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【書籍・コミカライズ】冴えない加護持ち令嬢、孤高の王子様に見初められる(旧題 女神の加護はそんなにも大事ですか?)  作者: gacchi(がっち)


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12.王宮女官になるために

王宮試験用の勉強は思ったよりも進まなかった。

貴族の名前や血縁関係は覚えることが多くて大変だが、それでもまだいいほうだ。

何度も読んでいればそのうち覚えられる。


知識などの勉強は時間をかければ問題ないのだが、

王宮内での作法などの実践的なものがわかりにくい。

普通なら礼儀作法の教師をつけて学ぶものだが、

跡継ぎから外された時に家庭教師もすべて辞めさせられてしまった。


侯爵令嬢としての最低限の礼儀作法は身についているはずだが、

お茶会に出席したことも無い私では優雅な所作が身についているとは思えない。

それらを指摘して指導してくれる教師が必要なのだが、

王宮女官の試験を受けることも秘密にしているのに、

新しく家庭教師を雇うことなんて出来ない。


学園に入ったら教師に相談するしかないとあきらめ、ただひたすらに知識だけを詰め込む。

今できることをやるしかない、そう思って勉強を続けていた。


半年ほど過ぎた頃、ベンが一人の高齢女性を連れてきた。

ほとんどが白髪になっているためにわかりにくいが元は金髪だろうか。

小柄ではあるが背筋がのびていて、立ち姿がとても綺麗だ。

下級使用人の制服を着ていたが、平民には見えない気品がある。


「ベン、この方はどなた?どちらの夫人かしら」


「ふふ。やはりお嬢様はおわかりになりましたか。こちらはリリー夫人です。

 昔、王宮女官だったそうです。

 お嬢様の勉強に必要ではないかと思いまして」


「リリーと申します、フェリシー様。

 もうこのような老婆ではありますが、王宮作法には詳しいので、

 お役に立てることもあるかと思います」


元王宮女官!それは願っても無いことだけど、大丈夫なのだろうか。


「リリー夫人、教えていただけるのならありがたいのですが、

 私ではあなたのような方を雇うことは難しいと思います。

 ベン、お父様から教師を雇うお金は出ていないはずよね?」


「フェリシー様。リリー夫人は下級使用人として雇われてくれるそうです」


「え?」


リリー夫人を下級使用人として!?そんなのはありえない。

王宮女官をつとめた方が下級使用人の仕事をするなんて、

怒り出して当然の話なのにリリー夫人はにっこりと笑った。


「もうこんな年ですし、大した仕事はできません。

 それに、事情は聞いております。

 少しでも若い人のお役に立てればと思いましたのよ。

 お節介だったかしら?」


「いえ、本当に指導していただけるのならとても助かります。

 でも、よろしいのでしょうか?」


そんなことが許されるのだろうかと不安になったが、

リリー夫人は私の手をとって、きゅっと握りしめた。

温かくて柔らかい、優しい手のひらに両手を包まれる。


「誰かの手を借りることは恥ずかしいことではありません。

 それがありがたかったと思うのであれば、

 いつか同じように困っている人に手を差し伸べてあげればいいのです。

 私の手が必要ならば、必要だと言って?」


「……ありがとうございます。

 リリー先生、これからよろしくお願いいたします」


「ええ、頑張りましょうね。絶対に試験までに間に合わせてみせますわ」


「はい!」


こうして私の先生になってくれたリリー先生のおかげで、

私の所作はみるみるうちに変わっていった。

今まで人からどう見られているかなんて意識したことはなかった。

自分のことだけで精一杯で、

その行動によって周りがどう思うかまでは考えていなかった。


「ええ、すばらしいわ。この調子で指先まで意識していきましょうね」


「はい、ありがとうございます」


「来月からは学園の休みの日に集中して指導することにしましょう」


「わかりました。よろしくお願いいたします」


あと三週間で十五歳になる。その二週間後には学園の入学式。

お父様たちからは何も言われていないが、入学手続きはベンがしてくれた。

制服などの手配はリリー先生が手伝ってくれたので不備はないと思う。


学園には馬車で通うことになる。

そうなればフルールと毎日顔を会わせなくてはいけない。

もしかしたら、ブルーノも一緒に通うことになるのだろうか。

二人と一緒の馬車に乗って学園に行き来するのを考えたら気が重くなる。

せめて学園に着いてからは、一人になりたい。

どうか二人とは違う教室になってくれないだろうか。



「馬車はフェリシー様がお一人で使っていいそうです」


「私が一人で?」


「はい。フルール様はブルーノ様の馬車で送り迎えされるそうです」


「そう。一人で使っていいの……わかったわ」


本邸の侍女が前日に言いに来てくれた。

見かけたことがない顔だったから、新しく雇った侍女なのだろうか。

言いにくそうに告げて、礼をして去っていった。

フルールの侍女なのに私に同情する侍女がいるとはめずらしい。


それにしても、助かった。

毎日あの二人と一緒に馬車に乗らなくてはいけないというのは、

思っていた以上に嫌なことだったらしい。

暗く重い気分だったのが、一気に晴れたようにすっきりした。


学園につけば顔を会わせることもあるだろう。

同じ教室だとしたら、無視することも難しい。

それでも馬車を一人で使えるなら耐えられる気がした。



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