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第四十六話 退院

意識が回復した俺は、今日退院することになった。


元々、身体に異常はなかったようで、特に精密検査を行うこともなく、軽い診察のみ済ませた。


左手の甲に入っていた点滴の管は抜かれ、手首を締めつけていたリストバンドから開放され、下肢から尿道カテーテルが抜かれた。


当初俺が倒れた拍子につくった額の傷と出血を抑えるために頭部を覆っていたらしい包帯は既に無く、俺が眠っている間に外されたらしい。



倒れただけの傷なのに、包帯って大袈裟だよなぁ~。



傷自体は深いものではなかったが、顔面の皮膚は血流がいいらしく、腕や足等の場合よりも出血量が多いようで、その出血を抑えるために脱脂綿の上に包帯を巻いていたそうだ。


退院手続きのため、担当の看護師さんからとりあえず説明を受けて今は病院食を頂いている。


昼食を食べ終えた頃くらいに退院手続きの書類を持ってきてくれるそうだ。


因みに、雑務課のメンバーは先程院内の売店で買ってきて俺の居る病室でいま一緒に食べている。



バラの匂いが凄すぎてご飯の味がバラだ……。味噌汁飲んでもバラの味がするって……酔いそう。



「なんかバラの味しかしないわねぇ……サンドウィッチが台無しだわぁ……」


面会者用に用意されたパイプ椅子に腰掛け眉を下げ、手元のサンドウィッチを見つめながら歩さんが呟いた。


持ってきた本人がそれを言うのか、とでもいうかのように歩さんにメンバーの視線が集中するのを目の当たりにし、俺は思わず苦笑いをしたがそれには同感だ。




***




食事を終えた俺は、


「正人くん、ちょっといいかなー?」

とソフィアさんに声をかけられ、それからジッと俺の胸を凝視されていた。


ソフィアさんの視線は俺に向けられたまま既に五分位は経過していると思う。


ただ凝視しているだけではなく、時折、首を捻ったり、眉間に皺を寄せたり、唸ったりしていて顔のパーツが忙しなく動いていた。


「あ、あの? ソフィアさん、さっきから何を?」


他のメンバーの視線はソフィアさんの背に向けられ一切口を開くことなく黙っていたが、何故か落ち着きがなくそわそわしている。



……何かあったんだろうか? 服部のことか?



「皆さんもどうしたんですか?」


不安になっておずおずと俺は口を開いて聞く。


眉を下げてメンバーの顔色を窺うように視線を彷徨わせれば、課長がソフィアさんの隣まで移動した。







「あー、ごめんね? 正人君。以前、ソフィア君がきみに『なんで魂を二個持っているのか』って言ってたの覚えてる?」






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