新しい魔法を作ろう
「──魔法の絵の作者を発表しないか……ですか?」
「ええ、あなたたちの結婚で色々あってね」
話を聞くと、私とサリアの結婚のあとしばらくしてから、私とルナーリア王女との結婚の発表もあったのだけど、反対意見もあるらしい。
どうやら、実績がほとんど無いような者に、二人の王女の相手が務まるのか、ということだ。
「実績はサリアやルナちゃんの成績の向上があるけど、それだけじゃ納得しない人もいるみたい。」
「なるほど、家庭教師であれば成績なんて上げて当然、というのも至極真っ当な意見です」
「そういうこと。以前はあなたは平民だったから、このことを公表したら狙われる恐れがあったけど、サリアと結婚した今はそれがないじゃない?」
確かに、今の私は平民ではなく王族とのつながりができた。
そんな私をさらおうとするなら、国家を相手にすることになる。
「私としても、かわいい義娘の功績をこのままずっと秘密にするなんて、もったいないと思ってるもの。成果を出した者にはお金だけでなく、相応の名声も与えられて当然だと思うわ」
「お義母様……でも、これだけではまだ弱い気もしますね」
「そうかしら?」
「例えば新しい魔法を開発した、とかそういう物なら大きい功績になるかもしれないですよね?」
「ええ、確かにそうだけど……何かアテがあるのかしら?」
私はこくりと頷く。
戦闘に使うだけが魔法じゃないもの、私の世界にあったものなどを再現できれば……。
「……それならお願いしようかしら?」
「分かりました。それでご相談なのですが……お義母様とお義父様にご協力頂きたいのですが……」
「ええ、かわいい義娘のためですもの、協力は惜しまないわ。ヴィルトにも伝えておくわね」
「ありがとうございます、それでは新しい絵を描いてきますので、少々お時間をください」
よし、こうなったら多くの人を驚かせるものを作ろう。
それだけではなく、サリアやルナーリア王女が喜んでくれるものを!
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「皆さま、本日はお忙しい中、集まって頂きありがとうございます」
一か月後、学校の開校準備と平行して進めていた新しい魔法の発表が行われることとなった。
招待状の中には、私が魔法の絵を描いた本人であること、そして私が作り出したオリジナルの魔法が本日お義母様とお義父様によって披露されることが書かれていたため、予想よりも多くの人が集まることになる。
これだけの人に認められるなら、大きな功績と言っても差し支えないだろう。
「……さて、長い前置きなど不要でしょう。早速、私のかわいい義娘……メイが作り出した魔法のお披露目といきましょう」
お義母様は手を天高く掲げると、魔力を空に向かって解き放つ。
それは上空で破裂し、広範囲に散布されて地上へと降り注ぐ。
「こ、これは……雪!?」
「ば、バカな! 今は雪が降るような季節ではないはずだ!」
「まさかこれを魔法で……? 素晴らしい……」
季節はそろそろ春が来る。
それなのに空からひらひらと舞い降りてくる小さく白い雪。
ある人は驚きの声を、ある人は感嘆の声を。
そして……。
「すごーいっ! サリア、雪だるま作りたい!」
「わたくしはお姉さまに教えて頂いたかまくらを作って、二人で肩を寄せ合って……うふふ」
こどもたちは喜びの声を。
草原の国である私たちの国では雪は滅多に降ることがない。
だから喜んでくれるかなと思ってたけど、想像以上の喜びようで見ているこちらまで幸せな気分になる。
……ルナーリア王女の後半の言葉は聞かなかったことにしておこう。
もちろんただのエンターテイメントではない。
風魔法と合わせれば吹雪を再現して相手の視界や体力を奪うなど、組み合わせ次第では戦闘面でも使える魔法だ。
周りを見渡すと、そのことに気付いている人もちらほらいるようだ。
「もちろん、これだけではありません。さ、あなた」
「ああ、では儂もやるとしよう」
次にお義父様が大きな火球を作り、それを同じように空へと放つ。
空高く舞い上がった火球は、空中で四方八方に分裂し、様々な色に変化しながら儚く消えていく。
「わぁ……お空にきれーなお花が咲いてる……」
「ど、どうやってますの!? わたくし、火の色の変化はしたことがありませんわ!」
目を輝かせながら空に一瞬だけ咲く花に見入っているサリアと、火の変化に興味津々なルナーリア王女。
ルナーリア王女は自分でも火の魔法を使うから、やはり探求心が疼くのだろう。
これもただの花火としての使用だけではなく、攻撃魔法としても使用可能だ。
この火球を敵の砦の上空で爆発させたら、広範囲に攻撃することもできるだろう。
……個人的には、どちらの魔法も平和的な利用をして欲しいものだけどね。
「さて、この魔法は二つともサリアの妻であるメイが作り出したものです。……更に、彼女はまだまだ新しい魔法のアイデアがあると言っています。これだけのことをできる者ならば、サリアの、そしてルナーリア王女の妻として相応しいのではないか、私はそう思っています」
その言葉に参加者一同がどよめいたが、すぐにどよめきは収まり、お義母様の言葉に頷く者も多かった。
……どうやら、狙い通り私の実績は認められたようだ。
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「ねーパパ、あのお空に花を咲かせる魔法もう一回やって! もう一回!」
お披露目会の終了後、サリアがお義父様におねだりをする。
どうやら花火をいたく気に入ったらしい。
「お、おお……」
そしてそのサリアのおねだりに泣き出すお義父様。
「ま、まさかサリアにこうもかわいくおねだりされる日が来るとは……。メイよ、ありがとう……」
なるほど、確かにサリアは私にばっかりべったりで、お義父様にはあまりそういうことはしなかったな。
だからこそすごく嬉しいのだろう。
「よーし、あと一回どころか二回でも三回でもやろう!」
「やったー! パパだいすきー!」
「だいすき……ううっ、嬉しすぎて目の前が見えない……」
どれだけ泣いてるんですかお義父様。
……まあ、今が一番かわいい時期だもんね。しょうがないかも。
「あ、ねえねえ、ママもまた雪降らせて! メイと雪だるま作ったりしたい!」
「そうね、今からだと暗くて雪がよく見えなくなるから、また時間がある時にたくさん遊びましょうね」
「わーい!」
満面の笑みを浮かべるサリア。
これだけ喜んでくれるなら、がんばって新しい魔法を作った甲斐があるというものだ。
雪を使った遊びもたくさん教えてあげたいな。
「さあ、サリア。今度はどんな色の花火が見たい?」
「んー……えっとねー……青いの!」
「よし、それでは早速……」
親子の微笑ましい会話を見て、次はどんな魔法を作ろうか? そう思いながらお義父様の打ち上げた花火を楽しむのだった。




