第二十二話 逮捕の裏側5-4 其々の配置 ※ R15 性的描写あり
※性的描写が御座います
俺たちは部署へ戻ってきた。
今は休憩で皆んな好きなことをしているが、俺は服部の監視を怠るわけにはいかないのでパソコンに映る服部を観ながらアンパンを食べていた。
何故アンパンかというと、古いイメージかもしれないが、警察といえばアンパンのイメージがあったからだ。もちろんパックの牛乳も忘れていない。ビンじゃないのがちょっと残念だ。
アンパンを頬張りながら、パソコンに映る服部を観て、前に接触した時のことを俺は思い出していた。
相変わらずすました顔で書類作成をしたり、電話対応をしていた。
本当に人を殺した……んだよな?
逆にこちらが不安を覚えてしまうほどに堂々としていた。思わず俺は首を捻った。
でも服部が犯人だとして、脅迫文の通りに誘い出されて………脅迫文の相手が俺って知ったら……驚くだろう…………な────⁉︎
そこである事実に俺は気がついた。
服部は俺が警察官だと知っているから警戒してぼろを出さないかもしれない。しかも、服部は恐らく俺のことを守秘義務を守らない警察官だと思っているから、流した情報を信じて加藤が犯人だと思い込んでいる。脅迫文で呼び出したとしても、馬鹿な警察官だと認識し下に見られて仕舞いにはおまえの上司に言いつけるだのなんだの言われ言いくるめられ能力を出さないかもしれない。
とすれば、煽り役は服部と接触していない人物、つまり面識の無い人物の方が絶対いい。
その方が警察官相手よりも隙を見せる確率も格段に上がるに違いない。
「あの、皆さんちょっといいですか?」
そして、俺はこのことを説明した。
「馬鹿な警官だと刷り込ませておいて、後々その馬鹿な警官に追い詰められるという状況をつくり出せば余裕をなくし逆上して能力を使うと思ってたんだが。それは盲点だったな……」
士郎さんが顎に拳を当てながら「なるほどな」と呟いていた。
「見た目に反して随分と慎重な考えだね、正人君」
見た目に反してって、一言余計ですよ課長⁉︎
とは突っ込まない。相手は上司だ。
「正人くん、もしかしてきみ煽り役やりたくなくて言ってるわけじゃないわよねー?」
とソフィアさんが冷ややかな笑みを浮かべて言った。
ビクッ!
分かりやすく俺の肩が跳ねた。
視線が俺に集中する。
何を言っても言い訳にしかならないと悟り、正直に言うことにした。
「そ、れもあります」
なぜ俺の身体は嘘がつけないんだ!
俺は自分の身体を恨んだ。
「デモ、後輩の言うことも一理アル。ナニか打開策を見出さないとナ#/$€%」
「じゃあ変装したらどうかしらぁ?」
「変装といっても仕上がりが中途半端だったら、不自然ではないでしょうか? 逆に警戒心を煽るだけかと……」
「不自然じゃないよーに、完璧にやればいーでしょ?」
歩さんとソフィアさんがお互い見合わせて不敵ににやりと笑った。
その後、二人は変装材料の調達をすると言って出ていった。後輩の俺が何もしないわけにはいかないので、「荷物持ちについて行きます」と言えば「必要なのはセンスだけだから大丈夫よ」と断られてしまった。
また俺は服部の監視をはじめたのだった。
***
一時間程度経過し、
「はいはーい! 正人くんこっちねー!」
「ぐぇっ⁉︎ えぇっ! ちょっ、な、んですか⁉︎」
戻ってきて早々ソフィアさんに襟の後ろを掴まれ別室へ連れて行かれた。
この地下一階には部屋が沢山あるが、空き部屋が多いらしい。その一室に俺は押し込まれた。
そこにはニコニコした笑顔を向けてくる歩さんがいた。
そのまま歩さんは俺に近づき、
「うわぁあ! 何するんですか⁉︎」
俺の服を引っぺがした。
上半身裸にされた俺は女の子座りで両手で身体を隠した。
「もぉ大袈裟ねぇ、ちょっと着替えてもらうだけじゃないのぉ」
「じゃあ最初からそう言って下さいよ! 俺ちゃんと着替えるんで一旦外出てて下さい」
遠目で見ていたソフィアさんにも出ていってもらった。
「もー、これだから童貞は」
扉越しにソフィアさんのやれやれと言う声が響いた。
「聞こえてますからね⁉︎ あと、童貞は余計ですよ!」
ってか何で皆んな俺が童貞決めつけるんだ?
凄く……納得いかない。
俺が童貞か否かだって? ……黙秘します!
しばらくして「着替えましたよー」と俺は廊下に出ていた二人に伝えた。
そしたら次に俺はパイプ椅子に座らされ、二人にされるがままになっていた。主に髪をいじられたり、顔を触られたりだ。
特殊メイクでもするのか?
それは二十分程度で終了した。
「じゃあ、戻るわよー」
「え、ちょっと! 鏡で見たいんですけど」
「それはお楽しみよぉ~」
***
「うわぁ~こりぁ凄いね。加藤に似てるよ」
「加藤の親戚にいそうだな」
「いいカンジの顔の作りダネ後輩#/$€%」
部署に戻ってすぐにそういった感想が飛んできた。
「正人くん、見てみなさぁい!」
歩さんが普段ポージングをとっている姿見を俺の前に持ってきた。
「うわぁ……」
鏡の中の俺の服装は紺のキャップを深く被り、顎には髭を生やし、髪は大きく外に跳ねさせている。服装は上は白のパーカー、下はジーンズ、靴はボーダースニーカーだった。
鏡には皆んなの言う通り加藤本人の顔に近い人物がいた。
「加藤には弟がいたから、押収した携帯電話の写真データを参考にして、3Dスキャンにかけてシリコンマスクを作ったのよぉ」
なるほど、そういうことか。
服部は加藤大輔のことを嫌っているから、加藤の弟が呼び出したとすれば目障りな存在だと考え能力を使う可能性もある。
「因みにー、この髪型だったら耳に受令機をさしててもバレないし、服装も動きやすいやつにしたよー」
***
──逮捕のニ日前
俺たちはチェリーブロッサムプラネタリウムの関係者以外立ち入り禁止部屋へ移動し、ここでニ泊することになった。
課長は士郎さんが作った脅迫文を服部の愛人宅へ届けに行った。
脅迫文はいつ開かれるのかイトメラで観ているのだが、調べによるとポストの確認は毎週金曜日らしくそれまでは脅迫文を見られることはないとのことだった。
──逮捕の前日
この日も──
「あっん、ひ、やぁっあん、い、わないでぇ」
ぱちゅぐちゅぐちくちゅじゅぷ……。
「くっ!」
「ひやあぁん、あっぁ……やあぁん、かたぁい」
──開かれることはなかった。
ソフィアさんは椿先輩が身につけている熊の耳を、そして、歩さんは目をサッと塞いでいた。
戻ってきた課長は、服部と愛人の性行を真剣に観ていた。それはもう真剣に。
「一体、いつ……開くんでしょうね?」
因みに脅迫文は愛人が自宅へ持っていったのを確認済みだ。
「課長、見過ぎですよ……」
士郎さんが呆れ紛れに言った。




