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モンスターに転生するぞ[通常版]  作者: 川島 つとむ
第二十八章  忍び寄る戦禍
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懐かしきダンジョン

 「お前、何処かで会った事がないか?」

 迷宮都市を軽く見て回り、さてそろそろダンジョンに入ろうかって考えていると、声をかけられた。

 しかも男にナンパの常套句でだ!

 せめてこういう台詞は女性に言ってもらいたい。逆ナンには乗らないがな。僕にはちゃんと相手がいる。それも二人も・・・・・・これは威張れたものではないな・・・・・・

 で、声をかけてきたナンパ男はいったい何者だ?

 見てみると、まあ当然ながら会った事などない普通の人間だった。当然だろうな。

 しかしその魂には覚えがある。こいつヤーズエルトの転生した魂じゃないか!

 そう考えてみれば、出会った時の慇懃無礼な態度も、そっくりに見えてくるから不思議だ。


 「会っていないはずだぞ」

 「ふむ、そうだよな。わるい、邪魔したな」

 そう言うと、男は見回りに戻って行った。相変わらずこの国の兵士をしているようだ。

 何度目の転生になるかはわからないが、相変わらず武人って感じの生き方だな。でもってそれが似合っている。

 以前の記憶も無いようだし、ウクルフェスと同じで向こうから思い出すなり、何かしら援助を求めて来るなりするまでは、特に接触する必要もないだろう。

 接触するとなれば、前世の話とかして納得してもらう必要も出てくるからな。わざわざそんな面倒な事をこちらからすることもないだろうな。既に縁は切れている。

 ウクルフェスの場合は記憶を受け継いでいるので、縁は切れていない。

 というか、魔王軍の時の戦闘で、転生後に会いに行くとか言って死んで行ったからな。逆に縁を繋いで行った様なものだ。

 社交辞令かと思っていれば、実際に転生するとか、さすが爺さんだ。今は若いけれどね。

 ちなみにウクルフェスの爺さんは、何度も生まれ変わるのは面倒だといって、あっさり人間を捨てた。

 進化合成により今の種族は魔人。

 人間の寿命を大きく逸脱し、魔導研究にのめり込んでいる。

 最近はどこで嗅ぎ付けて来たのか、ヒストカルムの知識を受け継ぐホムンクルスのところで、寿命を延ばす研究なども手伝っていたりする。

 今のところ、最大寿命は二年程らしいな。

 こっちの科学的なホムンクルスは、大体十年が最長だと思う。どうしてこれ程までに違うのだろうか・・・・・・是非突き止めて、人間くらい寿命の長いホムンクルスを完成させて欲しいものだ。


 さてさて思わぬ出会いもあったけれど、目的のダンジョンへと行くとするか。

 ダンジョンの入り口は都市の中心にある広場の真ん中にあった。

 どこか神話に出て来そうな神殿っぽい建物が建っていて、そこに入り口があるそうだ。

 重量感のあるその建物は、周囲の柱を壊したらそのままダンジョンを塞ぐ役目もあるみたいだな。まあ、この罠みたいな仕掛けが発動した事はないらしいのだが、一応二重三重に防衛策が張り巡らされているらしい。

 よくよく見ると、街中だというのに広場はかなり広いスペースが取られていて、堀や何かしらの魔方陣も仕掛けられていた。結界系かな?

 一度暴走してモンスターが溢れて来たっていう事実は、相当重く受け止められていたのだと思う。

 まあそうした警戒や準備は必要なのだろう。

 システムは適切に調整したので、もう暴走などしないはずだけれどね。


 そんな訳でさくさくとダンジョン内へと入って行く。

 入り口にも冒険者は一杯いたけれど、第一層目には結構な数の冒険者が見えた。これって沸き待ちかな?

 一定の距離を置いて初心者っぽい冒険者と、新米兵士達が争うようにモンスターを狩っていた。

 肝心のモンスターはどうなっているのだって見ていると、靄のようなものが床に噴出して渦を作り、そこから湧き出していた。

 養殖したモンスターを転送しているのか?

