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第三十五話 諸刃の剣

正人が服部和毅を取り押さえて直ぐ、複数の警官がプラネタリウムに押し掛けてきた。


「ご苦労様です」


「お願いします」


ビシッと敬礼した警官に正人は服部を引き渡すと、彼等は服部を連行し路上に停めていたパトカーに乗せて発進した。


総務課長の透は、捜査第一課へ報告をするために服部を連行したパトカーへ同行し一足先に警視庁へ向かった。


残った正人たちは証拠品の整理と後片付けの為に残ることとなった。これを終えれば、今日のところは解散だった。


「じゃあ、片付けるか」


という士郎の言葉に続いて、メンバーはプラネタリウムの建物へ足の爪先を向けて戻ろうと歩みを進める。



やっと、終わった……。



正人は、服部の乗車したパトカーが小さくなるまで見つめ、逮捕したことを実感し安堵する。


途端、ぐらりと視界が反転し、暗転した。



あ……れ………?



受け身を取る余裕も無く、身体を捻ってこれから来るであろう痛みを庇おうとする思考も働かず、頭部からコンクリートに打ち付け鈍い音が響いた。


「正人くん! ちょっと聞こえる⁉︎」


「おい! 後輩、聞こえるか⁉︎」


頭部を打ち付けた鈍い音は正人に背を向け片付けに戻ろうとするメンバーに聞こえていた。


皆、目を大きく見開き慌て正人の側へ寄り、声をかけて肩を叩き、時には体幹を揺さぶりながら声を掛けた。


「救急車呼んでくるわ!」


正人の身体を揺さぶる中、コンクリートに打ち付けた額から出血していることに彼等は気がついた。


「タオル持ってくル!#/$€%」


正人は目を閉ざし、暗闇の中で仲間の心配する声が段々と小さくなり、意識が徐々に遠退いていくのを自覚しながら、やがて静寂を生み出した。


それは自宅から援護していた弟も同様であり彼も意識を失い、常日頃から感覚共有を発動していた能力も解けてしまっていた。ただ、元々、ベッドの上に座って援護していたので、正人のように額等から出血はしていなかったのは幸いだった。


 






彼等は諸刃の剣だった───。


通常、精神干渉系の超能力と他の超能力の合わせ技は身体及び精神面で大きな負荷がかかる。更に言えば能力が互いに反発し合い相性が非常に悪くあまり頻繁に実行するものではない。


しかし、この二人は同じ血を分けた兄弟であるが故に相性は良く、能力の発動が滞りなく可能であった。また、相性が良すぎるが故に負担が通常の二倍にもなっていた。


"精神干渉系の超能力と他の超能力との組み合わせは非効率的である"


これは、数々の超能力事件に携わってきた雑務総務課に所属する者達は知っている。ただ、兄弟である場合の組み合わせは知らない。


だからこそ、正人の言動の違和感に対してその可能性を推測したり、深く追求することはなかった。





彼等はその固定概念に捉われ続けていたから───。







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