を造ったノウハウがあるのだから、昔ほど手はかからないはずだ。他のパペットや眷族も手伝ってくれるだろうしね。

 この国は特に税金を集めたりもしないしな。

 眷属やパペット達には別に給料を支払ったりはしていない。逆に仕事をくれって言って来るくらいだからな。

 休日や趣味の時間を設けてやる方が、彼らの為になるだろう。いや、暇を嫌がるか?

 特別な任務を与えてやった方が、生き生きとしているのを見かける。仕事中毒にはならないで欲しいな~

 まあたまにだが、思い付きで集まってパーティーなども開いて、感謝と労う意味でも好きなだけ食べまくってもらっている。不満が出ないよう、注意して見ていけばいいかな。

 その他にもトールティみたいにどこか旅をしに行くのも別に禁止していない。最低限やって欲しい事はお願いしたいが、他の時間はそれぞれ楽しんで欲しいとも思っている。

 そう急ぐ事はないのだがおそらくこの土地も、気が付けば凄いスピードで発展して行くのだろう。

 パペット達は物作りが好きだから、寝る間も惜しんで造りまくるだろう。いや、あいつらはゴーレムの一種だから眠らないか。間違いなく知らない間に町が幾つも完成しているよな。

 では次に同盟国のワレスホルト国の様子を見に行ってみようかな。


 まずは国ごと転移した経過をチェックだ。

 当初あった地面と地面の隙間みたいなものは、跡が残るだけで塞がっているようだ。それだけでなく、途切れた道が元トルグブルト国内へと伸びて行っている。

 そちらを窺うと、造りかけの道の端にいるのはミスリルゴーレムのラズと、魔王軍で雑務をしていたビルトフォック。それにドワーフパペットが測量をしながら道を造っていた。

 町とかないのに、まず道から造っているのか・・・・・・まあその方が道沿いに町を造ったり出来るしいいのかな?

 それにフォーレグス王国の首都と直結してくれれば、陸路で行き来する事も可能になるだろう。

 あっ! その前に飛空艇の飛行経路を修正しなくては!

 陸路が繋がっていないのなら、余計に空路は確保しておかないと駄目だろう。うっかり忘れていたぞ。

 「メリアス。今いいか?」

 『はい大丈夫です、バグ様。どのような御用でしょうか?』

 「ワレスホルト国に行く飛空艇の飛行経路を修正しておいて欲しい」

 『それでしたら既に終わっております。陸路にしても、もう少しお時間をいただければ、馬車などを利用して移動することも出来るかと思われます』

 おー、僕がいちいち指示を出す事もなかったか。よく気が付いてくれた!

 「そうか。忘れていたから助かったぞ」

 『いえ、また何かありましたら言い付けてください』

 優秀な配下がいると、本当に助かるなー。既に僕自身、フォーレグス王国には全然必要ではないけれどね。

 完全に放置している。


 さて他にも見るべきところは多い。

 地下水脈などは当然寸断されていたし、霊脈? 地脈みたいなものも、寸断されていた。

 井戸などの関係で、地下水脈を繋げる処置はあらかじめ手配していたのだが、さすがに地脈に関しては専門の知識がない。なので対処療法ともいえばいいのか、後でホーラックスが処理していたはずだが・・・・・・上手く繋がっただろうか?

 一緒に付いて来ているレイシア達と共に、上空から見てみよう。一応テッシーも魔道具を渡せば付いて来られるだろうしな。レイシアは、以前渡した魔道具をそのまま装備しているので、それを使えば飛べるはずだ。

