１７話 サーキスさまは感覚派のようです☆
ジュリアスさまたちが仕事に戻ってしばらくしたら、サーキスさまがお迎えに来てくれた。
お天気が良いから騎士さんたちの使う訓練場の横にある少し小さめな方の訓練場で授業をするそう。
間違って魔力が暴発しても建物に結界がある場所だから新入り、魔法特化の人の訓練場で、多少失敗しても安心って。失敗前提～？ブウ。
サーキスさまは私を持ち歩かず、手をひいて訓練場に連れて行ってくれた。エスコートだとぶら下がる感じになるからね！でもここに来て私を持ち運びしないのってサーキスさまが初めてだよ。
ニーナとアランとジャックもみんな歩幅を私と合わせてポテポテついて来てくれてるのでちょっとおもしろいかも。
訓練場に着いて、サーキスさまが的に向かって得意な魔法を放ってみろって言うので、なんとなく風魔法を放ってみた。
ザンッ！
物凄い勢いで鎌鼬みたいになった風が出てきちゃって唖然としたんだけど、サーキスさまが、
「ふむ、やはり無駄が多いですね」
って軽く風を消しちゃったからびっくり。
「循環がうまく行っていないからイメージした威力にはならないし魔力の放出も不安定です。魔力は多いようなので使うには問題なく使えるでしょうが危険ですね」
リーシャは攻撃したことなんて無かったはずし、母に教わった隠し部屋の出入りや収納魔法程度しか魔力を使ってなかったから、私には魔力の使い方なんてわからないよ。
「安定するまで補佐のできる人間がいないところでの魔力の使用や魔術の練習は禁止です。まずは自分の中の魔力の流れを理解しましょう」
サーキスさまはそう言って私を隅にある椅子に座らせる。
体内の魔力を感じて胸元から全身に回るイメージをするようにと言われた。
魔力循環がうまくいってない私が魔法を使えるのは、強い魔力を持っているからで、さっきの使い方は知識なく魔力を強引に引き出して力業でやった状態だから、普通の魔力量なら一気に魔力枯渇を起こしたりして命の危険があるんだって。こわ。
なら、なぜ使わせたし。
でも何か賢い系に見えるサーキスさまなのに魔力の感じ方と使い方の説明に、
「お腹にポワーンと暖かさが湧いて来ますよね？」とか「ズズーっとこう・・・こうして」ってわかりやすく説明する為か擬音が多い。正直わかりにくいよ。
あと外側・・・大地や精霊から魔力を頂く方法も、「こうグググーっと」「外から内側にふわふわ～っと」って。
もう少ししたら魔術の教師が来てくれるから、とにかく魔力を動かす感覚を掴めって。
「考えるんじゃない、感じろ」って何かのネタであったよね。そういうこと？
あたい、いつか水の呼吸とか言って必殺技出すんだ！
なんちゃって。
循環が上手くいったら身体も成長するらしいので、このちっぱいも成長期があるはず～。きっとあるはず！
別に胸のサイズなんか気にする必要はないと思うんだけどね！
「魔法の使用は禁止ですが体内で魔力循環を意識するのは毎日心掛けてください」
私の中で何とな～く魔力が動いてるらしいので感覚を掴めば早く魔力循環に慣れるだろうと言ってもらえた。
訓練を終えて、ジュリアスさまの仕事が終わったら一緒に帰ればよいからと、自由時間と言われたので騎士団の大っきい訓練場を覗かせてもらう事に。
唐突に筋肉いっぱいご褒美タイムかと思ったんだけど。
みんなが真剣に訓練している場所は、剣がブンブン振られる音や金属のぶつかり合う音とか騎士さんたちの覇気？闘気？みたいな圧が凄くて。この場に筋肉ヤッホイで気軽に来ちゃうの良くなかったなと反省した。
「リーシャ、どうかしたのか？」
私の顔色が悪くなっていた事に遠目からジュリアスさまが気づいたみたいでものすごい勢いで駆け寄ってきてくれた。
「いえ、こんなに激しい訓練をされてるなんて思ってなくて・・・」
「都会の令嬢には刺激が強いでしょうね」
ってサーキスさま、分かってて連れて来たんか⁉なんそれ!!
前回お義母さまに連れてきてもらった時は休憩中だったからか凄味はなかったんだもん～。
実際は筋肉祭りどころじゃなく実戦向けの訓練してて、この世界が命を懸けて生きていかないとダメな世界だって今更理解しちゃったんだよ。
「汗まみれのオッサンが触れたら若い子には嫌われるのですよ」
多分顔が強張ったままの私を心配してジュリアスさまが抱き上げて頭撫でてくれたのに、サーキスさまがちょっと意地悪なことを言うもんだからジュリアスさまが焦って降ろそうとする。
降ろされたくなかったから首にぎゅって抱きついちゃった。確かにしっとりしちゃってるけど、私にとって頼りになる安心できる場所になってるんだよ。数日のことだけど、毎朝この腕の中で目を覚ますの、一人じゃないってホッとする。
汗がちょっと光ってる胸元も素敵だしね！
