第六十七話 事件解決の裏側2
上善から捜査資料を受け取った次の日の夜のことである。
「"服部和毅"……ね」
黒塗りのセンチュリーに乗る透は、指と指の間に挟まれた対象人物の写真を目を細めて見ていた。
「もうすぐ来るかな。ちゃんと見ててよ?」
透は後部座席から運転席に座る士郎をルームミラー越しに目を向けるが、ふたりの視線は交わらない。
「ね? 士郎君……」
「わかってます」
透と士郎は服部和毅の職場である川嶋医科器械株式会社前で待ち伏せしていた。
「出てきました」
士郎が窓の奥の人物を見据えたまま淡白に伝える。
「じゃ、行こうか……」
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椿は雑務総務課の自室で警視庁の監視カメラを無断で繋いでモニターに映し出し、指示を出していた。
目の前のモニターには透と士郎が自動ドアを通って警視庁から出て行こうとしているところが映し出されていた。
「課長と士郎さん、出マス!#/$€%」
「「了解!」」
ソフィアは警視庁の屋上で、歩は川嶋医科器械株式会社の道路を挟んだビルの屋上で待機していた。
モニターに一瞬だけジジジと灰色の砂嵐が映り、元の画面に戻ったかと思われた。
「課長がいなイ!#/$€%」
「また⁉︎」
「発信器は⁉︎」
モニターには士郎の姿しか映っていない。切羽詰まった三人の声が通信機に響いた。
三人は手元のパソコンにある発信器のレーダーに目を移すが、先程まであった赤い点が消えていた。
「クソジジイどもが‼︎」
ソフィアが硬いコンクリートに拳を打ち付けて、舌打ちをした。
「ソフィア‼︎ 追跡装置よ!」
「わかってる」
歩の指示で、椿が開発した小鳥型の追跡装置を起動し、黒塗りのセンチュリーを追跡させて、パソコンに繋いだその瞬間。
パン───────‼︎
銃声にしては重みや響きは薄く、閃光も小さい──これは、サプレッサー?
追跡装置が広げた羽を閉じて落ちて行く。
「がはっ⁉︎」
気がついたときには遅かった。ソフィアは後頭部を殴られ、身体がコンクリートに落ちる。
「「ソフィア(さん#/$€%)⁉︎」」
椿の判断は早かった。ソフィアとの通信を遮断し、呆然としているであろう歩を察して歩とソフィアを繋ぐ通信を強制的に遮断した。
「歩さん! 行き先は決まってマス! 落ち着いてくだサイ!#/$€%」
「わ、わかってるわよぉ⁉︎ でも、ソフィアが‼︎」
「ソフィアさんは死んでまセン。あの人たちは殺しはしませんヨ#/$€%」
「そう、ね。取り乱して悪いわねぇ」
歩は一度深呼吸をすると、いつもの調子を取り戻して黒塗りのセンチュリーを待った。
「来たわ!」
暗視スコープで見下ろし、目的の自動車と士郎を視界に捉えた。ソフィアと同様に小鳥型の追跡装置を起動し、黒塗りのセンチュリーを追跡させて、パソコンに繋いだ。
パン───────‼︎
バン───────‼︎
銃弾と銃弾がぶつかり合い、はじかれる。追跡装置は無事だ。
「それ、サプレッサーね……見なくても、わかったわぁ」
歩が人差し指で耳をさした後、小型機関銃の銃口を肩に乗せ、不適に笑った。