 上空から調査のスキルで見て回ると、どうやら人間や動物、自然などに影響は出ていないようだった。

 精霊に関しては少し混乱が見られるかな? これはいずれ落ち着くだろう。

 こういう大規模な移動は直ぐ影響が出るとも限らない。継続して様子を見ていこう。

 とりあえず、人々の生活自体は元通りって感じなので、安心してよさそうだ。

 後は周辺国が変わった影響で、商人とかには影響が出ているかもしれないが、それだけっぽい。

 人脈とかは、時間が解決してくれるだろう。

 何といっても最大のお得意様になるのはフォーレグス王国なのだから、飛空艇が開通していれば問題はない。

 今はお隣といえど、隣が空き地状態だからなー。直ぐに道が開通して町が出来て賑やかになるはずだ。

 何年とかかる作業ではないだろう。そう考えると仕事が早過ぎだな。


 無事同盟国と陸続きになった事だし、今一度国境に展開してある結界も見直しておこう。

 守りたい国をまとめて包めるのは、手間が省けていいものだ。フォーレグス王国とドラグマイア国にワレスホルト国。まとめて結界を再配置する。

 前と同じで害意のある者は、城型ダンジョンに送り込むように設定する。

 後はホーラックスに用事がある者は、直接城に飛ぶようにもしておくかな。ひとまずこれで国外の用事は終わりだろう。

 国内は・・・・・・眷属達に任せておけば、問題はないな。

 何かあったら対処すればいいのだし、今のところはステータスの魔法のチェックと、ダンジョンのデータ集め。これは佐渡さんのダンジョンが出来てからでいい。

 ホムンクルスの研究は、ウクルフェスに引き継いだ。ある程度寿命が延びるようなら、何かしらの仕事をするという話を聞いた。研究資金はいずれ稼いでくれるらしい。先行投資と思ってここは好きにやらせておこう。

 ウクルフェスがのめり込んでいるので、何かしら納得出来る成果は出てくるはずだ。研究成果は、まあこっちで活用出来るものではないだろうな。ただの趣味とかになるだろう。

 他にはレイシアとテッシーの経験値集めか。テッシーのLVを上げるには不足だろうがな。スキルは何か習得出来るかもしれない。

 まあそんなところだろう。

 では早速帰って、経験稼ぎをしますか!


 それからしばらく、レイシアのLV上げを見守って過ごした。

 その横で筋トレなどして過ごしてみたのだが、数日が過ぎても特に最大HPが増えたりはしないようだった。ランニングや持久走みたいな事もしてみたのだがなー

 予定通りには行かないものだ。

 レイシアの方は順調にLVが上がっているようだ。


 名前 リザリア・ノーリッシュ(レイシア)  種族 ヒューマン(神人)  職業 魔術師-魔導師  EXP 27%

 LV 36-69  HP 263-601(+500)  SP 406-765(+500)  ST 194-511(+500)

 力 20-41(+600)  耐久力 18-47(+600)  敏捷 27-63(+600)  器用度 29-64(+600)