 でもそうやって湧いて来るので、冒険者達も動き回らずにすんでいるのだろう。まるっきりゲームのようだった。

 出て来るモンスターは集団だな。ゴブリンチームなら、コボルトやホブゴブリンなどが二十から三十体、セットになって出て来ている。他にはリザードマンが十体程度とか、ゴーレムが五体等々。

 ランダムで出て来ているようだった。


 新規のオンラインゲームが始まると、これと似たような光景が開始直後の町の周囲でよく見られたよな~。ちょっと懐かしい。

 スライムに転生してこの異世界で暮らすようになって、おおよそ六百年は経過したはず。

 それでも日本で暮らしていた想い出は、まだまだ忘れずに残っているようだ。まあ、僕が造り上げてきたフォーレグス王国が、日本の文化をふんだんに取り込んで出来ているからなのだが・・・・・・今でも日本を懐かしく思う。

 そういえば、地球は結局壊れちゃったのだったか・・・・・・

 今どんな感じなのだろう。

 地下に逃げた人達は、間違いなく全滅しているだろうな。

 宇宙に逃げた人達は、第二の地球を見付けられたのだろうか? おそらくはどこかで漂流しながら緩やかに衰退していっているのだろうな。

 こっちに逃げて来た元日本人達も、完全に避難出来たっていえないだろう。

 神様役をしているおっさんの仲間数人が、かつての日本の事を覚えているくらいか。もはやデータから肉体を戻したところで、日本再興の意味はなさそうだ。

 それでもいつの日にか、地球を蘇生出来ればそっちに肉体と共に戻してみたい。

 まあ忘れ去られた夢って感じかな。


 「なんだかゲームの世界に入り込んだみたいね。私の造ったダンジョンって気がしないわ。もっといろいろと配置とか工夫出来そうなんだけどな」

 感慨に耽っていると、佐渡さんがそんな感想を呟いていたので、想い出から帰って来た。

 ここは初めて造ったダンジョンだったか。そうなると、いろいろ実験的に造ったりした部分などもあるのだろう。

 そりゃあいろいろと詰めの甘いところや、かつては出来なかったものなども出てくる。

 ぱっと見た感じ、どこかパーツを組み合わせただけに見えるしな。

 確かダンジョンマスタースキル自体が、こういう壁とか地面や障害物などパーツでそろっていて、その組み合わせでダンジョンを造り上げるってスキルだったな。

 そう考えれば、こんなものだろうって気はする。

 ホーラックス達眷属が造るダンジョンは、サイズも地形も全部手造りだからな。不自然じゃないというか自然感みたいなものはやっぱり出て来るだろう。直線の壁が多く、カーブしていたり円を描いていたりといった地形が存在していない。

 そこが不自然さになっているのだろうな。方眼紙でマッピングはしやすいが・・・・・・

 逆にいえばどこを見ても同じ地形って感じに見えるので、それで惑わすって手法は使えるかもしれないな。それでもマッピングさえしていれば、迷ったりしないがな。

 いや、迷いの魔法をかければ、惑わす事は可能だ。方向音痴の者にはきつい罠だな。


 周囲を見渡しながら移動したところ、ダンジョンに入ってしばらくはどこもこんな感じらしい。

 人、人、人で、モンスターが出たら瞬殺。

 殺伐としているよな。

 こっちとしては雑魚敵と戦闘しないですむので助かる。そんな事を考えながら奥へと向かった。

 ある程度奥に移動すると、冒険者の数は段々減っていく。これは当然だろうな。入り口から離れる程、不測の事態や消耗度で安全が確保出来なくなる。

 逆にいえば、入り口に近い程周囲に人がいて、危なくなったら直ぐに逃げることが出来る。

 安全を考えるのであれば、出来るだけ入り口付近に固まっている方が都合はいいのだ。それに奥に行く程敵が強くなるってパターンが普通だしね。

 そしてそんな奥で活動している冒険者は、ある程度実力が備わっている冒険者が多い。

 まあ中には混んでいる状況が嫌でこっちにまで来ている冒険者もいるのだが、たぶん大丈夫だろう。

 このダンジョンは第一層ならばどこにいても、だいたい同じ種類の敵しか沸かない。撤退に必要な余力さえ残っていれば、全滅はないだろう。

 怪我は負うかもしれないがな。そこは自己責任だ。いやパーティーだから連帯責任か。

 人間が強くなるのはどうかと思うのだが、心の中でだけ応援しておいてやろう。がんばれ~


 「そろそろ冒険者との遭遇率が減って来ているのに、モンスターと遭遇しても逃げちゃいますね」

 「軟弱な奴らだわ。ひと睨みで逃げるとは情けないわ」

 佐渡さんとビゼルがそんな会話をしている。

 僕が視線を向けてもモンスター達は逃げているのだが、ビゼルも同様のようだ。それも仕方がないかな?

