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第七十一話 事件解決の裏側6

東京都千代田区、とある地下にて──。


「ふ~んふふ~ん、ふんふ~ん~♪……」


透の上機嫌な鼻歌とともに、コツコツコツコツ……という足音が響く。足音は透と士郎のものである。


士郎はガムテープで拘束された服部和毅を担ぎ、その前を透が歩いている。


移動中、黒塗りのセンチュリー(自動車)の後部座席に乗車していた透は、服部和毅を拉致してすぐ、ショルダーバックからガムテープを取り出して縛ったのだ。


視界と口を塞がれ、両手首両足を拘束された服部和毅はだらりと弛緩した状態で、ぴくりと動く様子もない。恐らく、透がハンカチに含ませていた薬が、まだ効いているのだろう。


二人が暫く歩いた先にあったのは、酸化し茶色に古さびれた金属ドア。一見して、ドアノブのところにカードを差し込むことでランプが青に切り替わりドアが開くタイプのようだが、これはダミーだ。


「よっこらしょっと……」


透は年寄りの様に膝を曲げしゃがむと、ドア下のコンクリートの二センチメートル位のへこみに人差し指を置いた。


『ピッ! ガチャ』


金属ドアのロックが解除されて、ランプが青に切り替わった。



──

────

──────


「……こ、ここは?」


薄暗い部屋の中央に椅子がぽつんと一つある。そこに座るのは、服部和毅ただ一人。服部はわけが分からないといった様子で辺りを見渡す。しかし、誰もいない。


服部は、立ち上がって自分の今いる場所について手がかりを探そうとする。しかし、その瞬間、手首の引っ張られるような違和感があり、そこに目を向けた。


「な、なんだよこれ⁉︎ 誰だよ、こんなことしたやつは⁉︎」


ガチャガチャと椅子が音を立てる。それもそのはず、服部の手首は椅子に固定された金属の拘束器具によって、自由を奪われていたのだから。


ひたすらガチャガチャと服部は、椅子から離れるように背中を背もたれから剥がし、今の状態から逃れようとする。


今日は飲みに行ったけ、何でこんなことになってんだ、誘拐か、まさか俺が気に入らない奴の仕業なのか、まさか、まさか、アレがバレたのか⁉︎という様々な思考が服部の脳内で飛び交うと、自分は殺されるのではないかという最悪の状況を想像する。そして、顔を青ざめさせるとだらだらと冷や汗を垂れ流した。


早く、早く、早く、逃げないと、と服部は焦る。服部の手首には赤いリング状の跡がついていた。頑丈なこの拘束具から逃れられないと分かっていても、服部は動きを止めようとはしなかった。


「逃げようとしても駄目だよ。というか無駄無駄」


その声に服部は、視線を拘束された手首から正面に移した。服部の正面まで歩いて来た男は、スーツ姿に黒い鬼のようなお面をつけていた。






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