第六十三話 収束1
夕方、例の人物に連絡を取れば、すでに根回ししてあると返答がきた。一体どこから情報を得ているんだろうかと疑問に思ったけど、それを聞いても真面な返事は来ないと知っていたので、聞くのは辞めた。
翌日───。
「おはよう御座います!」
「おはよう、後輩。もう大丈夫なのか?」
「はい! ご心配おかけしました」
雑務課へ入ってすぐ挨拶すれば、士郎さんが一番に返してくれた。それに続いて、課長、ソフィアさん、歩さん、椿先輩と挨拶を交わした。
和やかな時間はすぐに終わりを告げ、張り詰めた空気に包まれる。それは、本題に入ったからだ───服部の。
「これ見てくれるー?」
棒付きの飴を咥えたソフィアさんが服部の取り調べ室の映像をパソコンに映し出した。
そこには、苛々し貧乏ゆすりをしながら黙秘を続ける服部がいた。質問に一切答えようとしない。
……
…………
………………
『うっせーぞゴルァァアァァ‼︎ 加藤だっつってンだろ⁉︎ アイツが殺したんだ‼︎』
興奮した服部が椅子から立ち上がってパイプ椅子を蹴飛ばす。
『大人しくしなさい!』
『押さえろ‼︎』
服部を三人がかりで床に押さえつけた。
『は、離せ! な、ん、で俺が⁉︎ クソクソクソクソ‼︎』
いまだに興奮が収まりきらない服部の目は血走り、食いしばった口からは涎が流れて床に落ちる。
そして、それは起こった。服部を取り押さえる三人の警官は顔を見合わせる。
『なんか、ちっさくなってないか?』
『そんなはずは……』
『いやでも』
服部を取り押さえる三人の警官だからこそ、小さな変化に気づけたんだろう。映像からは変化なんて全くわからない。
『お、おい!』
『なんだ⁉︎』
『一旦、離れろ‼︎』
服部の急激な変化に戸惑う警官は、その指示に素直に従い、そろそろと服部から距離をとる。
『ぷふ、ゔぁーう゛ぇーん。あ゛ぁーん………』
『どういう、ことだ……』
戸惑うのも無理はない。
そこに、服部の姿はなく、かわりに赤ん坊がいたのだから。