 第一層のモンスターは初心者向けの奴らばかりなのだが、こっちは神と魔王だしね。本能でやばいと感じ取っているのだろう。

 目付きが悪いとかではないよな? 人相は悪くないはずだ。どちらかといえば美形ではない平凡な顔のはず。威圧感など皆無だろう。

 ただビゼルは睨まれるとかなり怖い。威圧感がある。

 さすが魔王といったところだろうな。邪神に進化していなくても、並みのモンスターなど目じゃない。

 普段はどこにでもいそうな普通の女性に見えるけれどね。今は一般市民だな。

 暴れなければ魔族といえど、ただの人でしかない。

 レイシアと並んで料理しているところを見れば、魔王だとは気付けないだろう。そこに威圧感など皆無だからな。


 「今ならもっと上手くスキルを使いこなせると思うんだけれど、今更造り直すとか、駄目よね?」

 「冒険者や兵隊が出入りしてるけど、そのまま造り直せるものなの?」

 「マスタールームにある水晶を使えば直ぐに変更出来るよ。ただMPが必要だから、こっちで作業しちゃうとフォーレグス王国の方のダンジョンの作業が遅れそうだけどね」

 「ふむ。ならばこっちはいずれ余裕が出来た時でいいのでわ?」

 「今ならいつでも来れるしね。手が空いたら直したらいいんじゃない?」

 「そうね。機会を見ていじってみようかな。でも今日はマスタールームに行かなくっちゃね」

 佐渡さんとレイシア、ビゼルがのんびりと話をしていた。ビフィーヌは会話に参加せず、僕の横でただ静かに周囲を窺っている。

 別に警戒しているとか、護衛って感じではない。そもそもここに出て来るモンスターは逃げて行くので危険はない。

 おそらくホーラックスが造ったダンジョンと、ここのダンジョンを見比べているのだろう。


 そういえばモンスターが沸き出していた靄の渦。どこに通じているのだろう?

 ビゼルのひと睨みでモンスター達が立ち去ってしまったので、残された渦の上に乗ってみた。モンスターハウスみたいな場所があるかもしれないな。

 それかモンスター牧場とかな。結構モンスターを増やすのも大変なのだ。

 「あ、その渦ってモンスターが沸く瞬間を誤魔化す為のエフェクトよ」

 「転送ではなかったのか」

 「ええ。他にも床を透き通るように出て来たり、壁から出て来たり、天井から落ちて来たり、いろいろなパターンが選べるの。黒い渦とか光の中からとか、エフェクトもいろいろ選べたよ」

 「ダンジョンマスターの演出次第って感じか」

 モンスターが沸き出して来る現象を、演出で誤魔化しているのだろうな。いかにもゲームっぽいからな~

 単純にダンジョンマスターのスキルでモンスターは増えているって感じか。無限増殖だな。

 僕の造ったダンジョンは、メリアスがモンスターを召喚や、創り出している。そういう意味では同じか。

 こっちは待機場所に減って来たモンスターを溜めて置き、それを転移させて補充している。設置されたダンジョン内のモンスターは、これで大体同じ数になっているそうだ。

 殲滅速度でモンスターの数が激減する事もあるけれどね。

 ここら辺りの事情はダンジョン運営の裏側になるので、僕も詳しくは知らない。そういう待機部屋などがあるとは聞いているが、見た事はない。

 まあいい、では改めて進むか・・・・・・


 さすがにダンジョン内の構造は覚えていなかったので、調査のスキルでさくっと最短ルートを調べる。佐渡さんがいなければマッピングシートでも出してのんびり攻略するのだが、今回は案内役だからね。

 ここは出来るだけ早くロボットのいる部屋まで移動するのがいいだろう。

 結局第一層のモンスターとの戦闘は発生しないまま、第二層に到達した。ここは全体的に通路の幅が広い階層だ。それを見てそういえば巨人エリアだったなって思い出す。

 難易度的には中級冒険者用の階層だったか。

 さすがにここに出て来るモンスターは、睨んでも怯みはするが逃げて行かなかった。

 という訳で、戦闘が発生した。

 「レイシアなら、ちょうどいい相手じゃないか?」

 「戦っていいの?」

 「せっかくだから経験値にして進もう」

 「はーい」

 テッシーには物足りない相手かもしれないが、レイシアにとってはいい経験値になるだろう。それでもサポートする為にテッシーがレイシアに付いて行く。任せておけば安心だろう。


