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生贄にされかけたらしいが俺は元気です。女になったけど  作者: 山吹弓美


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134.眠れる怪我人

 程なく部屋の準備ができたんで、王姫様をその部屋に運び込む。さすがにお姉さんだってこともあってか、誰かが手を出す前にカイルさんがひょいと横抱きで抱き上げたんだよね。

 そのカイルさんと俺を見て、スオウさんが軽く肩をすくめた。


「王姫殿下はあんたらに任せるわ。ちょっと野暮用思い出してな、宿に戻る」

「あ、はい」

「そうか。気をつけろよ、物騒になるかも知れん」

「ありがとよ、隊長さん」


 にかっと笑って手を振るスオウさん。はて、野暮用って……ああまあ、情報集めだろうなあ。いきなりコーリマの王姫様がえらいかっこで突っ込んできたわけだし。


「まあ、情報収集するなら放っておいてもいいだろう。正直、何があったか分からないからな。これじゃあ」

「ですねえ。あ、マリカさんそっちお願いします」

「はーい。ジョウさん、しっかり支えてあげてね」

「了解」


 現在、カイルさんは部屋の外に閉め出された状態で室内の俺やマリカさんと話をしてる。いや、さすがに汚れたまま寝かせるのもあれだからさ、身体拭いて着替えさせてるんだよ。俺は中身はともかく女だから良いらしいけど、いくら弟でも男性の前でおっぱいぽーん、はないし。

 しっかし、服脱がせて全身拭いても目が覚めないのな。よっぽど疲れてんだろうか。王都からノンストップで飛んできたとしたら、まあ疲れるだろうけど。馬もぜーはー言ってたけどさ、背中に載ってるだけでも結構体力使うんだよな。


「今のところ俺たちもだが、さっぱり事態が分かっていないだろう。シノーヨの兵隊長が部下も連れずに来てる、なんてことはまずないだろうから、その部下を使って情報を集めているはずだ。いずれにしろ、ある程度状況がはっきりしなければ本国に報告することもできまい」

「あ、そういうことか」

「ユウゼを調べるにはそんなに部下が要るとは思えませんから、どちらかと言えばコーリマの情報収集に来たんですね。あの人」


 マリカさんもスオウさんのことは見てるからか、納得した顔をする。そっか、何だかんだ言ってもユウゼは小さい街だもんなあ。


「おそらく。直接コーリマに行っても良いんだが、何しろ向こうじゃあの髪は目立つからな、グレンもぼやいてたが」

『あー』


 カイルさんの答えに含まれた言葉に、俺とマリカさんは同時に目を合わせた。

 なるほど、そうか。コーリマって金髪とか茶髪とか、割と地味めな髪色多かったっけな。サクラ一家の青っぽい髪でもレアかなって思ったんだけど、赤い髪はそれ以上に目立つよね、確かに。

 そんなこと考えてるうちに拭くのと、新しい寝間着着せて布団かけるのまで終了。マリカさんがマジ一仕事終えたって顔してうんと頷いた。


「はい、これで大丈夫ですよ。あとは休ませておいて、お医者様を呼びますから」

「あ、はい。やっぱり見てもらったほうが良いですよね」

「そうですね。何があったかわからないですし」


 だよなあ。何しろ起きないもんだから、何がありましたかーって聞くに聞けないし……なんて思ってると扉の向こうからノックの音。ああ、こっち終わったって声で分かったな、カイルさん。


「あ、終わりましたんでどうぞ」

「ああ。すまんな、手間を取らせた」

「いえいえ。さすがに、隊長のお手煩わせるわけにもいきませんので」


 王姫様の寝顔を覗き込んだカイルさんの表情は、ちょっと緊張した感じだった。マリカさんは苦笑して、小さく溜息をつく。


「お医者様に診ていただかないと分かりませんけど、とりあえず後に響く傷はないようです」

「……そうか。よかった」


 ほう、と息をついたカイルさんの顔が少し緩む。ああ、王姫様のことすごく心配してたんだな。だよなあ、お姉さんだし。

 でまあ、本人は寝てるのでどうしようもない。で、カイルさんはマリカさんに「医師を呼んできてくれ。必ず誰かと一緒に動くように」と指示を出す。そして、俺には。


「ジョウは、殿下を見ていてくれるかい? おそらく、コーリマ本国で何かあったんだと思う。通達が来るはずだから、その時に守ってほしい」

「はい、もちろん」

『せーじゅおねーちゃん、まもるのー』


 ここまでおとなしくしてたタケダくんが、くねくねと身体くねらせながら自己主張。いや、おとなしくしてろって言ったんだけどな、俺が。

 まあ、伝書蛇の言葉が俺以外には分かるわけもないので通訳。


「タケダくんも協力してくれるみたいです」

「はは、それは助かる。じゃあ、頼んだよ」

「お留守番、お願いしますね。行って来ます」

「はーい。マリカさん、行ってらっしゃーい」

『かいるおにーちゃん、まりかおねーちゃん、またねー』


 カイルさんも少しだけ笑ってくれて、和んだままマリカさんと一緒に部屋を後にした。ばたん、と扉が閉まったところで俺は、王姫様が寝ているベッドの横に椅子持ってきて座る。

 その膝の上にぴょんと飛んできたタケダくんが、じっと俺を見上げて息を吐いた。


『まま』

「何?」

『せーじゅおねーちゃん、ちょっとだけくろついてた』

「はい?」


 くろついてた。

 黒ついてた。

 この場合、ついてたってくっついてたのか取り付いてたのかどっちだよ、と考えるのはやめにする。どっちでも、あんまり変わりはしないからな。

 でも、ついてたって過去形だよな。


「……取れたのか? 黒」

『あのね、ままがだっこしたらぽろって』

「俺?」


 何じゃそりゃ。

 俺が抱っこしたら、王姫様についてた黒の気配がぽろって取れた?

 訳わからん。

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