第十七話 逮捕の裏側3 移動
チェリーブロッサムプラネタリウムの使用許可が下りた俺達は、すぐに向かうことになり駐車場へ移動することになった。
あと、椿先輩がついてくることになった。
あの椿先輩がだ。
今、開発中の霊感知監視カメラを設置するためにプラネタリウムの面積、設備等を把握する必要があったからだ。とはいえ、椿先輩が素顔を晒して出てきたわけではない。
「椿先輩、コッチのが恥ずかしくありませんか?」
「いいや、コッチの方がマシだ#/$€%」
椿先輩がアナログロボットとパソコンを繋いで、タイピングでアナログロボットに話させているのはいつものことだ。
「もの凄い注目されてますけど……」
いつもと異なるのは、椿先輩が熊の着ぐるみを着たまま台車に座り俺に押されて移動しているということだ。
しかもその着ぐるみが遊園地の可愛らしいクマさんじゃない。リアリティを追求して作られた熊の着ぐるみだ。
客観的に台車の上に本物の熊に似た着ぐるみの椿先輩があぐらをかきながらパソコンをタイピングしているというなんともシュールな光景だった。
「それ、今回いくらしたんだ?」
士郎さんも気になるようだ。
「二百五十万くらいデシタ#/$€%」
「「はぁ⁉︎」」
「今回は随分と張り切ったねぇ……」
課長が「ハハハ」と引きつった笑いを溢し、皆んな唖然としていた。
二百五十万⁉︎
俺は椿先輩の懐事情が気になった。
そういえば、士郎さんと課長が『今回』って言ってたけど、
「あの、他にも着ぐるみ持ってるんですか?」
「あぁ、前のはゴリラだったナ#/$€%」
「確か、それも結構な額だったわねぇ。いくらだったかしらぁ?」
「百六十三万くらいじゃなかったけー?」
「百六十三万⁉︎」
「そうそう、それも特注で業者に頼んで作ってもらってるんだよね。移動用の衣装」
移動用の衣装⁉︎ 普通の服じゃ駄目なのか⁉︎
移動中、
「ママー! 熊さんがいる!」
「見ちゃいけません!」
と子供の視界を遮る母親。
「ギャーー! ぐま゛ざんごわいーー!」
とリアリティのある熊に怯え泣き叫ぶ子供がいた。
先輩、もの凄い目立ってます……。
やっぱり天才だし8歳から働いてたから貯金が結構あるのか? でも特注で大金使って移動用の衣装を作るくらいだから、金遣い荒いんじゃないか? そしたら、貯金はそんなにないんじゃ……。それか副業でもやってるのかな? 着ぐるみにリアリティ追求するのは先輩の趣味? というか俺、椿先輩は着るとしたらロボット系だと思ったのに、なぜ動物系?
どこからどう掘り下げたらいいかわからなくなって、俺はこれ以上聞かなかった。
……というか聞けなかった。色々こわくて。