 第三階層へのルートだけ指示して、レイシアとテッシーに敵は任せたまま進んで行く。

 その中でステータスのズレが度々確認された。

 レイシアが新システムでスキルを取得したと言っても、こっちでは確認出来ない事が多いのだ。LVさえ上がれば確認出来るのだがな。

 ステータスの魔法に何やら不具合があるようだ。

 そしてスキルの習得はLVが上がったりしなくても、どのタイミングであっても可能なようだった。

 ちょっと納得出来なくてステータス魔法を見直しながら進む。

 第一層では罠もなかったのだが、第二層からは罠も設置されているようだな。そっちもレイシア達に任せて、ルートの指示が終わればステータス魔法の見直しをする。注意力が散漫になるけれど、隣にはビゼルとビフィーヌがいるので、問題はないだろう。

 レイシアの支援だってしてくれるはずだ。

 そんな感じで歩きながらステータスを見直してみれば、問題となる箇所を発見出来た。

 ステータスの更新の為、前回のステータスと見比べて追加や成長しているところがあれば表示するようにしていたのだが、そのチェックがLV毎のステータス表示になっていたようだ。

 そうしないと更新部分を正確に表示出来ないからだ。

 常に最新のステータスを見ていた訳ではなく、LVが上がればステータスが更新されるシステムになっていた訳だ・・・・・・微妙に古い情報を見ている感じになっていたようだ。

 これはどう修正しようか・・・・・・常に最新の情報にしつつ、前回のステータスの変更部分を明確にしなければいけない。

 まるでプログラミングみたいで厄介だな・・・・・・


 正直行き詰っていたので、レイシア達の様子でも見てリフレッシュしてみる。

 第二層に出て来るジャイアント、正確には属性持ちのジャイアントが出て来るのだが、こいつらは全ての魔法に抵抗を持っている訳ではない。

 特定属性にのみ抵抗力を持っているのと、属性の魔法を使って来るジャイアントだ。

 今のレイシアなら、物理攻撃も魔法もある程度対抗出来るだろう。強いのは変わらないけれど、攻める隙が無いモンスターではないはずだ。

 テッシーがフォローしているのでここまで危なげなく倒して行っている。

 そろそろ第三層が見えて来る頃かな。

 こっちはこっちでちょっとのんびりした後、ステータス魔法の修正のめどが付いた。

 魔法の特性を生かし深層心理を読み取って、修正箇所の比較をさせる。ある意味ご都合主義的な方法で表示させる事にした。

 初めはステータスデータを当人の記憶に書き込んで比較させようかとも考えたのだが、こういう記憶の書き換えみたいな方法は、魔法解析された場合に悪用されそうで怖い。

 解析出来るのかどうかはわからないのだが、避けてみた。

 前回のステータスを見た記憶を読み取るだけなら、解析されてもそこまで被害は大きくないだろう。解析者を特定する罠でも仕込んでおくか?

 ステータスを書き出す水晶を作ったら、そういう仕掛けも用意しよう。

 僕が使うだけなら不要だな。


 さて、魔法の見直しが終わったところで都合よく第三層に到達した。

 ここからは上級冒険者の階層だ。さすがに冒険者の姿は見えない。

 第二層には稀にうろついている冒険者を見かけたのだが、何とか戦えているって感じだったか。

 連戦や敵の数が増えれば、撤退しなければ危なそうだった。

 本当にこの世界の冒険者は強い者が少ない。

 おそらく第三層で活躍している者はいないのではないか? そんなだから異世界からの勇者などに頼る事になるのだ。

 狩場がちゃんとあるのだから、頼る前に自分達で努力をして欲しいものだな。まあ僕は勇者として召喚されてはいないけれどね~

 「これは少し手伝ってやった方がいいわ。バグよ。少し行って来るわ」

 「わかった」

 ビゼルが苦戦するレイシアを見て、援軍に向かった。

 さすが上級者用の階層。ドラゴンやヒュドラなどという、強力なモンスターがやって来る。

 昔のレイシアなら対抗出来たのだが・・・・・・あー、召喚でいろいろ出して、それでもかなり後になってからだったから今はきつい状況でも当たり前か。

 第二層でもぎりぎりって感じかな? サポート有りで連戦出来ると考えた方がいいのか。

 ここは移動優先にした方がいいのかな?

