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感傷的な季節の日々

こたつの足

作者: DRtanuki

結露して水滴が窓に垂れ下がる。

風が窓枠を振動させて耳障りな音を立てている。自分の体も震えている。

綿入れや靴下、スリッパを厚く着込んでいても、容赦なく私の体に冷たさは這いよって来る。

外気温と部屋の中の温度がほとんど同じなようで、早い所暖めなければ風邪でも引きそうだ。

窓から外を望めば灰色の厚い雲に覆われた空。曇天。気が滅入るような空の風景にウンザリし、カーテンを閉める。

まだ午後も少し過ぎたばかりだというのに暗い。

冬という季節のこういう所が嫌いで、いつも私は冬になると途端に出不精と化す。

寒さでかじかむ手に苦労しながらエアコンのリモコンを操作して、部屋を暖める為に電源スイッチを押す。その後、こたつのスイッチを付けてすっぽりと上半身まで体を埋める。


にゃあ!とこたつの中から抗議の声が聞こえた。


なんだ、中には先客が居たのだ。

私の家族であるミィコが少し不機嫌そうな顔でこたつからのそのそと出て来たあと、台所に足を向けて、またニャア、と今度はカン高い声を上げる。

はいはいどうしたのどうしたの。慌てて私も台所に向かうと、彼女は空になった自らの食器皿を一瞥し、私を見上げて長めの声でニャアと訴える。

食いしん坊でコロコロとしたところは私に似たのか、そんなところは似なくても良いのになと思いつつ、台所の床下収納から猫用ドライフードを取り出すと、待ちきれないと言わんばかりに興奮しだすミィコ。あ、こら、袋に顔を突っ込むんじゃないっつの。

興奮した獣を抑え込みつつ、皿にドライフードを半分程度入れると、今まで飢えていたと言わんばかりにガツガツと食べ始めた。

本当に食い意地ばっかり張っているな。

隙間風が何処からともなく入り込み、背筋からぞくりとした悪寒を覚えた。

ダメだ、今日はもう終了のお知らせです。寒さに負けて今日は一日ずっとこたつに入り込んで亀の如く動かない事に決めました。こたつむりです。

こたつにはやはりみかん。みかんといえばこたつ。冬の風物詩の一つと言えばこれ、みたいな定番アイテムでベタすぎるけど好きなのでしょうがない。

テレビのリモコンを操作して電源を入れる。土曜の午後のテレビ番組はどれもこれも脱力しながら見るには良い物で、頭を空っぽにしながら見れる。

みかんの皮をむいて、一口。ん、甘みが強くて酸味が無い。これはあたり。

程なくして、ミィコもにゃあと一声かけてやってきて、もそもそとこたつの中にもぐりこんで香箱座りしては一つあくびをかまして、目を瞑る。食べたら寝る。動物として極めてシンプルな行動様式。それが当たり前なんだな。

私も次第に、テレビを見ながらこたつに入って微睡んでしまう。

暖められた部屋の中で、こたつで体を温めながら、猫が傍らにいて微睡んでいる。それ以上になんの幸せがあるのかなぁ。

いや、多分それ以上の幸せなんてないんじゃないかな。たぶん。

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