表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/98

第二話 テロ事件の犯人

アメジストクルーズ船自爆テロ事件から一週間が経過し、犯人の顔がテレビ画面に映し出される。


『テロの実行犯は、柊木(ひいらぎ) 直哉(なおや)──────』


画面に映るのは見知った人物、それもそのはず、画面の男は俺たちの───


「父さん……」


───だったのだ。母は泣き崩れ、弟の勇希(ゆうき)は困惑している。勇希(ゆうき)にはまだ説明していなかったのだ。


『爆発の元となったのが、パイロキネシスという能力が原因と考えられており───』


テロの犯人は父さんじゃない。あり得ない。そう思うのは、家族だからとかじゃない。


先日のテレビ中継を思い出す。



『───緊急速報です。番組内容を変更してお送り致します。東京湾で寄港中のアメジストクルーズ船が爆発したとの情報が入りました。中継を繋ぎます。田中さん』


『はい。ご覧ください。東京湾で寄港中のアメジストクルーズ船が爆発したとのことで上空から撮影しております。現在、爆発は起きておりませんが、クルーズ船は炎に包まれており、生存者の確認が出来ない状態で────』



この時、テレビに映っていたのは()()()で、父さんが使うパイロキネシスで出す炎は、()()()()だ。父さんは青色しか出せなかった筈だ。それは母さんも知っているはず、多分。何で父さんが犯人にされてるのか、全くわからない。


取り敢えず、勇希(ゆうき)に説明したが、至って落ち着いていた。勇希(ゆうき)は俺より賢い。勇希(ゆうき)も父さんが犯人だとは思っていないらしく、あまり心配していない様子だった。だが、それよりも父さんが生きているのか心配だった。


当然、父さんのことを何も知らない世間は言いたい放題で、父さんを殺人犯扱いし始めた。そして、新聞記者やカメラを持ったマスコミ達が家にまで押しかけてきて、俺たち家族の穏やかな日常が奪われていった。


「こちら、柊木直哉さんのお宅ですよね!」

「奥さんいらっしゃるんでしょ⁉︎ 出て来てくださいよ!」

「今のお気持ちは! 被害者遺族の方々へ伝えたいことはありますか!」


まともにカーテンすら開けられなくなった。家の固定電話も鳴り止まない。買い物に行くのも一苦労だ。そして、何より───


「なぁ、おまえの父ちゃん人殺しなんだろ?」

「キャー人殺しが来たぞー! 殺されるー!」


学校にも居場所がなくなっていった。家に帰れば、人殺しと書かれた何枚もの紙が貼り付けられている。


父さんが一体、何をしたっていうんだ。どこに行っても殺人犯の子扱いされる。父さんのことを知っている俺からすれば、周りの人間たちの方が異常者の化け物に見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