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【書籍・コミカライズ】冴えない加護持ち令嬢、孤高の王子様に見初められる(旧題 女神の加護はそんなにも大事ですか?)  作者: gacchi(がっち)


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27.手を取って

教会に着いたころにはあたりは暗くなっていた。

侯爵家の馬車はハルト様が帰してしまったが、

今頃は私が帰宅しなかったことがお父様に知られているだろうか。


いや、おそらく数日たっても気がつかないに違いない。

もう両親とは一年半以上も会っていないのだから、わかるわけない。

ベンが報告すればわかるだろうけど、しないような気がする。


馬車が着いたのは教会の裏側だった。

王家の馬車は大きくて一人で降りるのは無理かもしれないと思ったが、

悩む前にハルト様が私を抱き上げて降ろしてくれる。


「ご、ごめんなさいっ」


「何言ってるんだ。一人では降りれないだろう。気にするな」


「ありがとうございます……」


抱き上げられるとハルト様の声がすぐ近くで聞こえて、

伝わってくる体温も恥ずかしくて仕方ない。

顔が赤くなっているのを見せないように顔を背けると、

司祭たちが出迎えてくれているのがわかった。


「ハルト様、降ろしてください」


「だめだ。治療が終わるまでは大人しくていてくれ」


怪我しているのは腕なのに、ハルト様は降ろしてはくれなかった。

近くにいた司祭に聖女を呼ぶようにと声をかける。


「今日は叔父上は来ていないのか?

 すぐに教会にくるように使者を出してくれ。

 俺が呼んでいると言えばわかるはずだ」


「かしこまりました。急いで使者を向かわせます」


「ああ、頼んだ」


今日は神託の儀式はなかったらしい。ヨハン公爵は教会にはいなかった。

奥の部屋に通されると、ソファに座らされる。

それほど待つことも無く聖女が三人部屋に入ってきた。


「彼女が腕を怪我している。他にも怪我がないかどうか診てくれ」


「「「はい!」」」


お母様よりも少し上くらいの年齢の聖女に囲まれるようにして治療される。

腕だけではなく膝なども痛めていたようだが、全く気がついていなかった。

そういえばブルーノに押されて書庫に倒れこんだのを思い出した。

その時にあちこちぶつけていたらしい。


「治療は終わりました」


「ありがとう」


聖女たちが手のひらを当てるとじんわり温かくなって、

痛みがなくなり青くなっていた痣も綺麗に消えた。

聖女に治療してもらうのは初めてだが、本当に治るのだと驚いた。

三人は治療を終えるとぺこりと頭を下げて部屋から出て行った。


「痛みはもうないか?」


「ええ、すっかり。もう大丈夫です」


「そうか」


もう痛みはないと言ったのに、ハルト様は私の隣に座って手をとる。

慰めるように手を撫でるから、手を取られたことに抵抗できない。

婚約者でもない令息にふれられるなんて、ふしだらだってわかっているけれど。

さっきから抱きしめられたり抱き上げられて運ばれたせいで、

私の感覚がおかしくなっているかもしれない。


そのまま手をつないで会話のない時間が過ぎていく。

ふれている手からハルト様の優しさが伝わってくるようで、

何も言わなくても居心地がいいと思ってしまう。


コンコン

ドアのノックの音が聞こえて、思わず手を離してしまう。


「ハルト、呼び出すなんてどうしたんだ」


部屋に入ってきたのはヨハン公爵だった。

綺麗な銀髪を一つに結び、優しそうな緑目はあの時のまま。

会ったのはもう五年近くも前なのに、少しも変わらない姿だった。


「え?もしかして、フェリシーか?」


「はい。お久しぶりです……」


部屋の中に私がいることに気がついて、ヨハン公爵が驚いた顔になる。

だけど、すぐに痛々しいものを見るような目で、私の頭をそっとなでた。


「そうか。我慢できなくなったんだな。よく頑張った」


「え?」


「もうあの家にいたくない、そう思ったから呼んだのだろう?ハルト」


「そうだ。もうフェリシーを帰すことはできない」


「詳しく説明してくれるね?」


向かい側のソファにヨハン公爵が座り、ハルト様がこれまでのことを説明する。

ヨハン公爵は静かに聞いていたけれど、話が終わると大きくため息をついた。


「事情はわかった。とりあえず、今は急ごう。

 ラポワリー侯爵が騒ぐ前に動こう。王宮に行くよ」


「え?王宮ですか?」


「ああ。今度は断らないでくれるだろう?

 私の娘になってくれるね?フェリシー」


「……本当にいいのでしょうか?」


「私がそうしたいんだ。フェリシーに娘になってもらいたい。

 ハルトもそれがいいと思ったから私を呼んだのだろう?」


この期に及んで、養女になって本当にいいのか迷ってしまう。

公爵は確認するようにハルト様を見た。

ハルト様は少しかかんで私と視線を合わせるようにのぞきこんでくる。


「フェリシー。俺たちの手を取るんだろう?

 もう迷うな。絶対に助けるから、信じてくれ」


「……はい」


「フェリシー。ハルトの言うとおりだ。

 私の手を取ってくれ。娘になってくれるね?」


「はい。よろしくお願いします」


「うん、それでいい。よし、すぐに行こう」


一緒の馬車で行くのかと思ったが二台で来ている。

他の貴族にあやしまれないように、来た時と同じように二台にわかれて王宮に向かう。


「フェリシーは王宮に行くのは初めて?」


「はい……制服のままで大丈夫ですか?」


「大丈夫。王族しか使えない通路を使うから。

 他の者には会わないと思うよ」


王族の専用通路。

そんな場所を私が使っていいのか疑問だけど、ハルト様とヨハン公爵に頼ると決めた。

もう何も言わないでついていこう。


馬車が止まるとハルト様に抱き上げられて降ろされる。

今は怪我も治ったのだけど、抵抗する気持ちにならない。


「叔父上は先に行って説明していると思う。行こう」


「はい」


さすがに今度は抱き上げたままではなく、下に降ろしてくれた。

ハルト様に手を引かれて王宮へと入っていく。

王族用の裏口だったのか、王宮の中でも奥側の場所を歩いているらしい。

それほど歩くことなく大きな扉の前についた。


両脇に立っていた近衛騎士たちがハルト様を見て、礼をして扉を開けてくれる。

中にはヨハン公爵と金髪の男性、そして黒髪の女性がいた。


「あぁ、着いたか。フェリシー、こっちにおいで」



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