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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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198/341

197.後のことを考えて

「さて。スザクさんから話を伺った上で、皆にもお伝えしておきます」


 とりあえず片付けも終わったところで、俺たちは大公さんのお屋敷に戻った。で、せっかくすーちゃん……スザクさんと話もできるようになったもんで彼の知ってる話を、カイルさんたちにも伝えるってことになったわけだ。

 俺だけじゃあれなんで、大公さんも同席してもらってる。俺は難しい言葉とかわからないこともあるから、頼んますよー。あとカイルさん、俺の隣に座るのは良いけど反対側にいる大公さんガン見してもしょうがねえからな。


「残るは西の大地のビャッコ、そして東の空のセイリュウ、だそうです。場所はこちらの推測通り、みたいですね」


 いや、さすがのスザクさんも他の連中に関しては、大体の位置しか分からないらしい。そりゃ、自分も封印されて寝てたわけだからなあ。つーても、大体の場所が分かれば資料と合わせてほぼちゃんとした位置も判明するわけで。


「ビャッコが現在のイコンの領内、セイリュウは東の海に浮かぶ太陽神教総本山……か」

「どっちも面倒じゃないですか? イコンはそもそも黒の神信仰ですし、総本山って船で結構掛かるって聞いたことがあるんですけど」


 グレンさんが広げた手書きの地図を見て、タクトが困ったように声を上げる。

 けどまあ、イコンはシッコクさんが無事なら、何とか話をつけてもらえるかもしれないけどな。太陽神教総本山、って字面からして面倒そうだな、うん。

 ……ん、待てよ。


「……黒の魔女、多分ビャッコの方行ってますよね」

「じゃな。さすがに、海渡って敵の総本山に突入するよりは確実に味方を増やしておきたいじゃろうしのー」


 思わず大公さんに聞いてみたら頷かれた。でーすーよーねー、あいつがおとなしくしてるとは思えねえしー。

 そこら辺はカイルさんたちも推測はしてたみたいで、はあというため息がそこかしこで漏れるくらいだった。まあなあ、俺がシオンでもそうするだろうし。


「そうなると、何とかして総本山のセイリュウさんゲットしないとですね」

「ビャッコ取られたとして2対2、か。ま、何とかなるだろ」

「ユウゼにも太陽神様の神殿はありますから、まずはそちらの神官殿から話を通してみようかと思っております」


 何か、ゲームのアイテム探しや仲間探しっぽくなってきたなあ。あんまり変わらないんだろうけど。でも、グレンさんの言うとおり向こうが2体、こっちが2体なら、何とかなるだろ。

 カイルさんがレッカさんの話を出してきたところで、大公さんは「それがよかろうな」と大きく頷いた。シノーヨにも太陽神さんの神殿はあるんだけど、ユウゼから頼んだほうが良いのかな。そこら辺はよく分からん。


「すーちゃんも、同じ神の使い魔の味方がいれば心強かろうしな。なあ?」

『いや、まったくだな。3つ全部相手に回しとうはないわ』


 すーちゃんに戻ってるスザクさんは、大公さんの言葉にこっくり頷いた。つられてみょんみょんと揺れるとさかに、ムラクモ見とれております。あーうん、お前こういう時ほんと役に立たないね、うん。

 ムラクモが役に立たないもうひとつの理由、タケダくんとソーダくんも、ふらふらぱたぱたと同意を示した。といえばかっこいいんだが。


『すーちゃん、おともだちいっぱいいたほうがいいよね?』

『たけだくん……すざくさま、とおよびしたほうがいいのではないでしょうか』

『え、そうなの? ごめんね』

『いやいや、すーちゃんで構わんよ。白の魔女殿や、人の皆もな』


 ……とまあ、こんな会話なんである。ま、ソーダくんはともかくタケダくんに難しい言葉は無理なんだけどな。

 しかし、マジですーちゃんでいいのか。そりゃ助かるっちゃ助かるけど……一応、お礼は言っておこう。


「あ、ありがとうございます」

「な、何の会話をしているのだ?」


 おい、そこで反応するか。つーても、俺以外に今の会話全部聞けた人はいないのか。通訳通訳、めんどくさいから意訳でかんべんしてくれ。


「ん? あー、呼び名の話。すーちゃん、でいいらしいよ」

「そ、そうなのか……す、すーちゃん?」

『やれやれ。忍びの娘は、よほど使い魔が可愛いと見える。ちょいとさーびすじゃ』

「は、はうううううん」


 あ。

 すーちゃんめ、軽く羽ばたいてムラクモの肩に止まって、頬にもふもふしてやってるぞおい。駄目だこりゃ、ムラクモは完全に使いものにならないぞ、当分。


「とりあえず、あれは置いておこうかの」

「済みません、大公殿下。諜報や戦では役に立つのですが」

「よいよい。必要な時に動ければ、それで十分じゃろうて」

「タケダくんとソーダくんはこっちなー」

『はあい、まま』

『はい、じょうさま』


 大公さんとカイルさん、放置プレイすることにしたらしい。俺はうちの子たちをとりあえず回収して、膝の上に置いた。巻き込まれたら溜まったもんじゃねえしな。

 で、ムラクモ除いて落ち着いたところで、大公さんがにんまりと実年齢相応だろう、何となく空恐ろしい笑顔で口を開いた。迫力あって怖いよ、このショタジジイ。


「まあ、わしらは此度の事情においてはユウゼ、そして白の魔女殿側につこう。黒の神の考えが分かった今となっては、獣に戻されるわけにも行かぬからの」

「ありがとうございます」


 カイルさんが深く頭を下げる。まあなあ、理性ふっ飛ばしてタダのケダモノにされるってのはさすがになあ、ないわ。


「イコンがどう動くかは分からんが、わしの方から使いを出しておくでな。その間に東のセイリュウをどうにかした方が良いじゃろう」

「そうですね。ユウゼの神殿にいる、神官のレッカ殿から繋いでもらいます」

「頼んだぞえ」


 もしかしたらもう、イコンのどこかにシオンが潜り込んで、例によってズコバコあんあんとかやらかしてるかもしれないんだよな。

 それは、探ってみないと分からない。ユウゼはそんなに力ないし、コーリマはまだまだ大変だろうから、シノーヨにお任せするしかないってことだ。それを分かってるから、大公さんは自分から引き受けてくれた。

 ……太陽神教総本山、か。

 何となく、何となくだけどさ。

 いやーな気がするの、俺だけ?

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