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第四章 スーパーお嬢様女子大生対スーパーおたく女子高生 5
涼子は薄れいく意識の中で思いだした。あのときのことを。
あのときも銃を向けられた。
そしてその凶弾は、無情にも両親の胸を貫く。
両親は苦悶の表情で倒れ、床に広がっていく真っ赤な水たまり。
思い出したくない悪夢。この一年の間、何度もうなされた夢。
あのとき、あいつが銃を撃つ前に蹴り倒していたら。
いや、そもそも銃を抜く前に倒していたなら。
こんなに、……こんなに苦しむことはなかった。
あの日以来、一日たりとも忘れたことなんかなかった。
あいつらはあたしの目の前であんなことを。奈緒子にあんなことを……。
だからきょうも銃を向けられたとき、ためらわなかった。
一年前も、銃さえ……銃さえ持っていたならば。
あるいは銃を持っている相手を倒せる力があれば。
そんな考えがぐるぐると涼子の頭を駆け巡る。まるで熱にうなされたかのように。
死ねない。あたしはまだ死ねない。こんなところじゃ死ねない。
あいつを殺すまでは。