  知力 174-226(+600)  精神 59-104(+600)  運 61-63  素質 65-46

 属性 火 水 土 風 光 闇 生命 空間*

 適正 攻撃魔法

 スキル LV無し 簡略詠唱-無詠唱* バグの加護 バグとの絆 念話* 魔結晶*


  LV一 亜空間* アルファントの加護* 察知* 刀術* 斬撃向上* 銃術* 魔法陣*

  LV二 召喚モンスター* 二重詠唱* 身体向上* 剣術* 棍術* 打撃向上* 危険感知* 土の加護* 魔物知識*

  LV三 SP消費減少(微)* 光の加護* 風の加護*

  LV四 記憶* 魔力向上*

  LV五 錬金*

  LV六 自動回復(弱・SP)*  火の加護* 水の加護*

  LV七 闇の加護*

  LV八 魔力向上*


 ふむ・・・・・・これだけ見ると、既に上級冒険者だよね。これで実年齢が六歳でなければだけれど・・・・・・

 精神年齢はかなり高いのだろうが、外見で判断して舐めてかかった相手は、もれなくボコボコにされる訳だ。

 それでもまだ、ドラゴンに挑むには力量不足かなって思える。

 フィリオやウクルフェスのように、人間をやめてしまえばLV百を突破してさらに強くもなれるのだろうが、それでも人間に拘るのだろうな。


 レイシアとは別に、ビゼルもダンジョンで経験集めをしている。

 出来れば全員一緒に経験稼ぎに出かけたかったのだが、能力の差が激し過ぎてレイシアが付いて来られないからなー

 どちらかといえば、テッシーも僕達と同じ環境で経験集めをした方が断然いい。

 やがてレイシアはLV百になり成長が止まるはずだが、僕達はさらに強くなって行くはずだ。

 そうしたらどうする気なのだろう・・・・・・おそらく今のままなら城の拠点で留守番するしかなくなる。

 今の僕達ならレイシアを守りながら経験稼ぎも出来そうなのだが、完全にお荷物になるはずだ。その状況にレイシアはいい顔をしないだろう。

 何か人間のままで限界を解放するような手段はないものだろうか・・・・・・

 ゲームとかだと新たな超人類になったり、イベントなどで新要素が追加されたりするのだが、都合よくそういうイベントは起きないからな~

 全ての希望を叶えるというのは、そもそも無理がある。どこかで妥協が必要だ。


 レイシアの進化については保留にした。

 考えるにしても今はまだ六歳。まだまだ時間はたっぷりとあるので、ここで急いで決める必要もない。

 それよりは経験集めをしていた方が建設的だな。

 そんな訳でここ数ヶ月の間はのんびりと過ごしていた。おかげでレイシアの経験集めは順調そのもののようで、七歳になる前にLVカンストしそうな気がする。それはそれで困った問題かもしれない。

