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第二十八話 逮捕の裏側11 発動する能力

服部の額と掌にどっと尋常ではないほどの汗が浮きはじめ、顔を真っ青にさせた。



『何でおまえが俺の能力のこと知ってるんだ』って顔だな。



煽り役が正人でなくとも、全て顔に出てしまう今の服部の思考を読むのは容易い。

目に見えて余裕が失われてつつあるのが丸わかりだった。

 

警察も誰も知らないはずの服部の秘めた能力をさらっと暴く正人のその言葉は、服部の冷静さを奪うには十分だったようだ。

誰も知らないというよりは服部に開示した情報は偽りのものであり、本来の情報は伏せていたというのが真実であるが。


「い、いい加減にしろよ! おまえが兄貴の罪を俺になすりつけようとしてるって訴えてやるよ!」


服部は斜めにかけたショルダーバッグに手を入れた。


「訴えるんだったらおまえがやったしょ、証拠もいるよな?」


服部が声を震わせながらそう言いうとインスタントカメラ"チェキ"を取り出し、レンズを正人へ向けた。




『『来る!』』




二つの思考がリンクした瞬間だった。

正人自身が生命の危機にさらされる時のみに働く直感が服部の能力発動開始を即座に察した。

正人が委ねるもう一つの思考──弟は何度もいうが正人自身より遥かに聡い。よって、服部が次にどんな行動に移るのかも予測済みであった。


正人と弟は危機を察知しながらも今、身構えることはしなかった。


服部に不信感を与えぬように、ただ能力発動を待つ。

だが、危機を察知しながら何もしないわけではない。


正人は奥歯をギリッと噛み締めた。

決して今の状況に恐怖しているわけでも、死を覚悟しているわけでもない。


正人が奥歯で噛み締めるのは一枚のトランプの切れ端。





そして、心の内でこう叫ぶ、



『次は勝つ』



瞬間、正人の本来の能力が発動した。




正人が弟と呼ぶ人物のものの能力ではなく、まぎれもなく()()()()()()()が───。

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