 そう考えたのだが、がんばって経験集めをしているのだ。もう少し様子を見ておこう。


 今のレイシアは、昔と違い魔法使いの戦い方がメインになっている。

 代わりに召喚魔法はあまり得意ではなくなってしまった。何が言いたいのかというと、敵に接近されるのに弱い! つまり戦闘をするには壁役が必要になるのだ。

 サポート役として一緒に戦っているテッシーとビゼルが前衛として、敵の動きを止めてレイシアが魔法を撃ち込んでいる。

 昔と完全に違う戦い方になっているな~

 まあ魔法攻撃の威力が凄いけれどね。

 レイシア本人としてはどっちがいいのだろう? 昔の場合、途中までは僕がいないときつかったが、後々一人でもドラゴンを倒せる程強くなった。

 だが今は前衛がいてくれなければ戦えない。いや、これも後々LVが上がってくれば解決するのかもしれないな。

 ブレンダのように結界を張って、身の安全を確保しつつ詠唱出来るようになるかもしれない。

 でも、やっぱり召喚して戦う方が強いように感じる。

 ドラゴンを四体呼び出して戦ったりしていたしね。

 上級冒険者一パーティーを一人で圧倒していたのだ。自分自身も攻撃魔法を使っていたよな。

 だが召喚魔法を使おうにも今の体は昔程、召喚魔法に適性がない。いや普通になってというべきか。

 昔は召喚に特化していたせいで、普通の攻撃魔法に適性がなかった。どちらも使いようかな?


 「ふわー。みんな強いなー」

 佐渡さんも僕と一緒に見学しているのだが、戦闘風景を見て呆然としていた。

 テッシーはまだ普通に槍を使って敵を牽制して、ベテラン戦士って感じなのだが、ビゼルはものが違う。

 ドラゴンが噛み付こうとすれば殴って止め、押し潰そうとすればそのまま押し返してひっくり返し、尻尾で薙ぎ払えばそのまま受け止め、尻尾を掴んだまま振り回していた。

 邪神にならなくても十分強いだろう。さすが魔王! それでいてちゃんとレイシアの魔法が当たるようドラゴンの位置を修正していたりする。

 周りを見る余裕があるのだ。ようするに、ビゼルにとってここの敵は雑魚って事だな。

 おそらくはドラゴンなど、子犬がじゃれ付いているようなものなのだろう。僕も戦っていれば、周囲からあんな感じに見えるのだろうか?

 たぶん同じことが出来る。

 戦う時は見栄えも考えながら戦うようにしようかな・・・・・・


 レイシアの経験稼ぎをしながらだったから、少し時間がかかったけれど第四階層に到達した。

 ここはいわばダンジョン管理者の居住階層になる。そして最終防衛階層ともいえる。

 僕達が目指している場所はこの最奥。佐渡さんがダンジョンをコントロールしていた、あの宇宙船の艦橋みたいな部屋だ。

 隠し部屋もあったけれどね。

 そっちには保存の魔法がかけてあるから、元の状態を保っていると思う。

 埃だらけかもしれないが、まあ壊れたりはしていないだろう。

 でもって出て来る魔人達。

 さすがに最後の防衛戦力だけあって、現時点のレイシアでは勝てない相手だろう。

 ではではこいつらは僕の経験値にしようかな。そんなに強くないので、稼げてわずかなものになるだろうが・・・・・・

 「主さま、ここは私が片付けます」

 「うん? そうか、じゃあ頼む」

 ビフィーヌが名乗り出たので任せる事にした。どうせ僕が倒してもそんなにおいしい相手ではない。せっかく自己主張して来たのでやらせてみよう。

 まあ安心して任せておけるだけの強さはあるからな。

 ビゼル程強くはないのだが、出て来た魔人六人に対してたった一人で翻弄しつつ、余裕を持って斬り捨てていた。

 本来ビフィーヌにはLV上げをさせていなかったのだが、普通に生活をしていても少しずつ積もった経験値でLVが上がる事がある。そのとき検体というスキルを手に入れた。

 おかげでどれだけ肉体を鍛えても、本来の仕事が出来るようになったので、それからLV上げなどをおこなっていたみたいだ。僕に強くなったところを見て欲しいのだろう。

 どちらかといえば一般人って感じだったビフィーヌだが、いつの間にか強くなっていた。魔人が片手間に倒されて行くくらいに・・・・・・うちの眷族に、弱い者はいないって事だな。

 あれ? この階層でこのダンジョンは終わりなのだが、僕って一切戦闘してなくないか?

 全部レイシアとビゼル、ビフィーヌに倒されてしまった。僕の活躍の場は・・・・・・


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