 でもって待ちに待った佐渡さんのダンジョンが、とうとうお披露目になった。

 といっても一般公開というか、冒険者に解放された訳ではない。一通り完成したので、先行して招待されたのだ。

 「ではではどうぞ~」

 「お邪魔する」

 「これ、攻略してもいいの?」

 「ええ、どうぞー」

 僕としてはダンジョンの造りとか仕掛け、システムなどを見せて貰えればそれでよかったのだが、どうやらレイシアの冒険魂に火が付いてしまったようだ。

 テッシーが補助しているから、危険はないだろう。ビゼルやビフィーヌもいるので、安心して見ていられる。

 後ろから付いていって、合間合間で説明してもらう事にするかな。そっちの方が飽きなくていいかもしれない。よしそうしよう~


 まずダンジョンの入り口については、こちらが指定しているので大して問題はない。

 一定の距離を置いて、ホーラックスが造ったダンジョン郡の一角に出入り口が出来ている。まだ封鎖された状態だけれどね。

 マスター権限で入り口へと転送してもらい、そこからレイシアが先頭に立って冒険を開始した。

 フレスベルト国にあった最初のダンジョンと比べ、壁や床や天井など、ごく自然な感じの洞窟風になっている。前のようなマスで区切られた背景って感じは無くなったな。

 一マスだけ見れば自然な壁でも、それが続くと不自然に見える。あれは昔の3Dダンジョン風に見えて、ちょっとどうかと思ったのだよね。

 新ダンジョンの通路は、微妙にうねうねと曲がりながら続いており、造られたダンジョンっぽさは見当たらなかった。そして早速初モンスターの登場だ。

 全身真っ白な蟻って感じだろうか。羽が付いているので羽蟻だな。

 二足歩行で歩き、二対の人と同じ構造の腕を生やして、それぞれの手に武器を装備している。武器は原始的な木の根を削った棍棒だけれどね。

 これは佐渡さんのオリジナルモンスターではないので、他のダンジョンでも出て来るモンスターだ。ランク的には中級の敵なので、どうやら難易度は初心者向けではないようだ。

 その白蟻との戦闘は、近寄る前に魔法を連続で撃ち出し、あっさりと片付く。まあ、LV的に見てこんなものだろう。


 レイシアの方はそのまま進んでもらうとして、こちらはこちらでダンジョンメイカーのスキルを教えてもらおう。

 「壁とかは、こんな風に隙間を自動修正してくれるようになりました。罠も、それに伴って目立たないよう自動で隠してもらえますよ」

 「ほうー。ほぼツール任せって感じだな」

 「ですね。初めはよくわからなかったんですけど、慣れれば簡単に造っていけますよ。まあMP次第ですけどね」

 戦闘の合間、特にする事のない僕達は、実演込みでスキルを教えて貰っている。

 確かこれってゲームを造るソフトってやつがあったけれど、それに近い構造のスキルのような気がした。

 何から何まで、ツール上の設定をいじるだけで配置してくれるのだ。もちろん現地にて、詳しく配置することも出来るのだが、階層データを呼び出して一括配置する事でダンジョンがいきなり配置出来たりもする。

 まあ壁を斜めに配置するなどの指定をすると隙間が出来るようなので、完全にお任せとはいかないようだがな。自動で隙間を埋めてくれるのは、その隙間があまり大きくない場合らしい。

 壁と壁が離れ過ぎている時は、そこが穴になる。

 階層の外輪部が離れ過ぎている時は、壁その物が置けないのだそうだ。抜け穴になっちゃうからだろうな。内部だとショートカットの道になるのだろう。

 初めてのダンジョンを造った時は、マスタールームから出ないで設定していたらしく、壁を斜めに配置するなんて考えもしていなかったらしい。まあそれもそうだろうな。この世界に召喚されるまで、ただの女子高生だったのだから。

 今ではダンジョン作りに拘りを持つようになって、嗜好を凝らした造りになっていた。


 後、ダンジョンメイカーのスキルも使い続ける事でLVが上がるようだ。

 壁を斜めに配置するなど、LVが上がったことで出来るようになった仕様なのだそうだ。まあ当然置ける壁の種類なども増えたそうだな。

 他には敵の種類、ゲーム的な要素としてはダンジョン内に流れるBGMとか・・・・・・ここはリアル嗜好で音楽無しになっているが、臨場感あふれるBGMなど流れると盛り上がりそうだ。

 レイシアにはあまり評判がよくなかったけれどね。

 冒険者からすれば、馬鹿にされている気になるのだそうだ。

 確かに、敵と遭遇したら戦闘の音楽が聞こえて来るとか、集中出来ないかもしれないな。ゲームならキャラクターを操作しているから臨場感を楽しめるのであって、戦っている本人からしたら操られているとか遊ばれている感がして、落ち着かないだろう。

 これからもBGMは無しの方向でお願いする。欲しい人は自前で吟遊詩人を連れて来てくれ。


 それともう一つ重要な事がある。

 ダンジョンメイカーには玄人向けの機能があるらしい。つまりカスタムダンジョンメイカーってところだ。

 今佐渡さんが使っているスキルは、あらかじめ設定されたパーツの組み合わせか、この異世界に実在する物を取り込んで再現する方法しか出来ない。

 しかし玄人バージョンになると、見た目から材質まで細かい数値設定まで、全てダンジョンマスターが設定出来るらしい。

 おそらくホーラックスがダンジョンを造っていたように、かなり自由度の高いダンジョンが造れるはずだ。

 しかもそれをお手軽に造れるのだろう。

 コピーして張り付けるだけで、壁などが造れてしまう。こっちだと全部を一つずつ造って行かないと駄目だからな。

 まあ基礎パーツやデータを造って置かないと、かなり手間がかかるのだろうがな。

 それでも天然ダンジョンマスターは、やはり万能である。普通にホーラックスを超える力を持っているのだろう。

 ホーラックスが勝てる部分といえば、ラスボスとしての戦闘能力と自立性かな?

 人格を持っているから、設定されたラスボスにはない戦闘能力を発揮してくれるだろう。まあその分裏切られる可能性もあるけれどね。

 玄人向けダンジョンメイカーのダンジョンも見てみたいものだなー


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