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第六十一話 今更だけども

共有しなければならない情報は全て話し終えた。



さて、どうするか。



俺の影響で弟が吐血したのか、ただの疲労で弟が体調を崩したのかはわからない。だが、どちらにせよこのまま弟を家に返せば弟は共有を常時発動しなければならなくなる。そうなれば、病み上がりの弟にまた負担をかけてしまうことになってしまう。


俺は自身の能力を発動したまま、弟を少しの間だけでも引き止められるような話題を探し、ふと疑問に思ったことを口にした。


「そういえば、おまえの魂って共有の時、どうなってんだろうな? 俺の身体に全部移ってんのか?」


「共有って言い方するから分かりずれぇけど、融合ってならどうだ?」


俺は全く実感できてないが、弟からすれば俺の身体と自分の身体が合わさる感じってことなのか。


「あぁ~、なんとなくわかった」


「あん時は流石にビビったな……」

と弟は天を仰いぐ。


弟のあん時がどの時をさしているのかわからず俺は首を傾げる。


「魂が一個に減った件」


「確かに」

と理解を示し俺は腕を身体の前で組んで首を縦に振った。


初日にソフィアさんから、何で魂二個もってんのか聞かれて、もしかしてと共有のニ文字が脳裏に過り、思わず顔がひきつりそうだった。けれども、弟が上手くフォローしてくれたおかげで、危機回避したのだった。滅茶苦茶ひやひやしたことをいまだに思い出す。



マジで初日でやらかした、と思ったよ。



「でも二個あるのが当たり前になったから、逆に一個だと今じゃ不自然になったからまぁ、ある意味よかったんじゃないか?」


「微妙……だな。今回みたいな事件が続けば、二個のまま維持すんのは難しいだろ?」


「あぁ……そうか」



会話終了。もっと話題はないかと考えを巡らせるがまったく思いつかない。


それは俺の頭だけのせいではない。多分。


普段から共有で四六時中弟と過ごしているようなものだから、そもそも口に出して話す必要性がないのだ。


「じゃ、俺もどるわ」


膝を立て弟は立ち上がり、ベランダへ向かう。結局話題のみつからなかった俺は弟を引き止める唯一の方法を思いつき、慌てて弟の背に声をかけた。


「なぁ! きょう晩ご飯食べてくか?」


弟は顔だけを俺に向けると一瞬目を見開き、顔をしかめた。


「アンタが作る飯より俺が作る飯のほうが絶対に美味い。筋肉メニューばっか食ってるから脳みそまで筋肉になるんだよ。もっと料理のレパートリー増やせよ」


最後に盛大な舌打ちをして弟は出て行った。


毎日、茹でただけの鶏胸肉ばかり食べていることを弟は知っている。


確かに弟の言うことも一理ある。次は茹でた鶏胸肉だけではなく、もっと工夫を凝らした鶏胸肉メニューを増やして弟を誘おうと俺は思った。



次は絶対に引き止められるに違いない!



俺は自信満々に深く頷いた。

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